吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Rock

【Disc Review】“Amigos” (1976) Santana

“Amigos” (1976) Santana
Carlos Santana (guitars, background vocals, percussion, congas, juror)
Tom Coster (acoustic piano, Rhodes electric piano, Hammond organ, Moog synthesizer, ARP Pro Soloist, ARP Odyssey, ARP String Ensemble, Honner Clavinet D6, background vocals) David Brown (bass) Leon "Ndugu" Chancler (drums, timbales, Remo roto-tams, percussion, congas, background vocals) Armando Peraza (congas, bongos, background vocals) Greg Walker (vocals)
Ivory Stone, Julia Tillman Waters, Maxine Willard Waters (background vocals)
 
Amigos
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santanaのジャジーなラテンロックシリーズ最終作・・・かどうかはわかりませんが、このあたりまでがジャズに慣れた耳でも普通に心地よい作品でしょうか。
 あるいはTom Costerとのコンビネーションが確立、ポップチャートも視野に入ってきた、といった感じ?
 ”哀愁のヨーロッパ”が入っているゆえに、そのイメージが強いのですが、全体的には洗練されたラテンフュージョン。
 洗練され過ぎて妖しげなムードが薄くなってきた感じもしますが、“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの時代は、既に今は昔。
 “Head Hunters” (Sep.1973) Herbie Hancockも3年前。
 ポップも混ざったフュージョン全盛期、Weather Report も”Black Market” (1976) ~“Heavy Weather” (1977)の時代。
 冒頭からノリノリのラテンロック。
 唸るギターに明るくキャッチーなメロディは、それはそれでいいのだけども、4:30過ぎてから、マイナーコードに変わってテンポアップした数分続くアウトロがカッコいい。
 哀愁漂うメロディ、激しいパーカッションとスリリングスシンセサイザーを背景にしたギター、シンセサイザーソロ。
 最高にドラマチック。
 さらにはオルガンの響きがカッコいいラテンフュージョンに、“Head Hunters”的ファンクフュージョンにソウルのボーカルを乗せたようなキャッチーなノリ。
 LPレコードB面に移るとフラメンコ~キューバンな感じに、洗練されたAOR風なボーカル曲を経て、やっと登場、”哀愁のヨーロッパ”。
 ま、これはね・・・アルバムの中では浮いているような気もするなあ・・・
 最後は“Head Hunters”的ファンクフュージョンに処理した、ソウル曲でハッピーに締め。
 この時代になるとHerbie Hancockの影響力が絶大だったのかなあ・・・?
 ポップで洗練されたラテンフュージョンのSantana作品。
 もう40年前の作品だけども古くなっていないと思います。私は。
 この先のアルバムもよかったと思うのだけども・・・




posted by H.A.  



【Disc Review】“Borboletta” (1974) Santana

“Borboletta” (1974) Santana
Carlos Santana (guitar, percussion, vocals)
Tom Coster (piano, organ, electric piano, Moog synthesizer) Stanley Clarke, David Brown (bass) Michael Shrieve, Leon "Ndugu" Chancler (drums)
Leon Patillo (vocals, piano, electric piano, organ) Flora Purim (vocals) Jules Broussard (soprano, tenor sax) Airto Moreira (drums, percussion, vocals) Armando Peraza (percussion, soprano sax) José Areas (timbales, congas) Michael Carpenter (echoplex)
 
