吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Wayne_Shorter

【Disc Review】“A Tribute to John Coltrane” (1987) David Liebman/Wayne Shorter

“A Tribute to John Coltrane” (1987) David Liebman/Wayne Shorter
Dave Liebman, Wayne Shorter (Soprano Sax)
Richie Beirach (piano) Eddie Gomez (bass) Jack De Johnette (drums)
 


 Dave Liebman, Wayne Shorter、ツインソプラノサックスでJohn Coltraneにトリビュートしようという懐かしのLive under the Skyでの録音。
 サックスの二人とJack De JohnetteはMiles所縁の人でもあり、Eddie Gomez、Jack De Johnetteは名作“Batik” (1978) Ralph TownerなどでのECM所縁、あるいはBill Evans所縁の名コンビ。
 Dave Liebman、Richie Beirachは“Lookout Farm” (Oct.1973)などでのこれまたECM所縁の名コンビ。
 Richie Beirach、Jack DeJohnetteはECMでの名作“Elm” (1979)で共演済。
といったことで、Miles Davisなのか、Bill Evansなのか、ECMなのか、いろんな所縁の人たちのバンドが演奏するJohn Coltraneのトリビュート。
 要するにクリエイティブ系ジャズの超一線級の人たちが集まった日本でのライブ。
 おりしも日本はバブルの宴の最中。
 どうせならピアノにKeith Jarrett、さらにMiles DavisとJaco Pastriusも呼んでしまえば歴史に残る・・・
 とかなんとかはさておいて、豪華メンバーでのごっつい演奏。
 冒頭の”Mr.PC”から突っ走るバンド。
 軽快に疾走するDave Liebmanに対して、同じく激しくブチ切れたような演奏ながら明後日の方向に向いているような不思議感の強いいつもながらのWayne Shorter。
 激しいけどもオーソドックスなDave Liebmanに対して、よくわからない不思議感満載のフレーズを紡ぐWayne Shorter。
 極めてわかりやすい対比の二人。
 何曲かはJohn ColtraneEric Dolphyの鬼のようなコンビのライブ演奏が”Impressions”(1961) John Coltraneなどに残されていますが、似たいような対比。
 本作の方がスッキリした演奏かもしれません。
 私の好みはWayne Shorterですが、Dave Liebmanの凄みが前面に出た演奏。
 続くはバラード、Dave Liebman, Richie BeirachのDuoでの“After the rain”~“Naima”。
 最後はこれまた激しい”Indiana”~”Impressions”の長尺メドレー。
 CDに収められたのは抜粋なのだと思うのだけども、なんともこれだけではもったいないような演奏。
 また、激しい演奏ですが、想定の範囲の展開、あるいは、激烈フリーに突入する場面もないのは少々寂しいかな?
 この期においては、それは前時代的だったのでしょうね。
 あの時代の素晴らしいジャズ、激しい系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Without a Net” (2010) Wayne Shorter

“Without a Net” (2010) Wayne Shorter
Wayne Shorter (Soprano, Tenor Sax) Danilo Pérez (Piano) John Patitucci (Bass) Brian Blade (Drums) Mariam Adam (Clarinet) Valerie Coleman (Flute) Monica Ellis (Bassoon) Jeff Scott (French Horn) Toyin Spellman-Diaz (Oboe)

