吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Weather_Report

【Disc Review】“This Is This!” (1986) Weather Report

This Is This! (1986) Weather Report
Josef Zawinul (Keyboards) Wayne Shorter (Saxophones) Victor Bailey (Bass) Mino Cinelu (Percussion, Vocals) Peter Erskine, Omar Hakim (Drums)
Carlos Santana (Guitar) Marva Barnes, Colleen Coil, Siedah Garrett, Darryl Phinnessee (Vocals) 
 
This is this
Weather Report
MUSIC ON CD
ウェザー・リポート


 Weather Report、最終作。
 前作“Sportin' Life” (1985)のポップ路線踏襲。
 サックスが似合いそうなバラードでシンセサイザーが使われていたり、本作にもいかにもWeather Reportな高速な未来的4ビート曲がありカッコいいのですが、最後までWayne Shorterは出てこなかったり、Omar Hakimは一曲にしか参加していなかったり、バンドとしては事実上解散状態だったのでしょう。
 冒頭からクラッピングが効いたポップなビートにSantanaのロックギター。
 SantataとはドラマーLeon Chanclerが共通で、“Tale Spinnin'” (1975)あたりで共演していてもよかったんでしょうが、それから10年、やっと実現。
 デジタルっぽくてポップで明るい演奏はかつてのWeather Reportっぽくはありませんし、参加二曲のうち冒頭曲にはWayne Shorterは出てきません。
 が、もう一曲での弾むベースにロックな泣きのギターに続くサックスの絡みはやはりカッコいい。
 それでもやっぱりこのバンドで一番カッコいいのは、疾走する未来的4ビートの”Update”、と思うのは古い感覚のジャズファンなのでしょうか?
 1980年代も半ば。
 おりしもフュージョン全盛期が終わりそうな時期。
 このバンドの解散はそれを象徴するような出来事だったのかもしれません。
 総本山Miles Davisは、同時期“You're Under Arrest” (Jan.1984–Jan.1985)でポップなファンクフュージョンから次の作戦、Marcus Millerとのコラボレーションに移行中。
 次の世代の人の代表の一人、Pat Metheny は”First Circle” (1984)が同時期で、ここから一気に加速する時期。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisあたりを端緒としたジャズ・ロック・ファンクフュージョンの終着点の一つ。
 その第一世代が終わり、次の世代の次の音楽に移る時期、その象徴的な作品なのかもしれません。
 



 フュージョン、コンテンポラリージャズのベースとなる“In a Silent Way” (Feb.1969)、“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisを作ったのは、MilesとJoe Zawinulなのだろうし、以降も両者が抜きつ抜かれつしながら、常に前に進んでいたように思います。
 Miles諸作と同様に、時系列で聞くと少しずつ音を変えて行っているのが見える流れ。
 4ビートへのこだわりはJoe Zawinulの方が強かったようにも思えるのも面白いところ。
 それにしても、Miroslav Vitous、Alphonso Johnson、Jaco Pastorius、Victor Baileyと続くスーパーベーシストの系譜は凄いなあ。

※“Bitches Brew”的ファンクジャズ
 (Aug.6-12.1970) “Zawinul” Joe Zawinul 
 (Feb-Mar.1971) “Weather Report
 (1972) “Live in Tokyo” 
 (1972) “I Sing the Body Electric

※ファンクフュージョン
 (1973) “Sweetnighter
 (1974) “Mysterious Traveller

※楽園ファンクフュージョン
 (1974) “Native Dancer” Wayne Shorter with Milton Nascimento
 (1975) “Tale Spinnin'
 (1976) “Black Market
 (1977) “Heavy Weather

※ファンクフュージョン+未来的4ビート
 (1978) “Mr. Gone
 (1979) “8:30” 
 (1980) “Night Passage
 (1982) “Weather Report
 (1983) “Procession

※ポップなファンクフュージョン
 (1984) “Domino Theory” 
 (1985) “Sportin' Life” 
 (1986) “This Is This!” 


posted by H.A.

