吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

cello

【Disc Review】“The Sea” (1994) Ketil Bjørnstad

“The Sea” (1994) Ketil Bjørnstad
Ketil Bjørnstad (piano)
Terje Rypdal (guitar) David Darling (cello) Jon Christensen (drums)

Sea
Ketil Bjornstad
Ecm Import
ケティル・ビヨルンスタ
ヴィッド ダーリング

 ノルウェーのピアニストKetil Bjørnstad、ECMでのコンボ作品。
 「海」をテーマにしたドラマチックな組曲。
 淡々とした端正なピアノを背景として、哀感を湛えた、でも慈しむようなチェロと過激に歪んだ妖しいギターがメロディを紡いでいく構成。
 描こうとしたのは海の景色なのか、海の中で繰り広げられる生物たちのドラマなのかはわかりません。
 いずれの解釈もできそうな大らかでゆったりとした展開。
 悲しげでもあり、優しげでもあり、穏やかでもあり、過激でもある、そんな音。
 全体の穏やかなイメージの中に時折現れる過激なロックギターの響きがアクセントとなり、また穏やかな表情に戻っていく・・・
 あるいはチェロが奏でる悲哀に満ちた音、さらに時折の激情をはさみながら、また穏やかな表情に戻っていく・・・
 そんな展開。
 どの曲も穏やかながら悲しみを湛えたメロディ。
 妖しく激しい冒頭からさまざまな展開を経て、超スローテンポで穏やかなエピローグで締め。
 後半にさりげなく置かれた”The Sea,IX”など、いくつかはとんでもない美曲。
 何かが生まれてくるようなドラマチックな展開、何かを慈しんでいるような表情。
 いろんなイメージ、想像力を掻き立てる音。 
 全体を通じたストーリー性、映画のサントラ的なモノをイメージして作ったのかもしれません。
 なお、Ketil Bjørnstadのピアノにジャズ度は全くありません。
 ここまでグルーヴを抑えたクラシック然としたピアノは、さすがのECMでも少数でしょう。
 また、Jon Christensenのドラムも得意のヒタヒタと迫ってくる感じでビートを作るスタイルではなく、アクセントつける役回り。
 あるいは、他のメンバーとはバンドとは別のビートを淡々と小さな音で刻んでいく、そんな変わったスタイル。
 結果、全体を通じてビート感は薄目、少々重々しい印象。
 そのあたりで好みは分かれるのかもしれません。 
 が、そうでなければこのドラマチックさ、終始漂うような、穏やかなようで悲し気ような表現はできないのかもしれません。
 名作です。
 但し、ジャズのビート感は期待しないでください。 




posted by H.A.

【Disc Review】“Dark Wood” (1993) David Darling

“Dark Wood” (1993) David Darling
David Darling (cello)

Darkwood
David Darling
Ecm Records
デヴィッド ダーリング



 David Darling、“Cello” (1991,1992)に続く、チェロのソロ作品。
 タイトル通り深い森の中のような音。
 Woodsではないので「森」ではなくて、色の濃い「木」なのかな?
 ま、深くて薄暗い、静かな森の中のような音なのでよしとしてください。
 終始低く漂うような音。
 チェロでなくてビオラやベースだとこの雰囲気、繊細な質感は出ないのでしょう。
 これがチェリストとしてやりたかった音楽、生涯の集大成といわれても納得の音。
 とても悲しげな音ですが、感情的になったりはしません。
 あくまで落ち着いた穏やかな表情。
 もちろんジャズ度はゼロ。
 ビートが欲しい時には聞くのを止めておきましょう。
 でもこの音が流れると周囲が深い森に変わります。
 森林浴っていうのにはちょっと暗めな感じでしょうかね?
 爽やかでもありますが、ほどほどの湿り気。
 呼吸が楽になってくるような気がします。
 気のせいかもしれません・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Cello” (1991,1992) David Darling

“Cello” (1991,1992) David Darling
David Darling (cello)

