吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Pat_Metheny

【Disc Review】“Side-Eye NYC (V1. IV)” (2019) Pat Metheny

“Side-Eye NYC (V1. IV)” (2019) Pat Metheny

Pat Metheny (Guitar)
James Francies (Keyboards) Marcus Gilmore (Drums)


SIDE-EYE NYC (V1.IV)
PAT METHENY
ADA/BMG/MODERN RECORDINGS
2021-09-10


 Pat Metheny、新作は新メンバーでのトリオ。
 スタジオ録音とライブ録音が半分ずつ。
 少し前の録音、“From This Place” (2019)とも時期は遠くないのだと思いますが、全く違うメンバー。
 ドラムは長年の盟友Antonio Sanchezではなく同世代の名手Marcus Gilmoreへ、キーボードは若手コンテンポラリージャズの名手。
 デジタル色も交えつつのコンテンポラリージャズ。
 キーボードは21世紀型。
 Herbile Hancockな感じに、Hip Hop的というか、ミニマル的というか、そんな色合いも交えつつの今な感じのコンテンポラリージャズピアノ&オルガン&シンセサイザー。
 冒頭は長尺で激しい演奏のライブ音源。
 ドラムは静かにヒタヒタと迫ってくる系、“Still Life (Talking)” (1987)あたりのあの感じ。
 静かな緊張感、シンセサイザーとフワフワしたエレピが絡み合う中でギターが奏でる物憂げなメロディ。
 複雑に形を変えながら、中盤から終盤に向けて激しいインプロビゼーションとともにテンションを上げていくバンド、強い高揚感の中での幕。
 今風ポップな先端ジャズに彩られたドラマチックなPat Methenyサウンド。
 なるほど、新基軸はこの線か・・・
 と思いきや、以降は意外にも普通な感じのコンテンポラリージャズフュージョン。
 続くBetter Days Ahead、他にもBright Size Life, Turnaround, The Batといった懐かしい楽曲も演奏され、それらはどこかで聞いたバージョンに近い感じ。
 他にもジャズブルース・フュージョンやら、爽やかフュージョンっぽい感じやら。
 ギターはいつも通りですが、リズムはひねった感じがそこかしこ、キーボードはジャズフュージョンの形を守りつつも変幻自在、アグレッシブなインプロビゼーション。
 “From This Place” (2019)は壮大でゴージャスな音絵巻でしたが、本作は少々カジュアル、今風コンテンポラリージャズ。
 さて、次は本作の一曲目の線なのか、あるいは”The Way Up” (2003-4)From This Place” (2019)路線なのか、それらのフュージョンなのか、はたまたもっと別な形なのか。
 さて、、、?



 


posted by H.A.



【Disc Review】“Road to the Sun” (2021) Pat Metheny

“Road to the Sun” (2021) Pat Metheny

Jason Vieaux (Guitar) Los Angeles Guitar Quartet
Pat Metheny (Guitar)

ROAD TO THE SUN
PAT METHENY
ADA/BMG/MODERN RECORDINGS
2021-03-05



 作曲家Pat Metheny、クラシックギターで演奏される組曲二編+α。
 本編の演奏はその筋の名ギタリストたちに委ねています。
 前半は独奏。
 後半はギター4台。
 最後にPat さん本人がArvo Partの楽曲をピカソギターで一曲。
 クラシックには疎いのですが、全編そうなのでしょう。
 アコースティックギター一本の作品も含めてここまでのどの作品とも違う色合い。
 が、いかにもクラシック、ではなく、もちろんPat Metheny的、あるいはフォルクローレ的、南米系な空気感なのは、Patさんのスコアゆえなのでしょう。
 静かに穏やかに流れていく時間。
 どこかで聞いたことのあるメロディ、展開の断片が現れては消えていきます。
 さらに後半、ギターカルテットでの演奏になると、コードストロークも盛り込みつつ、フォーキーな色合い、南米フォルクローレ、スパニッシュ、そしてクラシカルな色合い、それらの交錯。
 かつての作品のどこかの場面を漂わせつつのアコースティックなPat Methenyワールド。
 終盤に向けてテンションを上げていくドラマチックな展開。
 "The Way Up" (2003,2004)、”Secret Story” (1991)、近作“From This Place” (2019) などの組曲(風)は、ドカーンとくる場面含めて強烈にドラマチックでしたが、本作はあくまで穏やかなドラマ。
 そして安堵するかのように静かに本編は幕。
 さらにさながらアンコールのようにピカソギターが奏でる静かな幻想・・・
 もちろんいつもとは色合いが異なります。
 が、静かで穏やか、上品な佇まいと、さりげなく流れるいつものPat Metheny色がとてもいい感じ。
 そんな作曲家Patさんのクラシック(?)ギターミュージック。 


 

posted by H.A.



