吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Pat_Metheny_Group

【Disc Review】“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989) Pat Metheny Group

“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums) Pedro Aznar (voice, guitar, percussion) Armand Marsal (percussion,voice)
 
Montreal Live 89
Pat Metheny
Hihat
2016-04-15
パット メセニー

 Pat Metheny Group、ラジオかテレビ音源からのブートレッグ、2016年リリース。
 “Letter from Home” (1989)の頃、私の最も好きな時期、ブラジル色を入れた時期のコンサートの音源。
 “The Road to You” (1991)といった近い時期のライブアルバム、DVDもあるのですが、そちらはCD一枚、一時間前後に圧縮されていたこともあり、全体が聞けると思うと、つい・・・
 予想に違わない素晴らしい演奏。
 音質も”The Road to You”とまではいかずとも、普通に十分に楽しめる音。

Disc1.
●Phase Dance
〇Have You Heard
 Every Summer Night
 Change Of Heart
〇Better Days Ahead
〇Last Train Home
〇First Circle
 Scrap Metal
 Slip Away
 If I Could
 Spring Ain’t Here
 
Disc2.
●Straight On Red
●Are You Going With Me?
 The Fields, The Sky
 Are We There Yet?
 (It’s Just) Talk
〇Letter From Home
〇Beat 70
 Miuano
〇Third Wind

 “Have You Heard”で始まり、”Third Wind”で締めるのは当時のお約束だったのかもしれませんが、オープニングに懐かしの” Phase Dance”、締めの前には“Still Life (Talking)” (1987)のオープニング曲” Miuano”。
 当時のライブを観た人、ブートレッグを聞いている人からすれば定番で当たり前の流れなのかもしれませんが、初めて当時のライブの全貌に振れる立場としては新鮮です。
 いわゆるブラジル三部作”First Circle” (1984), “Still Life (Talking)”, ”Letter from Home”(1989)の美味しい所を集めてきたような選曲。
 さらには“Travels” (1982)にしか収録されていない変則サンバの隠れた名曲”Straight On Red”やら、”Question and Answer” (1989) 収録曲やら、その他諸々。
 “The Road to You”との重複は上の〇、“Travels” (1982)とは●。
 ”Phase Dance”、”Straight On Red”など、”Travels”の方がスッキリしているかもしれないけども、こちらの方がハイテンション、凄まじいまでの熱感、疾走感。
 目くるめくような名曲名演の連続。
 柔らかくしなやかで、ヒタヒタと迫ってくるようなビート、少し湿り気と哀感があるサウンド。
 私的には一番好きな時期、一番好きなメンバーのPat Metheny Groupがぎっしり詰まっています。
 音楽の密度としては、各々の作品、”The Road to You”の方が高いのかもしれないけども、それらを全部まとめて楽しめる一作として、よろしいのでは。
 ブートレッグながら、無人島アルバムになる・・・かな?

 Pat Metheny Groupの活動は”The Way Up” (2003,2004)で事実上停止しているのだと思いますが、そろそろ復活しないでしょうかね。
 超大作“The Way Up”でやり切った・・・、懐メロはやらない・・・、と言われてしまうと納得してしまうところではあるのですが・・・
 いずれにしても、もうこの頃の音には戻れないのでしょうね。
 
 


posted by H.A.

【Disc Review】“New York November 1979” (Nov.1979) Pat Metheny Group

“New York November 1979” (Nov.1979) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars) 
Lyle Mays (piano, oberheim, autoharp, organ) Mark Egan (bass) Dan Gottlieb (drums)
 