Borboletta
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santanaのジャジーなロックシリーズ、スタジオ録音での第三弾。
 ポップで洗練された前作“Welcome” (Jun.1973)のムードを引き継ぎつつも、シリアスで妖し気なムードも強く、"Caravanserai" (Feb-May.1972)を洗練し、聞きやすくした感じでしょうか。
 Tom Costerのエレピが映えるフュージョン的なサウンド。
 ドラムにLeon "Ndugu" Chanclerが初参加。
 Miles Davisバンドには“The 1971 Berlin Concert”(Nov.6.1971)周辺のライブ、後のWeather Reportにも“Tale Spinnin'” (1975)で客演した人。
 Airto Moreira、Stanley Clarkeも客演していていて、エレクトリックMiles派閥のサポートが入ったサウンド。
 ファンク色の濃いジャズというか、ジャズ色の濃いファンクというか、軽快でファンキーなビートがメインで、エレピとオルガンが作る背景含めて、ロック、ポップな色合いは強くないようにも思います。
 ジャズ系の同時期、同時期だと“Butterfly Dreams” (Dec.1973) Flora Purim、“Mysterious Traveller” (1974) Weather Reportから決して遠くない雰囲気かもしれません。
 半数を占めるボーカル曲はソウル~ポップなレアグルーヴな感じですが、インスト曲は"Caravanserai" (Feb-May.1972)から続く強烈な疾走感とグルーヴのカッコいいラテンフュージョン。
 アルバム終盤、ブラジル曲、Dorival Caymmiの"Promise of a Fisherman"を中心としたメドレーが白眉でしょうかね。
 Weather Reportに匹敵するようなファンクフュージョン、ラテン度強。
 最後はAirtoの妖しげなバーカッションと、誰かわからないエスニックでこれまた妖しげなボイスで締め。
 このあたりのアルバムは、どれもラテンロックの範疇にとどめておくのはとてももったいない名作揃い。
 とてもカッコいいジャズフュージョンアルバム。

 


posted by H.A.  

【Disc Review】“Lotus” (Jul.1973) Santana

“Lotus” (Jul.1973) Santana
Carlos Santana (guitar, percussion)
Tom Coster, Richard Kermode (organ, electric piano, Latin percussion)
Doug Rauch (bass) Michael Shrieve (drums)
Leon Thomas (vocals, maracas, percussion) Armando Peraza (congas, bongos, percussion) José "Chepito" Areas (timbales, congas, Latin percussion)
 
LOTUS
SANTANA
COLUM
サンタナ


 “Welcome” (Jun.1973)録音直後の来日、大阪公演でのライブ録音。
 "Caravanserai" (Feb-May.1972)からはキーボードのGregg Rolie、ギターのNeal Schon、ウッドベースのTom Rutleyが抜け、“Welcome”のコアメンバーでの演奏。
 近作"Caravanserai"、“Welcome”からそれぞれ二、三曲づつ、キャッチーな人気曲が揃う”Abraxas” (1970)からの選曲が多くなっていますが、さらに新曲が三分の一ぐらい。
 新旧織り交ぜバランスが取れたベストアルバム的な選曲。
 ジャジーな"Caravanserai"よりもラテンロック~ラテンフュージョンの色合いが強いのですが、“Dark Magus”(Mar.1974) Miles Davis的なエレクトリックMilesを想わせる場面もしばしば。
 元はJimi HendrixかSlyなのかもしれませんが、同じようなところをみていたのでしょう。
 ホントの瞑想から、瞑想的なオルガンが響く"Going Home"でイントロダクションが終わると、エレクトリックMiles的なファンクナンバーから、"Caravanserai" (Feb-May.1972)のハイライト、長尺でハイテンションなラテンフュージョン"Every Step of the Way"。
 さらにはラテンロックな人気曲"Black Magic Woman"、"Oye Como Va"、まだ発表されていないであろう“Welcome”からベストチューンと思われる"Yours Is The Light"、などなど、普通に考えて奇をてらわない、あるいは実験的な要素は少ない、ここまでのショーケースのような構成。
 後半は少し沈んだ瞑想的なムードのファンクでスタート。
 徐々に激情に遷移~ドラムソロなどを経て、ピークは”Abraxas” (1970)からハイテンションな"Incident at Neshabur"~人気曲の"Samba Pa Ti"あたりでしょうか。
 最後は高速サンバ〜キューバンな感じのラテンロックで陶酔感を誘いつつドカーンと盛り上がって締め。
 エンターテイメントとしてもオーソドックスにうまく構成されたステージ。
 ファンは大満足の構成でしょうが、このライブこの選曲が彼のベストなイメージだとすれば、"Caravanserai" (Feb-May.1972)のジャジーで沈んだイメージは本筋ではなく、それまでのラテンロック、ファンキーなロックの路線、インプロビゼーション色を強めてラテンファンクフュージョンぐらいまでが本筋なのでしょう。
 であれば、“Welcome”以降の明るい路線も納得、"Caravanserai"が特別なアルバムだったと考えるのが妥当なのでしょうね。
 ウッドベースを使っていたのはあのアルバムだけ?だもんね。
 全体通じてロック色はそこそこ強く、人気曲はキャッチーでポップ。
 ジャズの香りはほとんどないのですが、ファンキーでカッコいい一味も二味も違うラテンロック~ラテンフュージョンであることは間違いありません。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Welcome” (Jun.1973) Santana