Without a Net
Wayne Shorter
Blue Note Records
ウェイン・ショーター


 Wayne Shorter、現時点での最新作。
 “Footprints Live!” (2001)以来のカルテットでのライブ録音を中心としたアルバム。
 間に”Alegría” (2003)、”Beyond the Sound Barrier” (2005)の二作。
 ホーン陣の参加は一曲のみ。
 そちらは20分を超える不思議なメロディ、不思議な展開、変幻自在な組曲風。
 このバンドの自在な展開を譜面にしてみました、ってな感じでしょうか。
 他はカルテットでの演奏。
 “Footprints Live!”ではぶっ飛び気味でアバンギャルドだったサウンドが、少々オーソドックス寄りとは言わないけども、まとまってきた印象。
 複雑なビート感、展開はそのまま、違和感やトゲのようなものが薄くなり、スッキリした印象。
 おそらくバンドのスタイル自体は同じで、基本的に自由なんだけども、お互いの手の内が見えて慣れてきて、落ち着くところに落ち着くようになった・・・のでしょうか?
 それでも不思議系、変幻自在であることは変わりません。
 サックスはまだまだ吹けています。 というか吹きまくっています。
 “Footprints Live!”では感じられた少々の枯れがなくなり、艶やかな音で迷いのないフレージング。
 ピアノトリオも各人の反応がピッタリと合ってきた感じ。
 突っ走ると気持ちいいんだろうなあ、といったところで突っ走って、落ち着くところではそれなりに納まる感じ。
 メロディアスだったり、コード進行が見えたりする場面が増えているようにも思います。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) の“Sanctuary” を想い起こさせる、ルバートでのバラード”Starry Night”などは絶品です。
 聞いているこちらが慣れただけなのかもしれませんが・・・
 ある程度の骨子だけ決めて、後は自由自在にビートも和音も成り行きで音楽を作っていく、フリーになったらなったでそれでいいし、メンバーの波長が合えば定型な音に収斂されてもよし、そんな試みだったのでしょう。
 ある程度先が読めるようになった感じもありますが、やっぱり何だか現代の不思議系。
 クリエイティブ系の若手もビックリのクリイティブな演奏。
 御歳おいくつかかわかりませんが、まだまだ元気、やっぱり普通ではないWayne Shorterミュージック。




posted by H.A.

【Disc Review】“Footprints Live!” (2001) Wayne Shorter

“Footprints Live!” (2001) Wayne Shorter
Wayne Shorter (Soprano, Tenor Sax)
Danilo Pérez (Piano) John Patitucci (Bass) Brian Blade (Drums)

Footprints: Live by WAYNE SHORTER (2013-03-13)
WAYNE SHORTER
Universal Japan
ウェイン・ショーター


 Wayne Shorter、“High Life” (1994-1995)以来、久々のリーダー作。
 セッションやライブなどではちょくちょく名前が出ていますので、断続的に活動はしていたのでしょう。
 現代の強力ピアノトリオを従えてのライブ録音。
 これが変わっています。
 楽曲はBlue Note時代、Miles時代からのオリジナル曲中心。
 が、どれもメロディの断片は確認できるものの、全く違う曲に変身。
 何拍子で、何がどうなっていて、何を合図にバンドが進んでいるのかわからない複雑な音の構成。
 かといってフリーではなくて、何かが少しずつズレながら音を組み立てている、といったイメージ?
 それとも全てその時の各人の動きに合わせてフリーにやっているのでしょうか?
 指揮をとっているのはいったい誰なのでしょう?
 Wayne Shorterなのかもしれないし、Danilo Pérezなのかもしれません。
 かつてのMilesバンドもフレキシブルにビートが動くイメージでしたが、それよりももっとフレキシブル。
 Milesバンドはコードは制約として残っていたように思いますが、それも自由。
 全く先が読めない、曲もわからない展開。
 かといって各人が好き勝手に演奏しているのではなく、なぜか感じる統制。
 あっちに行ったりこっちに行ったりなのに、なぜかまとまってしまう演奏。
 この頃のコンテンポラリー系でもこの種の展開はなかったのでは?
 これはきっと新しいのでしょう。
 Wayne Shorterのサックスは少々枯れ気味の部分はあるものの、まわりの音の変化に合わせて激しいブロー。
 Danilo Pérezがバンドの中核なのでしょうか?
 盟友Herbie Hancockにラテン風味をつけて少々重くしたようなイメージのピアノ。
 少なくともちょっと聞きではピアノの変化に合わせて、ベースとドラムが反応し、サックスが乗っていっている印象があります・・・
 ん?そうでもないのかな?
 んー?よくわからん。
 これまた不思議系でエキサイティング。
 まだまだクリエイティブなWayne Shorterの再起動。




posted by H.A.