New York November 1979
Pat Metheny
Hi Hat
2017-01-20
パット メセニー

 Pat Metheny Group、“American Garage” (1979)直後のラジオかテレビ音源からのブートレッグ、2017年リリース(なのだと思います)。
 ブートレッグにはあまり手を出さない(出さなかった)のですが、先に入手した“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989)があまりにも素晴らしかったので、グループ結成前の“Boston Jazz Workshop, September 1976” (Sep.21.1976)、さらにMark Egan、Dan Gottlieb時代のライブも聞いてみたくなり入手。
 “Travels” (1982)ではもうSteve Rodbyに交代していたし、どのくらい印象が違うのか気にもなる時期。
 まだ普通にフュージョンっぽいバンドサウンド、ロックっぽさもありますが、この頃から柔らかなこのバンド独自のビート感と、艶のある丸いクリーントーンで突っ走るギター。
 “Boston Jazz Workshop, September 1976” (Sep.21.1976)の疾走感はそのままに、粗っぽさが消え、よりまとまった完璧な演奏、音質もまずまず。
 “Pat Metheny Group” (1978)、“American Garage” (1979)をそのまま再現したようなステージ構成。
ライブながら一糸乱れない完璧な演奏からすれば、初期のこのグループのアルバムはこれだけ持っとけば・・・なんてのは言い過ぎですが、そんなステージ構成、演奏。
  “Phase Dance”で始まるのは後々までのお約束として、”April Joy”、“Jaco”、“Cross The Heartland”、 “American Garage”、”James”など、公式のライブアルバムで聞けない名曲のライブバージョンが聞けるのが嬉しいところ。

Disc1.
 Phase Dance
 Airstream
 April Joy
 Unity Village~The House Of The Rising Sun~The Windup
 The Epic

Disc2.
 James
 Old Folks
 Jaco
 The Magicians Theater
 San Lorenzo
 Cross The Heartland
 American Garage

 “Travels” (1982)と比べると元気な印象の本作。
 やはりMark Eganがベースだからでしょうかね。
 ” April Joy”、”Jaco”のベースソロはこの人のいる時期ならでは。
 終盤は、公式アルバムでは収録されていない、あちこちのオリジナル曲を合わせたようなサンバっぽいチューン“The Magicians Theater”でドーカンと盛り上がって、名曲”San Lorenzo”で締め。
 アンコールはあの”Cross The Heartland”~”American Garage”。
 完璧なステージ構成。
 好みからすれば“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989)頃のサウンドがベストなのですが、シンプルで明るい心地よさがあるのはこちら、その中間が“Travels”ってな感じでしょう。
 いい感じで進化しているようなこの時期のPat Metheny Group。
 過渡期と呼ぶには適当ではない完成度・・・というよりも、爽やかで明るく元気なアメリカンフュージョンのPat Metheny Groupの第一期が完成したのがこの時期なのでしょう。
 アメリカンなフュージョンのステージですが、柔らかさしなやかさは特別。

 この後”80/81”(May.1980)、”As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls” (Sep.1980)などのソロ作品、”Toninho Horta” (1980)などへの客演などを経て、Steve Rodby、Nana Vasconcelosを迎えた新展開、”Offramp”(Oct.1981)へ。
 ブラジル色が入り、私にとってはベストな音が始まる一歩手前。
 が、このステージも別のテイストながら最高です。

※近い時期のステージから。


posted by H.A.

【Disc Review】“Boston Jazz Workshop, September 1976” (Sep.21.1976) Pat Metheny

“Boston Jazz Workshop, September 1976” (Sep.21.1976) Pat Metheny
Pat Metheny (guitar)
Lyle Mays (piano) Mike Richmond (bass) Dan Gottlieb (drums)
 