【Disc Review】“Sportin' Life” (1985) Weather Report

Sportin' Life (1985) Weather Report
Josef Zawinul (Keyboards) Wayne Shorter (Saxophones) Omar Hakim (Drums, vocals)
Victor Bailey (Bass, vocals) Mino Cinélu (Percussion, vocals, guitar)
Bobby McFerrin, Carl Anderson, Dee Dee Bellson, Alfie Silas (Vocals)
 
Sportin' Life
Weather Report
MUSIC ON CD
ウェザー・リポート


 Weather Report、ラス前は前作“Domino Theory” (1984)よりもさらにポップな音作りのアルバム。
 次作“This Is This!” (1986)は契約消化のため云々といった話、Wayne Shorter、Omar Hakimの参加も限られていて、本作が事実上のラストアルバムなのかもしれません。 
 パーカッションがMilesバンドに“Decoy” (Jun.1983–Sep.1983)まで参加していたMino Cinéluに交代しています。
 冒頭からいつもより明るく元気いっぱいなファンクフュージョン。
 いつものように弾むようなリズムですが、ホーン隊のようなシンセサイザーのブレイクが効いたちょっとディスコ(懐かしい!)っぽいなあと思うゴージャスで派手なビート。
 ボコーダー的な音、デジタル処理した気な楽し気なコーラス、ミュージックビデオで大人数でダンスしていそうな雰囲気は、まあ想定の範囲としても、イメージチェンジではあります。
 ここまでの流れに沿った複雑なファンクビートをはさみながらも、アコースティックギターを背景にしたフォークなボーカル曲などもこのバンドとは思えない音。新顔Mino Cinéluの曲、ギター、ボーカルですか。
 さらにはシンセサイザーがメロディを綴るあの”What's Going On”。
 ベースラインと、サックスのオブリガートがカッコいいんだけども、そこそこ素直で、Weather Reportっぽいところまでもって行けているのかなあ・・・
 “Domino Theory”ではまだ半数以上を占めていた複雑なビートのファンクは少なくなりました。
 それでも最後の二曲、ソプラノサックスが主導する幻想的なバラード、プラスチックな4ビートの香りもする複雑なビートの楽園ファンクと、いかにもなシンセサイザーとサックスの絡み合い。
 これこそこの期のWeather Report・・・ってな感覚は古いのかなあ・・・?
 もし本作がラストアルバムだとすれば、ハッピーエンドな感じで、それなりにカッコいい締めだと思うのだけど。
 きっとまだそのつもりではなかったんだろうなあ・・・
 
 


posted by H.A.


【Disc Review】“Domino Theory” (1984) Weather Report

Domino Theory (1984) Weather Report
Josef Zawinul (keyboards) Wayne Shorter (tenor, soprano sax) Victor Bailey (bass) Omar Hakim (drums) José Rossy (percussion)
Carl Anderson (vocals)

Domino Theory
Weather Report
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ウェザー・リポート


 新生Weather Report の第二弾、というより、ラストまで本作含めて後三作。
 徐々にポップ度が高くなっていく過程の一作。
 宇宙的なシンセサイザー?の響きで幕を開けますが、それは男性ボーカル入りバラードのAOR風ポップチューンの前奏。
 この曲でのWayne Shorterの出番はなし。
 これはなんとも・・・
 二曲目からはいつものファンクフュージョン
 複雑なビート、複雑なメロディの展開ながら、なぜか軽やかでポップ、コーラスなども挿入されて楽し気なムード。
 ドラム、ベースにシンセサイザーは使っていないようなので、グルーヴ自体は自然、前作“Procession” (1983)と同じくゴムまりのように弾む強烈なリズム隊。
 が、シンセサイザーの音色が多彩になり、さらにサックスにもエフェクティングした感じで、何だかデジタルなムードも強くなってきましたかね。
 “Mr. Gone” (1978)あたりから前作“Procession” (1983)まで続いた未来的な4ビートも本作ではありません。
 それでもだんだんと複雑なフュージョン~インプロビゼーション色も強くなり、最後のタイトル曲”Domino Theory”もは明るい色合いながら、超複雑系のファンクチューン。
 新しいジャズフュージョンを追及するこのバンドの面目躍如。
 全体を眺めるとカッコいいジャズファンクフュージョンです。
 でもなんで冒頭にボーカル曲を持ってきたんだろう?
 謎です。
 次作“Sportin' Life” (1985)を聞くとポップの方向に行くつもりだったのは分かるのですが。
 Miles Davisが復帰作 “The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)でボーカルを入れたのが数年前、Time after Timeを吹いた“You're Under Arrest” (Jan.1984–Jan.1985)が同じ時期。
 時代はジャズ、フュージョンではなく、ポップス、AORですか・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Procession” (1983) Weather Report

