“Hafla” (2021) Jon Balke Siwan
Jon Balke (Keyboards, Electronics, Tombak)
Mona Boutchebak (Vocals, Quitra) Derya Turkan (Kemençe) Bjarte Eike (Baroque Violin) Helge Norbakken (Percussion) Pedram Khavar Zamini (Tombak) Per Buhre (Vocals, Viola)
ノルウェーの大御所Jon Balke、北アフリカ、中近東、その他のエスニックな色合いが交錯する摩訶不思議なプロジェクト、ECMレコードでの第三作。
“Siwan” (2007,2008)、“Nahnou Houm” (2017)ときて、本作。
メインのボーカリストは前作と同じアルジェリアの女性、他のメンバーは前々作から続いているのだと思います。
古の地中海周辺をテーマとした(?)プロジェクトだったように思うのですが、ヨーロッパ周辺の経度の南北すべてをカバーしたというか、どこなのかわからない場所、その過去と未来感が交錯する・・・、そんなサウンド。
アフリカンな感じでナチュラルだけど先端の香りも漂うビート、抑制された打楽器群。
聞き慣れない音階。
古楽、あるいは中近東的な弦の響き。
ヨーロッパな流麗さを纏った、あるいはときに土の香りもするようなストリングス。
それらが複雑に交錯する美しいアンサンブル。
そして、何語か分からない透明で美しい女声。
哀し気ながらどこか懐かし気で穏やかな空気感。
それら合わせて、紛れもなくメロディアスで美しい音楽、奇を衒った感もないのだけども、強烈な非日常感。
何が歌われ、語られているのかはわかりません。
古いのか新しいのかも判然としません。
あえてカテゴライズするとすれば、古楽とエスニックミュージックとポップスのフュージョン、ってな感じなのだと思います。
が、それにとどまらず、先端的な色合いを感じるのは、おそらくは静かに鳴り続けるパーカションと、ときおりさり気なく響くシンセサイザー的な音、そして緊張感を高めるストリングス。
全編哀し気な非日常の音ですが、決して深刻ではなく、気難しくもない、あくまでナチュラルで優しい空気感。
それが聞きやすさに繋がっているように思います。
優しいトリップミュージック。