吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

bass

【Disc Review】 “Once upon a Time - Live in Avignon” (1994) Eberhard Weber

“Once upon a Time - Live in Avignon” (1994) Eberhard Weber


Eberhard Weber (Bass)


Once upon a Time - Live in Avignon
Eberhard Weber
ECM
2021-11-05


 レジェンドEberhard Weber、1994年、ベースソロでのライブ録音、2021年発表。

 近い時期のベースソロ作品“Pendulum” (1993)、一つ前のこれもソロ中心の作品“Orchestra” (1988)の楽曲を中心にピックアップされています。

 ちょうどそれら、躍動感の強い“Orchestra” (1988)、穏やかな“Pendulum” (1993)を織り交ぜたイメージ。

 スタジオ録音作品と近い質感なのですが、楽曲ごとのアレンジ、構成は異なります。

 他の楽曲の断片が見え隠れしたり、違うテンションだったり。

 再アレンジしたのか、思いついた展開を即興で演奏しているのかはわかりません。

 いずれにしても全編メロディアス。

 珍しくスタンダートも演奏されていますが、その力を借りるまでもなく、全編とてもメロディアス。

 ベースのみの音ながら、退屈はありません。

 オーバーダビングなのかループシステムなのか何なのか不明ですが、ときおり複数のベースの音が絡み合いながら進むステージ、

 柔らかなビート感。

 柔らかい音のエレクトリック・アップライト・ベースが奏でるもの悲しいメロディ。

 未来的なようでもあるし、懐かしいようでもあり。

 緩急、硬軟織り交ぜながらも、とても穏やか。

 そしてセンチメンタル。

 柔らかなモノに包み込まれているような心地よい時間。

 とてもSaudade。





posted by H.A.



【Disc Review】“Overpass” (2018) Marc Johnson

“Overpass” (2018) Marc Johnson


Marc Johnson (Double Bass)

Overpass
Marc Johnson
ECM
2021-08-27


 大御所Marc Johnson、べースソロ作品。
 ECMレコード、得意にして特異な企画。
 さまざまなつわものたちのべースソロ作品がありますが、本作はオーソドックスなジャズ寄り。
 “FREEDOM JAZZ DANCE”、”NARDIS“から始まり、"LOVE THEME FROM SPARTACUS”といったスタンダードを挿みつつ、オリジナルを数曲。
 純粋にベースのみですが、取っつき難さや気難しさはありません。
 クラシックっぽくもありません。
 あくまでジャズ。
 静かな空間の中に置かれていく低音。
 たっぷりの余白。
 ときおり弓弾き、オーバーダビングが加わりますが、音色は低音の弦、一つだけ。
 きらびやかさはもちろん、アグレッシブさや実験的な要素もありません。
 でも飽きません。
 多くの場面でスウィングしていて、かつメロディアス、さらに起承転結が見える展開だからでしょうか。
 低音のみゆえ、とても穏やかで落ち着いた時間。
 どこか遠いところ、あるいは懐かしいところに連れて行ってくれるような音。
 ダークなムードだけど温かい音。
 コンボだとこんな感じにはならないのでしょう。
 ジャケットの紺、そのままな空気感。
 全編メロディアスながらベースのみゆえの非日常感、これまたトリップミュージック。
 こりゃ気持ちいいや。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“The Gleaners” (2016) Larry Grenadier

“The Gleaners” (2016) Larry Grenadier


Larry Grenadier (Double Bass)

Gleaners [Analog]
Grenadier, Larry
Ecm
2019-02-15


 アメリカンコンテンポラリージャズのベーシストLarry Grenadierのリーダー作、ECMレコードから。
 Joshua Redman、Brad Mehldau、Pat Methenyなど、いろんなビッグネームのコンボに参加していた人。
 ジャズな編成ではないベースソロ。
 “Pettiford”なんて曲があったり、ジャズスタンダードがあったりもしますが、それらはさておき、全体のイメージはジャズっぽくありません。
 クラシック風味もそこそこのノンジャンル・ベース・ミュージック。
 現代音楽的でもフリーっぽくもなく、とてもメロディアス、明解で明るい印象。
 淡い色合いを含めて、21世紀型のECMレコードっぽいといえばその通り。
 静かな空間に響く低音。
 漂っているようで決して崩れないビート、ときおりの疾走。
 低音ゆえ曖昧な輪郭で遠くから響いてくるようなメロディたち。
 優しくメロディアスな音の流れは、以前だとNew Age Musicとか呼ばれそうな感じ。
 もしピアノなどが入ればもっと馴染みやすくなるのかもしれません。
 が、それではありきたりになってしまうのでしょうか。
 ジャケットのポートレートの大樹が緑になる感じ。
 本作は特別なあくまでモノクロームな音。
 とてもつつましくてエレガント。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Emerald Tears” (1977) Dave Holland

