吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

percussion

【Disc Review】“Codona” (1978) Collin Walcott, Don Cherry, Naná Vasconcelos

“Codona” (1978) Collin Walcott, Don Cherry, Naná Vasconcelos

Collin Walcott (sitar, tabla, hammered dulcimer, kalimba, voice) Don Cherry (trumpet, wood flute, doussn' gouni, voice) Naná Vasconcelos (percussion, cuica, berimbau, voice)

Codona
Codona
Ecm Records
2000-09-12


 エスニックフュージョングループCodonaの第一作、ECMレコードから。
 誰がどう考えたらこの組み合わせが出来たのかよくわかりませんが、スタイリスト三人組。
 インドなシタール、タブラ、ヨーロッパ~中近東な古楽器、キリッとしたジャズ~フリージャズあるいは無国籍な管楽器、ブラジル山奥なパーカッションとヴォイス、さらに日本的な旋律もちらほら。
 全部合わせて世界一周、無国籍なのは言わずもがな、とても幻想的な音。
 冒頭は日本的な音階、雅な感じの弦と笛の絡み合い。
 トランペットが聞こえると現代西洋の空気が少し流れますが、その時間は決して長くなく、山奥的幻想な打楽器、笛の音とともに、どこにいるのかわからない空間に。
 漂うような音の流れを作るシタールやタブラ、ビリンボウの妖しい音もさることながら、ところどころに散りばめられた、琴にも似た古楽器Dulcimerの高貴な響きと、キリッとしたトランペットの絡み合いがカッコいい。
 "Colemanwonder”なんてタイトルのOrnette ColemanStevie Wonderのメドレーがあったりするのもご愛敬。
  どこかすっとぼけた感じも含めてぶっ飛んでいます。
 それでいてとても心地よいのは、沈痛さや深刻さとは無縁の穏やかで懐かしい音の流れ故なのでしょう。
 ナチュラルなトリップミュージックの極めつけ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lost River” (2018) Michele Rabbia

“Lost River” (2018) Michele Rabbia

Michele Rabbia (drums, electronics)
Eivind Aarset (guitar, electronics) Gianluca Petrella (trombone, sounds)

Lost River
Michele Rabbia
Ecm
2019-05-31


 イタリア人パーカッショニストMichele RabbiaのECM作品。
 おそらくフリー系、ECMでは“Re: Pasolini” (2005) Stefano Battagliaなどへ参加していた人。
 Enrico Ravaとの共演が多いイタリアントロンボーン奏者と、ノルウェーのアンビエント~先端系ギターの変則トリオ。
 静かでスタイリッシュなアンビエント系ミュージック。
 どこまでが電子音で、どこからが人が出しているのか曖昧なビート。
 抑制された電子音が奏でる哀し気なコードの移り変わり、あるいはシンプルなリフの繰り返しの中を、静かに舞うシンバル、乾いた革の擦過音、鐘の音、ギターのシングルトーン、コード、遠くから響いてくるような、あるいはときおり前面に出てジャズを奏でるトロンボーン。
 電子音と生楽器、各々の楽器の音の境界が曖昧になり、浮遊、疾走、混沌、静謐、覚醒・・・グラデーションを描きながら次々と変わっていく景色。
 予想できない展開ながら、難解、意味不明ではなく、メロディアスでセンチメンタルな音の動き。
 終始流れているのは、どこか遠くを眺めるような柔らかな哀感。
 ビートと旋律、夢と現実、過去と未来、人間と機械・・・、それらの境界が曖昧になった、それでいて調整が取れた摩訶不思議な時間。
 とてもクールでセンチメンタル。




posted by H.A.