“Welcome” (Jun.1973) Santana
Carlos Santana (electric, acoustic guitar, bass, kalimba, percussion, vocals)
Tom Coster (organ, electric piano, acoustic piano, marimba, percussion) Richard Kermode (organ, mellotron, electric piano, acoustic piano, marimba, shekere, percussion) Douglas Rauch (bass) Michael Shrieve (drums) José "Chepito" Areas, Armando Peraza (percussion) Leon Thomas (vocals, whistling) 
Wendy Haas, Flora Purim (vocals)
John McLaughlin, Douglas Rodriguez (guitar) Joe Farrell, Bob Yance, Mel Martin (flute) Tony Smith (drums) Jules Broussard (soprano sax)
 
Welcome
Santana
Sbme Special Mkts.
サンタナ


 Santana、"Caravanserai" (Feb-May.1972)に続くジャズ的フュージョン的アルバム。
 が、前作"Caravanserai" (Feb-May.1972)と比べるとかなりムードが異なります。
 キーボードのGregg Rolie が抜けて、Tom Coster中心になったことも大きいのでしょう。
 タイトルはJohn Coltraneの曲。
 カバーもしていて、冒頭はAlice Coltraneのアレンジによる重厚なオルガン、荘厳で宗教的なムードからスタート。
 これは濃いかな?と思いきや、全体的にはかなりポップで洗練されたムード。
 続くギターとエレピの絡み合うイントロはジャジーですが、キャッチーなボーカル曲。
 タイトルは同時期の激しいギターアルバム“Love Devotion Surrender” (Nov.1972) Carlos Santana / Mahavishnu John McLaughlinと同じですが、その印象とは違うあの時代っぽい柔らかなメロディ。
 少々サイケな香りも残しつつ、ボーカル曲もロックというよりもソフトなソウルな感じ。
 さらには、明るくて軽やかなフュージョン曲、AORっぽいボーカル曲へと続きます。
 ボーカル曲はヒットチャート上位に入ってもおかしくないようなキャッチーさ。
 いわゆるレアグルーヴ揃い。
 LPレコードA面最後、Flora Purimのスキャットが映える "Yours Is The Light"などはドラマチックでカッコいいジャズファンクフュージョン、ラテン混ざり。
 Weather ReportやFlora Purimのリーダー作よりもカッコいいんじゃない・・・かどうかはわかりませんが、そんな演奏よさ。
 LPレコードB面に移るとインストバンドが全面に出ます。
 前半のサックスはカッコいいし、終盤はJohn McLaughlin も加わって"Caravanserai"のような強烈な疾走感とハイテンションなジャズフュージョン、ラテン入り。
 最後のJohn Coltraneナンバー“Welcome”は、オリジナルと同様にルバートでのスローバラード。
 二台のピアノとギターが織りなすドラマチックで前向きなエンディング。
 Coltrane云々はさておいて、明るくて柔らかなラテンフュージョンアルバムとして最高だと思うのだけども、前後周辺の凄いアルバムに紛れてしまうのかな?
 ロックファンからすると激しさやギターソロが少なめで、物足らないのかな?
 全然マニアックではない、ラテンジャズフュージョン、一部ボーカル入りの名アルバム。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Love Devotion Surrender” (Oct.1972,Mar.1973) Carlos Santana/John McLaughlin

