吉祥寺JazzSyndicate

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Norma_Winstone

【Disc Review】“Descansado - Songs for Films” (2017) Norma Winstone

“Descansado - Songs for Films” (2017) Norma Winstone

Norma Winstone (voice)
Klaus Gesing (bass clarinet, soprano sax) Glauco Venier(piano) 
Helge Andreas Norbakken(percussion) Mario Brunnello(cello)

Descansado: Songs for Films
Norma Winstone
Ecm Records
2018-02-16


 大御所Norma Winstoneの映画音楽集。
 “Dance Without Answer” (2012)以来の久々の作品。
 近年のレギュラートリオにバーカッションとチェロが数曲で加わっています。
 Michel Legrand、Nino Rota、Ennio Morriconeといったヨーロピアンのとてもセンチメンタルで甘いメロディを散りばめつつ、全曲いつものスローバラード。
 この人の作品はいつも古いヨーロッパ映画のような映像的な音、ズバリそのものの企画。
 静かに零れ落ちるような音使いと要所でのグルーヴが交錯する美しいピアノと、いかにもヨーロピアンジャズな美しいソプラノサックスに妖しいバスクラリネット。
 近年、あるいは“Azimuth” (Mar.1977)、”Somewhere Called Home” (1986)の頃から変わらない、あの静謐な世界。
 トリオの演奏をベースとして、要所でパーカッションが妖しさを、チェロが優雅さを助長します。
 かつてよりもハスキーになり、重心が下がった感じの声と歌。
 甘いメロディに儚げで妖しい演奏、沈んだボイスの絶妙なバランス。
 強い浮遊感、センチメンタルでメランコリック、ちょっとノスタルジックな幻想的な時間がひたすら続きます。
 ひたすら静かで美しいのだけども、どこか日常からズレているような、歪んでいるような、あの世界観。
 European Saudadeってなのがあるとすれば、こんな音なのかもしれません。
 ジャケットにさり気なくクレジットされた“In memory of John and Kenny”。
 二人の盟友とも、すでに故人。
 はるか40年前、三人で作った“Azimuth” (Mar.1977)の頃から、描こうとしている景色は変わらないのでしょうね。


※少し前の演奏から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Distances” (2007) Norma Winstone

“Distances” (2007) Norma Winstone
Norma Winstone (vocal) 
Glauco Venier (piano) Klaus Gesing (soprano sax, bass clarinet)
 
Distances (Ocrd)
Norma Winstone
Ecm Records
2008-05-27
ノーマ ウインストン

 Norma Winstone、新バンドでのECM復帰第一作。
 同じメンバー、別レーベルで”Chamber Music” (2002)といったアルバムもあるようです。
 “Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)と名作が続く端緒。
 編成は、管楽器は違えど、名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home”と同じピアノを中心としたトリオ。
 ピアノは長年の相方John Taylorではなく、イタリアのGlauco Venier
 鋭利なイメージのJohn Taylorに対して丸みを帯びた音。
 妖しさはあまり感じない、美しい音。
 零れ落ちるような繊細な音から、しっとりとした音、グルーヴに乗った演奏まで、何でもできそうなタイプ。
 ドイツのリード奏者Klaus Gesingも同じように、妖しさはほどほど、これまた何でもできてしまいそうなタイプ。
美しいピアノが作る背景と彩を加えるリード。
 静かな空間を駆け巡るようなソプラノサックスもさることながら、バスクラリネットが鳴ると、変わった音を使うわけではないのに別世界に連れていかれそうな妖しいムード。
 そんな音を背景にして、いつもながらの少し沈んだしっとりとしたボイス。
 “Azimuth” (Mar.1977)の頃と比べても変わらないようにも思えるし、さらにしっとりした感じもするし、何よりも優しくなったように感じます。
 ピアノが作る空気感の違いも大きいのかもしれません。
 楽曲はオリジナルのバラード中心にスタンダードを少々。
 何を演奏しようが歌おうが空気感は変わりません。
 ヨーロピアン・クールネスと不思議な温かみが混ざり合い漂う空気。
 この人ぐらい冬の終わりに合う音は少ないのではないでしょうか。
 ひんやりとしていて静的なのだけども、なぜか暖かな空気。
 かつての名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home” (1986)も、そして本作も今の季節にピッタリの音。
 同質の名作“Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Songs and Lullabies” (2002) Fred Hersch & Norma Winstone