【Disc Review】“Transparent Water” (2017) Omar Sosa, Seckou Keita

“Transparent Water” (2017) Omar Sosa, Seckou Keita

Omar Sosa (Grand piano, Fender Rhodes, sampler, microKorg, vocal) Seckou Keita (Kora, talking drum, djembe, sabar, vocal)
Wu Tong (Sheng, bawu) Mieko Miyazaki (Koto) Gustavo Ovalles (Percussion) E’Joung-Ju (Geojungo) Mosin Khan Kawa (Nagadi) Dominique Huchet (Bird EFX) 

Transparent Water
Omar / Keita, Seckou Sosa
Ota Records
2017-02-24


 キューバのピアニストOmar Sosa、アフリカのコラその他を奏でるSeckou Keitaの双頭リーダー作。
 コラとピアノの共演といえば隠れた名作“Village Life” (1984) Herbie Hancock, Foday Musa Susoを想い起こしますが、アフリカンエスニックながらあの時代らしいスタイリッシュさも強いそちらに対して、本作は全く違うテイストのもっと静かで優しい音。
 コラやアフリカンパーカッションだけでなく、笙、琴、あるいは中近東系などを含めたワールドワイドな楽器が織り成す音。
 静かに鳴るピアノ、絡み合うさまざな楽器の響きと囁きヴォイス。
 中心となるオリジナル曲は近年のOmar Sosa色合い、内省的で少し哀しげな淡いメロディ。
 躍動感の強い演奏も少なくないのですが、あくまで静かで漂うような、そして優しい音。
 エスニックな打楽器の丸い音で奏でられるリフの繰り返しが穏やかな陶酔を誘い、遠い所から聞こえてくるような楽器と囁き声がどこか遠い所に誘うトリップミュージック。
 淡い色合いの空気の中、少しシャープなピアノの音が覚醒を促しつつ、気がつけばまた夢うつつの世界に・・・
 そんな素敵な時間。
 名作。




posted by H.A.


【Disc Review】"Livre" (2018) Antonio Loureiro

"Livre" (2018) Antonio Loureiro

Antonio Loureiro (voice, piano, synthesizer, drums, percussion, electric bass, electronics)
Pedro Martins (guitar, chorus) Kurt Rosenwinkel (guitar) André Mehmari (synthesizer) Frederico Heliodoro (electric bass) Ricardo Herz (violins) Genevieve Artadi (voice) Pedro Martins, Tó Brandileone, Rafael Altério, Pedro Altério (chorus)

Livre リーヴリ
Antonio Loureiro
NRT
2018-10-20


 ブラジルのマルチ楽器奏者、あるいはシンガーソングライターAntonio LoureiroのMPB。
 リーダー作としては"MehmariLoureiro duo" (2016)以来でしょうか。
 Vibraphoneがメイン楽器と思っていましたが、本作ではそれは使わずピアノとパーカッション、そして自身のボーカルを中心とした構成。
 ポップながら不思議系のメロディと、複雑で強いビート、厚めな音を中心としたハードなジャズフュージョン系、あるいはプログレッシブロック系、ボーカル入り、ハイテンションなMPB。
 各曲5分前後でコンパクトに収まっていますが、いずれの楽曲もとてもドラマチック。
 ハードに始まり、あれよあれよと変化しながらさらに音が強くなり、ドカーンと盛り上がっていく系。
 ちょっと線が細めのボーカルでクールダウン・・・ってな感じでもなく、全編通じてハードです。
 共演作はさておき、ここまでのリーダー諸作もそんな感じでしたね。
 Milton Nascimentoが現代にデビューしたならこんな感じなのかもしれません。
 “Caipi” (2017)で共演したKurt Rosenwinkel、盟友André Mehmariは一曲ずつの参加。
 前者はいかにもなファットなエレキギターでウネウネとどこまでも続いていきそうな演奏、後者はシンセサイザーでハードな音の彼。
 ブラジル系でキリッとした強めの音を聞きたい時はこの人のアルバムがいいのかな?
 そんなハードな、現代のブラジリアンジャズフュージョンな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Wings Over Water” (1981) Stephan Micus