“Love Devotion Surrender” (Oct.1972,Mar.1973) Carlos Santana/John McLaughlin
Mahavishnu John McLaughlin (guitar, piano) Carlos Santana (guitar)
Mahalakshmi Eve McLaughlin (piano)
Larry Young (piano, organ) Jan Hammer (Hammond organ, drums, percussion)
Doug Rauch (bass) Billy Cobham, Don Alias, Mike Shrieve (drums, percussion) Mingo Lewis (percussion) Armando Peraza (congas, percussion, vocals)
 
Love Devotion Surrender
Carlos Santana & John Mclaughlin
Mobile Fidelity
サンタナ ジョン・マクラフリン


 Santana、ジャジーな作品が続く中でのJohn McLaughlinとの双頭リーダー作、John Conltraneトリビュート。
 もしJohn Coltraneが長生きしていたらこの二人との共演はあったのだろうし、エレクトリックMilesバンドにSantanaが入ったら、とか想像してしまう作品、メンバーですが、そんな音とはちょっと違うように思います。
 素直にMahavishnu Orchestraとこの期のSantanaを合わせたような音。
 John Coltraneのカバー二曲に他三曲。
 ギターはロックな感じのハードな演奏中心ですが、オルガンの響き、激しいドラム、ファンクなベースを含めてジャジーなムード。
 後に“Afro Blue” (Jun.1993) The Lonnie Smith Trio、John Abercrombieといったアルバムがあり、同様に激しいのですが、そちらよりは落ち着いたムードかもしれません。そうでもないか・・・?
 それにしても凄まじい二人のギター。
 ファットな音で泣きのフレーズ、やたらに長い音、フィードバックも多用するSantanaに対して、カミソリのように鋭く神経質、サディスティックなJohn McLaughlin。
 ジャケットの二人は穏やかに寄り添っていますが、ギターソロはお互いにこれでもかこれでもかの激しい演奏の連続。
 ルバートでのバラードなど、瞑想的な雰囲気はあるのですが、激しく饒舌なギターの音を聞いているとそんな気分にはなりません・・・よね?。
 LPレコードB面に移って激しいパーカッション、強烈な疾走感の長尺ラテンフュージョンから、最後はギターとピアノの穏やかな”Meditation”で締め。
 いやはやなんとも凄いギターアルバムです。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Carlos Santana & Buddy Miles! Live!” (Jun.1972) Carlos Santana & Buddy Miles

“Carlos Santana & Buddy Miles! Live!” (Jun.1972) Carlos Santana & Buddy Miles
Buddy Miles (vocals, drums, percussion, congas) Carlos Santana (guitar, vocals)
Neal Schon (guitar) Bob Hogins (organ, electric piano) Ron Johnson (bass) Greg Errico (drums)
Richard Clark, Coke Escovedo (drums, percussion) Mike Carabello, Mingo Lewis, Victor Pantoja (percussion) 
Hadley Caliman (flute, saxophone) Luis Gasca (trumpet)
 