Procession (1983) Weather Report

Josef Zawinul (keyboards) Wayne Shorter (tenor, soprano sax) Victor Bailey (bass) Omar Hakim (drums, guitar, vocals) José Rossy (percussion, concertina)
The Manhattan Transfer (vocals)

Procession
Weather Report
MUSIC ON CD
ウェザー・リポート


 Weather Report、Victor Bailey, Omar Hakim、José Rossy を迎えた新メンバーでの第一弾。
 ここまでの作品と同じく、ファンクフュージョンですが、もっと作り込まれているというか、磨き上げられているというか、キッチリ、カッチリした質感。
 ゴージャス、あるいは分厚くなったというのが適当なのかもしれません。
 4ビートも何曲かで取り入れられており、前作“Weather Report” (1982)までの流れ、未来的4ビートのイメージもそのまま引き継がれています。
 新加入のVictor Baileyも大活躍、音量大きめ、前面にフィーチャーされている印象。
 ゴムボールのようにバウンドする質感もそのまま。
 もちろんJaco Pastriusとの音色、フレージング、ビート感の違いは大きいのですが、違うタイプのカッコよさ。
 Alphonso Johnsonとも違って、ファンキーさ、疾走感はそのままに、少し重厚になったイメージでしょうか。
 前後左右、縦横無尽に動きまわりつつもも、強烈なグルーヴと推進力。
 普通のファンクやフュージョンバンドでは聞けない凄い演奏、凄いベーシスト。
 Omar Hakimも同様に重厚な印象。
 結果的に、軽快なイメージだったJaco Pastorius、Peter Erskineのコンビと比べると少々重め、その分ゴージャスに、カッチリとして聞こえるのでしょうかね。
 先のコンビが軟式テニスボールような柔らかな弾み具合だとすれば、こちらは硬式、といった感じでしょうか。
 シンセサイザーの使い方もバリエーションが増えてきたようで、変わった音、変わったメロディの置き方がいくつも登場します。
 サックスもいつになく激しく吹く場面が多くなっています。
 楽曲も決定的な名曲、名メロディこそありませんが、ほどほどキャッチーでほどほどポップな曲が並びます。
 中心となっているJoe Zawinulの曲もさることながら、Wayne Shorterのバラードなどもカッコいい。
 などなど、メンバー交代の不安などどこ吹く風。
 完璧な作品です。
 楽曲のキャッチーさを除けば、スタジオ録音作品の中でも完成度では一、二を争うのでは?
 ある種の粗さのようなものもありません。
 そんなこんなで、“8:30” (1978,1979)にも匹敵するような名作だと思います。
 もっと話題になってもよさそうなアルバムだと思いますが、後は好みの問題なんでしょうかね?
 ちょうどジャケットのイラストのように、カラフルで隙間なくしっかり描き込まれた立体感のある印象。油絵的あるいはアメリカンなCGアニメ的なコッテリ系。
 私は同じくカラフルでも、“8:30” (1978,1979)のようなスッキリ系が好きなので・・・




posted by H.A.  




【Disc Review】“Weather Report” (1982) Weather Report

“Weather Report” (1982) Weather Report

Josef Zawinul (Electric keyboards, piano, clay drum, drum computer, percussion, voice, horn, woodwind, string and brass sounds) Wayne Shorter (Tenor, soprano sax) Jaco Pastorius (Bass guitar, percussion, voice) Peter Erskine (Drums, drum computer, claves) Robert Thomas Jr. (Percussion)
 