Cello
David Darling
Ecm Records
デヴィッド ダーリング



 David Darling、タイトル通り、チェロのソロ作品。
 “Journal October” (1979)から十年振り。
 同じくオーバーダビングはありますが、本作はチェロのみ。
 ECMでの前作、コンボでの”Cycles” (1981)のようなビート感はなく、クラシック的な作品です。
 “Journal October” (1979)は少しとんがったイメージがありましたが、こちらはとても穏やかな表情。
 低く響く沈んだ音。
 ゆったりと漂うような抽象的なメロディ、漂いながら落としどころを探しているような展開。
 静かで内省的、心の深いところを眺めるような音、そんなイメージの音。
 かといって暗いわけでも深刻でもありません。
 あくまで穏やかです。
 Weekdayの朝に聞くと一日弛緩してしまいそうだけども、休日の朝にはピッタリ。
 “Dark Wood”とタイトルされた曲が三曲。
 おそらく続編、次作“Dark Wood”(1993)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Journal October” (1979) David Darling

“Journal October” (1979) David Darling
David Darling (acoustic, electric cello, voice, percussion)

Journal October
David Darling
Ecm Import
デヴィッド ダーリング


 アメリカのチェリストDavid Darling、ECMでの初作品。
 Ralph Towner、Collin Walcottなども参加していたサックスのPaul Winterのバンドにも参加していたようです。
 元々、民族色も交えた新しいテイストの音楽、ECMカラーとイメージが合う人なのでしょう。
 本作はチェロを中心としたソロ演奏、クラシックの色合いも強い音楽。
 後年の“Cello” (1991,1992)あたりと比べると、フリージャズの色合い、エレクトリックチェロの使用など含めて、素直にクラシックな感じではありません。
 もちろんポップスでもジャズでもない不思議な音楽。
 フリージャズ的なムード、フリーインプロビゼーションの色合いもありますが、おそらく計算しつくされた音作りなのでしょう。
 全編に漂う不思議感。
 さらに強い寂寥感。
 この人の音楽はいつも悲し気。
 絶望や激情があるわけではないのですが、なぜか悲し気。
 チェロの響きに自体にもいつも悲し気な色を感じます。
 メロディアスな展開と抽象的、実験的な色合いが半々。
 複雑で予想できない流れの中に響く、これまた予想できない悲し気なチェロの音。 
 何曲かのとてもメロディアスな曲、背景を作るピチカートとメロディを紡ぐアルコとの絶妙な組み合わせが印象に残ります。
 不思議な構成の中から突然現れる美しいメロディ、チェロの音色、その抑揚、表現力には、いつも胸を締め付けられるような思いを感じます。
 怖いわけでも、鬼気迫るといった感じでもないのですが、淡々とした感傷、あるいは寂寥。
 そんな感じ。
 その色合いは、次作、コンボでの名作”Cycles” (1981) へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Melos” (2007) Vassilis Tsabropoulos, Anja Lechner, U.T. Gandhi ‎

“Melos” (2007) Vassilis Tsabropoulos, Anja Lechner, U.T. Gandhi ‎
Vassilis Tsabropoulos (piano) Anja Lechner (cello) U.T. Gandhi (percussion)

Melos (Ocrd)
Vassilis Tsabropoulos
Ecm Records
ヴァシリス・ツァブロプーロス  
アニヤ・レヒナー 


 ミニマリズムを感じながら、精神性の高いピアノと、深い表現力のチェロ、全体のグルーブを支えるパーカッション。
 ロシアの思想家グルジェフの”Tibetan Dance"を聴いている時間、 至福です。
 精神性を音楽で表現している曲、シンプルな構造の上に、人の血を想像させる旋律。
 人を鼓舞するかのようにチェロが裏に回り、ピアノが表に出て来る対象的な構造。
 大陸の音楽だと思いますが、何故聞き慣れた旋律のように響くのでしょうか?
 楽しいですわ。
 このアルバムの中"Dance"が付いている曲が2曲有ります。
 お奨めします。
 ちなみにU.T.Gandhiはどんな方なんですかね?
 イタリア人?

posted by N.A.




