吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

trumpet

【Disc Review】“Ravensburg” (2017) Mathias Eick

“Ravensburg” (2017) Mathias Eick

Mathias Eick (trumpet, voice) 
Andreas Ulvo (piano) Audun Erlien (bass) Torstein Lofthus (drums) Helge Andreas Norbakken (drums, percussion) Håkon Aase (violin)

RAVENSBURG
MATHIAS EICK
ECM
2018-03-02


 ノルウェーのトランペッターMathias Eickのコンテンポラリージャズ。
 すっかり現代ECMの代表トランペッターになったようで、コンスタントに制作しています。
 前作”Midwest” (2014)と同様、オーソドックスなトランペットカルテットにバイオリンが加わる編成ですが、メンバーは大幅に変わっています。
 本作もこの人の色合い、寂寥感の強いジャズですが、少々明るいイメージだった前作に対して、本作はダークで哀感強め。
 しっとりしたジャズだけど、アコースティック4ビートな場面は少なく、現代的な複雑で乾いたビートを刻むドラムと、控え目に淡々と音を置くエレキベース。
 ピアノは前作に参加した大御所Jon Blakeではありませんが、“Skala” (2010)などに参加していたいかにも北欧系、繊細で美しい音の人。
 さらに狂気を秘めたようなバイオリンと、時にスキャット、そして主役のサブトーンたっぷり、寂寥感の塊のような音のトランペット。
 バイオリンはThomas Stronenの“Time Is A Blind Guide” (2015)、“Lucus” (2017)に参加していた人。
 派手に前面に出てくる場面は多くないのですが、トランペットとの揺らぐような絡み合いがとてもカッコいい。
 楽曲はもちろんこの人の描く、哀感、寂寥感の強いメロディ。
 ノルウェーのトラディショナルな空気感と、ロックやフォーク、その他諸々の要素が混ざり合う現代の音。
 静かに淡々と進みつつも、漂い揺らぎながらじわじわと迫ってくるような音の流れは、穏やかながらとてもドラマチック。
 近年のECMの定番、淡くて穏やかでエスニック、そして揺らぎのあるコンテンポラリージャズ。
 どことなく寂しげで懐かしげな空気感は、Nordic Saudade。
 ダークで沈んだ質感だけども、なぜか和みます。




posted by H.A.


【Disc Review】“A Long Time Ago” (1997,1998) Kenny Wheeler

“A Long Time Ago” (1997,1998) Kenny Wheeler

Kenny Wheeler (Flugelhorn)
John Parricelli (Guitar) John Taylor (Piano)
Derek Watkins, Henry Lowther, Ian Hamer, John Barclay (trumpet) Mark Nightingale, Pete Beachill, Richard Edwards (Trombone) Dave Stewart, Sarah Williams (Bass Trombone)

Long Time Ago
Kenny Wheeler
Ecm Import
1999-10-19


 Kenny Wheelerのラージアンサンブルでのコンテンポラリージャズ。
 たくさんの作品を制作していた時期のようで、ECMでは”Angel Song” (1996)に続く作品。
 盟友John Taylorにギターを加えたトリオに、大人数のブラスアンサンブル。
 ドラムとベースの参加はなく、いわゆるビッグバンドのジャズとは異なります。
 フロントに立つのはフリューゲルホーン、ピアノ、ギターのみ。
 そのトリオのみの静かな場面も多く、ブラスのアンサンブルが彩りを付けていく形。
 冒頭のタイトル曲は30分を超える組曲。
 いつものちょっと悲し気で勇壮なメロディに、柔らかい音のブラスのアンサンブルから、フリューゲルホーンとギターとピアノの静かなジャズへ。
 それらが交錯する構成。
 鋭く美しいピアノに、現代的ながらあくまでジャズなギター。
 低音楽器を中心とした重厚で格調高いブラスアンサンブル。
 ドラムとベースがいない分、不思議な質感で淡々と進む音。
 ギター、ピアノが後ろに下がった場面では、よりクラシック的に聞こえます。
 現世の日常とは違う、中世のヨーロッパ的な、静かだけども不思議な重厚感。
 Kenny Wheelerらしく勇壮で高貴、上品、大人、そして静かなジャズ。

※別のアルバムから。


posted by H.A.