Weather Report
Weather Report
Sbme Special Mkts.
ウェザー・リポート


 Weather Report、Jaco Pastorius、Peter Erskineコンビ参加の最終作。
 Wayne Shorterの楽曲は“Mr. Gone” (1978)あたりから減っていった印象ですが、本作でも一曲のみ、Jaco Pastoriusの楽曲はなく、Joe Zawinul中心。
 “Mr. Gone” (1978)から試行してきたことがスッキリとまとまった印象。
 ちょっと変わった未来的なイメージの4ビートやら、聞き慣れない音階やら。
 不思議系の音は残っていますが、それらの諸作よりも明るいイメージでしょう。
 冒頭からファンクとジャズが入り混じるような不思議なビート。
 凄まじいベースと不思議な音のキーボードの絡み合い。
 バスドラムが凄い動きをしていて、それを含めてちょっと他にはないドラミング。
 続くはテナーとベースがリードする絶品バラード。
 さらにはファンクと例の未来的な4ビートが交錯する長尺な組曲。
 LPレコードB面に移っても軽快な曲が並び、またもやとてもカッコいいメロディのバラードも・・・
 などなど、わかりやすい楽曲、スッキリとした名演奏揃い。
 これが“Mr. Gone”以降で作りたかった音の完成形なのかどうかはわかりませんが、プラスチックな質感の未来的4ビートあり、不思議感あり、キャッチーさありの完成度の高いアルバムであることは間違いありません。
 気のせいかもしれませんが、ベースの音がJaco Pastoriusっぽくなくて、エフェクターを掛けたり、固めの音だったり、あの柔らかな音は少々のみ?
 二人が抜けたのはWord of Mouthとツアーがバッティングしたから、と読んだ記憶がありますが、音作りについての確執もあったのかもと思ったり、Jacoのあまりにも個性的な音、存在感が過剰に大きくなるのを嫌ったのかと思ったり。
 “Heavy Weather” (1977)以来のCo-Produce、Jaco Pastoriusのクレジットも残っているのでそうでもないのかなあ?
 最後に収められたベースとドラムがカッコいいファンク曲”Dara Factor Two”の一部に、この期に及んで”Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970) Miles DavisのWillie Nelsonに似た、”Jaco Pastrius” (1975-6) の“Come On, Come Over”と同じベースパターンが出てくるのも面白いなあ。
いずれにしてもJaco Pastorius、Peter Erskineは本作を最後に脱退。
 カッチリした質感のファンクフュージョンの“Procession” (1983)へと続きます。
 デビュー作”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のジャケットはミッドナイトブルー、ファンクフュージョン路線が始まった“Sweetnighter” (Feb.1973)は曇り空でしたが、本作のジャケットは青空のようです。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Night Passage” (1980) Weather Report

Night Passage (1980) Weather Report

Josef Zawinul (Keyboards) Wayne Shorter (Saxophones) Jaco Pastorius (Bass) Peter Erskine (Drums) Robert Thomas Jr. (Hand drums)
 
Night Passage
Weather Report
Sbme Special Mkts.
ウェザー・リポート


 Weather Report、ファンクフュージョン時代の集大成ともいえる“8:30” (1978,1979)に続く作品。
 ライブでの中心的な演奏はさておき、新しく試行していた音の“Mr. Gone” (1978) 、あるいは“8:30”のスタジオ録音部分の延長線にある音。
 少し沈んだムード、少々のデジタル臭、未来的な?4ビート、などなど。
 華やかでポップな“Tale Spinnin'” (1975)、“Black Market” (1976)、“Heavy Weather” (1977)とは雰囲気が違います。
 いつものファンクフュージョンのようで、4ビートのようなファンクのような、不思議なビート感、落ち着いたムードが印象に残ります。
 冒頭のタイトル曲からそんなビート。
 ベースが4ビートで弾いていて、他のメンバーが別のビート感で演奏しているから?
 スウィングしているんだけも、さらに後から押されるような、前から引っ張られるような、それでいて跳ねるような、何だかわからない不思議なビート感。
 決して派手でも華やかでもないけども、Jaco Pastoriusのゴムまりのように弾む4ビートは最高にカッコいいし、不思議な心地よさ。
 続くはベタなセンチメンタリズムが漂うバラード。
 これまたサックスが珍しくベタベタなブロー、さらに締めにメロディを出すべースのカッコいいこと。
 さらには超絶疾走ベースやら、いかにもWayne Shorterなフワフワした曲やら、もろ4ビートジャズやら、超絶疾走4ビートを背景にしたテナー、シンセサイザーの激しいインプロビゼーションやら。
 終盤はJaco Pastoriusの名ワルツ”Three Views of a Secret”から、”Madagascar”のライブ録音で締め。
 Joe Zawinulの曲は4ビートが中心ですが、 Wayne Shorter、Jaco Pastoriusの曲はいつも通りのマイペース。
 いずれにしても全編通じてポップに過ぎず、難解に過ぎず、とても不思議でとてもカッコいい音。
 私的にはライブ諸作を除けばこのアルバムが一番の愛聴盤。
 たぶんジャズ的なムード、少々地味かもしれないけども落ち着いているから。
 単に、最初に聞いたWeather Reportのアルバムが“8:30”、その次の作品だったからかもしれませんが・・・ 
 さて、“Mr. Gone” (1978)からの路線が完成したのは本作なのか、それとも次作“Weather Report” (1982)なのか? 
 とにもかくにも明るい色合いの次作“Weather Report”へ続きます。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Mr. Gone” (1978) Weather Report