 ギリシャのピアニストVassilis Tsabropoulos、“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)に続く、ドイツのチェリストAnja Lechnerとの共演第二弾。
 本作はVassilis Tsabropoulos のオリジナル曲中心、引き続きGeorge Ivanovich Gurdjieffの作品を数曲。
 Gurdjieffをイメージしながら、自身のイメージを前面出したのでしょう。
 本作も冒頭から寂寥感の塊のような音。
 背景にちりばめられる美しいピアノの高音と、とても物悲し気なチェロの響き。
 どちらも悲しみを湛えた音ながら、硬質で緊張感の高いピアノと柔らかで穏やかな表情のチェロの対比。
 そこがギリシャなのかアルメニアなのかロシアなのかはわかりませんが、前作にも増してエキゾチックな音。
 聞きなれない不思議感が漂う節回しと、メロディアスで現代的な旋律が交錯する展開。
 前作に近いイメージですが、少し面持ちは異なります。
 ミニマルミュージック的にシンプルなリフを繰り返す演奏も印象に残ります。
 また、パーカッションが入り、ビートが明確なコンテンポラリー・ジャズ的なムード、ドラマチックでエキサイティングな演奏もいくつか。
 それら含めて、どこか遠い世界を感じる“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)に対して、いくらか現実的、現代的な印象の本作。
 本作も沈痛で全編に寂寥感が漂う音ですが、前作と同様に優しい世界のようにも感じます。
 夢と現実、過去と近未来、妖しさ、不安と安らぎが錯綜するような不思議感。
 クラシックでもジャズでもないコンテンポラリーミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos

“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos
Vassilis Tsabropoulos (piano) Anja Lechner (cello)

Chants Hymns & Dances
Gurdjieff Tsabropoulos
Ecm Records
ヴァシリス・ツァブロプーロス  
アニヤ・レヒナー 


 ギリシャのピアニストVassilis Tsabropoulos、ジャズピアノトリオの次のプロジェクトはドイツのチェリストAnja LechnerとのDuo。
 ロシア~アルメニアの思想家、作曲家 George Ivanovich Gurdjieffの作品集。
 Vassilis Tsabropoulosの作品も数曲。
 GurdjieffはKeith Jarrettも演奏していた作曲家。
 ジャズ作品にはKeith Jarrettの色合いを感じる場面も多く、やはり何らかの影響、共通性があるのでしょう。
 もちろん本作はジャズではなくクラシック。
 とても悲しい旋律、静謐ながら緊張感の高い音。
 感情を昂ぶらせることなく、あくまで淡々と美しいメロディを奏でるピアノ。
 丁寧に置かれていく音、時折の加速感を伴う速いパッセージ。
 遠いところから聞こえてくるような音作り・・・
 正直、ジャズ作品では感じられた少々の「無理」が先のソロ作品“Akroasis” (2002)、本作には感じられません。
 Vassilis Tsabropoulosの本分はジャズではなく、こちらなのでしょう。
 何曲かのVassilis Tsabropoulosの曲もとても悲しく美しいメロディ。
 寄り添うように彩を加えるチェロ。
 こちらもとても穏やかながら悲しい表情。
 Anja Lechner、Dino Saluzziの共演では二人が揺れながら前に進む音楽でしたが、こちらは端正な背景を作るピアノの上を浮遊するチェロ。
 ほのかな温かさを感じる”Ojos Negros” (2006) Dino Saluzziに対して、本作はクールかつ敬虔なムード。
 周囲の喧騒を忘れ、非日常空間に連れて行ってくれる素敵な音楽。
 とても沈んだ音ですが、とても穏やかな世界のようにも感じます。




posted by H.A.

