吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

drum

【Disc Review】“Elastic Wave” (2021) Gard Nilssen Acoustic Unity

“Elastic Wave” (2021) Gard Nilssen Acoustic Unity

Gard Nilssen (Drums)
Petter Eldh (Double Bass) André Roligheten (Tenor, Soprano, Bass Saxophones, Clarinet)

Elastic Wave
Nilssen, Gard / Acoustic Unity
Ecm Records
2022-09-02


 ノルウェーのドラマーGard Nilssenのサックストリオ、ECMレコードから。
 リーダーは“Three Crowns” (2019) Maciej Obara Quartet、“Skala” (2010) Mathias Eickなど、ノルウェーの人の作品でよく見かける人。
 本作は同じくノルウェーのサックス奏者をフロントに立てたバンド、ピアノレストリオ。
 摩訶不思議系ジャズ。
 Ornette Colemanの影響が強いようで、また違った色合い。
 不思議系のメロディのテーマを決めたら後はビートをキープしつつ自由に、ってなところは似ているのですが、オーソドックスにベースとドラムがリズムをキープするOrnette Colemanバンドに対して、このバンドのリズムとコードのキープ役はサックス、その後ろで暴れまくるドラム、行ったり来たりのベース、そんなバランスの場面が多い感じ。
 リーダーのドラムは、決して激しい音でも大きな音でもないのですが、とにかく自由。
 あちこちに飛び回る打撃音。
 ベースはときおりCharlie Hadenな感じも見せる動きまくり系。
 サックスは近年に多い鋭く繊細な感じの音色。
 あの時代のフリージャズを想い起こす感じだったり、ピアノレスでのSonny Rollinsな感じもしたり、もどかし気な緊張感はJohn Coltraneな感じでもあったりしますが、こってりした感じはなく、スッキリ系。
 全部合わせて紛れもない不思議系ではありますが、沈痛さ陰鬱さはなく、激烈な場面も混沌もなし、うるさい場面もありません。
 ぶっ飛んだ感じながらサラリとした感じがいかにも今風。
 さらにテーマやインプロビゼーションの中に北欧系の懐かし気なメロディが見え隠れして・・・
 かつてのジャズの香り、エスニックな香りを振り撒きつつの新しい質感。
 小人数、ピアノレスならではのほどほどの余白。
 その中に響く各楽器の残響がとてもクール。
 そんなハードボイルドな今風ジャズ、不思議系。




posted by H.A.


【Disc Review】“One Time Out” (1987) Paul Motian

“One Time Out” (1987) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Joe Lovano (tenor saxophone)


One Time Out
Soul Note
1989-12-31


 Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルからのトリオ作品。
 ここに来て幻想的名トリオ編成に。
 この期の連作、作品が進むごとに落ち着いてきている感じがするし、人数が減って静かになるかと思いきや、逆。
 確かに静かな演奏もあるのですが、ベースレスになり普通にジャズな感じが無くなりました。
 しかも、凶悪、激烈な音が並ぶ激しい演奏が中心。
 いつもの陰鬱沈痛なメロディと激しいビート。
 ギターとドラムはやりたい放題。
 グシャグシャ・ギュイーンにバタバタ・ドシャーン。
 端正でハードボイルドなイメージのJoe Lovanoもブチ切れる場面多々。
 このバンド、実はベースがかろうじてジャズサイドへ引き留めていたのかあ・・・と感心しきり。
 そんな中でスタンダードもいくつか演奏されていて、それは後のBroadwayシリーズに繋がる穏やかな音。
 艶やかでスペーシーなギターに丁寧にメロディを置いていくサックス。
 これは甘美。
 激烈と甘美な幻想が交錯する音。
 ぶっ飛んでいます。
 この後、スタンダード中心のBroadwayシリーズ、さらに後のECMレコードでの静かな音の名作群、など含めて落ち着いていくトリオですが、この期の再スタートは激烈さが圧倒する過激な内容。
 畏れ入りました。