Mr. Gone (1978) Weather Report

Joe Zawinul (electric piano, piano, synthesizers, percussions, melodica, voice) Wayne Shorter (Tenor, alto, soprano sax, voice) Jaco Pastorius (Bass, drums, voice) Peter Erskine (Drums, voice)
Tony Williams, Steve Gadd (Drums) Manolo Badrena, Jon Lucien, Deniece Williams, Maurice White (Voice)
 
ミスター・ゴーン
ウェザー・リポート
SMJ



 Weather Report、大人気作“Heavy Weather” (1977)、“8:30” (1978,1979)の間の作品。
 両大名作に挟まれて浮かばれないといったこともあるのかもしれませんが、少しムードが異なります。
 楽園ムードに貢献していたドラム、パーカッションのAlex Acuñaが脱退、Peter Erskineが途中から参加、大御所Tony Williams, Steve Gaddと楽曲を分け合っています。
 さらにはEarth, Wind & Fire のMaurice Whiteが参加した ソウル~AOR風ボーカル曲もあり。
 名演、大ヒットになりそうなのに地味な印象なのはなぜ?
 後にファンクフュージョンの集大成的な“8:30” (1978,1979)があるのでわかりにくくなっているように思いますが、“Tale Spinnin'” (1975)以来のポップなファンクフュージョンから音を変えようとしていたように感じます。
 リズムマシンは使っていないのだと思いますが、人工的、プラスチックな感じのビート感、さらに4ビートの再導入、変わった音階のメロディとベースラインの対比、電子的なSE、あるいはかつての”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のような、違うような幻想的で宇宙的なムード・・・
 などなど、新旧の諸々な要素を織り交ぜながら、さらにJaco Pastoriusを絡めて何がどこまで出来そうか試していたようにも感じます。
 タイトル曲、超絶ベースが映える超高速4ビートのMilesナンバー"Pinocchio"、Jaco流ファンクの“River People”、”Punk Jazz”などがそんな感じ。
 あるいは、“Young and Fine”などはとても明るくてオシャレ、かつ、ベース、サックス、キーボードのカッコいいインプロビゼーションがギュッと詰まった最高にカッコいい演奏、ボーカル曲“And Then”もヒットチャートに載ってもおかしくない質感で、ファンクフュージョン、ポップテイストの導入も放棄したわけではなさそうです。
 が、全体を眺めれば実験色、あるいはミステリアスな印象が強い感じ。
 その分ちょっと気難し気で一般受けはしないのかもしれないけども、実験的といってもそれぞれが完成されていて、意味不明ではない音作り。
 私は“Night Passage” (1980)と並んで大好きな作品です。
 次は少し時間の針を逆に回したようなファンクフュージョンの集大成ライブ“8:30” (1978,1979)。
 ライブの部分は以前からのポップなファンクフュージョンですが、そのスタジオ録音、新曲部分、さらに“Night Passage” (1980)に本作の流れが続いていると思います。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Heavy Weather” (1977) Weather Report

Heavy Weather (1977) Weather Report

Joe Zawinul (electric piano, piano, synthesizers, vocal, melodica, guitar, table) Wayne Shorter (Soprano, Tenor sax) Jaco Pastorius (Bass, mandocello, vocals, drums, steel drums) Alex Acuña (Drums, percussions)
Manolo Badrena (Percussions, vocal)
 
