吉祥寺JazzSyndicate

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Ralph_Towner

【Disc Review】“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner

“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner
Ralph Towner (guitar)

My Foolish Heart
Ralph Towner
Ecm Records
2017-02-03


 Ralph Towner、久々のソロギターアルバム。
 もはや説明無用。
 部屋の湿度が下がる音。
 この季節の必須アイテム。


 ってな感じで十分なのかもしれませんが・・・
 近年では”Chiaroscuro”(Oct.2008) with Paolo Fresu、”Travel Guide” (2013) with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryanと共演作が続いていて、ソロでは”Time Line” (Sep.2005)以来、十年振りでしょうか?
 時間は経ちましたが、それらと同じ質感の穏やかで柔らかいガットギターの音の流れ。
 “Solstice” (Dec.1974)、”Batik” (1978)あたりから聞いた第一印象は、キッつい音の人。
 1970年代ECM独特の音質、ハイテンションな空気感も手伝って、氷のような低い温度感、触ると切れてしましそうな人、ってな感じ。
 後にその前の”Diary” (Apl.1973) などを聞くと、元々はそんな音の人ではなくて、キッつい音は1970年代のECMマジックだったのね・・・と思い直した次第。
 先入観を捨てて聞くと、同時期の人気作”Sargasso Sea” (May.1976) with John Abercrombieなども穏やかに聞こえてくるのが不思議なものです。
 1980年代以降の諸作は柔らかい音の流れ。
 瑞々しさはそのままに、丸く穏やかになった音。
 特に近作は遠い所を眺めるような、あるいは、静かに動く走馬灯のような音の流れ。
 タイトル曲からイメージされるようにBill Evansがアイドルのようで、1970年代の作品から所縁の楽曲をコンスタントに取り上げています。
 本作もそんな上品で理知的、さらに穏やかで優しい音。
 この人のギターが流れると、部屋の湿度が下がって少し涼しくなるように感じます。
 内省的、耽美的なようで、その実、キリッとしていて湿っぽくなく、スッキリした音。
 極めて明瞭な音なのに、現実とはちょっと乖離しているような、どこか懐かしい遠い所から流れてきているような音。
 特に近年のソロギター作”Ana” (Mar.1996)、”Anthem”(Feb.2000)、”Time Line” (Sep.2005)その傾向が顕著でしょう。
 本作もそんな音、タイトル曲を除いて全てオリジナル曲、淡くて懐かし気なメロディ。
 タイトル曲もさることながら、とてもさりげないのだけども、とてもとてもセンチメンタルなオリジナル曲”I'll Sing to You”なんて最高。
 全編を支配する穏やかなセンチメンタリズム。
 漂うような音の流れと、アップテンポが交錯しつつ、前者が相対的に多い分、近作の中では本作が一番淡くて穏やかな色合いかもしれません。
 ま、どれも金太郎飴のような作品群なのですが。
 ジャケットのポートレートは明るい印象のカラー写真。
 闇と光が交錯するようなミッドナイトブルーと、明るく透明なエメラルドグリーンが対象的な水面。
 そんな音でしょう。
 上部が1970年代の諸作、下部が1980年代以降~現代、ってなのは考えすぎでしょうね、きっと。





