“Wings Over Water” (1981) Stephan Micus
Stephan Micus (Guitars, Flowerpots, Ney, Zither, Suling)
ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusの初期作品。
ECMではなくJapo Recordsでの制作。
名作“East of the Night” (1985)、ECMでの“Ocean” (1986) の少し前。
1990年以降、北欧系、中近東系、地中海系、アフリカ系、インド系などなど、民族音楽色、あるいは古楽色が強いECM作品が増えているように思いますが、1970年代からのCollin Walcottと1980年代からのこの人、インドのL. Shankar, Zakir Hussainあたりが元だったのかなあ、と思ったりもします。
なぜか南米系はEgberto Gismonti, Nana Vasconcelosで止まっていますね・・・
さておき本作、この期はギター中心、管楽器は尺八ではなく少し音の線が細いNey、ヴォイスが響く場面も少々のみ。
西欧的フォークな色合いも残した繊細な音の流れ。
ギターあるいはフラワーポットなどで刻まれるリフを繰り返す、プリミティブな、あるいはミニマルミュージックにも通じる背景と、少し変わった音階でメロディを奏で、インプロビゼーションを展開する管と弦。
オーバーダビングによるアンサンブルも洗練されています。
例のごとくヨーロッパなのか、中近東なのか、アジアなのか判然としないそれらフュージョンするような音、時代感もわからない不思議な質感。
強いて言えば本作、どこの色が強いのでしょう?
ギターの哀感の強いメロディが印象に残るのでスペイン、あるいは管の音、音階からは中近東~インドあたり、優しいフラワーポットの響きはアジア的でしょうかねえ?・・・やはり区別は無用。
ごちゃまぜなようで、実験的なようで凄い完成度。
遠いところから聞こえてくるような懐かしい感じの心地よいサウンド。
終始静かな音を含めてECMなワールドミュージックの端緒、あるいは前夜な一作。
posted by H.A.