吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Thierry_Lang

【Disc Review】“Lyoba Revisited” (2009) Thierry Lang

“Lyoba Revisited” (2009) Thierry Lang
Thierry Lang (Piano)
Heiri Känzig (Percussion, Contrabass) Matthieu Michel (Bugle, Trumpet) Ambrosius Huber, Andy Plattner, Daniel Pezzotti, Daniel Schaerer (Cello)

Lyoba Revisited
Thierry Lang
Ais
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Lang、チェロのカルテットを加えて、スイスの作曲家Joseph Bovetの作品を中心とした演奏集。
 とても優雅で穏やかな音。
 全編、淡い哀愁、郷愁の流れる演奏揃い。
 ワルツの優雅なビートからスタート。
 タメが効いて少し遅れ気味に入ってくるピアノと寂寥感あふれるトランペット。
 とても優しい旋律を奏でるチェロのアンサンブル。
 全編バラード。
 ビートが変わっても優雅さは消えません。
 クラシックの香りが強いチェロとジャズの香りの強いベース、トランペット。
 Thierry Langがその中間、といった印象。 いつもの美しい音と優雅なフレージング。
 穏やかで静的なテーマ提示から、インプロビゼーションになると躍動感が出て、また穏やかな表情に戻る、その繰り返し。
 Thierry Langからすれば完全なはまり役・・・というか聞いて育った音楽、体に染みついた音を形にしたのでしょう。
 全編哀感が流れる音ですが、暗さはなく、何かを慈しむようなイメージ。
 スイスはきっとこんな空気のところなのでしょう。
 本作で取り上げられているスイスの伝統な楽曲と、彼が書くオリジナル曲のムードは同じ。
 これまでの彼の諸作に流れていた空気感も同じ。
 それがあまたいるBill Evans系ピアニストとは一線を画すところ。
 美しいだけではなく、優しく穏やかな質感の根源なのかもしません。
 ドラムレス、チェロが入ることでトリオの諸作よりもさらに上品で優雅、優し気。
 美しさはそのままに、上品さ、優雅さ、優しさが増長されたイメージ。
 Thierry Langの音楽の色合いが強調されたといった意味では、代表作といえるかもしれません。
 なお、別レーベルに“Lyoba” (2007), “Lyoba2” (2008)があり、編成、メンバー、楽曲も同様。
 アレンジは微妙に異なりますが、大きくは変わりません。
 本作は先の二作から楽曲を抜粋し、スッキリしている印象。
 また、楽曲の並び、インプロビゼーションの展開などから、ジャズ的な印象、Thierry Lang諸作とも直接つながる感じかもしれません。
 先の二作はクラシックの印象が強くてより優雅です。
 いずれにしても、とても上品で優し気、最高に優雅な一作。
 いや、三作。





【Disc Review】“Guide Me Home” (1999) Thierry Lang

“Guide Me Home” (1999) Thierry Lang
Thierry Lang (piano)

Guide Me Home
Thierry Lang
EMI Import
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Langのソロ作品。
 満を持したソロアルバム。
 ここまでいかにもピアノソロに似合いそうな耽美的、内省的な演奏でしたので、雑味を排した音がどこまで美しくなるのか・・・
 これが意外にもオーソドックスな音。
 美しさは全開。
 あの独特のタメの効いた節回しもいつも通り。
 でも想像していた音とは少々印象が異なります。
 レーベルがBlue Noteだから?
 録音、ミキシングの具合?
 ドラムとベースがいないので自身でビートを作っているから?
 感情移入を抑えて淡い感じを出そうとしたから?・・・
 おそらくその全て。
 オリジナルとスタンダードが半々。
 ソロゆえのビート感の伸び縮みはありますが、そこそこ定常。
 強い浮遊感・・・といった感じではありません。
 ビートを崩す場面、強い感情を出す場面、強烈に疾走する場面もありません。
 あくまで淡々と流れていく美しいピアノの音。
 だから落ち着いて聞けるのでしょう。
 気持ちが穏やかに平坦になっていくような音。
 夜な感じではなく、静かな昼下がりに合う音。
 とても穏やかで美しい作品です。
 なお、CD二枚組。
 一枚はあのQueenのFreddie Mercuryのドキュメンタリー映像"Freddie Mercury - An Untold Story"のサウンドトラック、Freddie Mercuryの作品集です。
 “Bohemian Rhapsody”かあ・・・
 これもとても穏やかです。




posted by H.A.

