吉祥寺JazzSyndicate

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trombone

【Disc Review】 “Love, Love” (1973) Julian Priester Pepo Mtoto

“Love, Love” (1973) Julian Priester Pepo Mtoto
Julian Priester Pepo Mtobo (trombone, horns, whistle, flute, percussion, synthesizer)
Pat Gleeson (synthesizer) Hadley Caliman (flute, saxophone, clarinet) Mguanda David Johnson (flute, saxophone) Bill Connors (electric guitar) Bayete Umbra Zindiko (piano, clavinet) Ron McClure, Nyimbo Henry Franklin (electric bass) Ndugu Leon Chancler (drums) Kamau Eric Gravatt (drums, congas)

Love Love
Julian Priester
Ecm Records
2005-08-30


 トロンボーン奏者Julian Priester のジャズファンク作品。
 エレクトリックMiles派生作品。
 近い時期にWeather Reportの“Sweetnighter”(1973)、“Mysterious Traveller”(1974)、Herbie Hancockの“Sextant” (1972)、“Head Hunters” (Sep.1973)、あるいはECMでは“The Jewel in the Lotus” (Mar.1974) Bennie Maupin、ロックサイドでは"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana、そんな時代感。
 ドラマーがWeather Report、Santanaの人、Return to ForeverのBill Connorsの参加など、そんな人脈のメンバー。
 とんがった音、ジャケットのポートレートはとても爽やかですが、音はドロドロとした空気感。
 冒頭は美しいピアノ、幻想的なムードで始まりますが、その時間はわずか。
 ビートが定まると、地の底から這い出てくるようなヘビーでファンクなベースパターンがLP片面、最初から最後までずーっと続きます。
 このあたりは“Bitches Brew” (Aug19-21,1969)、“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davisと同じ手法。
 同じリフのひたすらの繰り返しが陶酔感を誘い、フロントではドロドログチャグチャしたコレクティブインプロビゼーション、激しい演奏が続きます。
 それでもA面はまだまだクール。
 さらに凄まじいのはB面。
 電子音が飛び交う妖しい時間から、フリージャズな激しい集団即興演奏がスタート。
 ビートとコードが定まっり、トロンボーン、ピアノとオーダーは回りますが、ドラムは叩きまくりのソロ状態。
 さらには、ラテンなビートに乗ってブチ切れ気味にドカーンと盛り上がり、幕引きは不穏な電子音・・・
 どこが“Love, Love”なのか理解に苦しみますが、とにもかくにも凄まじい演奏です。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)、“On The Corner” (Jun.1972)あたりの流れるままだった音の作りが、起承転結とまではいわないまでも、きちんと計算された構成、表現に完成された一作のように思います。
 あれよあれよと進み、それでいてドラマチック。
 この種の深刻系長尺ジャズファンク作品、この時期あたりがそろそろ最終局面でしょうか?
 最後の花火・・・ってこともないのでしょうが、いやはや凄まじい。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella

“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella
Giovanni Guidi (piano) Gianluca Petrella (trombone)
Louis Sclavis (clarinet, bass clarinet) Gerald Cleaver (drums)
 
Ida Lupino
Universal Music LLC
2016-09-02
ジョヴァンニ グイディ

 イタリアンピアニストGiovanni Guidi、”City of Broken Dreams”(2013)、“This Is the Day” (2014)に次ぐECM第三作。
 前二作はオーソドックスなトリオ編成、ルバートでのバラードてんこ盛りの前作“This Is the Day” (2014)は私的大名作でしたが、本作はベースレスの変則のコンボ。
 Giovanni Guidiの作品としてみると作風は少し変った印象。
 Giovanni Guidi とGianluca Petrellaの共作クレジットの曲が多く、二人がリーダー、そのDuoにドラムがサポート、Louis Sclavisは客演で彩りを付ける役割といったイメージなのでしょう。
 Gianluca Petrellaは元Enrico Ravaバンドの人で “Tribe” (2011) で共演、おそらくイタリアン。
 Gerald Cleaverは “Wislawa” (2012) Tomasz Stankoなどに参加のアメリカン。
 Louis SclavisはECMにも諸作あるフリージャズ中心のフレンチ。 
 ベースレスの強い自由度、浮遊感は好みなのですが、ここまでの作品に参加してきた素晴らしいベーシストThomas Morganが参加していないのは残念なところ。
 冒頭からこの人の色合い、強い浮遊感、淡いメロディ。
 が、ビートは複雑ながら明確。
 淡いピアノと柔らかなトロンボーンのインタープレーが続きます。
 二曲目、Louis Sclavisが加わると少しムードが変わります。
 フリーインプロビゼーションではありませんが、穏やかなフリージャズのムードが濃厚。
 穏やかながら聞き慣れない音階を多用したような不思議感の強い演奏が数曲続きます。
 が、中盤、タイトル曲Carla Bleyの“Ida Lupino”からは少しムードが変わってメロディアスな演奏が並びます。
 とてもドラマチックなイタリア曲“Per i morti di Reggio Emilia”、オリジナル曲“Gato!”、“La Terra”と素晴らしい演奏。
 哀愁漂うメロディとほのかに明るいムード。
 定まるような定まらないような漂うビートの淡い演奏。
 ピアノとトロンボーンの柔らかな音の絡み合い。
 ところどころの思索的なフレーズの繰り返しなど、柔らかなKeith Jarrettといった面持ちもあります。
 これは桃源郷。
 哀愁と柔らかなムードはこの人ならではの色合い、根底には哀愁と明るさが入り混じるイタリアンなムードが流れているのでしょう。
 が、8曲目以降は再び深刻なムードも漂う静かなフリージャズ色が強い演奏が再び始まります。
 最終曲で再びメロディアスな漂うなバラード。
 これが出てくるとホッとするというかとても優しい心持ちなる、そんな演奏。
 とても素晴らしいエピローグ。
 アルバム一枚で何かしらのメッセージがあるのかもしれません。
 が、これを冒頭にもってきて、曲順を変えるとアルバムの印象はガラッと変わるんだろうなあ。
 冒頭から聞いてあれれ?と思った人、フリーが苦手な人は、4~7曲目を中心に聞いてみましょう。
 それらのような演奏、あるいは“This Is the Day” (2014)の穏やかでメロディアスなルバートでのバラード路線を増やして欲しかったような気もしますが、それはやりたいことの一コマでしかないのでしょうね。
 その前後のフリー路線も怖かったり不快な感じだったりではないので、しばらく聞いていると慣れる、あるいは何か新しいモノが見えてくるのかな?
 さて?