(1972)     ”Trios / Solos” Ralph Towner / Glen Moore 
(Apl.1973)    ”Diary” 
(Jul.1974)    ”Matchbook” with Gary Burton 
(Dec.1974)   ”Solstice” 
(May.1976)   ”Sargasso Sea” with John Abercrombie 
(Dec.1976)   ”Dis” Jan Garbarek 
(Feb.1977)   ”Solstice/Sound and Shadows” 
(Jul.1977)    “Deer Wan” Kenny Wheeler 
(Nov.1977)    ”Sol Do Meio Dia” Egberto Gismonti 
(Jan.1978)    ”Batik” 
(Jul.1979)    “Old Friends, New Friends” 
(Oct.1979)    ”Solo Concert” 
(1980)     “Départ”  Azimuth 
(Mar.1981)    ”Five Years Later” with John Abercrombie 
(Dec.1982)    ”Blue Sun” 
(May.1985)    ”Slide Show” with Gary Burton 
(Jan-Dec.1988) ”City of Eyes” 
(1991,1992)   ”Open Letter” 
(1988,1991,1992) “If You Look Far Enough”  Arild Andersen
(May.1993)   ”Oracle” with Gary Peacock 
(May.1995)   ”Lost and Found” 
(Oct.Nov.1995) "Fabula" Maria João 
(Dec.1995)   ”A Closer View” with Gary Peacock 
(Mar.1996)   ”Ana” 
(1997)     “If Summer Had Its Ghosts” with Bill Bruford & Eddie Gomez
(Feb.2000)   ”Anthem” 
(Sep.2005)   ”Time Line” 
(2008)     “From a Dream” with Slava Grigoryan and Wolfgang Muthspiel 
(Oct.2008)   ”Chiaroscuro” with Paolo Fresu 
(2013)     ”Travel Guide” with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan
(2016)     “My Foolish Heart” 


posted by H.A.

【Disc Review】“If You Look Far Enough” (1988,1991,1992) Arild Andersen, Ralph Towner, Nana Vasconcelos

“If You Look Far Enough” (1988,1991,1992) Arild Andersen
Arild Andersen (bass) Ralph Towner (guitars) Nana Vasconcelos (percussion, voice)
Audun Kleive (snare drum)

If You Look Far Enough
Arild Andersen
Ecm Import
アリルド アンデルセン 
ラルフ タウナー
ナナ バスコンセルス
 


 ECMオールスターでのトリオ+αでのセッション。
 編成は普通のギタートリオなのですが、このメンバーですので普通ではありません。
 Ralph Townerのトリオではハイテンションな名作”Batik” (1978)がありますが、全く違う質感。
 楽曲提供からするとリーダーはArild Andersenなのでしょう。
 Ralph Townerの出番は少なめ、ベースがリードし前面に出る場面、Arild Andersen、Nana VasconcelosのDuoでの演奏が印象に残ります。
 Arild Andersenのいつものド派手なベースが炸裂するハイテンションな演奏から、穏やかなスタンダード演奏まで多種多様。
 ブンブン唸るベースに瑞々しいギター、妖し気なパーカッションと幻想的なボイス。
 そういった演奏を想像してしまいますが、それは2-3曲。
 そちらは、サディスティックなまでに攻撃的なベースと、それに呼応するハイテンションなギター。
 何かの格闘技を見ているような演奏。
 淡々とビートを出し、時折奇声を挟むNanaさんがレフリー役。
 そんな演奏を間にはさみながら、半数以上は穏やかで幻想的な演奏。
 ゆったりとしたテンポと妖しげで抽象的なメロディ。
 ループを使ってシンセサイザー的な音を作っているベース。
 妖しげなビートを出し、奇声を上げるNanaさん。
 先の展開が予想できないフリーインプロビゼーション的な演奏が印象に残ります。
 ちょっと気の利いたメロディと演奏力で押し切ってしまえばそれだけで凄いグルーヴの凄いアルバムができていしまいそうですが、そうはしないクリエイティブな人達。
 凡人からは想像できない明後日の方向に向かって進んでいるように感じる部分も無きにしも非ず。
 さすがECM、Arild Andersen。




posted by H.A.

【Disc Review】“Northwest Passage” (Sep-Oct.1996) Oregon

“Northwest Passage” (Sep-Oct.1996) Oregon
Ralph Towner (classical guitar, keyboards, piano, 12-string guitar) Paul McCandless (soprano sax, english horn, sopranino sax, oboe, bass clarinet) Glen Moore (acoustic bass) Arto Tuncboyaciyan (vocals, drums, percussion, hand drums, triangle, shakers cymbals, hand held microphone)