BOSTON JAZZ WORKSHOP
PAT METHENY
HIHAT
2016-09-16
パット メセニー

 Pat Metheny、“Bright Size Life”(Dec.1975)と”Watercolors”(Feb.1977)の間、 “Passengers” (Nov.1976) Gary Burtonセッション の二か月前、放送音源からのブートレッグ。
 これは前から出回っていたのでしょうか?私が初めて聞いたのは2016年。
 Jaco Pastriusはもちろん、Eberhard Weber、Mark Eganの参加もありませんが、ここから半年後の”Watercolors”のサウンドが出来かかっています。
 初期のPat Methenyの柔らかでしなやかなビート感、サウンドはEberhard Weberの影響、透明度の高い美しい音はECMの色合いと思っていましたが、このアルバムを聞く限り、Pat Metheny自身、あるいはLyle Maysとのコンビの色合いと考えた方が適当なのでしょうね。
 音質はよくはないですが、ま、十分に楽しめます。
 冒頭、Lyle Maysのピアノが入った”Bright Size Life”なんて、ありそうでない演奏。 
 全編でピアノがキレまくっています。
 オリジナルよりもハイテンション。
 続く名曲“River Quay”、ちょっとベースが暴れ気味なのはご愛敬、後のPat Metheny Groupのお三方はこの時点で完璧。
 ギターはもちろん出来上がったPat Metheny サウンド、さらに盛り上がってしまうLyle Maysのピアノのソロがとてもカッコいい。
 さらにはジャズスタンダード“There Will Never Be Another You”。
 ちょっと変わった質感ではありますが、きちんと4ビート、バース交換までしているのが微笑ましいというか、何というか。
 これまたLyle Maysのジャズピアニスト振りがカッコいいけど、ちょっとベースの人、飛ばし過ぎ。
 続く“Watercolors”で突っ走るギター。
 やっぱりこの人は4ビートよりこっちだなあ。
 “Passengers”収録の二曲を経て、“Watercolors”収録の”Ice Fire”、“Bright Size Life”収録の“Unquity Road”から、珍しい直球なラテン曲で締め。
 やはりEberhard Weberがいるといないとでは印象は異なり、荒っぽい場面も少なくないのですが、いかにも”Watercolors”が生まれる空気感は十分。
 ま、半年前ですから当然ですか。
 “Bright Size Life”でもない、“Watercolors”でもない、”Pat Metheny Group” (Jan.1978)でもない、過渡期のPat Metheny & Lyle Maysサウンド、少々普通のジャズ・フュージョン寄り。
 が、柔らかでしなやかなビートと、明るくて爽やか、透明感のある音。
 やはり特別です。
 
 


posted by H.A.


【Disc Review】”The Way Up” (2003,2004) Pat Metheny Group

"The Way Up" (2003,2004) Pat Metheny Group
Pat Metheny (Acoustic guitar, Electric Guitar, Synth guitar)
Lyle Mays (Piano, Keyboards) Steve Rodby (Bass, Cello) Antonio Sanchez (Drums)
Cuong Vu (Trumpet, Voice) Gregoire Maret (Harmonica, Percussion) 
Richard Bona (Percussion, Voice) Dave Samuels (Percussion) 
 
THE WAY UP
Pat Metheny Group
Nonesuch

パット メセニー

 Pat Metheny Group、”Secret Story” (1991,1992)~”We Live Here”(1995)~”Quartet”(1996)以降、あるいは全キャリアの集大成ともいえそうな、超大作。
 ”Secret Story” (1991,1992)、 ”Imaginary Day”(1997) のドラマ性、プログレッシブロック的質感をベースとしつつ、”Speaking of Now”(2002) のしなやかさ、幻想的な南米路線、アコースティックギターでのフォーク路線、4ビートのハードジャズ、さらには変拍子~今日的なビートなどなど・・・全部詰め込んだ全一曲。
 乱暴にまとめると・・・
 ビート感は強め、リズムは複雑で今日的、
 楽曲、アンサンブルは複雑でドラマチック、ぶ厚い音、
 次から次へと目まぐるしく変わる景色、カラフルな音作り、
 メカニカルで複雑な展開、アンサンブル、計算し尽くされた構成と強烈な高揚感、
 かつての淡い色合いが極彩色に、水彩画が油絵に・・・、
 そんな感じ。
 これでもかこれでもかと突っ込んでくる凄まじい演奏が最初から最後まで続きます。
 これをやりたくて何年も試行錯誤してきたのでしょう・・・そう思わせるような凄み。
 さすがに全一曲の組曲、4種のブロックごとでも長尺ですので、気楽に聞ける感じではないのですが、要所にカッコいいメロディ、強烈な展開がたくさん組み込まれています。
   パート1の超弩級にドラマチックな展開に、パート2にかけての強烈な4ビートでの凄まじいインプロビゼーション、パート3にブラジル路線のイメージなどなど・・・
 1990年代からの集大成であるとともに、音のイメージは変われど1970年代からの集大成でもあるのでしょう。
 超弩級にハイテンションな超大作、でも暗かったり深刻だったりはしないし、Pat Metheny Groupらしい素晴らしいアルバム。
 好みはさておき、これが最高傑作、に異論なし。
 それにしてもごっつい音楽・・・・・・
 スピーカーに対峙して正座して聞かないとね・・・そう思わせる最高のアート。

 なお、この作品の後、Pat Methenyと盟友Lyle Maysの共演は途絶えている・・・のかな・・・? 




posted by H.A.