“Songs and Lullabies” (2002) Fred Hersch & Norma Winstone
Fred Hersch (Piano) Norma Winstone (Voices)
Gary Burton (Vibraphone)
 
ノーマ ウインストン
フレッド ハーシュ

 Fred Hersch とNorma WinstoneのDuo作品。
 一部でGary Burtonも参加します。
 少し前の録音になる“Like Song Like Weather” (1998) は夫君のJohn Taylorとのジャズ曲集でしたが、本作は全てFred Herschのオリジナル曲。
 どういった経緯の企画なのかはわかりませんが、普通に考えればFred Hersch が自身の曲をNorma Winstoneに歌って欲しかった、といったところなのでしょうか。
 確かに彼女のボイスのイメージに合った、少し沈んだ感じのセンチメンタリズム、甘すぎないしっとりしたメロディ揃い。
 上品でクセのない美しいピアノ、John Taylorと比べて柔らかくて軽快、明るい感じはアメリカン故でしょうか。
背景のイメージが少々変わってもNorma Winstoneはマイペース。
少し沈みながらのしっとりとしたボイス。
 こちらも相性はバッチリ、というか、明と暗、陽と陰のバランスはこちらの方が良いのかもしれません。
 暗、陰、妖しいムードが少々足らない・・・なんてのはマニアな嗜好なのでしょう。
 この後しばらくして、Norma Winstone はECMへ復帰し、“Distances” (2007)から究極の癒しの音の名作を連発。
 Azimuthよりもしっとりとしたそれらの空気感は、このあたりの作品が流れを作ったのかもしれません。
 音も感じもさることながら、ジャケットまで“Like Song Like Weather”と似ています。
 が、雲が多くて少々暗いそちらに対して、本作は青空も見える明るい夕暮れ。
 そんな絵の違い、そのままの音です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Like Song Like Weather” (1998) Norma Winstone & John Taylor

“Like Song Like Weather” (1998) Norma Winstone & John Taylor
Norma Winstone (Voice) John Taylor (Piano)
 
Like Song Like Weather
Norma Winstone
Enodoc
1998-06-29
ノーマ ウインストン
ジョン テイラー


 Norma Winstone, John Taylor夫妻のDuo作品。
 アバンギャルドではないけど、ちょっと普通のジャズからは距離があるイメージのお二人ですが、本作は紛うことなきジャズです。
 半数がジャズスタンダード、残りが盟友Kenny Wheeler, Tony Coe, Carla Bley, Steve Swallowなどの曲者ジャズの皆さま方の楽曲。
 素直でアメリカンなジャズにはなりません。
 が、John Taylorのジャズピアニストぶりは、まあ普通に想像できるとしても、Norma Winstoneが意外にも素直にジャズを歌っています。
 ジャズ的な歌唱なのかどうかはわかりませんが、しっとりとした質感がピッタリはまっています。
 John Taylorの硬質で透明度の高い美しい音、クラシックが香る格調高いピアノと、上品でしっとりとしたボイスの組み合わせは極上。
 しっとり、と書いてしまうと湿った感じのニュアンスですが、乾いているような感じもあって、微妙な湿度感のボイス。
 さらに、ハスキーなのか澄んでいるのか、太いのか細いのか、高いのか低いのか・・・何とも言えない不思議なボイス。
 クールでどこか達観した感じ、寂寥感も強いのですが、これまた暖かな感じもあって・・・
 そんな微妙なボイスで少し沈み込む感じで歌われるジャズ。
 Kenny Wheelerが入ればそのままAzimuthになるのですが、その屈折した感じは薄目、なんだかんだで落ち着いた静かなジャズ。
 後の“Songs and Lullabies” (2002) Fred Hersch & Norma Winstoneと比べると、同じようでこちらの方が沈んだ感じ、ピアノも少々とんがった感じで、それがありきたりの音に留まらないカッコよさ。
 “Azimuth” (Mar.1977) から二十余年、近作の“How It Was Then... Never Again” (1995) Azimuthでは落ち着いた感もありましたが、さらに大人になったような音。
が、枯れた雰囲気はありません。
 “How It Was Then... Never Again”は美しい夜景のジャケットでしたが、本作はこれまたとても美しい夕暮れ。
 そんな穏やかで落ち着いた気分に浸れる、上質、極めつけの一作。
 ほんのちょっとだけ普通と違うような感じなのがいい感じです。




posted by H.A.