Heavy Weather
Weather Report
Sony
ウェザー・リポート


 Weather Report 、大人気作にして大ヒット作、大名作。
 “Sweetnighter” (1973)からのファンクフュージョン、あるいは “Tale Spinnin'” (1975)からのポップなファンクフュージョンの集大成。
 集大成は“8:30” (1978,1979)の方が適当だとすれば、こちらは完成形。
 キャッチーな楽曲、強烈なグルーヴ、ハイテンションで完璧な演奏。
 好みはあるかもしれませんが、Weather Reportを最初に聞くならこれか、“8:30” (1978,1979)で間違いないでしょう。
 本作からJaco Pastoriusが全面参加。
 既に完全にバンドに溶け込み、この人がいないとできない音が出来上がっています。
 躍動感はライブ諸作に譲りますが、逆に落ち着いたビート感とスッキリとまとまった音作り。
 冒頭からの“Birdland”、"A Remark You Made"、"Teen Town"は、オムニバスのベストアルバムかと思うような名曲、名演三連発。
 ゴージャスでポップな“Birdland”、このバンドで、あるいはJoe Zawinulの曲で聞いたことがないような直球ロマンチックなAOR風バラード"A Remark You Made"に、Jaco Pastoriusにしか書けない凄まじいファンク、とんでもないベースラインの"Teen Town"。
 これだけで既に大名アルバムですが、まだまだ続きます。
 LPレコードB面に移ると“Tale Spinnin'” (1975)以来の楽園ムードも全開。
 ネイティブな雄叫びとパーカッションのソロで幕を開け、Wayne Shorterの明るくキャッチーな楽園曲、隠れた大名演"Palladíum"では、Jaco Pastoriusがsteel drumsの彩り。
 知る人ぞ知る“Travels” (1982) Pat Metheny Groupのこちらも隠れた名曲名演サンバ”Straight on Red”はこれが元ネタか?と想えるようなカッコいい演奏。
 最後はJaco Pastoriusのハイテンションな名曲"Havona"。
 このベースを弾ける人は他にいるのでしょうか?
 聞いたことのないような凄まじい疾走感、凄まじいグルーヴに、凄まじいベースソロ、珍しくピアノの強烈なソロも交えながら、ドカーンと盛り上がって締め。
 これは一点の曇りもない大名アルバムでしょう。
 強いて欠点を探すとすれば、整いすぎ、よく出来すぎていることぐらい。
 このままのテイストで連発すればよかったようにも思うのですが、そうはいかないクリエイティブな皆様方。
 大名作の余韻に浸る間もなく、新しい音を求めにいった思われる“Mr. Gone” (1978)へと続きます。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Black Market” (1976) Weather Report

Black Market (1976) Weather Report

Joe Zawinul (Piano, Electric Piano, Synthesizers, Orchestration) Wayne Shorter (soprano, tenor sax, Computone Lyricon) 
Alphonso Johnson (Electric bass) Chester Thompson (Drums) Alex Acuña (Percussions)
Jaco Pastorius (Electric bass) Narada Michael Walden (Drums) 
 