【Disc Review】“From This Place” (2019) Pat Metheny

“From This Place” (2019) Pat Metheny

Pat Metheny (Guitars, Keyboards)
Gwilym Simcock (Piano) Linda May Han Oh (Bass) Antonio Sanchez (Drums)
Luis Conte (Percussion) Meshell Ndegeocello (voice) Gregoire Maret (harmonica)
and Orchestra

From This Place -Digi-
Pat Metheny
Warner
2020-02-21


 Pat Metheny、2020年新作。
 前作はスタジオライブの”The Unity Sessions” (2014)、スタジオ録音では”KIN (←→)” (2013)以来。
 20年来の盟友Antonio Sanchezのみを残してメンバーを一新。
 ギター+ピアノトリオのカルテット+αにオーケストラが加わる編成。
 近作のハードなジャズ色を残しつつ、かつてのPat Metheny Groupの幻想的なムード、ドラマチックさが戻った感じ。
 全十曲ですが、”The Way Up” (2003-4)のイメージに近い組曲風。
 冒頭は10分を超える長尺な演奏。
 静かに漂う様に始まりつつ、徐々にテンションと音量を上げるバンド、緊張感を煽るオーケストラ。
 徐々に変わっていく景色の中を漂い疾走するピアノ、ギター。
 そして陶酔を誘うリフレインの中、凄まじいまでにドラマチックなエンディング。
 その余韻と緊迫感を引きずりつつ、ハードなジャズ、重さを抑えたジャズフュージョン、バラード等々、形態を変えながらも神妙な空気感を纏ったドラマチックな演奏が続きます。
 中盤を過ぎるとキャッチーな展開もちらほらしてきますが、張り詰めた空気感は変わりません。
 終盤に収められた儚げな女性ボーカルも、全体の中に溶け込む小さなアクセント。
 そしてストリングスに彩られたバラードで静かに幕。
 全部あわせて往年のPat Metheny Groupをよりハイテンション、よりシリアスに寄せ、よりドラマチックになった色合い。
 もしLyle Maysが健在なら、オーケストラの部分がシンセサイザーになって軽快な感じにもなっていたのかもなあ・・・いや、やはりこんな感じかも・・・などと想像すると、何とも・・・
 ともあれ本作、めくるめく音楽ドラマ、重厚な大作にして名作。