Northwest Passage
Oregon
Intuition
オレゴン
ラルフ タウナー


 Ralph Towner 率いるOregonのフュージョン作品。
 パーカッションが”Right Brain Patrol” (1992) Marc Johnsonに参加していたトルコ出身Arto Tuncboyaciyanに変わっています。
 “45th Parallel” (1988)から十年弱、間に何作か挟んでいますが、さらにわかりやすく爽やかなジャズフュージョン。
 ここまで来ると“Vanguard Sessions” (1970-1979)と同じバンドとはとても思えない変貌ぶり。
 このポップさ、洗練は、来るところまで来てしまったなあ・・・ってな印象。
 アルバムのタイトルもそれっぽいなあ・・・
 Ralph Towner の近作では“Ana” (Mar.1996)。
 そちらは淡く穏やかな作品、Ralph Townerの書く曲のムードは同様。同じ曲のカバー演奏もあります。
 “Ana” (Mar.1996)もかつてのECMカラーからは外れた優しい音楽でしたが、こちらはさらに輪をかけたような・・・というよりも、全く別世界の端正なアメリカンフュージョンの音。
 スムースジャズの方が語感は合ってるかも・・・
 Paul McCandlessのソプラノサックスがすっかりオシャレなフュージョンっぽく聞こえます。
 Ralph TownerはすっかりEarl Klughに・・・
 ・・・ってなことはありませんが、徹底的に洗練された整った音作り。
 元々瑞々しい音のギターが、さらに磨かれ、艶が出て、エコーが効いて、部屋中に広がって、・・・作り込みすぎ一歩手前の絶妙な美しさ。
 スムースジャズが夜な感じな音が多いのに対して、本作は朝~昼。
 とても爽やかで健康的。
 インタールードに挟まれるArto Tuncboyaciyanがフィーチャーされるエスニック風味の妖し気な曲がチェンジオブペース。
 もちろん、音作り、管、ギター、ピアノのインプロビゼーションは、まがうことなきあのOregonのカッコよさ。
 とかなんとか、なんだかんだで完璧な内容、カッコいいアメリカンフュージョンアルバムです。
 普通のフュージョンバンド、スムースジャズとは一線と画す柔らかな音だしね。





 Ralph Towner、Oracleの作品をECM中心に。 
 1970年代はハイテンションで冷ややかなRalph Towner諸作。
 Oregonもハイテンションです。
 1980年代からECMに移籍したOregon含めてマイルドになり、1990年になる前からOregonはポップに、Ralph Townerは淡い色合いの作品が続きます。
 時代と共に変わってきているのは、時代の空気なのか、本人の志向なのか、プロデューサーの意図なのか?
 ざっと眺めてみて、かなり色合いに幅がありますが、どれもそれなりに楽しめます。
 Oregonのアルバムもびっくりするほどたくさんあるのですが、あまり聞けていますせん。
 流通も少ないのですが、気長に探してみますかね。

Ralph Towner
(1972)     ”Trios / Solos” Ralph Towner / Glen Moore 
(Apl.1973)    ”Diary” 
(Jul.1974)    ”Matchbook” with Gary Burton 
(Dec.1974)   ”Solstice” 
(May.1976)   ”Sargasso Sea” with John Abercrombie 
(Dec.1976)   ”Dis” Jan Garbarek 
(Feb.1977)   ”Solstice/Sound and Shadows” 
(Jul.1977)    “Deer Wan” Kenny Wheeler 
(Nov.1977)    ”Sol Do Meio Dia” Egberto Gismonti 
(Jan.1978)    ”Batik” 
(Jul.1979)    “Old Friends, New Friends” 
(Oct.1979)    ”Solo Concert” 
(1980)     “Départ”  Azimuth 
(Mar.1981)    ”Five Years Later” with John Abercrombie 
(Dec.1982)    ”Blue Sun” 
(May.1985)    ”Slide Show” with Gary Burton 
(Jan-Dec.1988) ”City of Eyes” 
(1991,1992)   ”Open Letter” 
(1988,1991,1992) “If You Look Far Enough”  Arild Andersen
(May.1993)   ”Oracle” with Gary Peacock 
(May.1995)   ”Lost and Found” 
(Oct.Nov.1995) "Fabula" Maria João 
(Dec.1995)   ”A Closer View” with Gary Peacock 
(Mar.1996)   ”Ana” 
(1997)     “If Summer Had Its Ghosts” with Bill Bruford & Eddie Gomez
(Feb.2000)   ”Anthem” 
(Sep.2005)   ”Time Line” 
(2008)     “From a Dream” with Slava Grigoryan and Wolfgang Muthspiel 
(Oct.2008)   ”Chiaroscuro” with Paolo Fresu 
(2013)     ”Travel Guide” with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan

Oregon
(1970) "Our First Record" 
(1972) "Music of Another Present Era" 
(1973) "Distant Hills" 
(1974) "Winter Light" 
(1975) "In Concert" 
(1976) "Together"
(1977) "Friends" 
(1978) "Violin"
(1978) "Out of the Woods" 
(1979) "Roots in the Sky" 
(1979) "Moon and Mind" 
(1970-1979) ”Best of the Vanguard Years
(1980) "In Performance" 
(1983) "Oregon
(1984) "Crossing
(1987) "Ecotopia
(1989) "45th Parallel
(1991) "Always, Never and Forever"
(1993) "Troika"
(1995) "Beyond Words"
(1998) "Music for a Midsummer Night's Dream" 
(2000) "In Moscow" with the Moscow Tchaikovsky Symphony Orchestra
(2002) "Live at Yoshi's" 
(2005) "Prime"n
(2007) "1000 Kilometers" 
(2010) "In Stride"
(2012) "Family Tree" 

posted by H.A.

【Disc Review】“45th Parallel” (1988) Oregon

“45th Parallel” (1988) Oregon
Glen Moore (Bass) Ralph Towner (classical guitar, 12 string guitar, piano, synthesizer) Paul McCandless (Piccolo, Soprano Saxophone, Oboe, English Horn, Bass Clarinet) Trilok Gurtu (Tabla, Drums, Percussion, Voice)

45th Parallel
Oregon
Sony
オレゴン
ラルフ タウナー


 Ralph Towner 率いるOregon、ECMから離脱しての第一弾。
 全体のイメージは前作“Ecotopia” (1987)と同様、明るくてわかりやすいコンテンポラリージャズ・・・、というよりもさらに一歩踏み出した爽やか系フュージョンの方がイメージは合いそうです。
 向かう方向はメインストリーム。
 ビート感も整って、1970年代ともECM諸作とも印象が違う作品。
 インドのTrilok Gurtuもそのままですが、エキゾチシズムは薄まり、ジャズな感じのドラム中心。
 これは気持ちを入れ替えて聞かないと・・・
 で、先入観を捨てて、あのOregonだと思わずに聞くと、これがカッコいいフュージョンミュージック。
 ビートは整っている上に強いグルーヴ。
 ギターとピアノはあのRalph Townerだし、Paul McCandlessの管も緩急を自在のカッコいいインプロビゼーションの連発。
 全盛期のWeather Reportほどキャッチーではないにしても、明るくて楽し気な、かつ変化に富んだ楽曲揃い。
 最後は、短くもこの上もなく美しいピアノソロで締め。
 このカッコよさを出すのは、あるいは完璧な演奏をこなすのは、他のバンドでは難しいんだろうなあ・・・
 そう思わせる完成度。
 気難し気なOregonではなく、わかりやすくて爽やかでカッコいいOregonの再スタート、といったところでしょう。
 あの1970年代Oregonの、強烈な緊張感とグルーヴで迫ってくるアグレッシブな音はなくなりました。
 また、1970年代ECMの氷のように冷たく鋭いRalph Townerのギターもなくなりました。
 それが時代の流れでもあったのでしょう。
 お世辞、思い入れ抜きで、いいフュージョン作品です。
 最初は面食らいましたがね・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Ecotopia” (1987) Oregon

“Ecotopia” (1987) Oregon
Paul McCandless (soprano saxophone, oboe, English horn, wind driven synthesizers) Glen Moore (bass) Ralph Towner (classical guitar, 12 string guitar, piano, synthesizer, drum machine) Trilok Gurtu (tabla, percussion)