 


 posted by H.A.

【Disc Review】“David Murray Quintet” (1994) David Murray

“David Murray Quintet” (1994) David Murray
David Murray (tenor saxophone, bass clarinet)
Ray Anderson (trombone)
Anthony Davis (piano) Kenny Davis (bass) Tommy Campbell (drums)



 スーパーホーン奏者David Murray、Ray Andersonの共演作。
 現代最高のホーン奏者二人。
 東の横綱vs西の横綱、千秋楽、頂上対決・・・
 ってなのは私の個人的趣味なのかもしれませんが、最も好きなホーン奏者二名。
 この二人はよく似ています。
 ぶっとい音、
 変幻自在の表現力、
 流麗なフレージングから徐々にグチャグチャになっていく展開、
 それでも絶対に外れることはないビート感、
 キレれて吹いているようで最後には必ず落ち着く、起承転結のあるソロ・・・
 その他諸々ありそうですが、要するに、激しい音使いながら、音色、リズム、フレージング、インプロビゼーションの組み立て、すべてが完璧。
 そんな二人の共演。
 音楽は両者が得意なファンクジャズ中心にジャズスタンダードなども。
 律儀にもバース交換とかもやっていますが、終わったらホッとするような、凄まじい吹きっぷり。
 これでもかこれでもかと続くジャンピーな曲、これでもかこれでもかと続く汗が噴き出すようなホーンの音。
 全体を眺めると、似たようなビート、平和な印象の楽曲が多い感じでしょうかね。
 妖しい系の曲や、色気のあるバラードなど間にはさめばもっと変化に富んだ作品になったのかな?
 いずれにしてもスーパーアーティスト、一期一会のスーパーバンド。

※別のバンドから。


posted by H.A.

【Disc Review】“Salzau Music On The Water” (2006) Danielsson, Dell , Landgren

“Salzau Music On The Water” (2006) Danielsson, Dell , Landgren
Lars Danielsson (bass) Nils Landgren (trombone) Christopher Dell (vibraphone)

ラーシュ ダニエルソン

 Lars Danielsson番外編。
 ミュージシャンはお三方+風、鳥。
 湖畔にwind-bell並べて、鳥のさえずりと風に任せてインプロビゼーション・・・、でもないか?
 まあ、そんな感じの自由な音楽。ゆるくて、のどかで、平和でいい感じ。
 訥々としたvibraphone, 抑えたtromboneがとても素敵だし、Larsさんらしくグルーヴする演奏もたくさんありますのでご安心を。

posted by H.A.