【Disc Review】“1+1” (1997) Herbie Hancock / Wayne Shorter

“1+1” (1997) Herbie Hancock / Wayne Shorter
Herbie Hancock (Piano) Wayne Shorter (Soprano Sax)

1+1
Wayne Shorter/Herbie Hancock
Polygram Records
1997-07-01
ハービー ハンコック
ウエイン ショーター


 Milesバンドの盟友Herbie Hancock、Wayne ShorterのDuo作品。
 Wayne Shorter はファンク系の“High Life” (1994-1995)以来、純アコースティックな録音は1960年代以来でしょうか。
 とても静かで穏やか、少々妖しいバラード集。
 楽曲提供は各人概ね同数、三分の一がフリーインプロビゼーション、カバーが一曲。
 お互い手の内は知り尽くしているでしょうし、フレキシブルに反応し合うスタイルはかつてのまま。
 それでもかつての熱気は消え、大人な音。
 もうブチ切れながらブローする場面もなければ、突っ走る場面も少々のみ。
 両者のクールさ、ハードボイルドさはそのままに終始落ち着いた音使い。
 一つ一つの音を丁寧に置いていく印象、それでも流麗なピアノと、少々不思議な方向に動く、純フュージョン系の人のようにスムースではないソプラノサックス。
 やはり名コンビ。
 同じく名コンビのDuo作品“1975: The Duets” (1975) Dave Brubeck, Paul Desmondとは役回りが逆だなあ、と思ってみたり。
 あちらほどノーブル、オーソドックスではなく、やんちゃな風味やスリルも残っていますが、上質さは同じ。
 “An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea In Concert” (1978) Herbie Hancock & Chick Corea と同様に、かつての親分Milesが聞いたらたぶん気に入らないのかもしれないけども、この上品なだけではない穏やかさは希少。
 とても大人で穏やかですが、わずかなトゲ。
 とても素敵な音楽です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Native Dancer” (1974) Wayne Shorter with Milton Nascimento

“Native Dancer” (1974) Wayne Shorter with Milton Nascimento
Wayne Shorter (soprano, tenor sax) Milton Nascimento (Guitar, Vocals)
David Amaro (Guitar) Jay Graydon (Guitar) Herbie Hancock (Piano, Keyboards) Wagner Tiso (Organ, Piano) Dave McDaniel (Bass) Roberto Silva (drums) Airto Moreira (percussion)

ネイティヴ・ダンサー
ウェイン・ショーター
SMJ



 Wayne Shorter、久々のリーダー作。
 ブラジルのカリスマMilton Nascimentoとの共演。
 リーダー作としては“Odyssey of Iska” (Aug.1970)以来、Weather Reportでは“Mysterious Traveller” (1974), “Tale Spinnin'”(1975)あたりと近い時期。
 リーダー作でボサノバ曲はいくつか取り上げていましたし、“Moto Grosso Feio” (Apl.Aug.1970)ではMilton Nascimentoの名曲“Vera Cruz”を収録。
 そちらはちょっとびっくりのヘビーさでしたが・・・
 Weather Reportとしてもこれからラテン混じり、楽園テイストに移行しようとしていた時期でもあるのでしょう。
 本作は、かつてのリーダー作やこの頃までのWeather Report諸作からは想像できない、あくまで明るいブラジリアンフュージョンアルバム。
 盟友Herbie Hancockの色合いも強いのでしょう。
 なお、同時期、親分Miles Davisはとてもハードな“Dark Magus” (Mar.1974)、完全に別の道を進んでいらっしゃたようです。
 半数の楽曲がMilton Nascimento、ブラジル的な郷愁感が漂う、現代的なメロディの素敵な曲ばかり。
 Wayne Shorterの楽曲も不思議さが薄くなり、明るくなってすっかりイメージチェンジ。
 幻想的なエレピの響きがとてもいい感じで背景を作り、ソプラノサックスの落ち着いたインプロビゼーション、裏表を使い分けたこれまた幻想的な声。
 あのファルセットから始まり、最後のHerbie Hancock作、ルバートでのバラードに至るまで、最高の演奏。
 とても楽園チック。
 Wayne Shorterの諸作としても極めて異色、Weather Report色、ジャズっぽさはあまりありませんが、ここからこの後のWeather Reportに移植していったのかな?と思う展開がしばしば。
 ジャズ、フュージョン、Weather Report、ブラジル音楽、ポップス・・・がいい感じでフュージョンしたとても素敵な音楽。
 結局、Milton Nascimentoのアルバムとしてもこれが一番好みだったりして・・・
 なんだかんだいってもジャズっぽいもんね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Odyssey of Iska” (Aug.1970) Wayne Shorter

“Odyssey of Iska” (Aug.1970) Wayne Shorter
Wayne Shorter (tenor, soprano sax)
Gene Bertoncini (guitar) David Friedman (vibraphone, marimba) Ron Carter, Cecil McBee (bass) Billy Hart, Alphonse Mouzon (drums) Frank Cuomo (drums, percussion) 