Ecotopia: Touchstones Series (Dig)
Oregon
Ecm Records
オレゴン
ラルフ タウナー

 OregonのECM移籍第三弾、ECMでの最終作。
 逝去したCollin Walcottに変わって、インドのTrilok Gurtuが参加。
 “Song for Everyone” (Sep.1984) L. Shankarにも参加していたECMとも縁のある人。
 本場インドの人が加わったのにも関わらず、逆にタブラ、シタールなどの民族楽器が前面に出る場面が減少し、エスニック風味が薄くなっているかもしれません。
 アルバム全体としても、妖しさ、抽象的、幻想的な色合いが薄くなり、ほどほどオーソドックスなコンポラリージャズ。
 ポップとまではいわないけれども、明るくてわかりやすい音。
 楽曲もいつものメンバー持ち寄りではなく、Ralph Townerの作品中心、一貫性のある質感。
 少々のクラシックテイストが入るカッチリ構成された印象の楽曲。
 その上で響くこれまた少々クラシックの色合いもあるカッチリしたホーンの響き。
 Glen Mooreの曲だけWeather Report風4ビートの妖しいフュージョンだったりしますので、彼はそっちの方向に行きたかったのでしょうかね?
 いずれにしても、強いグルーヴのビートに乗って、ソプラノサックスはもちろん、ギター、ピアノのカッコいいインプロビゼーションの連続。
 締めにCollin Walcott作の幻想的な曲で故人へトリビュート。
 ジャケットは全くECM的ではありませんが、中身もそう。
 が、抜群の完成度の素晴らしい作品。
 この後、Oregonは他のレーベルに移籍。
 次作“45th Parallel” (1988)はさらに明るい色合いになっていますので、転換期だったのでしょう。
 またOregonとしてやりたいことがレーベルカラーに合わなくなっていたようにも推察されます。
 Ralph Towner は引き続きECMでOregon色も強い“City of Eyes” (Jan-Dec.1988)を制作、いまだに諸作を発表中。
 Paul McCandlessはリーダー作こそありませんが、“Endless Days” (2000) Eberhard Weberなどのセッションに参加。
 事の経緯は想像するしかありませんが、この後も質感は変われど良作を制作し続けていますので、いい別れだったのでしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】”Crossing” (Oct.1984) Oregon

”Crossing” (Oct.1984) Oregon
Paul McCandless (soprano saxophone, oboe, bass clarinet, English horn) Glen Moore (bass, flute, piano) Ralph Towner (classical guitar, 12 string guitar, piano, synthesizer, cornet, percussion) Collin Walcott (tabla, sitar, percussion, bass drum, snare drum)

Crossing
Oregon
Ecm Records
オレゴン
ラルフ タウナー

 Ralph Towner率いるバンドOregonのECM移籍第二弾。
 インプロビゼーション色も強かった前作”Oregon” (Feb.1983)に対して本作は各人の楽曲中心の演奏。
 幻想的な色合いはそのままに抽象度は下がって、近未来的な曲、妖しげな曲、ジャズっぽい曲、フュージョンっぽい曲、ポップテイストな曲、集団即興的な曲、その他諸々、さまざまな色合いが交錯する構成。
 作曲者個々の色合いがそのまま曲ごとの印象の違いに繋がっているように思います。
 幻想的で少々妖しいCollin Walcott、それにクラシック色、ジャズ色が入るRalph Towner、Paul McCandless、少々ポップ、ジャズが入るGlen Moore、といったところでしょうか。
 楽曲ごとに表情が異なります。
 全体を眺めれば、静かで穏やかな空間の中に響く輪郭が明確な管楽器、ギターもさることながら、本作もリリカルなピアノの素晴らしさが際立ちます。
 時折の強いグルーヴはありますが、ECM期では“Vanguard Sessions” (1970-1979)のようにそれを強調することはなくなったように感じます。
 Ralph Townerの変化云々よりも、Glen Moore、Collin Walcottが強烈な音を出す場面が減っているのでしょうかね?
 結果的に穏やかな色合い。
 ECMでのOregonは三作。
 抽象度の高い前作”Oregon” (Feb.1983)、明るいコンテンポラリージャズの次作 “Ecotopia” (1987)。
 それらの間の本作はちょうどその中間の色合い。
 その意味でもOregonらしいバランスの取れた作品なのでしょう。
 なお、ECM初期からのアーティストCollin Walcottはこの作品の制作後に逝去。本作が遺作?であり、事実上の追悼作品。 
 Codona諸作をはじめとして、ECMの看板の一人だっただけに残念です。




posted by H.A.