【Disc Review】“Diane” (1985) Chet Baker & Paul Bley

“Diane” (1985) Chet Baker & Paul Bley

Chet Baker (Trumpet, Vocal) Paul Bley (piano)

Diane
Chet Baker
SteepleChase
1994-05-24


 Chet Baker, Paul Bley、二人の大御所のDuo作品、デンマークのSteepleChaseから。
 お二人、近い世代のようですが、ECMのPaul BleyからはChet Bakerとの共演は想像できません。
 さらに超妖しい“Fragments” (1986)に近い時期の録音。
 が、絶妙な相性、全くオーソドックスな静かなジャズ。
 スタンダードのスローバラード中心。
 ピアノはタメにタメてタメまくりながらスケールアウトした音を置いていくPaul Bleyではなく、オーソドックスに美しくジャズを弾くPaul Bley。
 晩年に近づきつつある時期のChet Bakerですが、クールなトランペットは往年のイメージのまま、一曲のみのボーカルも格別のクールネス。
 速いフレーズをバリバリと吹くことはありませんが、丁寧に置かれていく音、端々の抑揚は、やはり稀代のスタイリスト。
 淡々と美しいメロディが流れていく静謐な時間・・・
 美しく端正な晩年のChet BakerとジャズなPaul Bley。
 全くオーソドックスで極めて静かなジャズから漂う凄み。
 さすが、稀代のスタイリストたち。




posted by H.A.


【Disc Review】“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen

“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen
Avishai Cohen (trumpet)
Yonathan Avishai (piano) Barak Mori (double bass) Nasheet Waits (drums)



 イスラエルのスーパートランペッターAvishai Cohen、“Into The Silence” (2015)に続くECM第二弾。
 オーソドックスなワンホーンカルテットでのコンテンポラリージャズ。
 メンバーは前作からサックスが抜け、ベーシストが交代。
 前作は近年のECMっぽい抑制されたコンテンポラリージャズでしたが、本作も同じ。
 静かで淡々とした語り口。
 10分を超える長尺な演奏を冒頭と中間に配して、間を短い演奏で繋ぐ構成。
 5曲、全体で40分に満たない収録時間は、今日的には短く、かつてのLP時代のA面B面に分けてそれぞれを完結させていく構成に見えなくもありません。
 冒頭は10分を超える"Will I Die, Miss? Will I Die?"なんて意味深なタイトル。
 確かにそんな感じの静かな緊迫感の演奏。
 ピアノを中心とした静かで雅な感じのイントロに導かれ、徐々にテンションを上げ、次々と景色が変わっていくような音の流れ。
 スパニッシュなようなジャパニーズなような、もちろんイスラエルなのでしょうが、漂うほのかなエキゾチシズム。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりとられて、徐々に高揚していくトランペット。
 が、激情には至らず、トランペットもピアノもバンドも、あくまでクールでスムースな音。
 続くは全編ルバートでのスローバラード。
 “The Trumpet Player” (2001)でJohn Coltraneの”Dear Lord”をカバーしていましたがありましたが、そのビートをフリーにして、妖し気にしたような演奏。
 漂うように、時に激情を発しながら流れていく淡い時間。
 ECMのお約束ですが、この人の色合いはハードボイルドです。
 さらに続く曲もこれまたフリービート、ピアノレスでのスローバラード。
 漂うような妖しげな演奏が続きます。
 後半(?)に移って、もう一つのピークであろう長尺曲”Shoot Me in the Leg”でようやくバンドのテンションが上がります。
 前奏のピアノの漂うような音から、ビートが入ると、トランペットが全開。
 時折激しい音を交えながら、あるいはドラムに激しく煽られながらテンションを上げていきます。
 が、さまざまな音の流れの変化を経ながらも、スムースな音の流れは変わりません。
 締めの”50 Years and Counting”も同様の色合い。
 テンションの高い演奏で緊張感も強いのですが、あくまでスムース。
 サラリとしていてスルスルと流れていく音。
 ECM的な音作りながら少し戸惑い気味にも聞こえた前作“Into The Silence” (2015)に比べると、スッキリとまとまった印象でしょうか。
 全編通じてスムースで、トゲや毒は直接的には見えてこないのですが、どこか浮世離れしたムード。
 ついつい“The Trumpet Player” (2001)の激しいバンドサウンドに乗ったスーパージャズトランペッターAvishai Cohenに期待してしまうのですが、スムースにまとめていくのがこのひとの近作のスタイル。
 作品の色合いに幅のある人だと思うのですが、ここまでの諸作のさまざまな色合いと、近年のECMの色合いがほどよい感じでフュージョンしたような感じ。
 Avishai CohenもManfred Eicherさんもいい感じのバランスを見つけたのかもしれません。
 ・・・にしても、アルバムにしても楽曲にしても、タイトルが意味深だなあ・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet

“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet
Tomasz Stanko (Trumpet) 
David Virelles (piano) Reuben Rogers (bass) Gerald Cleaver (drums)

December Avenue
Tomasz Stanko
Ecm Records
2017-04-14


 ポーランドジャズの親分?Tomasz Stanko、New York Quartet名義での第二作。
 前作“Wislawa”(2012)はオーソドックスな現代的ジャズピアノトリオとちょっとひねくれたトランペットの共演・・・そのままの音でしたが、本作はバラードが中心、少し面持ちが異なります。
 アップテンポな曲もありますが、前作のバラード部分の比重が大きくなりました。
 漂うようなフリーなビートに寂寥感の強いメロディ。
 枯れた味わいが強くなってきた、渋いトランペット。
 冒頭から今にも止まりそうなスローなビートを背景にして、トランペットがフワフワと漂う展開。
 何曲か収められたルバートでのバラードは、ECM、あるいはこの人の真骨頂ですが、かつてのような激情を爆発させて叫ぶ場面はほとんど無くなりました。
 代わりに、前作ではしおらしかった、キューバ出身、いまやECMアーティストのピアニストDavid Virellesが暴れています。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりもらって、さらに免罪符がもらえたのか、一気に爆発して激烈フリーへ、なんて場面もいくらか。
 美しい音、オーソドックスなサウンドの中で不思議な音の流れは、さすがECMのピアニスト、ただモノではない感じが漂っています。
 数曲のアップテンポでは、元気溌溂なピアノトリオを背景にした淡々とした印象のトランペット。
 かつての”Balladyna”(1975)のような、血汗が飛び散りそうなほど激烈な作品を作ることはもう無いのでしょうし、”Suspended Night”(2003)前後の諸作のように、バラード中心でも緊張感の高い演奏もないのかもしれません。
 穏やかにリラックスした風のTomasz Stankoサウンド。
 かつてと比べると著しくマイルドになったものの、全編を通じたハードボイルドなムードは、あの時代の東欧でフリージャズをやっていた人ならではの凄みなのでしょう。
 いずれにしてもECMとしては少々異色、渋くてまずまずオーソドックスな現代ジャズな作品。
 毒気はほんのわずか、ほんの気持ちだけしびれるぐらい。
 妖しさもほんの少し。
 かつての戦士の、穏やかで落ち着いた一作。




(1970) Music For K

(1972) “Jazzmessage from Poland”
(1973) “Purple Sun”
(1974) “Fish Face”
(1975) “TWET”
(1975) “Tomasz Stańko & Adam Makowicz Unit”
(1975) “Balladyna
(1976) “Unit with Adam Makowicz”
(1976) “Satu” Edward Vesala

(1978) “Live at Remont with Edward Vesala Quartet”
(1979) “Almost Green”
(1980) “Music from Taj Mahal and Karla Caves”
(1983) “Stańko”
(1984) “Music 81”
(1985) “A i J”
(1985) “C.O.C.X.”
(1986) “Korozje” with Andrzej Kurylewicz
(1986) “Lady Go…”
(1988) “Witkacy Peyotl / Freelectronic”
(1988) “The Montreux Performance aka Switzerland”
(1989) “Chameleon”
(1989) “Tomasz Stańko Polish Jazz vol. 8”
(1991) “Tales for a Girl, 12, and a Shaky Chica”
(1992) “Bluish”
(1993) Bosonossa and Other Ballads
(1994) “Balladyna”
(1994) “A Farewell to Maria”
(1996) “Roberto Zucco”
(1995) Matka Joanna
(1996) Leosia
(1997) Litania:Music of Krzysztof Komeda
(1999) From theGreen Hill
(2001) “Reich”
(2001) “Egzekutor”
(2002) Soul of Things
(2004) Suspended Night
(2005) “Wolność w sierpniu”
(2006) Lontano
(2009) Dark Eyes
(2013) Wisława
(2016) December Avenue


posted by H.A.