・ソロ、リーダー ・・サポート (録音or発表年) 、当方知る限り。
・・“Jaco” (Jun.1974) w. Jaco Pastorius
・・“Ring” (Jul.1974) Gary Burton 
・”Bright Size Life” (Dec.1975) 
・・“Dreams So Real” (Dec.1975) Gary Burton 
・・“Passengers”(1976) Gary Burton 
・”Watercolors” (1977)
Pat Metheny Group” (Jan.1978) 
・“New Chautauqua” (Aug.1978)
American Garage” (Jun.1979)
・・“Shadows and Light” (Sep.1979) Joni Mitchell
・”80/81” (May.1980)
・”As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls” (Sep.1980) w.Lyle Mays 
・・”Toninho Horta” (1980) Toninho Horta
・・“The Song Is You” (Sep.1981) Chick Corea
Offramp” (Oct.1981) 
Travels” (1982)
・”Rejoicing”(1983) 
・・”All The Things You Are” (1983) w. The Heath Brothers
・・“Move To The Groove” (1983) w. The Heath Brothers
First Circle” (1984) 
・・“Contemplacion” (1985) Pedro Aznar
・・"Encontros e Despedidas" (1985) Milton Nascimento
・・“Day In-Night Out” (1986) Mike Metheny
・”Song X” (1985) w. Ornette Coleman
Still Life (Talking)" (1987)  
・・“Story Of Moses” (1987) Bob Moses
・・“Michael Brecker” (1987) Michael Brecker
Letter from Home” (1989) 
・”Question and Answer” (1989)
・・“Electric Counterpoint” (1989) Steve Reich
・・“Reunion” (1989) Gary Burton 
・・“Moonstone” (1989) Toninho Horta
・・”WELCOME BACK” (1989) 矢野顕子
・・“Parallel Realities” (1990) Jack DeJohnette
・・“Parallel Realities Live...” (1990) Jack DeJohnette
・・“Tell Me Where You're Going” (1990) Silje Nergaard
The Road to You” (1991)
・”Secret Story” (1991-2) 
・・“Till We Have Faces” (1992) Gary Thomas
・”Zero Tolerance for Silence” (1992) 
・・“Wish” (1993) Joshua Redman
・”I Can See Your House from Here” (1993) w. John Scofield
・・“Noa” (1994) Achinoam Nini
・・“Te-Vou !” (1994) Roy Haynes
・・"Angelus" (1994) Milton Nascimento
We Live Here” (1995)
Quartet” (1996)
・”Passaggio per il paradiso”(1996) 
・“Sign of 4” (1996) w. Derek Bailey
・・“Pursuance” (1996) Kenny Garrett
・”Beyond the Missouri Sky” (1996) w. Charlie Haden
・・"Tales from the Hudson" (1996) Michael Brecker
・”The Elements : Water” (1997) w. David Liebman 
Imaginary Day”(1997)
・・”The Sound of Summer Running” (1997) Marc Johnson 
・・”Like Minds” (Dec.1997) Gary Burton
・”Jim Hall & Pat Metheny” (Jul,Aug.1998)
・・”A Map of the World” (1999) 
・・“Dreams” (1999) Philip Bailey
・・“Time Is of the Essence” (1999) Michael Brecker
・”Trio 99 → 00”(Aug.1999) 
・”Trio → Live” (1999-2000)
・・“Nearness of You: The Ballad Book” (2000) Michael Brecker
・・”Reverence” (2001) Richard Bona 
Speaking of Now” (2001)
・・”Upojenie” (2002)
・”One Quiet Night” (2001,3) 
The Way Up” (2003-4)
・”Tokyo Day Trip” (Dec.2004) 
・”Day Trip” (Oct.2005) 
・”Metheny/Mehldau Quartet” (Dec.2005) 
・・“Pilgrimage” (Aug.2006) Michael Brecker
・”Metheny/Mehldau” (Dec.2006) 
・・”Quartet Live" (2007) Gary Burton  
・”Orchestrion” (2009)
・”The Orchestrion Project” (2010)
・”What's It All About” (2011) 
・”Unity Band” (2012)
・”Tap: John Zorn's Book of Angels, Vol. 20” (2013) 
・・“SHIFT” (2013) Logan Richardson
・”KIN (←→)” (2013)
・”The Unity Sessions” (2014)
・・”Hommage A Eberhard Weber”(2015)  
・・”Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny” (2016) Cuong Vu
・“From This Place” (2019)


posted by H.A.

【Disc Review】“Tap: Book of Angels Volume 20” (2013) Pat Metheny

“Tap: Book of Angels Volume 20” (2013) Pat Metheny

Pat Metheny (acoustic guitar, electric guitar, bandoneon, sitar guitar, baritone guitar, orchestra bells, orchestrionic marimba, keyboards, piano, bass guitar, tiples, percussion, electronics, flugelhorn)
Antonio Sánchez (drums) Willow Metheny (vocals)



 Pat MethenyによるJohn Zorn楽曲集。
 “The Orchestrion Project” (2010)の後、”Unity Band” (2012)の後の時期の制作。
 盟友Antonio Sánchezのドラムをサポートに迎えたソロ演奏。
 メロディ自体はいつもの作品と違ってJohn Zornのそれ、サウンドもここまでは無かった色合いが中心。
 ズルズルのロックギターと電子音の絡み合いの激しい音からスタート。
 フリージャズの演奏、あるいは ”Imaginary Day”(1997)にこんな感じもあったように思いますが、この人のここまでハードロックなギターは珍しいなあ。
 他にもいくつかのそんなロックな演奏がありますが、これがまたピッタリはまった凄い演奏。
 ロックギタリストPat Metheny、畏るべし。
 他の楽曲ではフリージャズピアニストPat Metheny、畏るべし、の場面もあります。
 また、Antonio Sánchezのジャズっぽくないロックなドラムがタイトでグルーヴィーで、これまたカッコいい。
 アコースティックギターになっても中近東系?の不思議感。
 ギターソロになると徐々にいつもの雰囲気が出てきたかな・・・と思っていたら、いつの間にかまたエスニックな別世界に・・・
 ギターシンセサイザーが鳴り出してもまた同じ。
 ハードロックあり、フリージャズあり、エスニックあり。
 Pat Methenyとしてはやはり異色な作品。
 異質だけども、カッコいいなあ。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Orchestrion Project” (2010) Pat Metheny