【Disc Review】”Oregon” (Feb.1983) Oregon

”Oregon” (Feb.1983) Oregon
Paul McCandless (soprano saxophone, oboe, tin flute, English horn, musette) Glen Moore (bass, violin, piano) Ralph Towner (classical guitar, 12 string guitar, piano, synthesizer) Collin Walcott (sitar, percussion, bass drum, voice)

Oregon: Touchstones Series (Dig)
Oregon
Ecm Records
オレゴン
ラルフ タウナー

 Ralph Towner率いるバンドOregonのECM移籍第一弾。
 ECMでは”Trios / Solos” (1972) Ralph Towner / Glen Moore以来の録音。
 堂々とグループ名のアルバムタイトル。
 1970年代もコンスタントにアルバムを発表していましたので、契約が整理され再出発といったところなのでしょう。
 音のイメージも変わって、ここまでのOregon、あるいはRalph Townerの諸作よりも明るくて穏やかな音。
 ”Vanguard Sessions” (1970-1979) のような強烈なグルーヴの場面は少なく、全体を通じて優しく穏やか、時折の幻想的なサウンド。
 Ralph Townerのソロ作品も、この前後、”Solo Concert” (Oct.1979)、”Blue Sun” (Dec.1982)あたりから優しく穏やかなテイストになっています。
 目立つのはフロントに立つPaul McCandlessの端正な色合いのホーン。
 Ralph Townerのギターはあくまで脇役、背景作り、全体のバンドサウンド作りに徹しています。
 他のOregonの作品と同様に、むしろピアノの方が目立つかもしれません。
 “Beside a Brook”のピアノなどは絶品です。
 が、穏やかな印象ではあるものの、抽象度の高い演奏も並びます。
 これもOregonの特徴なのでしょうが、半数の曲がバンド名義のインプロビゼーション色の強い演奏。
 完全なフリーでなく、流れはあらかじめ決めていそうですが、予測不可能、幻想的な音。
 それらの間に隠された美しいメロディの楽曲、演奏。
 これがOregon1980年代ECM的展開、といったところなのでしょう。
 ・・・にしても、やはり穏やかだなあ・・・
 ”Vanguard Sessions” (1970-1979)の時代は、1970年代ECM的だったと思うのだけど・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Vanguard Sessions: Best of the Vanguard Years” (1970-1979) Oregon

“Vanguard Sessions: Best of the Vanguard Years” (1970-1979) Oregon
Paul McCandless (Bass Clarinet, Flute, English Horn, Oboe) Glen Moore (Bass, Flute, Piano, Violin) Ralph Towner (Clay Drums, French Horn, Guitar, 12_Guitar, Hands, Mellophonium, Organ, Piano, Trumpet) Collin Walcott (Clarinet, Congas, Drums, Dulcimer, Pakhawaj Drum, Percussion, Piano, Sitar, Tabla, Tamboura)
Larry Coryell (Guitar) David Earle Johnson (Congas, Timbales) Elvin Jones (Drums) Zbigniew Seifert (Violin) Bennie Wallace (Sax)

Vanguard Sessions: Best of the Vanguard Years
Oregon
Vanguard Records
オレゴン
ラルフ タウナー