“Emerald Tears” (1978) Dave Holland


Dave Holland (Double Bass)

Emerald Tears
Holland, Dave
Ecm Records
1996-03-26


 Dave Holland、1970年代後半のベースソロ作品。
 エレクトリックMilesの雄にして、この期のECMレコードハウスベーシスト。
 リーダー作としては“Conference of the Birds” (1972)以降、間が空いているようで、その後コンボで作を連ねる少し前。
 それらと同様、硬派でハードボイルドな音、但しベースソロ。
 すべてインプロビゼーションなのか、あらかじめ楽曲を準備していたのかはわかりません。
 激しく動き回る音。
 どの方向に動いていくのか予測不可能。
 例の超絶疾走はもとより、クダを巻いたり、スウィングしたり。
 ピアノもギターもトランペットも聞こえない苦み走った音は、甘さゼロ。
 そんな中に数曲挿まれるタイトル曲を含めたメロディアスで哀し気なバラードがとてもハードボイルド。
 酸いも甘いも嚙み分けた男の狂気と哀愁、ってな感じ。
 Emerald Tearsってタイトルや、洒落た雰囲気のジャケットは似合わないと思っていました。

 が、それを眺めながら聞いていると、境界の明確な二面性、明度は低いが暗くはない感じがピッタリな気がしてきました。

 ダークなベースの音一色。
 が、複雑に織り成される複雑な色合い、そんな作品。



 

posted by H.A.

【Disc Review】“Music From Two Basses” (1971) David Holland, Barre Phillips

“Music From Two Basses” (1971) David Holland, Barre Phillips


David Holland, Barre Phillips (Double Bass)

Music From Two Basses
ECM Records
2005-08-12



 ベーシスト二人のDuo、1970年代初頭、ECMレコードから。
 時はエレクトリックMiles、さらに1960年代以降の激烈なフリージャズ華やかなりし頃。
 それらの中心にいたのであろうお二人のベーシスト、予想通りの激しい演奏集。
 インプロビゼーションが数編、準備された楽曲があるのであろう演奏が数曲。
 地下で何かがうごめいているようなドロドロとしたムード。
 ありがちな沈痛~陰鬱路線ではなく、暗い感じでもないのですが、凄まじい緊張感の中の激しいバトル。
 いかにも1970年代初頭な激烈さ。
 怒涛のように続く上昇下降、マシンガンのような超高速ピチカートあり、ズルズルギュインギュインなアルコあり。
 甘さや軽さなどみじんもない、情け容赦ない重厚な肉弾戦。
 秘技、奥義を尽くして、どちらかが倒れるまで闘いは続く・・・ってな感じの演奏。
 ちょっと怖い。
 が、ベースだけなのでうるさくはありません。
 そして散々暴れたのちにときおり定まるビート、もの悲しいメロディ。
 とてもクール、とてもハードボイルド。
 苦み走った男の何とか、そんな演奏集。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Looking At Sounds” (2019) Michel Benita

“Looking At Sounds” (2019) Michel Benita

Michel Benita (Double Bass, Samples)
Jozef Dumoulin (Rhodes) Philippe Garcia (Drums, Samples) Matthieu Michel (Flugelhorn)