【Disc Review】“Alba” (2015) Markus Stockhausen, Florian Weber

“Alba” (2015) Markus Stockhausen,  Florian Weber
Markus Stockhausen (trumpet, flugelhorn) Florian Weber (piano)

Alba
Markus Stockhausen
Ecm Records
2016-05-20


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen、同じくドイツのピアニストFlorian WeberとのDuo作品。
 もともとクラシックの人、ジャズ系を演奏する際は、エレクトロニクスを交えた近未来サウンド、トランペットはMiles Davisなクール系といったイメージでしたが、本作はアコースティックオンリーでの、静謐系コンテンポラリージャズ。
 それも静謐度高めのメロディアスな音の流れ。
 楽曲は概ね二人で分け合っていますが、いずれも穏やかで淡い色合いのしっとりしたメロディ揃い。
 現代音楽~フリージャズな作品は聞いていないのですが、“Karta” (1999)や“Electric Treasures” (2008)あたりのフューチャージャズ~激烈系のイメージが強くて、ここまで静かに淡々とメロディアスに演奏されてしまうと、面食らってしまうというか、何というか・・・
 クラシックの色も強い丁寧な音使いのピアノと、同様に丁寧に音を紡いでいくクールなトランペット。
 二人とも派手な音使いはありませんが、キリっとした、かつ落ち着いた演奏。
 リズム隊なしでビートの制約がないだけに、二人で自由に漂うような演奏が続きます。
 自由ですがフリージャズ色は全くなし。
 あくまでメロディアスで少々センチメンタル、時に牧歌的。
 もちろんインプロビゼーションを含めた演奏力は折り紙付き。
 このレーベルにありがちな夜な空気感、あるいは、暗さや深刻さもなく、毒気もありません。
 さらに、ベトつくような甘いメロディもなく、あくまで淡い色合い、穏やかで爽やか。
 昼でもなく、朝な音。
 一曲目のように全編ルバートのスローバラードばかりだったりすると、気持ちよくて二度寝してしまいそうですが、ほどよくキリっとしているし、長い演奏もないのが朝にはいい感じ。
 澄んだ空気が流れていくような、淡々とした音の流れ。
 平日の朝には穏やか過ぎるのかもしれませんが、休日の朝のBGMにすると、上品で上質な一日が始まるかも。たぶん。

※唯一?夜な曲。

【Disc Review】“Electric Treasures” (2008) Markus Stockhausen

“Electric Treasures” (2008) Markus Stockhausen
Markus Stockhausen (trumpet, electronics)
Vladyslav Sendecki (keyboards, piano) Arild Andersen (bass, electronics) Patrice Herl (drums, percussion, voice, electronics)

Electric Treasures
Markus Stockhausen
Aktiv
2008-08-04


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen のライブアルバム。
 クラシックがメインの人?なのだと思うのですが、ECMでも“Karta” (1999)などのリーダー作、客演含めていくつかの作品があります。
 本作はデンマーク?のレーベルから。
 10年ほど前の作品“Karta”に近いメンバーでのワンホーンカルテット。
 ノルウェーのスーパーベーシストArild Andersenと縁が深いようで、そのド派手で強烈なグルーヴのジャズベースと、電子音を多用した近未来サウンド、Miles Davis的なクールなトランペットの取り合わせが、私が知る限りの特徴的なところ。
 本作もそんな一作、但し、“Karta” と比べると随分穏やかです。
 とてもとても心地よいコンテンポラリージャズ。
 CD二枚、全11曲の組曲。
 寂寥感と哀愁感の強いメロディ、静かな電子音とヒタヒタと迫ってくるビート。
 こらまた静かながら縦横無尽に動きまくるベースに、Miles Davis的なクールなトランペット。
 音楽が進むと徐々にビートが強くなり、例のド派手なベースとギターの代わりのグチョグチョシンセサイザーが暴れる場面もありますが、そんな場面もスッキリした印象。
 電子音が先行しても決して無機質にはならない、激しい演奏になってもうるさくはならないのは、最高のベースとドラムゆえでしょうか。
 近未来的な音、激烈なフリージャズ、ルバートでのスローバラード、アコースティック4ビート、その他諸々、コンテンポラリージャズでありそうな構成が全部突っ込まれたような演奏群。
 さらにドラマチック。
 1970年代ECM、Eberhard Weberの諸作を想い起こします。
 CD二枚目、後半のステージになると激しさ、アバンギャルドさ、あるいはエスニックな色合いも増してきますが、それらもドラマの一端。
 最後は幻想的なムードからオープンホーンで奏でられるちょっとベタつき気味のセンチメンタルなメロディ、徐々に盛り上がりつつも悲し気な表情で幕。
 とにもかくにも、静かな場面から激しい場面まで、全編ですさまじいArild Andersenのベース。
 もちろんリーダーもクールで端正な素晴らしい演奏。
 最初から最後まで、難解な部分なし、長尺、二時間、二枚組がスルっと聞けてしまう素晴らしい演奏。
 隠れた名作です。

※少し前の時期の別のバンドから。


posted by H.A.