 Santana、ハワイでのライブ録音。
 スタジオで取り直した再現ライブといった情報もあります。
 確かに拍手、歓声が不自然に入っていますが、まあ演奏がカッコいいのでよしとしましょう。
 Buddy MilesはJimi Hendrix “Band of Gypsys” (1970)のドラマーで、Miles Davisがバンドに誘っていたとの話もある人。
 元はジャズドラマー?純粋ファンク?いずれにしてもヘビーではなく軽快なビート。
 オルガンとパーカッションが唸るラテンロックフュージョン~ソウル。
 直前に録音された"Caravanserai" (Feb-May.1972)ほどジャズ的ではなく、ロック、ソウルのイメージが強い演奏。
 "Caravanserai"以前のSantana的でもあるし、“Band of Gypsys”的でもあるし、Sly & Family Stone的でもあるし、”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)、”Dark Magus”(Mar.1974) Miles Davis的でもあるし、そんな音。
 8ビート、16ビートが入り混じる“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davis的な場面もあります。
 結局このあたりが1960年代からのロック、ソウル、ポップスが寄せ集まった当時のフュージョンミュージックで、そのジャズサイドからの旗手がMiles Davis、ロックサイドからはJimi Hendrix、ブラックミュージックサイドからはSly Stone。
 Santanaはそれらを取り込みつつ、ラテンな色合いを前面に出したというか、それら含めて相互に影響し合っていた、といったところなのでしょう。
 LPレコードA面は激烈なギターバトルからスタート。
 Santanaバンドではソロは取らせてもらえなかった、後の人気バンドJourneyのNeal SchonがスッキリしたJimi Hendrix風のカッコいいソロ。
 ポップでソウルなボーカル曲をはさみながら、ハイテンションな演奏の連続。
 B面は長尺な一曲、インプロビゼーションを中心としたラテン・ジャズ・ロック・ソウル・フュージョン。
 妙な仕掛けなしの凄まじい演奏。
 もしここにMiles Davisが入っていたら超名盤として・・・
 この期のSantanaの作品を聞くたびにそう思ってしまう私は、きっとジャズの人なのでしょう。
 もちろんMilesがいなくても名作です。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana

"Caravanserai" (Feb-May.1972) Santana
Carlos Santana (lead guitar, guitar, vocals, percussion)
Gregg Rolie (organ, piano) Tom Coster (electric piano) Neal Schon (guitar) Tom Rutley (acoustic bass) Douglas Rauch (bass) Michael Shrieve (drums) Jose "Chepito" Areas (congas, timbales, bongos) Rico Reyes (vocals)
Douglas Rodrigues (guitar) Wendy Haas (piano) James Mingo Lewis (percussion, congas, bongos, vocals, acoustic piano) Armando Peraza (percussion, bongos) Hadley Caliman (saxophone , flute) Lenny White (castanets)
 
Caravanserai
Santana
Sony
サンタナ


 John Mclaughlinはよくわからないのでこの人が最後、かな?
 John Coltraneもさることながら、エレクトリックMilesと近いような、そうでもないような、微妙な位置関係にあるSantana。
 エレクトリックMiles、Weather Reportとメンバーが重なっていたり、John McLaughlinが近かったり、“On The Corner”(Jun.1972)の後のMiles Davisの作品、“Dark Magus”(Mar.1974)や“Get Up with It”にはSantanaからMilesへの影響もあるようにも聞こえます。
 ジャズファンからどう見えているのかはさておき、ちょっと普通のロックバンドとは違う空気感、特に本作を中心とした数作は、ジャズに慣れてしまった耳にも特別なカッコよさがあるように思います。
 
 そのジャズ的、ファンク的、フュージョン的ロック、大傑作アルバム。
 前作“Santana III” (1971) Santanaからの流れにあるのですが、雰囲気は異なります。
 ジャズ的というと違和感があるのかもしれませんが、普通のロックとは違うジャジーなムード。
 おそらくコンテンポラリージャズが好きで歪んだギターが許容な人にはフィットする音。
 終始響くオルガンとうるさくないドラム、パーカッション群が作るヒタヒタと迫ってくる系のグルーヴ。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの影響があるのかどうかはわかりませんが、言葉で書いてしまうとそんな音。
 ジャジーなウッドベースとファンキーなエレキベースが交錯しするジャズファンクフュージョン、パーカッションの強烈なラテン風味。
 エレクトリックMiles閥のメンバーの合流はまだありませんが、ジャジーでファンキーでカッコいいビート揃いの演奏。
 ロックな場面は半分以下でしょう。
 あの”哀愁のヨーロッパ”のTom Costerが参画したことでの洗練、元からの中核メンバーGregg Rolieのアーシーなムードが混ざり合っていい感じでバランスがとれているようにも思います。
 抹香臭い・・・なんて意見もあるのかもしれませんが、それがしっとりとしたいい感じに繋がっているのでしょう。
 ギター小僧大喜びのエレキギターのカッコいいソロの連続。
 間々に挟まれる数曲ボーカル曲もキャッチーな楽曲揃い。
 さらに全編を通じたしっとりとしながらもシリアスなムード、緊張感含めて最高にカッコいい音作り。