Odyssey of Iska
Wayne Shorter
Blue Note
ウエイン ショーター



 Wayne Shorter、Milesのバンドを抜け、“Weather Report” (Feb.Mar.1971)の前作になるセッション。
 Milesの近作はロック、ファンク色を強めた過激な“Live Evil” (Dec.16-19.1970)。
 Wayneが残っていればまた違うムードの作品だったかもしれませんが、なかなかそうはいかないようです。
 一方の本作は“Super Nova” (Aug.Sep.1969)、“Moto Grosso Feio” (Apl.Aug.1970)とメンバーをガラッと変えてのフリーっぽいWayne流不思議系ジャズ。
 冒頭から抽象的なメロディに定まらないビート。
 幻想的なムード。 ちょっと怖い。
 サックスは穏やかでメロディアスですが、ちょっとサイケなギターに激しいビート。
 いい感じのメロディになるかな?と思っていると明後日の方に飛んで激しい演奏。
 そんな演奏が続きます。
 本作にも前二作と同様に、一曲のみボサノバ、それも長尺な演奏が収録されています。 
 Wayne Shorterとボサノバはどう考えても結びつかいないし、Weather Reportとも直接的には繋がるイメージもありません。
 やはり謎です。
 ま、奥様?のAna Mariaさんの影響なのでしょう。
 それが幻想的かつスムースでとてもいい感じ。
 この演奏は“Native Dancer” (1974)に繋がりそうなイメージでしょう。
 他は激しい演奏ですが、激烈まではいかないかな?
 締めは強烈なグルーヴのファンクチューン。
 Weather Report に近いようなそうでもないような・・・
 “Weather Report” (Feb.Mar.1971)まであと半年。
 この次のリーダーアルバムは全く異質、とても明るい“Native Dancer” (1974)。
 この後はしばらくWether Reportに専念していたのでしょう。
 1960年代Wayne Shorterミュージックの締め。
 “Weather Report” (Feb.Mar.1971)、“Native Dancer” (1974)に繋がるような、繋がらないような、とても妖しい幻想的なジャズ。
 やはりこの人、不思議です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Moto Grosso Feio” (Apl.Aug.1970) Wayne Shorter

“Moto Grosso Feio” (Apl.Aug.1970) Wayne Shorter
Wayne Shorter (soprano saxophone, tenor saxophone)
John McLaughlin (12 string guitar) Chick Corea (marimba, drums, percussion) Ron Carter (bass, cello) Dave Holland (acoustic guitar, bass) Miroslav Vitous (bass) Micheline Pelzer (drums, percussion)

Moto Grosso Feio
Universal Music LLC
ウエイン ショーター



 Wayne Shorter、これまた問題作。
 “Odyssey of Iska” (Aug.1970)と一部のセッションは重複、どちらが先の発表だったのかは情報をもっていません。
 前月録音の“Live At The Fillmore East-It's About That Time” (Mar.1970)を最後にMilesのバンドを抜けて最初のセッションになるのだと思います。
 ブラジリアンフリージャズ、ってな言葉が適当かどうかはわかりませんが、ワールドミージックとフリージャズを混ぜ合わせたような音。
 タイトルはアマゾン川のことのようですので、それをイメージした音なのでしょう。
 全編にエスニック風味が漂っています。
 が、深刻で混沌としたイメージ。
 完全なフリーの場面が多いわけではありませんが、特に後半はここまで過激にしなくても、と思うような深刻で激烈なフリージャズ。
 あのブラジルの密林ミュージック“Dança Das Cabeças” (Nov.1976) Egberto Gismonti、Nana Vasconcelosも真っ青、というか、全く異なる音楽です。
 冒頭は少々妖しめですが、まずまず穏やかなワルツ。
 郷愁漂うブラジル風の音の中を漂うソプラノサックス・・・かと思いきや、だんだんとビートも変わってフリーへ移行し、気が付けば混沌・・・
 二曲目に入っても、哀愁漂う素晴らしいであろうメロディの断片が聞こえるのだけども、なぜか混沌。
 凄い演奏が続きます。
 少々楽園的なムードで始まるアナログB面も、徐々に過激に。
 “Super Nova” (Aug.Sep.1969)、“Odyssey of Iska” (Aug.1970)でもブラジル曲を取り上げていましたが、本作では後に共演するMilton Nascimentoの名曲“Vera Cruz”。
 超スローテンポで全くイメージの異なる沈痛で過激な演奏。
 最後は沈痛、激烈なフリージャズで締め。
 こりゃ凄いや。
 “Weather Report” (Feb.Mar.1971)の一年ほど前の録音。
 Miroslav Vitousも参加していますが、Weather Reportらしさはないと思います。
 本作、その前後含めた三作はどれも過激な問題作。
 さすが普通の人とはちょっと違うWayne Shorterの凄み、狂気なのだと思います。
 後にJoe Zawinul、Wether Reportがその憑き物を落としてくれた・・・のかもしれません。
 同じく過激な次作“Odyssey of Iska” (Aug.1970)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Super Nova” (Aug.Sep.1969) Wayne Shorter