【Disc Review】"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto

"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto
Enrico Pieranunzi (Piano) Enrico Rava (Trumpet) Enzo Pietropaoli (Bass) Roberto Gatto (Drums)

Bella
Enrico Rava
Philology
2009-04-01


 イタリアンのバンドによる、ほどほどオーソドックスでとても美しいトランペットカルテット。
 2016年あたり?に再発された名作。
 Enrico Pieranunzi, Enrico RavaのDuo作品では名作“Nausicaa” (1993)がありますが、本作ではキッチリビートが入って、そちらよりも元気溌剌、よりジャズ的な音。
 美しくて、センチメンタルで、それでも明るいジャズ。
 ECMのEnrico Rava諸作よりも音の明度が高くきらびやかですが、そちらはお好み次第。
 一般受けするのはこちらなのでしょうねえ。
 コンテンポラリージャズよりもオーソドックスなモダンジャズといった質感、オシャレなイタリアンが演奏したヨーロピアンモダンジャズ、ってな感じでしょうか。
 この後しばらく共演するStefano Bollaniよりも落ち着いたまろやかなピアノ。
 それでいてきらびやかな音。
 少々漂う狂気も計算された感じで、あくまで端正で美しい余裕たっぷりの音使い。
 Enrico Ravaは悠々とした吹きっぷり。
 ECMでのこの人のイメージはくすんだ真鍮だと思うのですが、本作では艶やかで明るくきらびやか。
 これ見よがしの派手さや妙な音は使わない端正な演奏ですが、相変わらずの表現力。
 抑揚に微妙な音の変化に、抜群のリズムへのノリ。
 オーソドックスなジャズを演奏してもやはりスーパートランペッターです。
 楽曲はEnrico Rava, Enrico Pieranunziの美しくセンチメンタルなオリジナルにスタンダードを少々。
 さすがにごちそうさまな “My Funny Valentine”が二テイク入っていることには一瞬引いてしまいますが、Take2はフリー混じりのカッコいい演奏。一番妖しげな演奏がそれだったりして。
 白眉はEnrico Ravaの名曲“Secrets”でしょうか。
 フリーな感じのビート、ルバート的なスローバラードから始まり、徐々にテンションと音量を上げていくドラマチックで長尺な演奏。
 その他含めて、全編艶やかできらびやかなトランペットとピアノの絡み合い。
 ドラム、ベースも控えめながら素晴らしい演奏。
 とても柔らかで艶っぽいジャズ。
 ネコのポートレートのあまりにも平和な感じなジャケットはどうかと思うのですが、確かにそんな音かもしれません。




posted by H.A.

【Disc Review】“Live At Roccella Jonica” (1984) Norma Winstone, Kenny Wheeler, Paolo Fresu, John Taylor, Paolo Damiani, Tony Oxley

“Live At Roccella Jonica” (1984) Norma Winstone, Kenny Wheeler, Paolo Fresu, John Taylor, Paolo Damiani, Tony Oxley
Norma Winstone (Voice)
Kenny Wheeler (Trumpet/ Flugelhorn) Paolo Fresu (Trumpet/ Flugelhorn) John Taylor (Piano) Paolo Damiani (Bass) Tony Oxley (Percussion)
 