Conception Vessel” (1973)
Tribute” (1974)
Dance” (1977)
Le Voyage” (1979)
Psalm” (1982)
The Story of Maryam” (1984)
Jack of Clubs” (1985)
It Should've Happened a Long Time Ago” (1985)
Misterioso” (1986)
One Time Out” (1987)
”Monk in Motian” (1988)
On Broadway Volume 1” (1989)
On Broadway Volume 2” (1989)
Bill Evans” (1990)
Motian in Tokyo” (1991)
On Broadway Volume 3” (1991)
Paul Motian and the Electric Bebop Band” (1992)
”Trioism” (1993)
”Reincarnation of a Love Bird” (1994)
At the Village Vanguard” (1995)
”Sound of Love” (1995)
”Flight of the Blue Jay” (1998)
”Trio 2000 + One” (1997)
”Play Monk and Powell” (1998)
”Europe” (2000)
”Holiday for Strings” (2001)
I Have the Room Above Her” (2004)
Garden of Eden” (2004)
”On Broadway Vol. 4” (2005)
Time and Time Again” (2006)
”Live at the Village Vanguard 1-3” (2006)
”On Broadway Volume 5” (2009)
Lost in a Dream” (2010)
The Windmills of Your Mind” (2011)


posted by H.A.



【Disc Review】"Misterioso” (1986) Paul Motian

"Misterioso” (1986) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)


Misterioso
Soul Note
1987-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作、第三弾。
 タイトル曲含めてMonkさんの曲が何曲か。
 その孤高でハードボイルドな感じがこのバンドに似合っているといえばその通り。
 この期の連作、作品が進むにつれ落ち着いてきている感じ、本作は普通なジャズ度が強いかもしあません。
 普通に4ビート(そうでもないか・・・)、ハードボイルドな感じの二人のサックスがとてもカッコいい。
 が、それを引っ搔き回していくジャズからはみ出した未来的、ときにグシャラグシャラに凶悪なギターの音。
 そんな音を煽っているんだか、どこ吹く風のマイペースなのか、摩訶不思議な親分の激しい打撃音。
 つられてサックス陣も狂気渦巻く世界へ行ったり、行かなかったり・・・
 Bill Frisellが静かにソロ奏でるあの懐かしい“Byablue”なんてマニアックな趣向もあったりしますが、 その後はいきなり激烈凶悪系なギターが鳴り響いたりして・・・
 そして締めはゴスペル(スピリチュアル?)チックなサックスの朗々とした独奏。
 変幻自在、予測不可能。
 普通にジャズな演奏がある分、かえって振れ幅が大きくなったように感じたり、落ち着いたように感じたり。
 いずれにしても、この期の連作で共通しているのは、甘さなし、苦み走った男っぽい感じ、ちょっとへんてこりん。
 ジャケットのポートレートな感じ。
 このくらいのバランスの方が自然に聞けていいなあ。今日は。




posted by H.A.



【Disc Review】“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Jack Of Clubs
Soul Note
1985-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作。
 近い時期にECMレコードでの“It Should've Happened a Long Time Ago” (1984)でBill Frisell, Joe Lovanoとのトリオ編成もありますが、こちらは前作 “The Story of Maryam” (1983)と同じくサックス二管、ベース入り。
 同編成は次作“Misterioso” (1986)まで続きます。
 これまた激しい系。
 端正なJoe Lovanoと狂気なJim Pepper。
 一人で両極端、どちらにでも振れていくBill Frisell。
 もちろん質感は前作と近く、沈痛で危機感煽り系のムードも同様。
 が、少しだけ穏やかになった感もあります。
 バラードっぽかったり、ミニマル的展開があったり、静かなギターのみの演奏があったり、サックス二本のみが絡み合う時間がたっぷりあってみたり。
 結果、不思議感も増大。
 天才的スタイリストのみなさま方がやることはわけわからず、予測不可能。
 それがカッコいい。
 それにしてもシンプルながらカッコいいジャケットのポートレート。
 まったく爽やかではなく、毒気たっぷりですが、やるせなくて男っぽい感じそのまま。
 まだここでは優しさよりも狂気強め。
 そのバランスがこの期のこのバンド。




posted by H.A.