“Super Nova” (Aug.Sep.1969) Wayne Shorter
Wayne Shorter (soprano saxophone)
John McLaughlin (acoustic, electric guitar) Sonny Sharrock (electric guitar) Chick Corea (drums, vibes) Miroslav Vitouš (bass) Jack DeJohnette (drums, kalimba) Airto Moreira (percussion) 
Walter Booker (acoustic guitar) Maria Booker (vocals) Niels Jakobsen (claves) 

Super Nova
Blue Note Records
ウエイン ショーター



 Wayne Shorterの世紀の問題作。
 もうひとつの“Bitches Brew” (Aug.1969) Miles Davis・・・と言うには全く違う質感、それよりももっとジャズ寄り、但し過激系。
 同時期の“Infinite Search” (Nov.1969) Miroslav Vitousにも近いムードの演奏がありましたが、こちらの方が過激さは上。
 というか、あちらは全然普通ですが、こちらはちょっと凄い演奏。
 メンバーはベースを交代してMilesが入れば、“Bitches Brew”の主力メンバーがそのまま揃います。
 さらにスタジオ入りも“Bitches Brew”の同月~次月。
 似ていてもおかしくないのでしょうが、質感は全く異なります。
 “Bitches Brew”にOrnette Coleman的なフリージャズを取り込み、混沌の場面が多い激烈系フリージャズ。
 いや、フリーではないので、フリーっぽい不思議系Wayne流ジャズ、激烈系。
 が、その間に端正でハードボイルドなジャズ、さらに一曲だけJobimナンバーが入る、もうなんだか訳のわからない、いかにもWayne Shorterの世界。
 冒頭からピリピリした緊張感の激しい音。
 ギターもエレピもベースも“Bitches Brew”が大人しく聞こえるような何でもありの過激な演奏。
 Jack DeJohnetteは激しく叩きまくり。
 彼のドラムなのでもっと軽快な感じもしてもよさそうなのですが、ベビーなビートもそこかしこに。
 ソプラノ一本のWayne Shorterもピリピリした音使い。
 Milesバンドで没になった"Sweet Pea", “Water Babies”などは、まずまず穏やかでカッコいいジャズなのですが、同じく"Capricorn"は全編ドラムソロ状態の激烈なルバートでのバラード。

 さらに、エスニックな音の洪水の中から、今にも泣き出しそうな静かで妖し気なムードの歌が唐突に始まり、唐突に消えていく、Jobimの”Dindi”の凄い演奏。
 他にも激しさ、妖しさ全開。
 といった感じで、何曲かのカッコいいジャズ演奏を忘れてしまうような不思議で凄まじい演奏が印象に残ります。 
 悲しげなメロディ、優雅なワルツにハードボイルドな緊張感が入り混じる“Water Babies”など、MilesバンドWater Babies” (Jun.1967,Nov.1968)でのバージョンをはるかに凌ぐ、一番カッコいいWayneの曲、演奏のようにも思うのですが、周りが周りなので霞んでしまっていますかね?
 その激しさに慣れてしまえば、これぐらいカッコいい作品はあまりないと思うのですが、やはり「超新しい」問題作ではあるのでしょう。
 この後、Wayne最高の名演とも思える“Live At The Fillmore East-It's About That Time” (Mar.1970)でMilesとの共演は終了。
 さらにこれまた不思議で過激な “Moto Grosso Feio” (Apl.Aug.1970)、“Odyssey of Iska” (Aug.1970)へと続きます。
 さらに“Weather Report” (Feb.Mar.1971)までもう少し。





posted by H.A.