LIVE AT ROCCELLA JONICA
PAOLO FRESU/JOHN TAYLOR/KENNY WHEEL
SPLASC(H)
2009-04-01


 John Taylor 率いるイギリスの名トリオAzimuth にドラムとベースが入り、若き日のPaolo Fresuが加わる豪華メンバーでのライブ録音。
 “Double, Double You” (1983) Kenny Wheeler、“Azimuth '85” (1985)、に近い時期のステージでしょう。
 Paolo Fresuの参加がちょっと場違いな感じもするのですが、イタリアのフェスティバルでの録音のようで、同じくイタリアのPaolo Damianiと二人でイギリス勢をお迎えするホスト役といったところでしょうか。
 Paolo Fresuは、まだリーダー作を出していない時期のようですが、現在まで続く端正なトランペット。
 が、激しい連中に囲まれると・・・
 楽曲はPaolo Damianiが二曲にKenny Wheelerが二曲。
 楽曲の選択、ベースドラムを交えたハイテンションなインプロビゼーションなど、Azimuthというよりも、Kenny Wheelerのアルバムのイメージが強い感じでしょう。
 Kenny Wheelerの勇壮でビヒャヒャーなトランペットと、John Taylorの激しくハイテンションなジャズピアノが目立ちます。
 Paolo Damianiはアバンギャルド系もやる人のようで、それ混じりの楽曲も。
 そんな色合いにはNorma Winstoneの妖しいスキャットがピッタリはまります。
 あの時代のハイテンションで激しく妖しいヨーロピアンジャズの一場面。
 これでバンドを作っていれば結構な名バンドになったんだろうなあ。
 おっと、Paolo Fresuの居場所が・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Live Around the World” (1988–1991) Miles Davis

“Live Around the World” (1988–1991) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Foley (lead bass) Deron Johnson, Kei Akagi, John Beasley, Joey DeFrancesco, Adam Holzman, Robert Irving III (keyboards)
Benny Rietveld, Richard Patterson (bass)
Marilyn Mazur, Munyungo Jackson (percussion) Erin Davis (electronic percussion)
Ricky Wellman (drums)
Rick Margitza (tenor sax) Kenny Garrett (alto sax, flute)
 
Live Around the World
Miles Davis
Imports
マイルス・デイビス


 Miles Davis、“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)以降の楽曲のライブ音源のオムニバスアルバム。
 “In a Silent Way”に導かれて始まるハイテンションなファンクフュージョン。
 決して好調な演奏ばかりではないし、サポートメンバーだけでの時間も長いのだけども、”Mr. Pastorius”~”Amandla”と続くバラードなど、素晴らしい演奏がいくつも。
 その他含めて凡百のフュージョンバンドとは一味も二味も違うステージ。
 最後の録音と言われる“Hannibal”もさることながら、出色は“Time after Time”。
 “You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)の短いバージョンでは収められなかった、ファンならずとも涙なしでは聞けない素晴らしいインプロビゼーションを聞くことができます。
 この曲を選択した必然性がわかる素晴らしい演奏。

 オープンホーンでの静かなインプロビゼーションによるイントロ。
 これだけでも名曲が出来てしまいそうなフレージング。
 ミュートに変えて卵の殻の上を云々ごとくのテーマメロディの提示から、探るように紡がれるとても美しいメロディの数々。
 少なくない空白の時間も素晴らしい余韻。
 さらにオープンホーンでの激情とともに音量を上げるバンド。
 それもわずかな時間、再びミュートでの寂寥感の塊のようなフレージングと、ギターとの静かなインタープレー。
 締めは最後の力を振り絞るような短いアウトロで幕・・・・
 これは凄い演奏。
 ポップなMilesなんて・・・、フュージョンのMilesなんて・・・、あまり吹けていないMilesなんて・・・とお思いの方は一度聞いてみてください。
 ベストパフォーマンスのひとつ、と強弁するつもりはないけども、これは他の誰であってもダメ。
 Miles Davisしかできない演奏だと思います。
 たとえ十分に力を入れて吹き切ることができなくなっていたとしても、幾つものミストーンがあったとしても、稀代の天才インプロバイザーが最後期に紡ぐ誰にもマネのできない美しいメロディ。
 とても優しくて、しかもハードボイルド。
 40年以上も最前線を走り続けた戦士の滋味もあふれる素晴らしい幕。
 ・・・「滋味」なんて言葉は似合わないので、最後までクールだった、に置き換えときましょう・・・


 


 復帰~ポップファンクのMilesを好んで聞いている人がどのくらい多いのかはわかりませんが、モダンジャズ、4ビートにこだわりさえしなければ、いいアルバム、いい演奏がたくさんあります。
 “The Man with the Horn”然り、“We Want Miles”然り。
 “Decoy”以降はすっかりポップになってしまいますが、これもまた一興。
 “You're Under Arrest”のタイトル曲、“Live Around the World”の“Time after Time”などは、大大大名演だと思います。

