吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Pat_Metheny_Group

【Disc Review】“Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny Group

“Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums)
Armand Marsal (percussion,voice) Mark Ledford, David Blamires (Voice)

Still Life (Talking)
Pat Metheny
Nonesuch

パット メセニー

 Pat Metheny、これをベスト・アルバムにあげる人は少なくないのでしょう。
 私もその一人。 
 他のミュージシャン、ジャンルを含めてもベスト。
 ”Offramp”(1982)あたりから始まったブラジリアンフレーバー路線が確立したと思われる作品。  
 もともと柔らかな音だったところに、さらにブラジル・ミナス系のしなやかさがON。
 カラッと明るかったイメージに、少し湿り気というか、翳りというか、妖しさというか・・・そんな色合いがON。
 特にリズムの使い方が変わった、あるいは完成したのでしょう。
 ロック色が強い曲がなくなり、また、いい意味でドラム、ベースが目立たなくなり、決してうるさくはならない自然なグルーヴが前面に。
 ヒタヒタと迫りくるようなイメージ、しかも揺れながら浮遊しながら、静かに疾走する、そんな感じ。
 テンションは低くないけども、スルッと聞けてしまう心地よさ。
 こんな音は他にあったかなあ?思いつかない。
 Eberhard Weberの色合いはすっかり薄くなり、Toninho Hortaやミナス系サウンドの影響は強いのだろうけども、もっと湿ったしっとりとした音。
 この時期のこの人ならではの独特の空気感。
 柔らか、しなやか、浮遊感、メロディアス、スリリング、エキサイティング、ドラマチック・・・。 
 そんなバンドサウンドを背景にして、ギターの疾走感も最高潮。
 曲も少し湿り気、妖しさのあるカッコいいメロディばかり。
 諸々含めて完璧とも思える出来ですが、他のアルバムでは気になる曲の良し悪しとか、フレーズ展開とか、リズムとかの細部が何故か気になりません。
 バンド全体が一体となって何かの空気を作っている、そんな感じ。
 その空気が、柔らかくしなやか、ほどよく暖かで、ほどよく明るく、ほどよく妖しいのだから、心地よいのは当たり前。
 ジャズではないとか、薄味のフュージョンでつかみどころがない、といった意見もあるやもしれませんが、それはそうでしょう。
 こんなに心地よくてカッコいい音楽は他にはないから。




posted by H.A.

【Disc Review】“First Circle” (1984) Pat Metheny Group

“First Circle” (1984) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars,synclavier guitar,guitar synthesizer)
Lyle Mays (trumpet, synthesizers, piano, organ, bells) Steve Rodby (acoustic bass, bass guitar, drum) Paul Wertico (drums, percussion)
Pedro Aznar (voice, guitar, percussion) 

First Circle
Pat Metheny
Ecm

パット メセニー


 Pat Metheny、ECM最終作。
 パーカッションNana Vasconcelos、さらにドラマーが交代。
 オリジナルメンバーはLyle Maysだけになり、後の布陣が固まった作品。
 後続の二作“Still Life (Talking)” (1987)、“Letter from Home” (1989)と合わせてブラジル三部作と呼ばれているようです。
 確かにボイスやメロディがブラジルっぽい曲はあるし、もろブラジル風のボーカル曲もあるけど、全体的なリズム、雰囲気はそれほどブラジル的とは感じないかなあ・・・。
 何曲かのヒタヒタと静かに迫ってくるようなビート感がブラジルテイストを吸収~消化した新機軸、以降のサウンドのベースができた、といえばそうかもしれません。
 全体的には前作“Offramp”(1981)と同様、今までやってきたこと、これからやりたいこと諸々を試している過渡期のようにも感じます。
 前向きな爽やか系フュージョン、ロック的フュージョン、泣きのギターシンセ、静謐なアコースティックギター、アバンギャルド、ドラマチックな編曲、浮遊感の強いブラジル的な音、等々、なんでもあり。
 これだけ諸々集めても何故か作品としてまとまっているのも、すごいバランス感覚、あるいはグループとしての芯が明確だからなんでしょうね。
 2016年の目線から見ると、1984年まで、そしてその後数年の集大成、Pat Metheny Groupの総合カタログ的作品になっているように思います。
 その意味でも最高傑作とする人が少なくないのかな?
 納得です。