Black Market
Weather Report
Sbme Special Mkts.
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 Weather Report、快進撃の名作ファンクフュージョン。
 全力疾走に入った絶頂期ですが、制作途中でファンクのキーマンAlphonso Johnsonが脱退し、Jaco Pastoriusが二曲に参加。
 “Bright Size Life” (Dec.1975) Pat Methenyとほぼ同時期の録音。
 このバンドに参加していなければ、Pat Metheny GroupのベースはJacoだったのでしょうから、なんとも微妙な関係。
 Alphonso Johnson の凄さ、というよりも超人的な凄まじさは、このバンドよりもむしろ近い時期のFlora Purim “Open Your Eyes You Can Fly”(1976)、“That's What She Said”(1976)あたりに感じますが、ドラマーが安定しない中、このバンドのファンクビート、グルーヴを作っていたのは彼であることは間違いないでしょう。
 その穴を埋めることが出来たのは、Jaco Pastorius以外はいなかったように思います。
 Staley ClarkでもPaul Jacksonでも今一つピンときません。
 当の天才Jaco Pastorius も、相当Alphonso Johnson を意識していたというか、影響を受けているように思います。
 全体の質感は異なり、Jacoの方が柔らかいのですが、似たフレーズはしばしば登場します。
 さておき、本作も“Tale Spinnin'” (1975)に引き続き、明るいファンクフュージョン。
 さらに洗練され、スムースに、ゴージャスになったようにも感じます。
 “Black Market”のサビの部分のシンセサイザーはオーケストラのようなゴージャスさだし、それに続くファンキーなグルーヴとソプラノサックスは、もはやこのバンドの定番。
 “Tale Spinnin''”収録の ”Man in the Green Shirt”にスピード感は譲りますが、同じようなカッコよさ。
 続くJaco Pastoriusのスペーシーなベースが映えるCannonball Adderleyの追悼曲も、湿っぽくならずに明るくゴージャスなバラード。
 さらには、ハイテンションなメロディとカッコいいベースラインが交錯する“Gibraltar”、意外な方向へ飛んでいくいかにも Wayne Shorterな、それでもポップな “Elegant People”、 名刺代わりのゴムまりのように弾むJaco流ファンク"Barbary Coast"、などなどなど、名曲名演、有名曲揃い。
 最後はAlphonso Johnson流ファンクで締め。
 素晴らしいベーシストでしたが、代わりに違う色合いのこれまたとんでもなく素晴らしいベーシストが加わり、結果的には快進撃が加速します。
 決定的な“Heavy Weather” (1977)へと続きます。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Tale Spinnin'” (1975) Weather Report

Tale Spinnin' (1975) Weather Report

Josef Zawinul (electric piano, piano, melodica, synthesizers, organ, steel drums, oud, percussions, vocals) Wayne Shorter (Soprano, tenor sax) Alphonso Johnson (Electric bass) Leon "Ndugu" Chancler (Drums, percussions) Alyrio Lima (Percussion)
 
Tail Spinnin
Weather Report
Sony
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 Weather Report、スッキリしたファンクフュージョンに完全に転換した大名アルバム。
 ここからしばらく大名アルバムが続く端緒、“Black Market” (Dec.1975-Jan.1976)、“Heavy Weather” (1977)と合わせて三部作とも思える、どれ劣ることのない名作群。
 ベーシストAlphonso Johnsonが定着。
 ドラマーはまだ流動的、本作ではSantanaからLeon "Ndugu" Chanclerが客演し、軽快な素晴らしいドラミング。
 もしこの人が定着していれば、もっと凄いバンドになったことも予見されるような名演ですが本作のみ。なかなかうまくはいきません。
 前作“Mysterious Traveller” (1974)では少々残っていた重厚で深刻な音もすっかりなくなりました。
憑き物が落ちたように明るい色合い。
 本作で後に通じるファンクフュージョンのWeather Reportサウンドが完全に出来がり。
 冒頭の”Man in the Green Shirt”からファンキーで軽快な疾走感全開。
 爽やかな楽園ムードすら漂う演奏。
 不思議なものでエレピもサックスもすっかり明るい音。
 超高速なファンクビートに、ちょっとズレたようにゆったりとした哀愁も漂うメロディ。
 これこそファンクフュージョンのWeather Report、これだけでも大名演なのだけども、1:50ぐらいからリズムパターンが変わってからが桃源郷。
 ファンキーなグルーヴに乗ってソプラノサックスが大爆発。
 これを“8:30” (1978,1979)あたりでやっていたら大名曲扱いになったのかも。
 “Live and Unreleased” (1975-1983)には収められていますが、ドラムがLeon "Ndugu" Chanclerではなくて、少々重めですかね。
 その他、楽曲はJoe Zawinul、Wayne Shorterが分け合っていますが、こらも両者で申し合わせたように明るいメロディ揃い。
 Wayne ShorterもMilton Nascimento とのブラジル作品“Native Dancer” (1974)を通過してふっきれた、といったところでしょうか?
 かつての影、妖しさは表面からは消えましたが、それはそれ。
 タメの効いた粘って跳ねるファンキーなベースと、軽快に突っ走るドラム。
 その上を縦横無尽に動きまくるキーボードとサックス。
 全曲名曲名演。
 そろそろ休養に入るかつての親分Milesを差し置いて、“Head Hunters” (Sep.1973) Herbie Hancockの追撃開始・・・、あるいはもう追いたのかな?
 次作、大人気作“Black Market” (1976)へと続きます。




posted by H.A.  


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