【Disc Review】“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Story Of Maryam
Soul Note
1984-12-31


 かつてBill Evans, Keith Jarrettを支えたスタリストPaul Motian、1980年代アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルから。
 ECMレコードからの“Psalm” (1982)に続くアルバム、同じくBill Frisellのギターとベースのトリオにサックス二管入り。
 とても妖しく激しい音。
 よじれたメロディ、ぶっ飛んでいくビート。
 浮遊と激烈を行き来するギターに、狂気が入り混じる二本のサックス。
 近い時期のECMレーベルからの諸作では、静かなイメージもあるのですが、こちらはぶっ飛んだ激しい系。
 テンションの高い混沌はエレクトリックMilesの派生型のようにも思えますし、ブチ切れた演奏が始まればPharoah Sandersが加わった頃のJohn Coltraneバンドのような感じもします。
 あるいは十二分に激しい“Fort Yawuh” (1973) Keith Jarrettをさらにグチャラグチャラにした感じは、Keith Jarrettアメリカンカルテットの行きついた先、ってな感じもします。
 いずれにしても、エレキギターの音が新しいというか、妖しさ激しさを先導しているというか、不思議さ120%。
 そんな激しい演奏の合間に挟み込まれるジャズでバラードな演奏がとてもハードボイルド。
 が、その時間は短く、再び混沌の中へ・・・
 時代はフュージョン、AOR真っ盛りだったのだと思うのですが、どこ吹く風。
 後の甘美なBroadwayシリーズとは全く違うハードネス。
 毒気たっぷり、遅れてきた激烈フリージャズたっぷり、それに少々の優しさが交錯する男臭い音。
 硬派でカッコいいんじゃないでしょうか。

※これは爽やか系。



posted by H.A.



【Disc Review】“The News” (2019) Andrew Cyrille Quartet

“The News” (2019) Andrew Cyrille Quartet


Andrew Cyrille (Drums)
Bill Frisell (Guitar) David Virelles (Piano, Syntzesizer) Ben Street (Double Bass)

The News
Andrew Cyrille Quartet
ECM
2021-08-27


 フリージャズ系ドラムの大御所Andrew Cyrilleの近作。
 ピアノトリオ+ギターの編成、近年のECMオールスターズ。
 リーダー作は“Lebroba” (2017)以来でしょうか。
 ピアニストが交代していますが、冠されたバンド名、編成からすれば“The Declaration Of Musical Independence” (2014)の続編なのかもしれません。
 静かで幽玄な空気感は前作、前々作と同様ですが、色合いは異なります。
 気難しさがなくなり、明るい色合い、とてもメロディアス。
 優しく穏やかなコンテンポラリージャズ、ってな感じ。
 冒頭はECMレコードのお約束、ルバートでのスローバラード。
 定まりそうで定まらない、止まりそうで止まらないビート。
 温かくて懐かしい空気感と、強烈な浮遊感。
 とても美しいのであろうメロディの芯が見えそうで見えない展開。
 舞い散るシンバル、前面に出るBill Frisellの音とも相まって、往年のPaul Motianトリオを想い起こす名演奏。
 以降、ビートが定まった演奏が多いのですが、いずれも柔らかで穏やか。
 その中を漂うギターと疾走するピアノ。
 ときおりのカントリーテイスト、ブルーステイストはギタリスト、ラテンテイストはピアニストの色合いなのでしょう。
 普通にジャズな感じもたっぷりなのですが、普通にはならないのが、特別なギターとピアノに加えて、目立つことなくペースを作るベース、そして静かに自由に鳴るドラム。
 締めはたっぷりと美しいピアノとギターがフィーチャーされた、再びルバートな超スローバラード。
 全編通じて絶妙なバランスの心地よさ。
 思っていたものとは違いましたが、名作だと思います。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