【Disc Review】“Speaking of Now” (2001) Pat Metheny Group

“Speaking of Now” (2001) Pat Metheny Group
Pat Metheny (Guitars)
Lyle Mays (Piano, Keyboards) Steve Rodby (Cello, Acoustic bass) Antonio Sanchez (Drums, Vocals)
Cuong Vu (Trumpet, Vocals) Dave Samuels (Percussion, Marimba) Richard Bona (Acoustic guitar, Fretless bass, Vocals, Percussion) 

Speaking of Now
Pat Metheny Group
Warner Bros / Wea
2002-02-14
パット メセニー

 Pat Metheny Group、強烈な大作”Imaginary Day”(1997)の次の作品。
 間にギタートリオ作”Trio 99->00”(1999) などを挟んでいます。
 これまた大作。
 ”Imaginary Day”のドラマチックさ、勇壮さがこのアルバムにもあります。
 が、少し柔らかでしっとりとした感じが戻ったPat Metheny Group。
 メロディにかつての色が戻り、音も少し軽くなって、あの浮遊感が戻ってきたようにも感じます。
 ドラマチックなのは前作同様ですが、前作のような派手な仕掛けはないシンプルな質感。 
 前作ではディストーションの使用が多かったギターも、本作ではクリーントーンが中心。
 今も共演が続く強烈なシンバルのヘビー級ドラマーAntonio Sanchezとの縁はこのアルバムから。
 前々作“Quartet” (1996)でPaul Werticoがシンバルを強く叩き出し、重くなったように感じたのは、あるいは逆にジャズっぽくなったように感じたのは気のせいではなくて、その方向にもっていこうとしていて、いいバランスを探していたのでしょうか?
 強いビートながら、確かにポップス色、ロック色は薄くなっているようにも感じます。
 本作から参加のスーパーアーティストRichard Bonaは、ベースではなくボーカルとパーカッション。
 彼の色合いは濃くはありませんが、幻想的なボーカル曲を含めて自然にPat Metheny Groupのサウンドの中に溶け込んでいます。
 とにもかくにもジャズの香りが漂う強いビートに乗った完璧なギター、ピアノのインプロビゼーション。
 どこまでも全力疾走していくような強烈な疾走感。
 アルバム全体を通じてはもちろん、各曲全てがドラマチックな構成。
 静かに始まり、後半に強烈な疾走と高揚に到達する”Still Life (Talking)" (1987)の”Minuano”なスタイルの楽曲がたくさん。
 全編通じて全く緩みなし。
 これでもかこれでもかと畳みかけてくるような演奏が続きます。
 とりわけ中盤"On Her Way"あたりから締めの”Wherever You Go”かけての盛り上がりは最高。
 次々と複雑に景色が変わっていく展開、強烈な高揚感をそのままに、次作、超弩級の”The Way Up” (2003,2004)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】”Imaginary Day” (1997) Pat Metheny Group

”Imaginary Day” (1997) Pat Metheny Group
Pat Metheny (Guitars, Guitar synth, Pikasso guitar)
Lyle Mays (Piano, Keyboards) Steve Rodby (Acoustic Bass, Electric Bass, Cello) Paul Wertico (Drums)
David Blamires (Vocals, Guitar, Trumpet, Violin, Mellophone, Recorder) Mark Ledford (Vocals, Flugelhorn, Trumpet) Dave Samuels, Glen Velez, Don Alias, Mino Cinelu (Percussion)
Imaginary Day
パット メセニー