【Disc Review】”Navidad de Los Andes” (2011) Dino Saluzzi

”Navidad de Los Andes” (2011) Dino Saluzzi
Dino Saluzzi (bandoneon)
Anja Lechner (cello) Felix Saluzzi (clarinet, tenor sax)

Navidad De Los Andes
Saluzzi
Ecm Records
2011-09-20
ディノ サルーシ
アニア レヒナー



 

 Dino Saluzzi、チェリストAnja Lechnerとのコラボレーション。
 本作はSaluzziファミリーの管楽器も加えたトリオ。
 ”Ojos Negros” (2006)は端正で静謐なクラシック~タンゴのイメージでしたが、本作はそのイメージを踏襲しつつも、民族音楽~フォルクローレ的な香り、あるいは幻想的なムードも強い作品。
 独特のうねりを作るバンドネオンとチェロ。
 そしてそれに溶け込みつつ彩りを付けるクラリネット、サックス。
 クラリネットはクラシック的でスタイリッシュですが、テナーは少しノスタルジックなムード。
 Dino Saluzzi、Anja Lechnerはいつも通りですが、管楽器の音の出し方で音のイメージが変わってくる感じ。
 民族音楽風、クラシック風、ポピュラー風・・・・・・。
 楽曲はいつもの穏やかで郷愁感の強いメロディに加えて、幻想的、あるいは敬虔なムード。
 編曲、あるいはインタープレーがかなり複雑になってきた印象も。
 それにしても、ゆっくりとうねる音の間々の無音の瞬間の美しいこと。
 そして次の瞬間にふわりと立ち上がってくるチェロ、あるいはバンドネオンの音の心地いいこと。
 この二人でしか作ることができない音空間。
 これまた非日常空間にいざなってくれる、素晴らしい音楽。




posted by H.A.

【Disc Review】“El Encuentro” (2009) Dino Saluzzi

“El Encuentro” (2009) Dino Saluzzi
Dino Saluzzi (bandoneon)
Anja Lechner (cello) Felix ´Cuchara´ Saluzzi (tenor sax) The Metropole Orchestra

El Encuentro
Dino Saluzzi & Anja Lechner
Imports
ディノ サルーシ


 Dino Saluzzi、ストリングスオーケストラとの共演、ライブ録音。
 前作”Ojos Negros” (2006)に続いてAnja Lechnerのチェロ、さらにSaluzziファミリーのサックスがフィーチャーされます。
 もちろんジャズでもタンゴでもなくクラシック。
 楽曲はDino Saluzzi作。
 もの悲しげで郷愁感あるれるメロディ、アンサンブルの連続。
 漂うような、伸び縮みするような、揺らぐような独特の音空間はそのまま。
 Anja Lechnerチェロはもちろん、ストリングス陣もその揺らぎにピタリと寄り添います。
 ストリングスカルテットとの共演、クラシック~タンゴ作品“Kultrum” (Oct.1998) と同様。
 おそらくジャズの人たちよりも相性はいいんでしょうねえ。
 終始、静謐で穏やか、優しげな音。
 静かに漂うようなストリングスの間から思い出したように出てくるバンドネオン、チェロ、サックスの素晴らしさ。
 ゴージャスとか豪華云々といった言葉は似合いません。
 とても上質で優雅な音空間。




posted by H.A.

【Disc Review】”Ojos Negros” (2006) Dino Saluzzi

”Ojos Negros” (2006) Dino Saluzzi
Dino Saluzzi (bandoneon) Anja Lechner (violoncello)

Ojos Negros (Slip)
Dino Saluzzi
Ecm Records
 ディノ サルーシ 
 アニア レヒナー 


 