 冒頭、妖しいウッドベースとエレピ、歪まないギターが絡み合う幻想的なムード数分から、凄まじいベースラインとハードなギター、激しいパーカッション陣の絡み合いからいきなり最高潮。
 決して長くはない演奏の中にこのアルバムの凄みが凝縮されているような演奏ですが、まだまだ序の口。
 続くファンクロックもボーカル曲も名演の連続。
 中盤の"Song of the Wind"なんて、穏やかなサンバビートを背景にして、最高のギターソロが延々と続く素晴らしい演奏。

 LPレコードB面は、”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のぶっ飛んだ冒頭曲”Milky Way”を思わせる妖しげなエレピのコードチェンジからスタート。
 さらに激しいラテンパーカッションが絡む妖しくもカッコいい音。
 ウッドベースとオルガンが鳴り出し、ビートが入る瞬間のカッコいいこと。
 さらにはJobimナンバーのロックな演奏、クラーベ、パーカッションが鳴り響くラテンフュージョンときて、最後はオルガンと激しいギターが先導する、激烈な"Every Step of the Way"。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis的なような、Mahavishnu Orchestraなようなイントロダクションから、凄まじいパーカッション群が繰り広げるリズムの饗宴、強烈な疾走感、グルーヴ、叫びのような息継ぎを伴う凄まじいフルートから、締めはオーケストラを背景にした、ギターのソロ・・・

 最初から最後まで、全曲名曲、名演。
 これを聞いたMiles Davisもビックリ・・・したかどうかは知りませんが、“Get Up with It”に収められた"Calypso Frelimo"<Sep.1973>に通じそうな感じもあります。
 ジャズに慣れた耳で聞き直しても、やはり世紀の大名アルバムだと思います。
 次作はColtrane ナンバーを冠した“Welcome” (Jun.1973)。
 Coltrane的で重々しい・・・とは全く逆。
 ソフトで洗練された作品群、名作群へと続いていきます。

 


posted by H.A.  


【Disc Review】“Waiting for Columbus” (1977) Little Feat

“Waiting for Columbus” (1977) Little Feat
Lowell George (lead vocals, guitar) Bill Payne (keyboards, synthesizer, vocals) Paul Barrere (guitar, vocals) Kenny Gradney (bass guitar) Richard Hayward (drums, vocals) Sam Clayton (congas, vocals) Mick Taylor (slide guitar) Michael McDonald, Patrick Simmons (backing vocals) the Tower of Power horn section: Emilio Castillo (tenor saxophone) Greg Adams (trumpet) Lenny Pickett (alto, tenor sax, clarinet) Stephen "Doc" Kupka (baritone sax) Mic Gillette (trombone, trumpet)