 さて、ところでECMレコードとPat Methenyってフィットしていたんだろうか?
 才能を見出したのはManfred Eicherの慧眼なのだろうけども、ECM的か、と問われれば違うように。
 同じアメリカ人でもKeith Jarrett, Steve Kuhn, John Abercrombieなどはそこそこヨーロッパの香りがする作品もあると思うのだけども、Patの作品はあくまでアメリカン。クラシック臭がないからでしょうかね。
 でも多大な影響を受けたと思われるEberhard Weber、あるいはブラジリアンNana Vasconcelosとの接点はECMが作った?のだろうし、透明度の高い音作りもECMならでは。
 やはりECMなしではPat Methenyサウンドは無かったのだろうなあ。
 レーベル移籍の理由は、ギターのエコーを抑えてくれなかったから云々・・・と読んだ記憶があるのだけども、真偽のほどはさておき、これまでの作品、後の作品を鑑みると、いい出会いであり、いい別れだったのでしょう。

posted by H.A.

【Disc Review】“Travels” (1982) Pat Metheny Group

“Travels” (1982) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (piano, synthesizers, organ, autoharp, synclavier) Steve Rodby (bass) Dan Gottlieb (drums)
Nana Vasconcelos (percussion,voice,berimbau)

パット メセニー

 ここまでの爽やかフュージョン路線、集大成のライブ盤。
 後のライブ”The Road to You” (1991)や"The Way Up" (2003,2004)のライブDVDと比べてしまうと、決して派手ではないし、シンプルなのだけども凄い演奏。
 Pat Metheny Groupだけでなく、“80/81” (May.1980)、“As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls” (Sep.1980)からの選曲、Nana Vasconcelosも参加しています。
 それらの多様な色合いがスッキリとまとまった感じですが、ライブだけにソリッドなテイスト、ハイテンション。
 これでもかこれでもかと爽やかな怒涛のような演奏集。
 ヒット曲“Are You Going with Me?”で始まり、半数ほどの新曲を交えつつ、名曲“San Lorenzo”で締める完璧な構成。
 ライブながら一糸乱れぬ演奏。
 Nana Vasconcelosのパーカション、妖し気な声、後に繋がる幻想的なボイスのブラジル風味も要所でいい感じで効いています。
 どの曲もカッコいいのですが、白眉はこのアルバムだけに入っている”Straight on Red”。
 基本はサンバだけども、不思議なリズム、メロディーの置き方。
 アバンギャルドなんだろうけど、いかにも楽しそうでノリノリの曲。
 ラテンなLyle Maysのピアノも最高。
 実は凄い曲、凄い演奏なのでは・・・
 快進撃はまだ続く、というより、むしろこれから。
 凄いバンド、第一期完結。




posted by H.A.

【Disc Review】 “Offramp” (1981) Pat Metheny Group

“Offramp” (1981) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitar, guitar synthesizer)
Lyle Mays (keyboards) Steve Rodby (basses) Dan Gottlieb (drums)
Nana Vasconcelos (percussion,berimbau,voice)

