““Elegy” (2016) Theo Bleckmann
Theo Bleckmann (voice)
Shai Maestro (piano) Ben Monder (guitar) Chris Tordini (double-bass) John Hollenbeck (drums)
ドイツ出身、今はアメリカ在住でしょうか、男性ボーカリストTheo Bleckmannのリーダー作、ECMレコードから。
近い時期の“A Clear Midnight: Kurt Weill & America” (2015)で優しい系ECMの代表的ピアニスト Julia Hulsmannと共演の後のリーダー作。
サポートは、今風軽快疾走系のピアノトリオと、これまた今風先端系ギタリスト。
そんな手練れたちが奏でる強い浮遊感、いかにも今な感じのコンテンポラリージャズに、クルーナー系の優しい歌。
ECMレコードのヴォーカルものは異色なのでしょうが、いかにも21世紀型ECMな音、優しく穏やか系。
“A Clear Midnight: Kurt Weill & America”と近い質感ながら、ジャズスタンダード色がないからか、共演者の色合いか、妖しさ強め。
が、あくまで悲痛ではない穏やか系、明るい空気感。
とにもかくにも美しい音。
遠くから聞こえてくるようなクラシカルな音のピアノ、静かに鳴るシンバル、丸いクリーントーンのエレキギター。
多くの場面でのスキャットも含めて、とても幻想的。
全編を覆う強烈な浮遊感を含めて、あの期のPat Metheny Groupな感、Milton Nascimentoな感、南米感たっぷり・・・な感じ、無きにしも非ず。
ときおり表出する、あの疾走か?なピアノ、あの先端な表情になりそうなギター、混沌に突っ込んでいきそうなフリーなビート。
あるいは、とてつもない美メロが出てきそうな展開、空気感。
が、それらの片鱗が見えつつも、あくまで抑制的。
気が付けば、また淡い色合いの中。
全部合わせて、穏やかで柔らかでストイックな幻想、そんなイメージ。
これでいくつかのキャッチーなメロディや、ハイテンションなインプロビゼーションの場面があれば、大名盤になるんだろうなあ。
が、この慎ましやかなバランスがオシャレでカッコいいんでしょうね。
とても心地よくてよろしいかと。
名作。