“The Orchestrion Project” (2010) Pat Metheny

Pat Metheny (guitar, orchestrionics)

The Orchestrion Project
Pat Metheny
Nonesuch
2013-02-12


 Pat Metheny、orchestrionicsによるソロ演奏、“Orchestrion” (2009)に次ぐ第二弾、映像作品制作を主とした教会での無人のライブ演奏音源。
 “Orchestrion” (2009)五曲全てを演奏し、さらに過去の楽曲のセルフカバーに即興演奏を二編、全13曲。
 音の作りも前作と同様に、マリンバの響きがエスニックで、自動演奏の生楽器のサウンドがどことなくノスタルジックながら、複雑に動きまくる音、それでいてポップで聞きやすい音。
 懐かしい曲から即興演奏まで、激しい系からバラードまで、凄い演奏が揃っていますが、とりわけなのは前作のタイトル曲の再現“Orchestrion”、ハイテンションで疾走する”We Live Here” (1995)収録の”Stranger in Town”でしょうか。
 自動演奏でよくここまでグルーヴし、疾走し、高揚感を出せるものだと呆れるやら、感動的やら・・・
 即興演奏の二曲はドラムとのDuoに加えて、その場で楽器を選択したうえで、ギターとシンクロした様々な楽器で短いフレーズを作りながらそれらを重ね、ループさせながら全体の音を作っていくスタイル。
 おのずと同じフレーズの繰り返しが中心となるミニマルミュージック的になるのですが、徐々に音量とテンションが上がっていく構成はこれまたとてもドラマチック。
 などなど含めて本作も凄い「ソロ」演奏が並びます。
 が、なんだかんだでPat Metheny Groupのサウンドっぽいのが何とも趣き深いというか、何と申しましょうか・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“The Orchestrion” (2009) Pat Metheny

“The Orchestrion” (2009) Pat Metheny

Pat Metheny (guitar, orchestrionics)

Orchestrion
Pat Metheny
Nonesuch
2010-01-26


 Pat Metheny、orchestrionicsによるソロ演奏。
 ピアノ、ドラム、ベース、マリンバ、ビブラフォン、ギター、オルガン的な楽器などの自動演奏とギターとの共演。
 プログラミングした自動演奏ながらあくまで生楽器の音。
 デジタル臭はなく、極めて自然にグルーヴし、疾走し、漂う音。
 ヒタヒタと迫ってくるようなビート感と、極めて複雑ながらメロディアスでときに幻想的、ドラマチックな展開はまさに一人Pat Metheny Group状態。
 全五曲の各曲長尺な演奏。
 冒頭の組曲“Orchestrion”は超弩級にドラマチックな一人”The Way Up” (2003-4)状態。
 静かに始まり複雑な展開、目くるめくようなリズムブレイクにすさまじいユニゾン・・・などなどを経て、ラテンな疾走と高揚~沈静まで、15分を超えるなんともすさまじい演奏。
 こりゃスゲーや。
 バンドでの演奏であれば凄いなあ・・・ってな感じでいいのだけども、フレキシブルな楽器の絡み合い、自然なグルーヴや疾走、強烈な高揚感までを計算尽くでプログラミングし、事実上、独りで同時に演奏しているのだろうから、もはや言葉がありません。
 これでもかのドラマチックさに加えて、マリンバ系の音がしっかり効いていてエスニックな感じもするし、どことなくある時計仕掛け感がノスタルジックな感じなど含めてなんとも複雑な質感。
 それらを背景に弾きまくられる、いつも通りの丸い音のギターのインプロビゼーションもすさまじい限り。
 名曲揃いなだけにPat Metheny Groupとしてやっていればまた違った大名作に・・・なんてことは愚かな考えなのでしょう。
 おそらくは前人未到の凄い音楽、しかもそこそこポップでサラリとも聞ける音。
 こりゃスゲーや。




posted by H.A.