パット メセニー

 わかりやすかった前2作“Pat Metheny Group” (1978)、“American Garage” (1979)から、アバンギャルドな演奏含めて、少し変わったいろんな色合いの演奏。
 ベーシストが交代し、ウッドベースの使用も含めて、ビート、全体のサウンドがしっとりとしたイメージに。
 さらにブラジリアンNana Vasconcelosが”As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls”(Sep.1980)に引き続き参画。
 妖し気で幻想的なブラジル風味も本作から。
 ”Toninho Horta” (1980)での Toninho Hortaとの共演が少し前、Nana VasconcelosのECM参加が“Dança Das Cabeças” (1976) Egberto Gismontiから?のようなので、この共演の筋道を誰が立てたのか興味深いところ。
 アバンギャルドだったり、フォークロック調だったり、ポップ風だったり、ギター・シンセサイザーを大々的に導入してみたり。
 アバンギャルド曲に抵抗があった記憶もあります。
 今の耳で聞けばカッコいいのですが・・・。
 諸々含めて大胆不敵、やりたいことだらけだったんだろうなあ。
 しかもどれもきちんとまとまっています。
 不思議なことにアルバムとしても。
 “Pat Metheny Group”の爽やかフュージョン路線をもっとたくさんやって欲しかったような気もしますが、少々妖しげなブラジル路線が始まったことはうれしい限り。
 ジャケット通り、真っ直ぐ行かずに左側に行ってみますか、ってな感じ。
 フォークロックな人気曲“James”や代表曲”Are you going with me?”もいいですが、妖しげなパーカッションとボイスが入る、フレンチなんだかブラジルの山奥なのかわからない、幻想的なバラード”Au Lait”なんて最高。 
 さておき、”Are you going with me?”の完璧な泣きのギターシンセのソロは何度聞いても堪りませんね。
 あのCarlos Santanaでもこうはいかない。

Nana Vasconcelosが2016/3/9に亡くなられたとのこと。
 ご冥福をお祈りいたします。


posted by H.A.

【Disc Review】“American Garage” (1979) Pat Metheny Group

“American Garage” (1979) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (piano, oberheim, autoharp, organ) Mark Egan (bass) Dan Gottlieb (drums)

American Garage
Universal Music LLC

パット メセニー





  前作“Pat Metheny Group” (1978)の延長線のさわやかフュージョン路線。 
 前作に比べてさらにロック~ポップ色が強く、結果、あの時代の普通のフュージョンっぽいところもあります。
 哀愁感が少し薄くなり、カラッとした元気いっぱいアメリカンフュージョン。
 その分わかりやすくなって、大人気アルバムなのでしょう。
 それでも派手でも都会的でもなくて、自然な感じ。
 「瑞々しい」なんて形容詞がよく使われていたように記憶していますが、その通りの音。
 アメリカの大平原な景色が見えてきそうな音。
 元気なビートに、ギターは完成された音とフレージング、カッコいいピアノソロの場面もたくさん。
 なんだかんだで他では聞けない特別な音。
 とにかく明るくて爽やか。
 前向きだしね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Pat Metheny Group” (1978) Pat Metheny Group

“Pat Metheny Group” (1978) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (piano, oberheim synthesizer, autoharp) Mark Egan (bass) Dan Gottlieb (drums)
パット メセニー

 Pat Metheny Groupでの第一作。
 すべてが名曲、名演奏。 さわやかなフュージョンミュージック。
 当時流行ったフュージョンとは一線を画したサウンド。
 さわやかだけなら他にもありそうだけども、柔らかくしなやかな質感は希少。
 前作”Watercolors” (1977)の流れながらさらにメロディがキャッチーに。
 明るさ、浮遊感、スペーシーな感じは、共演していたEberhard Weberの“Silent Feet” (1977)前後の作品に近いムードかもしれませんが、さらに明るくポップなムード。 
 丸い音のフレットレスベースが作るスペーシーな背景。
 ギターの音も丸くて柔らかで艶やか。
 ジャズギターにありがちな、いかにも鉄線を弾いてます的な音とは全く違うし、あくまでナチュラルで上品な艶やかさ。
 ピアノも同様に上品で美しい。
 インプロビゼーションには疾走感があり、エキサイティング。
 おまけに曲がキャッチーで、適度にドラマチック、凝りまくりだけども過不足を感じないアレンジ。
 最初の音が鳴ったとたんに周囲が明るくなる。
 地中海の陽光が見えたり、アメリカの大平原や渓谷が見えたり。
 そして時折感じられる哀愁感、郷愁感。
 さらに優雅。
 いつ聞いても心地いい。
 大名作。




posted by H.A.
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