【Disc Review】“Big Band Record” (1994) Ray Anderson

“Big Band Record” (1994) Ray Anderson
Ray Anderson (trombone) George Gruntz (piano)
Lew Soloff, Ryan Kisor, John D'Earth, Herb Robertson (trumpet) T Sal Giorgianni, Tim Berne, Marty Ehrlich, Ellery Eskelin, Larry Schneider (saxophone) Art Baron, Dave Bargeron (trombone) Dave Taylor (bass trombone) Howard Johnson (Tuba, Baritone Sax) Mark Feldman (violin) Drew Gress (bass) Tom Rainey (drums)
 
Big Band Record
Ray Anderson
Rhin/Mesa/Bluemoon Records
1994-04-19
レイ アンダーソン

 知る人ぞ知るとんでもないトロンボーン奏者Ray Anderson。
 何がとんでもないかというと、とにかくうまい。
 音がぶっとい、キレイな音からダーティーな音まで多彩な音色、グルーブが強烈、抑揚がすごい、変幻自在な表現力、早く吹けるのは当たり前として、個々のフレーズがカッコいい、起承転結が明快でドラマチックなソロ展開、オーソドックスからアバンギャルド風まで何でもこい・・・などなど、カッコいいところをあげたらキリがないぐらいに凄い演奏者。
 トランペットやサックスなども含めた管楽器の演奏者、古今東西、全員集めても五指に入るんじゃない?と思うカッコよさ。
 ということで、いいアルバムもたくさんあるのだけども、このアルバムはビッグバンド。
 もちろんワンホーン・カルテットとかトリオとかのほうが、トロンボーンを楽しめるんだろうけども、このアルバムが凄いのは、他の演奏者も同じぐらいに凄いソロを吹いていること。
 名前を知っている人からそうでない人まで、ハズレなし。
 リーダーが乗り移ったかのような表現力の凄いソロの連続。
 リラックスして流れで吹いとけば何とかなるか・・・とかの雰囲気ではなかったのだろうかなあ?
 管楽器のインプロビゼーションかくあるべし、のショーケース、とまで言うと大袈裟かもしれませんが、まあそんな演奏集。
 ここまで集まると、曲がどうのとか、アレンジがどうとか、あまり気になりません。
 いつものファンクっぽさが薄くてジャズ色が強くて・・・とか、コンテンポラリー系のビッグバンド・アレンジが・・・とか、考えるのがばかばかしい。
 とにかく痛快。
 分厚いアンサンブルの音塊に、ド熱い管楽器のインプロビゼーション。
 涼しくなったこの季節にはピッタリ。



posted by H.A.

【Disc Review】"BLUES ette" (1959) Curtis Fuller

 さる物事を「これが私の趣向だよ」と自負しているもの程、語れることは実は少なかったりする。
 この度この場を借りてジャズについてのお話を書くことは僕の中でも実験的な試みになった。書き始めて思ったのはやはりジャズについて語ることは少し難しいということ。
 ジャスメンという人種はあまり自身のことについて多くを語ってはくれないものだし、ジャズには膨大な数の音源があるのに少しばかりの傾聴で他人とうなずきあうのは難しいだろう。
 しかし、ジャズを味わうことが自体が難しいと云いたいのではなく、むしろそんな屈折したエキセントリックな快感こそジャズを味わう上での大きな醍醐味の一つだと云えるだろう。


"BLUES ette" (1959)
Curtis Fuller (Trombone)
Jimmy Garrison (Bass) Al Harewood (Drums) Tommy Flanagan (Piano) Benny Golson (Tenor Saxophone)
 
Blues-ette
Curtis Fuller
Savoy Jazz
1992-10-06
カーティス フラー

 さて今回紹介させて頂くのはカーティス・フラーの『ブルース・エット』。
 ジャズの紹介本等でもレヴューは書きつくされている感は大いにあり、ここでもあまり目新しいことを書ける訳でもないのだが、聴く側の感受性によって甘々な表情を見せてくれる、パリッとした粋なフレージングを改めて感じて頂けたらと思った次第である。
 少し解説を加えると、このアルバムは1959年に<サヴォイ>から出ている。カーティス・フラーをリーダーにベニー・ゴルソン、トミー・フラナガンらと供に演奏されたものの録音である。
 全編を通じて洗練されたバップイディオムで調理されており、聴きどころは何といっても表題曲の「ブルース・エット」に代表されるように、深く、味わいのあるテンポで展開される切れ味のあるゴルソンのテナーと温かみのあるフラーのトロンボーン絶妙なハーモニーだろう。
 ジミー・ギャリソンのベースラインに、巧みな奏者の感覚でくさびのように打ち込まれてくるトミー・フラナガンの伴奏もまた精妙な美しさを演出している。
 恐らくは、曲のアレンジも勤めたであろうゴルソンのアレンジャーとしての手腕もこのアルバムの聴きどころの一つだ。
 A面一曲目に収録されている「Five spot after dark」は言わずと知れる知名度を持つ曲で、CMのテーマや、村上春樹さんの小説なんかにも登場した。12小節のマイナーブルースの形式にのせて繰り広げられるホーンセクションのユニゾンは優しい鈍器のごとき質量で僕らの耳をうつ。
 少々大げさな言い方かもしれないが、このアルバムにはフラーがこれまでのジャズ遍歴の中で心ゆくまで吸い込んできた、愛するものへの地合い、音に対する理解、あるいは理解されないための孤独等が、彼のトロンボーンを通して吹きこぼれてくるような印象がある。
 僕らはそれをあますところなく、彼のパートのソロから感じることは出来ないだろうか?




posted by S.E.



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