【Disc Review】“A Map of the World” (1999) Pat Metheny

“A Map of the World” (1999) Pat Metheny

Pat Metheny (acoustic guitars, piano, keyboards) 
Gil Goldstein (orchestrator, conductor, organ) Steve Rodby (acoustic bass) Dave Samuels (percussion) and Orchestra

A Map of the World (1999 Film)
Warner Bros / Wea
1999-11-15


 Pat Methenyによる映画のサウンドトラック?。
 ”Imaginary Day” (1997)と”Speaking of Now” (2001)の間の時期の制作。      
 中心となるのはアコースティックギターとGil Goldsteinが率いる優雅で美しいオーケストラとの共演。
 センチメンタルな空気感は近い時期のサントラ作品“Passaggio per Il paradiso” (1996)にも共通しますが、質感は異なります。
 ナチュラルでアコースティックな一貫性のある音作り。
 バラード中心ですが、後の“One Quiet Night” (2001,3)シリーズのように沈んだ感じ、静的な感じではなく、ほどよい風が吹くアメリカの大草原的な爽やか系。
 “Beyond the Missouri Sky”(1996)に近い感じかもしれませんが、もっと明度、透明度が高く、優雅かつさり気ない音。
 全編でアコースティックギターのシングルトーンが前面に出て、メロディもあのPat Metheny節。
 他の作品と比べてマニアックな成分が薄くて、いい感じで普通な雰囲気。
 優雅で洗練されたGil Goldsteinのオーケストラの音ゆえでしょうか?
 アルゼンチン系、現代フォルクローレ系の作品にこの種の空気感の作品が多いのですが、共通するのは全体を漂う郷愁感。
 本作はさながらAmerican Saudadeってな感じ。
 景色が次々と変わっていくような音の流れ、細かく刻まれた全28曲ですが、サントラ臭はなく純音楽作品として極めて上質で心地よい音。
 隠れた名作。
 聞き流しても気持ちよさそうなさり気なさは、CaféのBGMに最高の音なんだろうなあ・・・
 和みます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Passaggio per Il paradiso” (1996) Pat Metheny

“Passaggio per Il paradiso” (1996) Pat Metheny

Pat Metheny (Instruments)

Passaggio Per Il Paradiso
Pat Metheny
Geffen Import
1998-10-20


 Pat Methenyによる映画のサウンドトラック。
  ”Quartet” (1996)、”Beyond the Missouri Sky” (1996)と同じ年の制作。
 ギター、ピアノ、シンセサイザー、その他、一人での演奏、制作。
 中心となるのはストリングス、シンセサイザーのサウンドを前面に出したスローバラード。
 その合間々に挟まれるアコースティックギターで繰り返し奏でられる何曲かの美しいメロディ。
 長い演奏はありませんが、それらはどれも絶品です。
 それらがアクセントとなりつつ、幻想的で物悲しい音の流れが続きます。
 いつものサウンドとは異なりますが、メロディ自体はいつものどことなく懐かしさが漂うPat Methenyのバラード。
 ここで描かれるParadisoは明るくてのほほんとした感じではなく、物悲しくて幻想的。
 静かで沈んだ感じですが、あくまで前向き。
 きっとそんなSaudadeな映画なのでしょう。
 違うのかな?




posted by H.A.


【Disc Review】“The Falcon And The Snowman” (1984) Pat Metheny Group

“The Falcon And The Snowman” (1984) Pat Metheny Group

Pat Metheny (Guitar Synthesizer, Acoustic Guitar, Electric Guitar)
Lyle Mays (Synthesizer, Piano) Steve Rodby (Acoustic Bass, Electric Bass) Paul Wertico (Drums, Percussion) Pedro Aznar (Voice)
David Bowie (voice) 
National Philharmonic Orchestra, Ambrosian Choir