“Wings Over Water” (1981) Stephan Micus


Stephan Micus (Guitars, Flowerpots, Ney, Zither, Suling)

Wings Over Water
Stephan Micus
Ecm Import
2000-07-18


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micusの初期作品。
 ECMではなくJapo Recordsでの制作。
 名作“East of the Night” (1985)、ECMでの“Ocean” (1986) の少し前。
 1990年以降、北欧系、中近東系、地中海系、アフリカ系、インド系などなど、民族音楽色、あるいは古楽色が強いECM作品が増えているように思いますが、1970年代からのCollin Walcottと1980年代からのこの人、インドのL. Shankar, Zakir Hussainあたりが元だったのかなあ、と思ったりもします。
 なぜか南米系はEgberto Gismonti, Nana Vasconcelosで止まっていますね・・・
 さておき本作、この期はギター中心、管楽器は尺八ではなく少し音の線が細いNey、ヴォイスが響く場面も少々のみ。
 西欧的フォークな色合いも残した繊細な音の流れ。
 ギターあるいはフラワーポットなどで刻まれるリフを繰り返す、プリミティブな、あるいはミニマルミュージックにも通じる背景と、少し変わった音階でメロディを奏で、インプロビゼーションを展開する管と弦。
 オーバーダビングによるアンサンブルも洗練されています。
 例のごとくヨーロッパなのか、中近東なのか、アジアなのか判然としないそれらフュージョンするような音、時代感もわからない不思議な質感。
 強いて言えば本作、どこの色が強いのでしょう?
 ギターの哀感の強いメロディが印象に残るのでスペイン、あるいは管の音、音階からは中近東~インドあたり、優しいフラワーポットの響きはアジア的でしょうかねえ?・・・やはり区別は無用。
 ごちゃまぜなようで、実験的なようで凄い完成度。
 遠いところから聞こえてくるような懐かしい感じの心地よいサウンド。
 終始静かな音を含めてECMなワールドミュージックの端緒、あるいは前夜な一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Tuki” (2003-2005) Miki N'Doye

“Tuki” (2003-2005) Miki N'Doye


Miki N'Doye (Kalimba, Talking Drum, Percussion, Bongos, Vocals)
Jon Balke (Keyboards, Piano) Helge-Andreas Norbakken (Percussion) Per Jørgensen (Trumpet, Vocals) Aulay Sosseh, Lie Jallow (Vocals)

 西アフリカ・ガンビア出身のパーカッション奏者Miki N'Doyeのリーダー作、ECMでの制作。
 ノルウェーに在住?、JonBalkeと縁が深いようで、"Nonsentration” (1990) Oslo 13、“Statements” (2003, 2004) Batagrafなどに参加しています。
 後者のセッションに合わせて録音された作品でしょうか。
 同じフレーズをひたすら繰り返すカリンバの静かな響き。
 祈りのような、眠りを誘うような音の流れ。
 そんな音を背景にして、漂うようなウイスパーヴォイス、そして要所で遠くから聞こえてくるようなシンセサイザー、トランペットの現代の音が、断片的に、時に具体にコラージュされていきます。
 とても平和な過去からの音のように聞こえるし、未来からの音のようにも響きます。
 いずれにしても人間的な音。
 それら含めてとても静かです。
 時代、場所、時間、空間が徐々に曖昧になっていくような、心地よい時間・・・
 さすがECMのアフリカンミュージック。
 と思っていたらプロデューサーはJon Balke, Miki N'Doyeで、Eicherさんは絡んでいないようです・・・
 とにもかくにもこれまた非日常、異空間へのトリップミュージック。


※別のバンドでの演奏から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Crescent moon Waning” (2015,2016) Kip Hanrahan