Looking At Sounds
Michel Benita
ECM
2020-09-18


 フランスのベーシスト、大御所なのでしょうMichel Benita、フリューゲルホーンをフロントに立てたワンホーンカルテット作品。
 少し前、同じくECMレコードからの“River Silver” (2015)のバンドから先端ギターと箏が抜け、エレピが加わるオーソドックスなジャズの編成。
 が、ボリュームペタルを駆使するエレキギターのような音が鳴っていて、これはホントにエレピなのでしょうか?、オーソドックスなジャズではありません。
 心地いいフワフワとした電気な音。
 そんな音に包まれた柔らかなコンテンポラリージャズ。
 どこか哀しみを湛えたような、が、暗くはない空気感と、どこか懐かしさを感じるメロディ。
 上品なグルーヴを伴った強い推進力のビート。
 サラサラと流れていく力みなくクールなフリューゲルホーン。
 柔らかで心地よい音が揃い、メロディアスで気難しさ無し。
 “In a Silent Way” (Feb.1969) Miles Davisを徹底的にスムーズにして、現代的にして、わかりやすくした、そんな感じの洗練。
 そんな中で各曲終盤に向けての穏やかな高揚感、キツくない緊張感、ときおりの疾走、あるいは中盤に収められたルバートなスローバラード、穏やかな混沌、幻想がとてもカッコいい。
 脂っこくなく、気難しくなく、明るすぎず暗すぎず、軽すぎず重すぎず、冷たすぎず暖かすぎず、古すぎず新しすぎず・・・
 ありそうでない、絶妙なバランス。
 柔らかくて心地いい、スタイリッシュな現代ジャズ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Sagn” (1990) Arild Andersen

“Sagn” (1990) Arild Andersen

Arild Andersen (Bass)
Frode Alnæs (Guitar) Bugge Wesseltoft (Keyboards) Nana Vasconcelos (Percussion, Vocals) Bendik Hofseth (Tenor, Soprano Sax) Kirsten Bråten Berg (Vocals)

Sagn
Andersen, Arild
Ecm Import
2000-07-25


 ノルウェーのスーパーベーシストArild Andersen、1990年、ECMレコードでの制作。
 1970年代ECM作品“Green Shading Into Blue” (1978)のようなコンテンポラリージャズフュージョンでもなく、例の激烈ハイテンションコンテンポラリージャズでもありません。
 北欧民族音楽も強い、ほどほど幻想的、ほどほど優しく、ほどほど激しい無国籍コンテンポラリージャズ。
 メンバーはノルウェーの先端系の人達、さらには近くの“If You Look Far Enough” (1988,1991,1992) と同じくNana Vasconcelosも加わった多国籍、多ジャンルの面々。
 聞き慣れない音階の旋律、聞き慣れない言語の響き、朗々とした女声、静かで妖しいパーカッションに奇声、薄く流れる電子音にシンセサイザー、沈痛な色合いのハイテンションサックス、アコースティックからハードロックまで変幻自在なギター。
 基本的にはアコースティックな質感、北欧エスニックで勇壮なメロディ、敬虔な歌・・・、と思っているとシンセサイザーとシャープなビートのジャズフュージョン風・・・、その合間々にNanaさんのケッケッケッケッケー・・・・
 ってな感じで、いろんな要素、てんこ盛り。
 さすがECMな混ざり具合。
 全部合わせてとてもドラマチック。
 とても妖しく、重々しい場面もあるのですが、あまり気難しさ、沈痛さは感じません。
 マニアックですが優しい音。
 どこか流れている懐かしい感じがそう感じさせるのかもしれません。




posted by H.A.


【Disc Review】“Prism” (2013) Dave Holland

“Prism” (2013) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Kevin Eubanks (guitar) Craig Taborn (piano, Fender Rhodes) Eric Harland (drums)

PRISM
HOLLAND, DAVE
OKEH
2013-09-20


 Dave Hollandのロックなジャズ。
 ピアノトリオとギター、ファールトコールなジャズメンたち。
 ギターがKevin Eubanksとくれば、カミソリのように鋭いハイテンションジャズ“Extensions” (1989)、あるいは“Turning Point” (1992)、“Spirit Talk” (1993) あたりの音を期待してしまうのですが、意外にも強いロックテイスト。
 ディストーションを掛けてチョーキングしまくりのギターにエレピ、ちょっと重めながら現代的な複雑感のあるビート。
 エレクトリックMilesの時代の音を整えてもっとロックに寄せた感じがしないでもないですが、むしろプログレッシブロックそのものな感じ。
 それはアクセントかな?と思いつつ聞き進めると、全編そんな感じ。
 なんだかんだでアコースティックジャズの人と思っていただけに、これは意外な展開。
 さておき、もちろん演奏は超一線級。
 ドラムがビシバシして、変態的なグニョグニョエレピ、そしてKevin Eubanksのロックなギターが全編で唸りまくり。
 ファンクあり、混沌あり、激しいビートのロック色全開のジャズ。
 この手の音楽、この時期に流行っていたかなあ・・・?
 さておき、気持ちを切り替えてしまえば、これはこれで心地よかったりして。




posted by H.A.