 Pat Metheny Groupによる映画のサウンドトラック。
 名作連発期、“First Circle” (1984)と”Still Life (Talking)” (1987)の間、Pat Metheny Group名義。
 あくまでサントラ、いきなり聖歌隊で始まるし、この期の色合いの南米度はほどほど、Pat MethenyよりもLyle Maysの色合いが強い感じ、ビート感も重め、ジャケットもいつもの雰囲気ではないし・・・
 が、メロディ、コードの動きはなんだかんだでPat Metheny Groupの音楽。
 ポストECMの時期、近い時期の“Lyle Mays” (1985)に近いのかもしれませんが・・・
 スキャットとシンセサイザーが作る幻想的な空気感にリリカルなピアノ、掻き鳴らされるアコースティックギター。
 あの丸っこいクリーントーンのエレキギターが出て来ないのが寂しいのですが、その分Pedro Aznarのヴォイスが映える場面、あるいはシンセサイザーが作る宇宙的、幻想的な場面が多い構成。
 ポップスからシンセサイザーミュージック、クラシック的な音までさまざまな表情。
 David Bowieとの共演も含めて、このポップでてんこ盛りな感じはECMでは作らせてもらえないんだろうなあ・・・
 この後、Geffen RecordsでのPat Metheny Groupの快進撃が始まります。




posted by H.A.


【Disc Review】“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989) Pat Metheny Group

“Montreal Live 89” (Jul.3, 1989) Pat Metheny Group
Pat Metheny (guitars)
Lyle Mays (keybords) Steve Rodby (bass) Paul Wertico (drums) Pedro Aznar (voice, guitar, percussion) Armand Marsal (percussion,voice)
 
Montreal Live 89
Pat Metheny
Hihat
2016-04-15
パット メセニー

 Pat Metheny Group、ラジオかテレビ音源からのブートレッグ、2016年リリース。
 “Letter from Home” (1989)の頃、私の最も好きな時期、ブラジル色を入れた時期のコンサートの音源。
 “The Road to You” (1991)といった近い時期のライブアルバム、DVDもあるのですが、そちらはCD一枚、一時間前後に圧縮されていたこともあり、全体が聞けると思うと、つい・・・
 予想に違わない素晴らしい演奏。
 音質も”The Road to You”とまではいかずとも、普通に十分に楽しめる音。

Disc1.
●Phase Dance
〇Have You Heard
 Every Summer Night
 Change Of Heart
〇Better Days Ahead
〇Last Train Home
〇First Circle
 Scrap Metal
 Slip Away
 If I Could
 Spring Ain’t Here
 
Disc2.
●Straight On Red
●Are You Going With Me?
 The Fields, The Sky
 Are We There Yet?
 (It’s Just) Talk
〇Letter From Home
〇Beat 70
 Miuano
〇Third Wind

 “Have You Heard”で始まり、”Third Wind”で締めるのは当時のお約束だったのかもしれませんが、オープニングに懐かしの” Phase Dance”、締めの前には“Still Life (Talking)” (1987)のオープニング曲” Miuano”。
 当時のライブを観た人、ブートレッグを聞いている人からすれば定番で当たり前の流れなのかもしれませんが、初めて当時のライブの全貌に振れる立場としては新鮮です。
 いわゆるブラジル三部作”First Circle” (1984), “Still Life (Talking)”, ”Letter from Home”(1989)の美味しい所を集めてきたような選曲。
 さらには“Travels” (1982)にしか収録されていない変則サンバの隠れた名曲”Straight On Red”やら、”Question and Answer” (1989) 収録曲やら、その他諸々。
 “The Road to You”との重複は上の〇、“Travels” (1982)とは●。
 ”Phase Dance”、”Straight On Red”など、”Travels”の方がスッキリしているかもしれないけども、こちらの方がハイテンション、凄まじいまでの熱感、疾走感。
 目くるめくような名曲名演の連続。
 柔らかくしなやかで、ヒタヒタと迫ってくるようなビート、少し湿り気と哀感があるサウンド。
 私的には一番好きな時期、一番好きなメンバーのPat Metheny Groupがぎっしり詰まっています。
 音楽の密度としては、各々の作品、”The Road to You”の方が高いのかもしれないけども、それらを全部まとめて楽しめる一作として、よろしいのでは。
 ブートレッグながら、無人島アルバムになる・・・かな?

 Pat Metheny Groupの活動は”The Way Up” (2003,2004)で事実上停止しているのだと思いますが、そろそろ復活しないでしょうかね。
 超大作“The Way Up”でやり切った・・・、懐メロはやらない・・・、と言われてしまうと納得してしまうところではあるのですが・・・
 いずれにしても、もうこの頃の音には戻れないのでしょうね。
 
 


posted by H.A.

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