Cymin Samawatie (voice) Ketan Bhatti (drums)
Trickster Orchestra:
Mahan Mirarab (guitar, oud) Niko Meinhold (piano) Mohamad Fityan (nay, kawala) Sabrina Ma, Taiko Saito (marimba, vibraphone) Joss Turnbull (perc, electronics) Ralf Schwarz (bass) Susanne Fröhlich (recorders, paetzold recorder) Tilmann Dehnhard (flutes) Mona Matbou Riahi (clarinet) Wu Wei (sheng) Milian Vogel (bass clarinet, electronics) Florian Juncker (trombone) Naoko Kikuchi (koto) Bassem Alkhouri (kanun) Biliana Voutchkova (violin) Martin Stegner (viola) Anil Eraslan (cello) Rabih Lahoud, Sveta Kundish (voice)

Trickster Orchestra
Cymin Samawatie, Ketan Bhatti
ECM
2021-04-23


 中近東エスニックコンテンポラリージャズコンボCyminologyのボーカリストCymin Samawatie、インドルーツのドラマーKetan Bhattiの双頭リーダー作。
 オーケストラと銘打った大編成ですが、管弦楽団でもビッグバンドでもない、世界各地の楽器が入り混じるノンジャンル・無国籍楽団。
 Cyminologyでは、歌は中近東エスニック、ボーカルが引くとジャズな感じでしたが、本作は全く質感が異なります。
 ボーカル入りは数曲のみ、ジャズ度なしのクラシックベースな感じ、でもクラシックっぽくはない、エスニック感たっぷり、でも西欧色が強いような、不思議なバランス。
 淡く、静かで、穏やかで・・・ってな近年のECMレコードな感じでもありません。
 静かに妖しく始まり、徐々に強くなる音、次々と景色は変わっていきます。
 西欧系、バイオリン系の楽器が目立つものの、それらとマリンバ、笙、箏などが交錯する展開。
 メロディは中近東でもインドでもアジアでも、もちろんヨーロッパでもない、それらの色合いが現れては消えていく不思議系。
 時代感の希薄さ、ダークで緊張感の高い空気感、妖しくときおり激しくなる展開は、レトロなサスペンス映画のサントラっぽい感じがしないでもない・・・そんな色合い。
 混沌、プログレッシブロックな強いビート、敬虔で清廉なコーラスなども交えながら、目まぐるしく形を変えていく音の流れ。
 変幻自在、予測不可能、摩訶不思議な迷宮サウンド。
 前衛的で非日常的ですが、計算し尽くされたアンサンブルなのでしょう。
 気難し気でも、実験色が強烈なわけでもない、これまた摩訶不思議なバランス。
 ジャズでもロックでもクラシックでも伝統音楽でもない、中近東なのかインドなのかアジアなのかアフリカなのか、やはりヨーロッパなのか、また、いつの時代かもわからない、それらが混然一体となったフュージョンミュージック。
 終始緊張感に覆われた深刻な表情の物語が最後に行きつく先は、ハッピーエンドの大団円か、それとも・・・
 さて、何が見えるか、どう感じるかは聞く人次第。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Bayou” (2018) Thomas Strønen

“Bayou” (2018) Thomas Strønen

Thomas Strønen (Drums, Percussion)
Ayumi Tanaka (Piano) Marthe Lea (Clarinet, Vocals, Percussion)

Bayou
Thomas Strønen
ECM
2021-04-09


 ノルウェーのドラマーThomas Strønen、ピアノ、クラリネットとの変則トリオ。
 ピアノは日本人女性、クラリネットも女性。
 静かで自由な時間、迷宮系。
 美しいピアノと妖しいクラリネット、ときおり聞こえる女声の歌。
 それらに合わせるように鳴る静かな打音、擦過音。
 フリーなインプロビゼーションが中心でしょうか。
 ここまでの諸作では何曲かはあったビートの効いたジャズな演奏はありません。
 派手なインプロビゼーションの場面もありません。
 ゆったりとした流れ、たっぷりの余白。
 誰かの発した音に合わせるように形を変えていくバンド。
 美しい音とメロディアスなフレーズたち。
 が、長く一定の形を保つことなく、漂い、消えていく音。
 少し音量を変えると、あるいは聞く位置を変えるだけでも形が変わってしまいそうな繊細さ。
 そんな音の流れが最初から最後まで続きます。
 予測不可能、ジャズやクラシックなわかりやすさはなく、聞き慣れた音ではありません。
 終始緊張感に包まれ、明るくもありません。
 それでも心地よいのは、個々のフレーズがメロディアスだから、そしてどこか懐かしい空気が流れているからでしょうか。
 静かな迷宮。
 儚く繊細な時間。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Mercurial Balm” (2010,2011) Food: Thomas Strønen / Iain Ballamy