 Dino Saluzzi、“Kultrum” (Oct.1998)で共演したチェリストAnja LechnerとのDuo。
 珍しくこのコラボレーションは長く続きます。よほど波長が合ったのでしょうかね。
 楽曲はほぼDino Saluzziの作品。
 クラシック~室内楽~タンゴのテイスト。
 バンドネオンが奏でる郷愁感あふれるメロディ、揺らぐリズムにピッタリと寄り添うチェロ。
 いつもの浮遊感が、少し強固な「うねり」のように変化しているように感じます。
 もちろんジャズ度はゼロ。
 スウィングはしませんが、その代わりのとても心地よい「揺らぎ」、あるいは「うねり」。
 Enrico Rava, Al Di Meola, Charlie Haden, George Gruntz, Thierry Lang, David Friedman・・・等々、共演者は多数いますが、Dino Saluzziの「揺らぎ」にキチンと対応できたのはAnja Lechnerだけかも?
 だからコラボレーションが続く・・・と想像してみたり。
 さて実際はどうなのでしょう・・・?
 Dino Saluzziの漂うようなバンドネオンに対して、立ち上がりの音がとても柔らかいチェロがカウンターを当てていくスタイル。
 遠くから聞こえてくるような少し細めのバンドネオンの音に対して、少し太めのチェロの音。
 双方が相まって、強烈な浮遊感、でも何故かしっかりとした質感のとても優雅な音空間。
 アルバム全てがそんな音。
 流れている部屋はどこかわからない遠い世界につながっているような錯覚。
 素晴らしい作品。




posted by H.A.

【Disc Review】“Cycles” (1981) David Darling

“Cycles” (1981) David Darling
David Darling (cello)
Collin Walcott (sitar, tabla, percussion) Steve Kuhn (piano) Jan Garbarek (sax) Arild Andersen (bass) Oscar Castro-Neves (guitar)
 
Cycles
David Darling
Ecm Import
2000-05-16
デビッド ダーリング

 ECMの隠れた名盤。
 現代音楽の色が強い?チェリストがリーダー、ECMオールスターがサポート。
 曲者揃いですので、どんな音なのか予想できませんが、聞いてみてもなんとも簡単には説明できない多様な内容。
 ともあれ、冒頭の”Cycles”は激甘、涙ちょちょ切れの大名曲。
 とても悲しい映画のテーマ曲、というより、そんなイメージよりもずーっと悲しく、美しく、奥が深い音。
 訥々したピチカートから始まり、シタールが絡み妖しげな雰囲気、さらに凜としたピアノが美しいメロディを奏で、三者で定まっているような、そうでもないような浮遊感の強い、でも美しい空間を作る。
 それだけもとても美しく、もの悲しく、感動的なのに、そこにリーダーのチェロのアルコが後ろの方の空間から引きずるような沈痛なテーマを展開。
 でも、そのままそこに居座るのではなく、消え入ったり、また現れたり。
 中盤以降はボリュームが上がり、前面へ、でも気が付くとまた消えていて・・・。
 その間もずっと淡々としたベース、ピアノとシタールの美しくて妖しい絡み合いが続く・・・
 なんとも奥ゆかしいというか、聞けば聞くほどはまっていきそうな深い音。
 ってな感じで涙々、沈痛の約七分間。決してこれ見よがしな派手な演奏はないのだけども、何度聞いても飽きません。
 後続は少し現代音楽、フリージャズの色の濃い演奏。
 無国籍、ノンジャンルな音。
 でも混沌はわずかで、基本的にはピアノが透明な空間を作り、その中でチェロ、サックス、シタールなどが自在に色づけしていく感じ。
 サックスが前面に出ると北欧系の厳しい感じだったり、ピアノが前面に出ると上品なヨーロピアンジャズっぽくなったり、さまざまな表情。
 特にSteve Kuhnのピアノ、このアルバムでは決して音数は多くないのですが、ゆったりとしたテンポの上に、後ろ髪を引かれるようなタメの効いた音の置き方、微妙な音の変化でもの悲しさと美しさ全開。
 リーダーのチェロの時折りの強烈に感傷的な音使いとの絡みは絶妙。
 冒頭曲のような甘いメロディが他にもいくつか。
 どれも深い音、胸が詰まるような切ない音、奥の深い絡み合い。
 いずれにしても秋っぽい音、今の季節にはピッタリだなあ。



posted by H.A.
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