【Disc Review】“Live At Roccella Jonica” (1984) Norma Winstone, Kenny Wheeler, Paolo Fresu, John Taylor, Paolo Damiani, Tony Oxley

“Live At Roccella Jonica” (1984) Norma Winstone, Kenny Wheeler, Paolo Fresu, John Taylor, Paolo Damiani, Tony Oxley
Norma Winstone (Voice)
Kenny Wheeler (Trumpet/ Flugelhorn) Paolo Fresu (Trumpet/ Flugelhorn) John Taylor (Piano) Paolo Damiani (Bass) Tony Oxley (Percussion)
 
LIVE AT ROCCELLA JONICA
PAOLO FRESU/JOHN TAYLOR/KENNY WHEEL
SPLASC(H)
2009-04-01


 John Taylor 率いるイギリスの名トリオAzimuth にドラムとベースが入り、若き日のPaolo Fresuが加わる豪華メンバーでのライブ録音。
 “Double, Double You” (1983) Kenny Wheeler、“Azimuth '85” (1985)、に近い時期のステージでしょう。
 Paolo Fresuの参加がちょっと場違いな感じもするのですが、イタリアのフェスティバルでの録音のようで、同じくイタリアのPaolo Damianiと二人でイギリス勢をお迎えするホスト役といったところでしょうか。
 Paolo Fresuは、まだリーダー作を出していない時期のようですが、現在まで続く端正なトランペット。
 が、激しい連中に囲まれると・・・
 楽曲はPaolo Damianiが二曲にKenny Wheelerが二曲。
 楽曲の選択、ベースドラムを交えたハイテンションなインプロビゼーションなど、Azimuthというよりも、Kenny Wheelerのアルバムのイメージが強い感じでしょう。
 Kenny Wheelerの勇壮でビヒャヒャーなトランペットと、John Taylorの激しくハイテンションなジャズピアノが目立ちます。
 Paolo Damianiはアバンギャルド系もやる人のようで、それ混じりの楽曲も。
 そんな色合いにはNorma Winstoneの妖しいスキャットがピッタリはまります。
 あの時代のハイテンションで激しく妖しいヨーロピアンジャズの一場面。
 これでバンドを作っていれば結構な名バンドになったんだろうなあ。
 おっと、Paolo Fresuの居場所が・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“How It Was Then... Never Again” (1995) Azimuth

“How It Was Then... Never Again” (1995) Azimuth
John Taylor (piano) Kenny Wheeler (trumpet, flugelhorn) Norma Winstone (vocals)

How It Was Then Never Again
Azimuth
Ecm Import
アジムス 
ケニー ホイーラー 
ジョン テイラー 
ノーマ ウインストン 


 前作“Azimuth '85” (1985)から10年間空いた作品。
 世界観は10年前と変わらず。
 静謐でクール。
 少し様子が変わったのが、半数がJohn Taylorの曲ではないこと。
 おまけにスタンダード曲まで。
 それでも音のイメージは昔のまま。
 個々のインタープレーもほどほどの緊張感、ほどほどの穏やかさ。 
 不思議なぐらい10年前と同じ音ですが、それでもちょっと落ちついた感じでしょうかね?
 歳を重ね大人になった悪そうな仲間で作る、クールでスタイリッシュなジャズ、ってな感じ。
 静かで落ち着いた、でも少々妖しい、大人のコンテンポラリージャズ。
 ジャケットの写真のイメージがピッタリ。




posted by H.A.

【Disc Review】“Azimuth '85” (1985) Azimuth

“Azimuth '85” (1985) Azimuth
John Taylor (piano, organ) Kenny Wheeler (trumpet, flugelhorn) Norma Winstone (vocals)

Azimuth '85
Universal Music LLC
アジムス 
ケニー ホイーラー 
ジョン テイラー 
ノーマ ウインストン 


 イギリスのユニットAzimuth、前作“Départ” (1980)から5年ぶりの作品。
 ホーン奏者が異なる名作“Somewhere Called Home” (1986) Norma Winstoneの少し前の制作。
 本作もJohn Taylorの曲中心。
 これまでのクールなメロディに加えて、少し甘めの曲もいくつか。
 アコースティックで静謐な音空間。
 こぼれ落ちるピアノの音と漂うvoice、彩りをつけるトランペット。
 心なしかいつもよりピアノの時間が長く、John Taylorの色合いが最も強い作品かも。
 クラシックの香り、美しく、そしてひんやりとした質感のピアノ。
 強めのタッチ、硬質で輪郭が明確な音ながら、なぜか強烈な浮遊感。
 全体的には相変わらずのAzimuth、静謐で少々妖しい世界。 
 これまたECMサウンドの典型のひとつ。
 クールです。




posted by H.A.