【Disc Review】“Overtime” (2002) Dave Holland

“Overtime” (2002) Dave Holland

Dave Holland (double bass)
Steve Nelson (marimba, vibraphone) Billy Kilson (drums)
Duane Eubanks, Taylor Haskins, Alex Spiagin (trumpet, flugelhorn) Robin Eubanks, Jonathan Arons, Josh Roseman (trombone) Mark Gross (alto sax) Antonio Hart (flute, alto,soprano sax) Chris Potter (tenor sax) Gary Smulan (baritone sax)

Overtime
Holland, Dave
Sunny Side
2005-02-22


 Dave Holland、2002年のビッグバンド作。
 前作ECMレコードでの最終作“What Goes Around” (2001)とメンバーも大きくは変わっていません。
 そちらもECMでは珍しいジャズジャズした音でしたが、本作も同じ質感。
 ECMの呪縛がなくなったのかどうかはさておき、元気いっぱいなコンテンポラリービッグバンドジャズ。
 平和で能天気な感じではなくハイテンションでドカーンときますが、眉間にしわが寄った感じや気難しさはなし。
 徐々にブチ切れていくソリストの後ろから激しく煽るアンサンブルとリズム隊。
 ホーンの激しい音が怒涛のように押し寄せてきます。
 マリンバ、ヴィブラフォンの妖し気、涼し気な音がところどころで顔を出しつつ、やはり終盤に向けてドカーンとくるバンド
 ホーン陣の主役はChris Potterでしょうか。
 気が付けばソロ状態のドラムともに突っ走るサックス、バンド。
 手に汗握るスペクタクル系ジャズ。
 それでいてかつてのそんな音よりも、汗が噴き出す感じや埃っぽさを感じないのは、21世紀の音だからなのか、このバンド特有のクールネスなのか。
 ともあれ、スッキリしていてその上エキサイティング。
 21世紀コンテンポラリーなビッグバンドジャズの好作品としてよろしいのでは。




posted by H.A.


【Disc Review】“What Goes Around” (2001) Dave Holland

“What Goes Around” (2001) Dave Holland

Dave Holland (bass)
Steve Nelson (vibraphone) Billy Kilson (drums)
Duane Eubanks, Alex Sipiagin, Earl Gardner (trumpet, flugelhorn) Josh Roseman, Andre Hayward, Robin Eubanks (trombone) Mark Gross (alto sax) Antonio Hart (alto sax, flute) Chris Potter (tenor sax) Gary Smulyan (baritone sax)

ホワット・ゴーズ・アラウンド
デイヴ・ホランド・ビッグ・バンド
ユニバーサル ミュージック クラシック
2002-10-23


 Dave Holland、2001年作、ビッグバンド編成、ECMレコードでの最終作。
 ベースのコンボはピアノの代わりにヴィブラフォンが入る例のクールな音。
 質感そのまま、ここまでの少人数の管のアンサンブルがさらに分厚くゴージャズになり、よりジャズっぽくなった感じ。
 シャキッとした4ビート、ブルージーなラインに乗って統制されたアンサンブルが彩りをつけつつ、ビヒャーってな感じのホーン陣の血管切れそうなソロでテンションと音量を上げていくバンド。
 フリーやら先端系やら妖しい感じやらはなくオーソドックス、もろニューヨークな感じのコンテンポラリージャズ。
 って、ニューヨークでの録音でしたね。
 ここまでくるとECMレコードの音源ってことを忘れてしまいそう。
 少し前の作品からProducerのクレジットはDave Holland本人、EicherさんはExecutive-Producer。
 さもありあん、な「ジャズ」。
 合間から聞こえるヴィブラフォンのクールな響きと、下の方でボコボコ動きまくるベースがこのバンドならではの色合い。
 分厚いホーンの分、健全な感じで元気いっぱいな分、クールさとハードボイルネスは薄めでしょうか。
 そんな塩梅、かつてぶっ飛んだエレクトリックMilesバンドを支えたDave HollandのECM最終作は、エキサイティングなビッグバンドジャズ。




posted by H.A.


Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