 Ralph Towner率いるバンドOregon、初期のVanguardレーベルでのコンピレーションアルバム。
 さすがに全作品は聞けていませんが、このベスト盤は素晴らしい演奏集。
 ハイテンションなコンテンポラリージャズ。
 Ralph Townerもさることながら他のメンバーが凄い。
 Glen Moore, Collin Walcott の叩き出す凄まじいグルーヴ。
 ボコボコブンブンした音でグングン前へ進むベースと、千手観音のようなパーカッション。
 ECMだとクラシックの香りが強くて上品なPaul McCandlessの激しいインプロビゼーション。 
 Ralph Townerがギターだけでなく、ピアノも多く演奏しているのもOregonならでは。
 ギターと同じく透明度が高い美しい音の上に、強烈な疾走感のカッコいいピアノ。
 ここまで凄いと、楽曲がどうのとか、メロディがどうのとか、エキゾチシズムがどうとかは、どうでもよくなってしまうような演奏。
 まさに1970年代ECMサウンドな感じがします。
 クラシックの香り、民族音楽の香り、強烈なグルーヴ、ハイテンションなインプロビゼーション・・・
 強いて言えば少々明るくて前向きな質感なのがECMとは違うのかも・・・
 Ralph Towner のECM作品はOregon的ではないように思いますが、OregonのVanguard作品はECM的・・・
 なんだか不思議な関係です。
 ECMでの初録音が変則な編成での“Trios / Solos” (1972)。
 Manfred Eicherとしては早く契約したかったことは想像に難くありません。
 が、正式なバンドでのECM録音はさらに別レーベルを挟んで、10年後の”Oregon” (Feb.1983)。
 この1970年代のサウンドのままでECMで制作していたら、さらに透明度が増して、テンションが上がって、凄い作品ができていたんだろうなあ・・・
 あるいはECMマジックにかからなかったので、ほどほどのハイテンションで止まってよかった、ととらえるか・・・?
 さて?
 1980年代ECMのOregonとはまた一味違う、1970年代ECM的なハードでカッコいいOregonサウンド。




posted by H.A.

【Disc Review】”Travel Guide” (2012) Ralph Towner, Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan

”Travel Guide” (2012) Ralph Towner, Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan
Ralph Towner (classical, 12-string guitars) Wolfgang Muthspiel (electric guitar, voice) Slava Grigoryan (classical, baritone guitars)

Travel Guide
Towner
Ecm Records
ラルフ タウナー


 ECMでのRalph Towner の久々の作品。
 リーダー作は”Time Line” (Sep.2005)以降しばらく途絶えていましたが、共演作“Chiaroscuro” (2009) with  Paolo Fresu、別レーベルのOregonでの作品は何作かあるようです。
 ギター3人による穏やかなアルバム。
 オーストリア出身の何でもありのコンテンポラリー系Wolfgang Muthspiel、Slava Grigoryanはオーストラリアのクラシックギタリスト。
 ECMの企画だと思っていましたが、同じメンバー、別レーベルで“From a Dream” (2008)といった作品があるようです。
 Wolfgang Muthspielがエレキギター、他2名がガットギター中心。
 激しいチェイスやバトルもあるのかな、と思いきや、全編意外なほどに穏やかな質感、アンサンブル中心。
 激しい場面も奇をてらうこともない淡々とした音楽。
 その意味では”Time Line” (Sep.2005)や“Driftwood” (2014) Wolfgang Muthspielに近いかもしれません。
 Ralph Townerのギターも穏やかな音。
 他のメンバーも同様。
 楽曲はWolfgang Muthspiel、Ralph Townerの2名が提供。
 いずれも哀感が漂う淡い色合いの楽曲揃い。
 誰も激しい音や変わった音を使うことはありません。
 優しくて穏やか、少々の寂寥感。
 温かな昼下がりのような音。





 Ralph Towner、ECMの作品を中心にザックリと。
 Oregonでの作品含めて他にもたくさんあるのでしょう。
 カッコいいピアノとのDuoが聞ける”Diary” (Apl.1973) が別格のお気に入り。
 他には”Batik” (Jan.1978)、“Old Friends, New Friends” (Jul.1979)、”Solo Concert” (Oct.1979)がいいかなあ、と思っていたら、不思議にも同時期の録音。
 何が違うのかはわからないのですが。
 諸々の編成、諸々の種類の音楽がありますが、氷のように冷たくハイテンションな1970年代、“Old Friends, New Friends” (Jul.1979)ぐらいから優しく穏やかになっていたようなイメージ。
 おそらく1970年代はECMマジックで、その後の穏やかな音が彼の本質なような気がします。
 その移行の過渡期が上記の三作あたり、過渡期ならではのカッコよさなのかもしれません。
 決して枯れていっている感じではなく、新しい作品が出るたびに穏やかになっていく感じ。
 音質も鋭い1970年代に対して少し丸めの近作。
 少し違う印象はありますが透明度は同様。
 1970年代の録音が今の作品に聞こえてしまうのがECMの凄いところ。
 このレーベルだけ?
 OregonのVanguardレーベルもよかったなあ。