Waiting for Columbus
Little Feat
Warner Bros UK
リトルフィート


 懐かしのアメリカンロックシリーズ、サザンロックの雄Little Feat、Lowell Georgeが亡くなるまでの集大成的なライブアルバム。
 ファンキーでアーシーなようで洗練された音、完璧な演奏力。
 あの頃のアメリカンロックバンドとは一味も二味も違うカッコよさ。 
 ロックなようでソウルに近い音だったからでしょうかね。
 ニューオリンズ系のファンクの色合い、Dr.Johnとかの雰囲気ですね。
 基本的にはゆったりとしていて、性急な演奏や激しい演奏が無いこともあるのでしょう。
 ベースとドラムはロック離れしたファンキーなカッコよさ。
 ピアノもファンキー&ホンキートンクでとてもいい感じ。
 ギターも人気のスライドだけでなく、普通の音も、さりげないカッティングも、ツボを押さえた素晴らしい音使い。
 ホーン陣もさすがにTower of Power。
 いい感じのアンサンブルがソウルっぽさを醸し出し、ソロ、時折のニューオリンズ的集団即興もカッコいい。
 多くにフィーチャーされるホーンによって、スタジオ録音作品とは少々違う色合い、ロック離れした音に繋がっているように感じます。
 ルーズな雰囲気を醸し出しているようで、完璧な演奏。 
 ザックリ、ワイルドに作っているようで、ほんの少しアレンジを変えて、録音方法を変えれば、十分AORとしてもいけそうな洗練。
 もちろん代表曲揃い。
 ニューオリンズ系ファンクな”Fat Man in the Bathtub”、“Dixie Chicken”、“Rocket In My Pocket”、ファンキーなアメリカンロック”All That You Dream”、”Time Loves A Hero”、 “Mercenary Territory”、“Spanish Moon”・・・
 その他もろもろ、カッコいい演奏揃い。
 ノリノリの"Feats Don't Fail Me Now”でドカーンと盛り上がって締め。
 よくできたステージ。
 あの時代のおおらかでゆったりとしていて楽し気なアメリカのムードが伝わってきます。
 近年のCDでは、他にも未発表音源がたくさん追加されているようです。
 考えてみればこのバンドを初めて聞いたのはLowell Georgeが亡くなってから。
 その後もバンドが復活して活動していたことも知らなかった。
 たぶんカッコいいんだろうなあ。
 本作のCDもDeluxエディションに買い替えないとね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Rock of Ages” (1971) The Band

“Rock of Ages” (1971) The Band
Robbie Robertson (guitar, backing vocals) Garth Hudson (organ, piano, accordion, tenor, soprano sax) Richard Manuel (piano, vocals, organ, clavinet, drums) Rick Danko (bass, vocals, violin) Levon Helm (drums, vocals, mandolin)
Howard Johnson (tuba, euphonium, baritone sax) Snooky Young (trumpet, flugelhorn) Joe Farrell (tenor, soprano sax, English horn) Earl McIntyre (trombone) J. D. Parran (alto sax, clarinet) Bob Dylan (vocals, guitar)

Rock of Ages
Band
Capitol
ザ・バンド


 懐かしのアメリカンロックシリーズ、The Bandのライブアルバム。
 集大成というには早い時期の作品だけどもそんな内容。
 “The Last Waltz” (1976) なんてお化けのような名アルバムがあるけども、そちらはゲストが多いので、こちらの作品の方がThe Bandそのままの音でしょう。
 もちろん“The Last Waltz”でも、どんな大物ゲストが入っても、このバンドの音そのものなのですがね。
 Bob Dylan絡みでフォークロックの代表のようなイメージが強く、事実そうなのだけど、ソウルっぽい色合いも強いように思います。
 サザンソウル、あるいはニューオリンズ系ファンクからの影響が強いのでしょうかね。
 あまり意識はしていなかったけど、Little Featにも似ているし、Otis Reddingっぽい展開もあったりしますね。
 Eric Claptonはもちろん、Rolling Stones、Facesにもこのアルバムの展開の断片が出てくる場面がたくさんあったなあ。
 あの時代のよきアメリカを代表するような音。
 ロックに加えて、ソウル、フォーク、カントリー、その他を含めて混ぜ合わせた音。
 大らかで、ゆったりしていていて、自由な感じで・・・
 ガッツリとしたホーン陣のサポートがソウルっぽくてカッコいい。
 リズムも直球な8ビート一辺倒じゃなくて、自在でファンキー。
 ギターのカッコよさもさることながら、ニューオリンズ~ホンキートンクなピアノがいいなあ。
 バンドのキャリアとしては初期のはずだけども、名曲揃い。
 ニューオリンズ系ファンク“Don't Do It”から始まり、 “The Weight”、”Stage Fright”、”W.S. Walcott Medicine Show”・・・
 さらには近年のCDには追加で”I Shall Be Released”その他諸々、御大Bob Dylanも参加して数曲。
 締めはあの“Like A Rolling Stone”。
 アメリカでは一家に一枚、かどうかわわかりませんが、アメリカンロックの聖典、そんな音がぎっしり詰まったアルバム。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Allman Brothers at Fillmore East” (1971) The Allman Brothers Band