 Pat Metheny、強烈な新機軸による大作。
 何と呼べばいいのでしょう?
 激烈ドラマチック大作路線?無国籍型超弩級ハードジャズ?体育会系ジャズフュージョン?それともプログレッシブロックフュージョン路線・・・?
 とにもかくにも、本作、“Speaking of Now” (2001)、”The Way Up” (2003,2004)と凄まじい作品が連なります。
 冒頭、いきなりグニャグニャした音のギターで琴のような音。
 笛的~尺八的な音も交えながら、日本的な音階も使っているのでしょう、能?歌舞伎?な感じ。
 しかもヘビーな質感。
 さらにはフォークロックやら、フラメンコっぽい曲やら、強いディストーションギター~強烈なビートのロック曲やら、デジタルビート絡めた曲やら、その他もろもろ。
 いずれの楽曲も、とても複雑でドラマチックな構成、沈痛~深刻なメロディの楽曲、分厚い音、ヘビーなリズム。
 かつての淡かった色合いから、極彩色。
 これは強烈。
 個々の音使いやソロなどに、かつてのPat Metheny Groupのイメージはありますが、メロディとかリズムとかは完全に刷新されてしまっている感じもします。
 リズムの重さは前作 “Quartet” (1996)からでしたが、曲調もアレンジも新たなテイスト加えて練りに練った感じ。
 勇壮で深刻、ドラマチックでヘビー。
 さらにそんな音を背景にした、これでもかこれでもかの凄まじいインプロビゼーションのオンパレード。
 しなやかで軽快な Pat Metheny Groupのイメージは“The Road to You” (1991)で終了していたんでしょうね。
 過去からのファンにとっては問題作。
 慣れるまで時間が掛かりましたが、圧倒的な作品であることも確か。
 顔が似ている?Mel Gibson”Braveheart”的な勇壮な映画のサントラ・・・とかイメージしてしまうのは私だけでしょうか・・・?
 とかなんとか、なんだかんだでカッコいいのですが。




posted by H.A.

【Disc Review】“Quartet” (1996) Pat Metheny Group

“Quartet” (1996) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums, percussion)

Quartet?
PAT METHENY GROUP
MUSICSTORE

パット メセニー

 前作“We Live Here” (1995)で変わった感じのPat Metheny Group、同じコアメンバーでの作品。
 前作路線かと思いきや、予想外にもジャズっぽかった。
 何故かここまでとは違った感じ。
 パーカッションが抜けているけども、ドラムもベースもメンバーは変わっていないし、何曲かのフリージャズ的な取っ付きにくい曲のせいではないような・・・ 
 重めのビート感と強いシンバルが目立つ音作り。
 Paul Werticoってこんな感じのドラマーではなかったと思っていたけど・・・?
 ジャズ度が高くなっているようには思うのだけども、ヘビーになったビート感。
 次の展開を目指して、リズム、間の取り方を別の方向に持っていこうとしていたんでしょうかね?
 楽曲も沈痛な深刻系が中心。
 結果的にはかつての柔らかさ、しなやかさ、軽やかさが薄れてきたか・・・
 Pat Metheny Group諸作の中で沈痛度No.1でしょう。
 ・・・などなど、思うところはありますが、ギターもピアノも相変わらずすごい演奏。
 超高レベルな、ちょっと変わったハイテンションジャズギターカルテット。
 ハードでシリアス。
 ちょっと暗いけど。
 これまで概ね2~3作づつで音を変えてきているように思いますが、今回は早めの転機。
 2016年の今から思えば、単に沈痛でジャズっぽいアルバムではなく、古くは”As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls” (Sep.1980)、あるいは”Secret Story”(1992)でまとまって表出したドラマチックな展開のひとつにも思えます。
 ”We Live Here” (1995)でビート感を変え、本作含めて試行錯誤しながら、超弩級にドラマチックでシリアスなアート”The Way Up” (2005) に至るためのステップその3、といったとらえかたも出来るのでしょうか。
 とにもかくにも、ここから先に続くシリアス系Pat Metheny Groupの入口的な一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“We Live Here” (1995) Pat Metheny Group

“We Live Here” (1995) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums)
David Blamires (vocal) Mar Ledford (Vocal, Trumpet) Luis Conte (percussion) Sammy Merendino (Drum Programming) Dave Samuels (Cymbal Rolls)