【Disc Review】“Nan” (1998) Thierry Lang

“Nan” (1998) Thierry Lang
Thierry Lang (paino)
Heiri Kanzig (bass) Marcel Papaux (drums) Hugo Read (alto, soprano sax) Daniel Pezzotti (cello)

Nan
Thierry Lang
Blue Note
ティエリー・ラング

 スイスのピアニストThierry Lang、Blue Noteに移籍して何作目かの作品。
 “Private Garden” (1993)など、地元?のレーベルでの音とは少し違った印象。
 何かカチッとしたというか、揺らぎが小さくなったというか・・・
 メンバーもほぼレギュラーだし、元々アグレッシブでも奇をてらうタイプでもなかったし、ピアノの美しさ、フレージングはそのままなので、何がどう変わったのかいまだにわかりません。
 ビートがきれいに整いすぎてるのかもしれれないし、微妙な音場の調整なのかもしれません。
 さておき、相変わらずの美しいピアノ。
 いつものトリオにサックスとチェロを加えた上品で手堅いアンサンブル。
 タイトル曲を含めた愛奏のオリジナル曲にスタンダードにポップス。
 チェロが入ってもクラシック臭は強くなく、あくまでジャズな演奏。
 優雅なワルツから始まり、いつもと同じくバラードが印象に残る演奏。
 が、何曲かのアップテンポの曲も素晴らしい。
 ハイテンションに吹きまくるHugo Readのサックス、それにつられてかThierry LangのピアノもKeith Jarrett的なエキサイティングな演奏。
 アップテンポになってもあの微妙なタメが生きていて、なんとも言えない上品で心地よい疾走感。
 一音一音が明瞭な美しいピアノ。
 音符が見えてきそうな音、ってな表現が当たっているかどうかわかりませんが、そんな音。
 などなど、さすがにBlueNote配給だけあってか、バリエーションに富んでいて、かつ、バランスが取れた演奏集。
 あの”The long and winding road”のジャズバージョンとかなかなか聞けないしね。
 なお録音はECMのホームグランドRainbow Studio, Oslo。
 音の感じは違うのですがね・・・
 もし、ECMでプロデューサーがManfred Eicherだったらどうなっていたんでしょうね・・・





posted by H.A.

【Disc Review】“Between A Smile And Tears” (1991)、“Private Garden” (1993) Thierry Lang

“Between A Smile And Tears” (1991)、“Private Garden” (1993) Thierry Lang
Thierry Lang (Piano)
Ivor Malherbe (Double Bass) Marcel Papaux (Drums)


Private Garden
Thierry Lang Trio
Elephant
ティエリー・ラング


 スイスのピアニストThierry Lang、とても美しいピアノトリオ。
 デビューから第二作、三作に当たるのだと思います。
 もう20年以上も前の作品のようですが、今聞いても全く古くないし、その後にこれ以上美しいピアノトリオがあったかなあ・・・と考えてもなかなか思いつきません。
 また、ソロ、ホーン入り、チェロ入りなど、いろんな編成の作品がありますが、この人には本作のようなオーソドックスなピアノトリオが一番似合うと思います。
 印象としてはソロの方がよさそうですが、不思議です。
 ビート作りを他の人に任せて、インプロビゼーションに集中できるからでしょうか?
 後ろ髪を引かれるようなタメや美しいタッチ、美しいメロディのインプロは、トリオでの演奏で一番出てきているように感じられますし、一番映えるようにも思います。
 本二作はそんな感じの美しいピアノトリオの知る人ぞ知る名作。
 ピアノの音そのものが美しいし、楽曲が美しくて、インプロビゼーションが美しくて、バンドも上品で美しい。
 いわゆるBill Evans系の一人なのでしょう。
 耽美的、内省的、抒情的・・・その他それらしい形容詞すべてがあてはまるような音。
 当時流行った音でしょう。
 それでも何か一歩抜け出した美しい演奏。
 タッチが特別なのか、録音の妙なのか、音の組み立て方に何か特別なものがあるのか、その他諸々、その要因はよくわかりません。
 おそらくその全て。
 後の“Lyoba Revisited” (2009)などを聞くと、スイスの人だから、その育った環境の空気感なのかなあ、とか思ったりします。
 スローはもちろん、速いフレーズの一音一音にも微妙なタメがあり、ビートが伸びたり縮んだり。
 また、一瞬の空白の中から立ち上がってくる音使いがカッコいい。
 それが絶妙な優雅さ、美しさに繋がっているのかもしれません。
 静かな空間の中に加速しながら走る澄み切った高音にはゾクリときます。
 そんな場面が多々。