(1972)     ”Trios / Solos” Ralph Towner / Glen Moore
(Apl.1973)    ”Diary
(Jul.1974)    ”Matchbook” with Gary Burton
(Dec.1974)   ”Solstice
(May.1976)   ”Sargasso Sea” with John Abercrombie
(Dec.1976)   ”Dis” Jan Garbarek
(Feb.1977)   ”Solstice/Sound and Shadows
(Jul.1977)    “Deer Wan” Kenny Wheeler
(Nov.1977)    ”Sol Do Meio Dia” Egberto Gismonti
(Jan.1978)    ”Batik
(Jul.1979)    “Old Friends, New Friends
(Oct.1979)    ”Solo Concert
(1980)     “Départ”  Azimuth 
(Mar.1981)    ”Five Years Later” with John Abercrombie
(Dec.1982)    ”Blue Sun
(Feb.1983)    ”Oregon” Oregon
(Oct.1984)    ”Crossing” Oregon
(May.1985)    ”Slide Show” with Gary Burton
(1987)      “Ecotopia” Oregon
(Jan-Dec.1988) ”City of Eyes
(1989)      "45th Parallel"  Oregon
(1991)      "Always, Never and Forever" Oregon
(1991,1992)   ”Open Letter
(1988,1991,1992) “If You Look Far Enough”  Arild Andersen
(1993)      "Troika" Oregon
(May.1993)   ”Oracle” with Gary Peacock
(1995)      "Beyond Words" Oregon
(May.1995)   ”Lost and Found
(Oct.Nov.1995) "Fabula" Maria João
(Dec.1995)   ”A Closer View” with Gary Peacock
(Mar.1996)   ”Ana
(1997)     “If Summer Had Its Ghosts” with Bill Bruford & Eddie Gomez
(1997)      "Northwest Passage"  Oregon
(1998)      "Music for a Midsummer Night's Dream"  Oregon
(2000)      "In Moscow"  Oregon with the Moscow Tchaikovsky Symphony Orchestra
(Feb.2000)   ”Anthem
(2002)      "Live at Yoshi's"  Oregon
(2005)      "Prime" Oregon
(Sep.2005)   ”Time Line
(2007)      "1000 Kilometers"  Oregon
(2008)     “From a Dream” with Slava Grigoryan and Wolfgang Muthspiel
(Oct.2008)   ”Chiaroscuro” with Paolo Fresu
(2010)      "In Stride"
(2012)      "Family Tree" 
(2013)     ”Travel Guide” with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan


posted by H.A.

【Disc Review】”Time Line” (Sep.2005) Ralph Towner

”Time Line” (Sep.2005) Ralph Towner
Ralph Towner (classical guitar, 12 string guitar)

Time Line
Ralph Towner
Ecm Records
ラルフ タウナー


 ”Ana” (Mar.1996)、”Anthem” (Feb.2000)に続くギターソロ三部作、完結編・・・
 ・・・かどうかはわかりませんが、これまた全く同質、金太郎飴のような作品。
 そんな中でもこのアルバムが一番穏やかで優しい表情かもしれません。
 漂うビート感、愁いを含んだメロディ、静謐で清廉なギターの響き・・・
 淡い色合いの曖昧なメロディ、音の流れの中から突然現れる美しいメロディ、展開・・・
 終始、穏やかな表情。
 少々のノスタルジー。
 流れていると部屋の空気が浄化されていくような錯覚。
 本作のテーマはテーマは何なのでしょうね?
 素直にとらえて時間の経過なのでしょうかね? そういわれればシリーズ内では一番ノスタルジックで穏やかな感じもします。
 想像するしかないのですが、さておき、集中して分析的に向き合うよりは、心地よい音の空間にボケーっと気持ちを委ねるなり、頭の片隅でとらえるともなく聞く、なんて感じの方がいいのかもしれません。
 そんなこんなでこれまた想像力を掻き立てる、静かで優しい心地よい音空間。




posted by H.A.
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