“Mercurial Balm” (2010,2011) Food: Thomas Strønen / Iain Ballamy

Thomas Strønen (Drums, Percussion, Electronics) Iain Ballamy (Saxophone, Electronics)
Eivind Aarset, Christian Fennesz (Guitar, Electronics) Prakash Sontakke (Slide Guitar, Vocals) Nils Petter Molvær (Trumpet)

Mercurial Balm
ECM Records
2017-07-28


 ノルウェーのフリー系ドラマーThomas Strønenとイギリスのサックス奏者Iain Ballamyのプロジェクト。
 ECMレコードでは“Quiet Inlet” (2007,2008)に続く第二作。
 本作のサポートメンバーは北欧の先端系、アンビエント系、さらにインド系。
 静かな無国籍アンビエント系ミュージック。
 前作と同じく、ゆったりと漂うようなビート、パーカッションと電子音が作る幻想的な時空の中を泳ぐ美しいサックスの音。
 妖しさ120%も同様ながら、メロディアスになったように思います。
 おそらくサックスが前面に出る場面が多い印象だから。
 無機質な反復が続くようで、穏やかで淡い色合いの音、どことなく懐かしい空気感。
 それは“In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davis的あるいは初期Weather Reportな感じでもあるし、北欧伝統音楽系が混ざっているのかもしれないし、ミニマル、あるいは未来的アビエントな感じもします。
 そんな淡く幻想的な音の流れが全体を支配しつつ、ときおりビートを定めて動き出すドラムとメロディアスなサックス。
 まどろむような陶酔感と覚醒の錯綜。
 鎮痛、陰鬱さはなく終始穏やか。
 この系の中では音楽の輪郭が明確でメロディアスな方なのかもしれません。
 かといってポップさはもとより、甘さもないバランス。
 全ては淡い幻想の中。
 穏やかながら強烈なトリップミュージック。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Quiet Inlet” (2007,2008) Food: Thomas Strønen / Iain Ballamy

“Quiet Inlet” (2007,2008) Food: Thomas Strønen / Iain Ballamy

Thomas Strønen (Drums, Electronics) Iain Ballamy (Tenor Saxophone, Soprano Saxophone)
Christian Fennesz (Guitar, Electronic) Nils Petter Molvær (Trumpet, Electronics)

Quiet Inlet
ECM Records
2017-07-28


 ノルウェーのフリージャズ系ドラマーThomas Strønenとイギリスのサックス奏者Iain Ballamyのプロジェクト、ECMレコードでの初作。
 Thomas Strønen は“Parish” (2004) 以降、ECMレコードで静かなフリー寄り音楽の人、Iain Ballamy は”Quercus” (2006) June Taborのメンバー、Coltrane系な人。
 サポートはオーストリアの先端系ギタリストとノルウェーの寂寥系トランペット。
 静かなフリー交じり、アビエント寄りミュージック。
 静かに鳴る電子音と静かにビートを刻むパーカッション。
 電子音は風のようでもあるし、宇宙的でもあるし。
 パーカッションの金属音は不規則に揺られる風鈴、擦過音と大きくはない打撃音は木々が揺れ、こすり合う音のよう。
 どこか遠いところの景色が見えてくるようでもあるし、幻想のようでもあるし。
 ときおり明確なメロディで覚醒を促すようなサックス、トランペットの音も、多くは淡い空気感の中に溶け込んだまま。
 曖昧なようで抽象的なようで、そうでもないバランス。
 悲哀はなくカラッとした雰囲気、全体を通じたどこか懐かしい空気感。
 そんな淡く心地よい時間。



posted by H.A.


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