 両作とも名曲名演揃い。
 “Between A Smile And Tears” (1991)の冒頭からしっかりタメの効いた美しさ、抒情感全開の音。
 オーソドックスながらとてつもなく美しいスタンダード演奏に、これまた美しいメロディのオリジナル曲。
 ECM的な毒気こそありませんが、少々のクラシックの香りが漂う、ヨーロピアンピアノトリオの典型、教科書のような音。
 “Private Garden” (1993)では、後に何度も再演される冒頭のスローテンポの名曲“A Star to My Father”からこれまた美しさ全開。
 続く少しテンポを上げた“Nunzi”も同等の美しさ。
 全編ルバートの“Private Garden”を経て、最後の定番曲“Nane"まで、これでもかこれでもかと美しい演奏が続きます。
 モダンジャズ的な躍動感が足らないとか、美しすぎて毒が無くて・・・とかいった向きもあるのやもしれませんが、ここは素直に美しい音、ヨーロピアンジャズな音を楽しむべきでしょう。

 さてこの文章の中に「美しい」はいったい何回出てきたのでしょう。
 アルバム二枚、最初から最後まで、そんな「美しい」アルバムです。



【Disc Review】”Trio Tage” (Oct.Nov.2002) George Gruntz, Thierry Lang, Dino Saluzzi

”Trio Tage” (Oct.Nov.2002) George Gruntz, Thierry Lang, Dino Saluzzi
George Gruntz, Thierry Lang (piano) Dino Saluzzi (bandoneon)

トリオ・ターゲ
ティエリー ラング,ディノ サルーシ, ジョルジュ グルンツ
P-JAZZ
2005-04-20


 Dino Saluzzi、スイスのピアニスト二人とのトリオ作品。
 George Gruntzとはビッグバンド作品”Theatre” (1983)以来の共演。
 美しいピアノの代表格Thierry Langは、郷愁感が強い諸作、牧歌的な作品も作っており、Dino Saluzziは憧れの人だったのかもしれません。
 いずれにしても異色の共演、異色の編成。
 ”If” (2001) Myriam Alterと同様に、ECM以外で録音すると何故かタンゴの香りが強くなるのも面白いところ。
 本作は静謐で美しいバラード集。
 冒頭、ピアノによる静かなフリージャズ。少々混沌の時間はそこだけ。
 リズムが入りバンドネオンが入ると独特の揺れ。
 そして郷愁感あふれるDino Saluzziのメロディ。
 美しいピアノを背景にして自在に動き回るバンドネオン。 揺らぐ空間。
 その揺らぎはバンドネオンの音が止むまで止まりません。
 ピアノだけになると一転して端正なリズム、ジャズの気配。
 が、バンドネオンの参加とともにまた揺らぐ時間へ・・・その繰り返し・・・。
 各者が持ち寄ったとてもセンチメンタルなメロディ。
 Dino Saluzziの郷愁感、ヨーロピアンのスタイリッシュな哀愁感。
 タンゴであれ、ジャズであれ、Dino Saluzzi Worldであれ、美しいメロディ、美しいピアノと揺らぐバンドネオンが作る素晴らしい時間。
 とても素敵なアルバムです。

※音源がないので収録曲をThierry Langの作品から。


posted by H.A.
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