We Live Here
Pat Metheny Group
Nonesuch
2015-01-13


 Pat Metheny、グループでの前作“The Road to You” (1991)から、ソロ作品”Secret Story”(1991)などを挟んで大変化。
 リズムのイメージが大きく変わって、当時流行っていたスムースジャズの雰囲気や打ち込みリズムを取り入れたのでしょうねえ。 
 超一級のスムースジャズが出来てしまっています。
 曲はキャッチーだし、ギターがいつになく前に出ている印象だし、それがとてもメロディアスだしカッコいい。
 珍しくブルージーな雰囲気も出してたりして。
 マニアックな気難しさや毒気もありそうですが、あまり表には出てこないようにシュガーコーティング。
 オシャレな感じも十分。
 といっても安っぽさは微塵もなし。
 ポップなだけでなく、とてもドラマチック。 
 今思えば、このアルバム、その前のソロ作品”Secret Story”あたりが、柔らかしなやかしっとり路線からの転換、次の進化への移行期だったのでしょうね。
 やはり一流の人は変化することを止めません。
 ひょっとしたら、スムースジャズをやりたかったのではなく、これまでのように浮遊感の強い音楽ではなく、ビート感を強くして、後の”The Way Up”(2005) ようなドラマチックで強烈な音楽を作る、その試行その2、とも見える、かな?
 それにしてはおそろしく完成度が高いけど・・・
 いずれにしても、とても素敵なアルバムです。
 でも、とても悲しいのは、私にとってのBest Period of Pat Metheny Groupが終了したこと。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Road to You” (1991) Pat Metheny Group

“The Road to You” (1991) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums)
Pedro Aznar (voice, guitar, percussion, etc.) Armand Marsal (percussion, voice)

Road to You
Pat Metheny
Nonesuch

パット メセニー

 Pat Metheny、先の爽やかフュージョン路線期の“Travels” (1982)と同様、今期、ブラジル路線期の集大成、ライブアルバム。
 もちろん最もお気に入りの時期の演奏なので文句なし、素晴らしいアルバム。
 この期”First Circle”(1984) 、”Still Life (Talking)”(1987)、”Letter from Home”(1989)からのベストな選曲+新曲。
 “Travels” (1982)以前の人気曲からの選曲はなし、の潔さ。
 スタジオ録音を凌ぐ勢い、疾走感。
 ガチガチの完成度。
 バンド全体が一つの楽器になったような一体感。
 冒頭の”Have you Heard”、終盤の”Third World”の凄まじいこと。
 オープニングとエンディングのために作られた曲としか思えない。
 冒頭からバンド全員がいきなりの全力疾走。
 最後まで突っ走って、息切れなし。
 これは凄まじい。
 演奏が終わっても合唱する観客の皆さんの気持ちがよく分ります。
 柔らかでしなやかなPat Metheny Groupの集大成。
 凄いバンドの第二期、完結。




posted by H.A.

【Disc Review】“Letter from Home” (1989) Pat Metheny Group

“Letter from Home” (1989) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums)
Pedro Aznar (voice, guitar, percussion) Armand Marsal (percussion,voice)

Letter From Home
Pat Metheny
Nonesuch

パット メセニー

 Pat Metheny、前作“Still Life (Talking)” (1987)の延長線、最高に素敵な音楽。
 これまた、柔らか、しなやか、メロディアス、スリリング、エキサイティング、ドラマチック。
 前作同様、ブラジル路線。
 これみよがしなブラジリアンフレーバーではなく、バンドの中に取り込み、完全に消化してしまったようなさりげない表出。
 静かにヒタヒタと迫ってくるような複雑なビート感。
 周囲の景色が目まぐるしく変わっていくような構成。
 それでも極めて自然。
 この時期のこのバンド独自のサウンド。
 演奏は完璧。
 冒頭を飾る代表曲のひとつ”Have You Heard”のギターソロの凄まじいこと。
 数分間、口あんぐり状態。
 音がキレイとか疾走感とかなんだかんだ、全ての要素が揃った完璧なインプロビゼーション。
 ブチ切れて弾いているようで、音もリズムも全く乱れなし、かつ完璧な起承転結。
 その他、ポップな曲やら、ドラマチックな曲やら・・・
 過不足が全く感じられない完璧な編曲と、インプロビゼーション。
 諸々含めて、なんだかんだでこの時期のPat Metheny Group、前作と本作がいまだに私にとってのベストな音楽。
 もう25年以上も前の作品のようですが、これ以上のお気に入りがいまだに見つからない。
 さて、新たなお気に入りが見つかるのが早いか、こちらの感覚が変わるのが早いか・・・。
 もう25年以上も経つからねえ・・・




posted by H.A.
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