【Disc Review】“Schizophrenia” (Mar.1967) Wayne Shorter

“Schizophrenia” (Mar.1967) Wayne Shorter
Wayne Shorter (tenor saxophone)
Herbie Hancock (piano) Ron Carter (bass) Joe Chambers (drums)
Curtis Fuller (trombone) James Spaulding (flute, alto saxophone)

Schizophrenia
Wayne Shorter
Blue Note Records
ウエイン ショーター


 Wayne Shorter、問題作"Super Nova” (Aug.Sep.1969)直前のリーダー作。
 Milesバンドでは“Sorcerer” (May.1967 (Aug.1962))、“Nefertiti” (Jun.Jly.1967) Miles Davisが近い時期。
 怖そうなタイトルからしてそれ系かと思いきや、“Adam's Apple” (Feb.1966)と同様に、これまたファンキーなジャズロックからスタート。
 かつての盟友Bobby Timmonsのリーダー作“The Soul Man!” (Jan.1966)からの再演。
 とてもキャッチー、AメロからBメロへの転換がカッコいいモダンジャズ的な曲。
 演奏もいいのですが、ここに配置するのは・・・?
 さておき、以降はハイテンションな新主流派的演奏。
 “Adam's Apple”の醒めたムードはなくなり、“The All Seeing Eye” (Oct.1965)をよりスッキリさせたイメージ。
 クールで、ハードボイルドで、少々妖しい音。
 アップテンポで全員が強烈に突っ走るカッコいいインプロビゼーション、それにフレキシブルに反応するリズム隊。
 Mielsバンド的演奏も戻ってきています。
 あそこまでクールではなくて、少々ハード系に振れ、普通のジャズっぽさ、俗な感じはありますが・・・
 たとえメンバーが近くとも、あのムードはMilesがいないと出ないのでしょうね。
 全体を眺めれば、Wayne Shorter的なクールさ、ハードボイルドが前面に出た新主流派混じりのオーソドックスなジャズ、エキサイティング系。
 モダンジャズと呼ぶには違和感はあるのかもしれませんが、このアルバムまではそれに近い音です。
 本作に次作“Super Nova” (Aug.Sep.1969)の激烈、混沌に繋がる何かは見つかりません。
 ここから二年、“Bitches Brew” (Aug.1969) Miles Davisのセッションまでに何かを見つけた、あるいは試行錯誤していたのでしょう。
 それにしても次作に当たる“Super Nova”は激変だなあ・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Adam's Apple” (Feb.1966) Wayne Shorter

“Adam's Apple” (Feb.1966) Wayne Shorter
Wayne Shorter (tenor saxophone)
Herbie Hancock (piano) Reggie Workman (bass) Joe Chambers (drums)

Adam's Apple
Wayne Shorter
Blue Note Records
ウエイン ショーター


 Wayne Shorter、ごっつい“The All Seeing Eye” (Oct.1965)に続くワンホーンカルテットでの作品。
 いきなりファンキーなジャズロック。
 クールで妖し気な前作の流れからすると不思議ですが、よくわかりません。
 続くワルツ、さらにはラテン、代表曲”Footprints"へと続きます。
 それでも能天気盛り上がるわけでなく、演奏自体はクールな質感、なんだか変わった雰囲気。
 クールなのですが、なぜか新主流派、あるいはこの期のMilesバンド的なムードも薄くなりました。
 ベースがRon Carter ではなくてReggie Workmanなことも前後の諸作と違ったムードになっている要因かもしれません。
 さらに十分に吹いているのですが、どこか醒めたようなサックス。
 いつものムード、フレーズですが何か空気感が違います。
 ビート感も少し変わった演奏が印象に残り、何かを試していたのかもしれません。
 本作でもHerbie Hancockのピアノのカッコよさが目立ちます。
 クールで鋭い切れ味。
 ソロはもちろん、バッキングやオブリガード、一つ一つの音が素晴らしい。
 Wayne Shorter的なクールさ、ハードボイルドさはそのまま。
 全体的に力が抜けている分、癖がないので聞きやすくなっているのでしょう。
 それで人気作なのかもしれません。




posted by H.A.
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