“Crescent moon Waning” (2015,2016) Kip Hanrahan

Kip Hanrahan (direction, percussion)
Michael Chambers (guitar, vocal) Brandon Ross (vocal, guitar, banjo) Steve Swallow, Yunior Terry, Andy Gonzalez, Giacomo Merega (bass) Fernando Aunders (bass, vocal, cello, guitar)
Robby Ameen (drums, percussion) Luisito Quintero (percussion) Milton Cardona, Anthony Carrillo, Richie Flores, Ignacio Berroa, Giovanni Hidalgo, Steve Berrios (conga)
Jack Bruce (vocal, bass) Lucia Ameen, Roberto Poveda, Lucy Penabaz, Grayson Hugh, Senti Toy, Xiomara Laugart (vocal)
Charles Neville, J.D. Allen, Craig Handy, Chico Freeman (tenor sax) Mario Rivera, Josh Sinton (baritone sax) Alfredo Triff (violin) David Rodriguez (sound effects)

クレッセント・ムーン
キップ・ハンラハン
MUZAK/american clavé
2018-03-16

 Kip Hanrahan、“At Home in Anger” (2007-2011)以来、久々のアルバム。
 鳴り続けるコンガに囁き声、やるせないメロディにジャズなサックス。
 あのメンバーでの、あのKip Hanrahanのサウンド。
 かつての諸作のいろんな要素が混ざり合う質感は、近作“Beautiful Scars” (2004-2007)、“At Home in Anger” (2007-2011)と同様。
 ダルなムード、コンガと囁くボイスで始まり、妖し気なサックス、ギターとの絡み合い。
 あの都会の裏側の地下室の危ない空気感。
 ピアノレスを中心のクールな質感は初期の“Coup De Tête” (1979-1981)などのソリッドでロックな感じでもあるし、合間に挿入される語り、あるいは狂気を秘めたバイオリンは”A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)を想い起こし、コンガが鳴れば強烈なキューバングルーヴ、キューバンポップス、さらには唐突に現れる静かだけども突き刺さってくるようなアカペラボイス・・・
 多くの一分前後のインタールード的な演奏を挟みつつ進む全19曲+ライブ音源一曲。
 それらの短い演奏も含めて、キッチリ計算されているのであろうKip Hanrahanワールドがてんこ盛り。
 ピークは中ほど、強烈なグルーヴで疾走する11曲目”She and He Describe the Exact Same Intimate Moment”でしょうか。
 “Tenderness” (1988-1990)あたりのブチ切れたハイテンションさを想い起こす演奏ですが、埃っぽさと脂分が落ちてスッキリした感じ。
 全体的にもそんな感じ。
 最後は静かなロック調のバラード、ギターと囁き声とサックスの絡み合いで締め、さらに追加でライブ音源、“Desire Develops an Edge” (1983)収録の”Working Class Boy”、故Jack Bruceのボイスと強烈なコンガ、ブチ切れたサックスの饗宴で幕。
 猥雑で妖しくて危なくてダーク、そしてオシャレなKip Hanrahanはまだまだ健在です。

※ライブ映像から。



Coup De Tête” (1979-1981)
Vertical's Currency” (1984)

Tenderness” (1988-1990)
Exotica” (1993)

This Night Becomes a Rumba” (1998) Deep Rumba
A Calm in the Fire of Dances” (2000) Deep Rumba
“Bad Mouth” (2006) Conjure
Beautiful Scars” (2004-2007)
At Home in Anger” (2007-2011)
Crescent moon Waning” (2015,2016) 

 posted by H.A.