【Disc Review】“Azimuth” (Mar.1977), “The Touchstone” (1979), “Départ” (1980) Azimuth

“Azimuth” (Mar.1977), “The Touchstone” (1979), “Départ” (1980) Azimuth
John Taylor (piano, synthesizer, organ) Kenny Wheeler (trumpet, flugelhorn) Norma Winstone (vocals) Ralph Towner (guitar)

Azimuth / The Touchstone / Depart
Azimuth
Ecm Import
アジムス 
ケニー ホイーラー 
ジョン テイラー 
ノーマ ウインストン 

 イギリスのスタイリスト三人組、初期の三作。
 “Départ”(1980)にはRalph Townerが客演しています。
 Kenny Wheelerっぽい曲も少なくないのですが、全てJohn Taylor、Norma Winstoneのクレジット。
 “Deer Wan” (Jul.1977) Kenny Wheelerの直前、全く質感であることも含めて、実質的なリーダーはJohn Taylorなのでしょうね。 
 ピアノ、シンセサイザーが作る静謐で不思議な背景の上を漂うvoice、彩りをつけるトランペット。
 タメを効かせたこぼれ落ちるようなピアノがとても美しく、優雅。そして妖し気。
 フリージャズっぽさはありませんし、今の耳で聞くと自然なのですが、当時は相当クリエイティブな音だったのでしょう。
 幻想的なムードと、あまりスウィングしないビート感、無機質な電子音、妖し気なスキャットvoice・・・、ジャズというよりも、静かなプログレッシブロック、あるいはエレクトロニカ。
 この頃からJohn TaylorはECMで大活躍。
 Azimuthに加えて、盟友Kenny Wheeler の作品はもちろん、Jan Garbarekやら、Peter Erskine、John Surmanやら、サポートは多数。
 が、ECMでのリーダー作は”Rosslyn”(2003)までなし。
 契約云々の事はわかりませんが、不思議といえばそう。
 ピアノのカッコよさ文句なしなので、上手くすればSteve KuhnやRichie Beirach、あるいはKeith Jarrettに並ぶスタイリストになったかも・・・
 それともイギリス、ヨーロッパでは十分に大スターだったのかな?
 この三作、いずれも近いテイストですが、新しくなるにつれ電子の色合いが無くなり、“Départ”ではアコースティック。
 構成も“Départ”が一番ドラマチック、もちろん静謐さはそのまま。
 John Taylorのピアノのカッコよさも三作同様ですが、やはり“Départ”が一番いいかな。
 Ralph Townerとの絡みもカッコいいしね。
 エレクトロニカ系が好みの人にとっては“Azimuth”でしょう。
 “The Touchstone”がその中間。
 各作品それぞれ少しづつ異なりますが、いずれも静謐で妖しく美しい、いかにもECMな作品集。




posted by H.A.

【Disc Review】”Dance Without Answer” (2012) Norma Winstone

”Dance Without Answer” (2012) Norma Winstone
Norma Winstone (voice)
Klaus Gesing (bass clarinet, soprano saxophone) Glauco Venier (piano)

ノーマ ウインストン

 Norma Winstoneの音はいつも同じ。
 年月が経っても、齢を重ねても、メンバーが変わっても、背景を作る楽器の音色が変わっても。
 漂うような時間、緩やかな空間、曖昧な意識の中、遠くから聞こえるバスクラリネット。
 そして優しい声。
 静謐で、冷たくて、なぜか少しだけ温かい空間。
 優しい冬の音。




posted by H.A.

【Disc Review】“Stories Yet To Tell” (2009) Norma Winstone

“Stories Yet To Tell” (2009) Norma Winstone
Norma Winstone (voice)
Klaus Gesing (bass clarinet, soprano saxophone) Glauco Venier (piano)

ノーマ ウインストン

 前掲“Somewhere Called Home” (1986) から20余年。
 時代は流れ、メンバーは変われど音は同じ。
 どこか遠いところに連れて行ってくれる音。
 冷たくて、でも、少しの温もり。
 なぜか安心できるところ。
 とてつもなく美しくて悲しい響きの冒頭曲に涙。




posted by H.A.
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