◆モダンジャズ、ハードバップ
(1959)      "Kind of Blue"
(Mar.1961)    "Someday My Prince Will Come"
(Apl.1961)    "In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk"
(May.1961)    "Miles Davis at Carnegie Hall"
(1962)      “Quiet Nights”  
(Apl.May.1963)   “Seven Steps to Heaven” 

◆モーダル新主流派ジャズ
(Jul.1963)     “Miles Davis in Europe” 
(Feb.1964)     “Four & More”、“My Funny Valentine” 
(Jul.1964)     “Miles in Tokyo” 
(Sep.1964)     “Miles in Berlin” 
(Jan.1965)     “E.S.P.” 
(Jul.1965)     “(Highlights From) Plugged Nickel” 
(Oct.1966)     “Miles Smiles
(May.1967,1962)  “Sorcerer
(Jun.Jul.1967)   “Nefertiti” 
(Oct,Nov.1967)  “Live in Europe 1967: Best of the Bootleg, Vol. 1"

◆電化ジャズ、ファンクジャズ
(Jan.May.1968)    “Miles in the Sky” 
(Jun.Sep.1968)    “Filles de Kilimanjaro” 
(Jun.1967,Nov.1968)  “Water Babies” 

◆電化ジャズ、ファンクジャズ、フリージャズ
(Feb.1969)      “In a Silent Way” 
(Jul.5,1969)      ”Bitches Brew Live” /一部 
(Jul.25,1969)     ”1969Miles - Festiva De Juan Pins
(Jul.26,1969)    “at Festival Mondial du Jazz d’Antibes
(Aug.19-21,1969)  “Bitches Brew
(Oct.27,Nov.4,1969) “Live in Copenhagen & Rome 1969” <DVD>
           “Live at the Tivoli Konsertsal” <DVD>
(Nov.5,1969)    “at Folkets Hus, Stockholm"
(Nov.7,1969)    “Berliner Jazztage in the Berlin Philharmonie" <DVD>
(Mar.1970)     “Live At The Fillmore East - It's About That Time
(Feb.18,Apl.7,1970)  “Jack Johnson"

(Apl.10.1970)    “Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West

(Apl.11.1970)    “Miles At Fillmore(完全版)”/一部
(Feb.Jun.1970)   “Live Evil” /一部
(Jun.1970)     “Miles Davis At Fillmore
(Aug.18,1970)    “Live at the Berkshire Music Center, Tanglewood, MA
(Aug.29,1970)    ”Bitches Brew Live /一部” (at the Isle of Wight Festival)
(Dec.16-19,1970)   “Live Evil”、“The Cellar Door Sessions1970” 
(Nov.6.1971)     “The 1971 Berlin Concert” <DVD>
 
◆ボリリズミックファンク
(Jun.1972)      “On The Corner” 
(Sep.1972)      “In Concert” 

◆疾走ファンク
(Oct.27,1973)    “Live in Stockholm 1973” <DVD>
(Nov.3,1973)     “Stadthalle, Vienna 1973” <DVD>
(Mar.1974)      “Dark Magus” 
(May.1970-Oct.1974) “Get Up with It” (未発表録音+新録。ボリリズミックファンク寄り。) 
(Feb.1.1975)     “Agharta”、“Pangaea

◆未発表録音集
(Nov.1969-Jun.1972) “Big Fun”  (ファンクジャズ+ボリリズミックファンク。) 
(Oct.27.1995-Jan.27.1970) “Circle in the Round”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)
(1960-1970)     “Directions”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)

◆復帰~ポップファンク
(Jun.1980–May.1981) “The Man with the Horn
(Jun.Jul.Oct.1981)   “We Want Miles” 
(Sep.1982–Jan.1983) “Star People” 
(Jun.1983–Sep.1983) “Decoy” 
(Jan.1984–Jan.1985) “You're Under Arrest” 
(Jan.Feb.1985)    “Aura” 
(Jan.–Mar.1986)    “Tutu” 
(Jan.–Feb.1987)    “Music from Siesta” 
(Dec.1988–1989)   “Amandla” 
(Mar.1990)       “Dingo” 
(Jan.–Feb.1991)    “Doo-Bop” 
(Jul.1991)       “Miles & Quincy Live at Montreux” 
(1998-Aug.25,1991)  “Live Around the World
 

posted by H.A.  
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