“The Allman Brothers at Fillmore East” (1971) The Allman Brothers Band
Duane Allman (lead guitar, slide guitar) Gregg Allman (organ, piano, vocals) Dickey Betts (lead guitar) Berry Oakley (bass guitar) Jai Johanny Johanson (drums, congas, timbales) Butch Trucks (drums, tympani) Thom Doucette (Harmonica) Jim Santi (Tambourine)

At Fillmore East
Allman Brothers
Mobile Fidelity Koch
オールマンブラザース・バンド


 大意、脈絡は無いのですが、先のEric Claptonを聞いていて思い出した懐かしのアメリカンロックを2-3作。

 あの時代のアメリカンロックの決定盤であり、Allman Brothersの決定盤。
 一定年代以上のロックファンでこのアルバムを知らない人はいないのでしょう。
 ブリティッシュロックとは全く違う質感のアメリカ・サザンロック。
 ちょっとザラついた埃っぽくてアーシーなムード。
 ジャズっぽいとは言わないけども、オルガンの響きや長尺なインプロビゼーションがなんとなくそれを感じさせたり。
 アナログA面はブルース三連発。
 冒頭から張り裂けそうな音のスライドギターのうなり。
 スカイドッグってなニックネームを思い出しましたが、まさに空を飛び回るような、そんな音でスタート。
 三曲目でスローブルースの”Stormy Monday”。
 途中のオルガンソロの4ビートがジャジーな隠し味。
 この手の展開がいろんなところにちりばめられているので、ジャズっぽくてカッコいいんだろうなあ。
 B面は長尺なブルース曲”You Don't Love Me” 一曲のみ。
 それでも山あり谷あり、全く退屈なしのドラマチックなインプロビゼーションの連続。
 C面はインスト曲、二曲。
 4ビートのブルース”Hot 'Lanta”に、名曲“In Memory of Elizabeth Reed”。
 これらはほんとにジャズ曲みたい。
 D面も一曲、”Whipping Post”。
 これまたドラマチックな構成に、これでもかこれでもかと続くインプロビゼーション。
 途中のビートを落とした場面の数分間は鳥肌モノ。
 そこからが再びビートが入る瞬間のたとえようもないカッコよさ。
 過剰までにドラマチック。
 いやはや凄いバンドの凄いアルバム。
 おなかいっぱい、ごちそうさまの音の洪水。
 ギター二人、オルガンのフロントの三人が注目されるのだけども、リズム隊も凄い。
 ドラムはツインだけども全編通じて全くうるさくないし、キッチリとしたビートとその抑揚を作っているのはベース。
 ヒタヒタと迫ってくる系のビート。
 この種のビート感のロックバンドは他にはなかったと思うんだけどなあ・・・
 ECM、Jack DeJohnette参加作品を中心に、「ヒタヒタと迫ってくる系のビート」てなフレーズを文章の中でよく使ってしまいますが、このアルバムで刷り込まれたのかもしれませんね。
 ひょっとしたら、たぶん。
 その総本山の“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisも後追いで聞いた世代でもありますし。




posted by H.A.
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