【Disc Review】“At Home in Anger” (2007-2011) Kip Hanrahan

“At Home in Anger” (2007-2011) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (direction, percussion, voice) 
DD Jackson, Lysandro Arenas, Mike Cain (piano) John Beasley (piano, keyboards)
Brandon Ross, Roberto Poveda (voice, guitar)
Steve Swallow, Andy Gonzalez, Anthony Cox (bass) Fernando Saunders (voice, bass)
Robby Ameen, Horacio “El Negro” Hernandez (drums, percussion) Dafnis Prieto (drums, voice)
Milton Cardona (congas, percussion) Pedrito Martinez (congas)
Don Byron (clarinet) Craig Handy (sax) Yosvany Terry (percussion, sax)
Bryan Carrott (vibraphone) Alfredo Triff (violin) 
Xiomara Laugart, Lucy Penabaz (voice)

AT HOME IN ANGER
KIP HANRAHAN
ewe
2012-01-18
キップ・ハンラハン

 アフロキューバンジャズ~ポップスのKip Hanrahan、少し前の録音~発表ですが、2017年6月時点での最新作。
 前作“Beautiful Scars” (2004-2007)に続く作品、メンバーも色合いも類似しています。
 悲し気でやるせなさ気ながらポップでキャッチーなメロディに、少し丸く、穏やかになった音。
 かつての作品と比べると、マニアックさ、緊張感が少々薄らぎ、馴染みやすいアルバムなのかもしれません。
 が、もちろんベースはいつもの気怠く囁くような歌声と、その背後の狂気を秘めた演奏。
 鳴り続けるパーカッションと激情をほとばしらせるバイオリン、サックス・・・
 あの独特の激しいドラムと強烈なグルーヴが戻ってきた演奏も何曲かあります。
 ときおり顔を出すDon Pullenを想わせる激しいピアノは、弟子のDD Jacksonでしょうか?
 明るくのどかな時間もあるのですが、長くは続きません。
 穏やかなキューバンポップスな曲も時空がねじれたような不思議なアレンジだったり、久しぶりのサイケなギターが鳴っていたり、Bill Frisell風のギターが漂うルバートでのスローバラードがあったり、フレットレスベースがスペーシーな空気感を作る中でのフォークックロックだったり、不可解な肉声、あるいはクラリネットのアカペラがあったり・・・
 その他諸々、一筋縄ではいかない多彩で凝ったアレンジの演奏揃い。
 一曲一曲の楽曲のテイスト、編成、アレンジは全く異なります。
 一見バラバラなようで、不思議な統一感、あるいは全体でのストーリー性を感じるのは、Kip Hanrahanが作るメロディラインゆえ、キャスティングを含めた構成力ゆえでしょうか。
 キューバンポップス、アフロキューバンネイティブ、ひねりの効いたポップスが混ざり合う感じは、やはり初期作品“Coup de tête” (1979-1981)、“Desire Develops an Edge” (1983)の頃を想起し、さらに後のハードなアフロキューバンジャズの色合いが自然に混ざり合ったイメージ。
 それは“Beautiful Scars” (2004-2007)と同様。
 その意味でもこの二作、初期からのさまざまな音、キャリアを通じた集大成のようでもあり、破天荒だったさまざまな音が時間を掛けて熟成した結果のようにも感じます。
 全体を通じた不思議な高揚感と不思議なやるせなさはここまでの作品通り。
 やはり妖しく、クールです。
 このアルバムからもかなり時間が経っていますが、そろそろ新作が出ないのかなあ・・・





※名作揃いですが、初期はポップス~ロック色が強く、“Tenderness” (1988-1990)あたりから、Don Pullenのピアノの炸裂含めて、ハードなジャズ色。
 キューバンネイティブなDeep Rumbaを経て、最近の二作は、どちらもキャリアのさまざまな要素を詰め込んだ集大成的な出来具合。
 諸々の変化はあるものの、30年間、流行の変化に迎合するわけでも無く、どの作品も今聞いても古くないのは傑出したセンスゆえなのでしょう。
 私的な好みは、Don Pullen、DD Jacksonのぶっ飛んだジャズピアノが炸裂する“Tenderness”、“Exotica”、“A Thousand Nights And A Night: Red Nights”ですねえ。
 同じ時期の作品になってしまうのは偶然ではなく、必然なのでしょうね。

Coup De Tête” (1979-1981)
Vertical's Currency” (1984)

Tenderness” (1988-1990)
Exotica” (1993)

This Night Becomes a Rumba” (1998) Deep Rumba
A Calm in the Fire of Dances” (2000) Deep Rumba
“Bad Mouth” (2006) Conjure
Beautiful Scars” (2004-2007)
At Home in Anger” (2007-2011)


 posted by H.A.

【Disc Review】“Beautiful Scars” (2004-2007) Kip Hanrahan

“Beautiful Scars” (2004-2007) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Percussion, Vocals)
DD Jackson, John Beasley, Lysandro Arenas, Mike Cain (Piano) Leo Nocentelli (Guitar)
Anthony Cox, Steve Swallow (Bass) Fernando Saunders (Bass, Vocals)
Robby Ameen (Drums, Percussion) Dafnis Prieto, Horacio El Negro Hernandez (Drums, Percussion, Vocals)
Milton Cardona (Percussion) Richie Flores (Congas) Pedrito Martinez (Congas, Percussion, Vocals)
Yosvanni Terry Cabrera (Alto Sax, Percussion, Vocals) Mario Rivera (Baritone, Tenor Sax) Ron Blake (Tenor Sax) Bryan Carrott (Vibraphone) Alfredo Triff, Billy Bang (Violin)
Alvin Youngblood Hart, Brandon Ross, Fernando Saunders, Kip Hanrahan, Leijia Hanrahan, Lindsay Marcus, Xiomara Laugart (Vocals)

BEAUTIFUL SCARS
KIP HANRAHAN
ewe
2007-06-27
キップ・ハンラハン

 ニューヨークアンダーグランド、あるろキューバンジャズ~ポップスのKip Hanrahan、久々のリーダー作。
 Conjure プロジェクトでの“Bad Mouth” (2006) がありますが、リーダー作としては“Original Music From The Soundtrack Of Pinero” (2002) 以来になるのでしょうか?
 それがサントラの企画ものだとすれば、Deep Rumba プロジェクトの“A Calm in the Fire of Dances” (2000)あるいは、千夜一夜プロジェクト“A Thousand Nights And A Night - (Shadow Nights 2)” (1999)。
 それらも、あるいはライブ音源をあわせて編集した “All Roads Are Made of the Flesh” (1985–94) と同じく企画ものだとすれば、純粋な新録音のリーダー作としては、“Exotica” (1993) Kip Hanrahanまでさかのぼることになるのだろうと思います。
 いずれにしても久々の純粋リーダー作ですが、内容はかつての色合いと大きくは変わりません。
 Jack Bruce、Don Pullen、David Murrayはいませんが、他のメンバーはどこかで見かけた名前。
 時代が流れても、流行りが変わっても、彼の頭の中で鳴っている音は同じなのでしょう。
 20年以上鳴り続けている音のなのでしょうが、極めて現代的、全く古くないのが天才のなせる技なのでしょう。
 キューバンポップス風、あのやるせないメロディからスタート。
 パーカッションの響きと囁くようなボイス、コーラスとバイオリン。
 どこかは釈然としない、うらぶれた街の片隅の音。
 続くフォークロック調の穏やかで前向きな曲の背後でうごめく狂気を秘めたバイオリン。
 さらにはヴィブラフォンのクールな響きとサックスが交錯する静かなグルーヴ、フレットレスエレキベースの柔らかい音が響く幻想的な時間・・・
 などなど、カッコいいメロディ、演奏が揃っています。
 演奏が素晴らしいことは言わずもがなですが、本作はキャッチーなメロディの楽曲と歌を中心に構成したイメージでしょうか。
 その意味では初期作品“Coup de tête” (1979-1981)、“Desire Develops an Edge” (1983)のムードが戻ってきた感じかもしれませんし、後のハードなアフロキューバンジャズといい感じで混ざり合った感じでもあります。
 “Exotica” (1993)、“A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)などと比べると丸く穏やかになった音。
 力と勢いで押し切ってしまうような激しい音もなくなりました。
 が、妖しさ、危なさはそのまま、正気と狂気、現実と幻想が錯綜するような空気は健在です。
 かつてのDon Pullenに代表されるように激烈に突っ走る部分が無い分、かえって凄み、妖しさが増したようにも感じます。
 後半に収められた“Accounting in the Morning”にここまでのキャリアの音がギュッと詰め込まれたような演奏。
 フワフワと漂うような時間の中で囁かれるように流れる悲し気なメロディ。
 背後で鳴り続けるパーカッション。
 別の次元から聞こえてくるような、浮世離れしたようないろいろな音。
 うらぶれた街角の空気。
 クールでハードボイルドなKip Hanrahanワールドは健在です。
 それにしても”美しい傷跡”なんて、ものすごく素敵なタイトルだなあ・・・




 posted by H.A.


【Disc Review】“Original Music From The Soundtrack Of Pinero” (2002) Kip Hanrahan

“Original Music From The Soundtrack Of Pinero” (2002) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Producer, Percussion)
Lysandro Arias, Mike Cain (Piano) Peter Scherer, Edsel Gomez (Piano, Electric Piano)
Leo Nocentelli (Guitar)
Fernando Saunders (Electric Bass, Cello) Andy Gonzalez (Bass)
Robby Ameen (Drums, Congas, Percussion) El Negro Horacio Hernandez (Drums, Percussion)
Carlos Mestre, Eric Valez, Milton Cardona, Richie Flores (Congas) Paoli Mejias (Congas, Percussion) Edgardo Miranda, Yomo Toro (Cuatro) Vincente George (Guiro) Amadito Valdez, Nicky Marrero (Timbales)
Mauricio Smith (Flute) Mario Rivera (Baritone Sax) Papo Vasquez (Trombone) Chocolate Armenteros (Trumpet) Jerry Gonzalez (Trumpet, Percussion) Alfredo Triff (Violin)
Benjamin Bratt, Frankie Rodriguez (Voice) Felix Sanabria, Orlando Rios (Voice, Bata) Abraham Rodriguez (Voice, Bata, Claves, Congas)

original music for PINERO
キップ・ハンラハン

2002-09-21


 Kip Hanrahan、プエルトリコ~ニューヨークの詩人Miguel Pineroの伝記?映画”Pinero”のサウンドトラックの音楽部分、なのだと思います。
 冒頭からフリージャズなピアノの激しい演奏~電子音と語りが交錯しながらスタート。
 サントラゆえに短い演奏を含めて全27曲、二分に満たない演奏、インタールード的な楽曲、断片的な演奏もありますが、それらを含めてまとまっています。
 全編通じてアフロキューバンな音、あのKip Hanrahanの音です。
 導入部こそ少々重めですが、中盤以降、むしろポップでわかりやすい楽曲、キューバンポップスな感じの演奏も多く、各曲がコンパクトになっている分、聞きやすくなっているかもしれません。
 メンバーもいつものバンドのメンツ。
 ボーカルがフィーチャーされる曲は少な目ですが、いつもながらに鳴り響くパーカション。
 サックスではなく、トランペットがリードする曲が多いのがここまでと違うといえばそうなのかも。
 いかにもキューバ音楽な少々時代を感じる朗々とした音と、Miles Davis的なクールなミュートが交錯するトランペット。
 ちょっと薄味なDon Pullenなピアノの場面があったり、エレピが“A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)の導入部”Shahrazade (Opening)”を奏でる場面が何回かあったり、その他いろんな隠し味も散りばめられているのでしょう。
 最後もストリングスを絡めつつの”Shahrazade (Opening)”と語りが交錯する中で、穏やかに幻想的に幕。
 映画の内容を把握していないため、全体のメッセージが重いのかどうかもわからないのですが、音自体は意外にも気軽に聞けるKip Hanrahan だったりするかも・・・




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