吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Nik_Bartsch

【Disc Review】“Entendre” (2020) Nik Bartsch

“Entendre” (2020) Nik Bartsch

Nik Bartsch (Piano)

Entendre
ECM Records
2021-03-19


 スイスのミニマルファンクなジャズピアニストNik Bartsch、ソロピアノ作品。
 ピアノ一台でもやはりミニマルファンクジャズ。
 楽曲もいつものModuleXXシリーズ。
 RoninMobileでの演奏で世に出ている楽曲の再演もありますが、バンドでの演奏とは印象が異なります。
 メンバー間の探り合うような時間が無くなりなり、単刀直入、直球勝負。
 硬質なピアノ、硬質なビート。
 ダークな空気感、妖しいムード。
 強い緊張感を伴いひたすら続くリフレインと現れては消えていく哀しいメロディ。
 一定のパルスを保ちつつ、グラデーションを描きながら徐々に変わっていく景色。
 各曲終盤に向けて徐々に上がっていく音量、テンション。
 そして、内に内に向かっていたエネルギーが一気に外に向けて放たれる瞬間・・・開ける視界・・・
 大筋の流れはバンドでの演奏と変わらないのかもしれませんが、ピアノ一台ゆえの混り気なし、明確な輪郭、シャープでひたすら美しい音。
 ジャズ的なインプロビゼーションの時間がほとんどないのも変わりませんが、バンド全体が絡み合いながらリフを作る諸作品よりもシンプルで、メロディと展開が明確に見えるようにも感じます。
 ビートが強くなってもピアノ独奏ゆえの静かな佇まい。
 静謐で硬質、図らずとも背筋が伸びるような時間。
 妖しく美しい音のリフレインが誘う陶酔感に浸るか、徐々に変わっていく景色を眺めるか、大きな変化の瞬間がもたらすカタルシスを待つか。
 エネルギーが外に向かうオーソドックスなジャズとは違う、内向的で求道的、静かなミニマルジャズ、ってな感じでよろしいかと。

※ソロでのライブ演奏から。
 

posted by H.A.



【Disc Review】“Awase” (2017) Nik Bärtsch’s Ronin

“Awase” (2017) Nik Bärtsch’s Ronin

Nik Bärtsch (piano)
Sha (bass clarinet, alto saxophone) Thomy Jordi (bass) Kaspar Rast (drums)

Awase
Nik -Ronin- Bartsch
Ecm Records
2018-05-04


 スイスのピアニストNik Bärtschの最近作。
 バンドは妖しく繊細なNik Bärtsch's Mobileから再びRoninに戻り、ミニマルファンクな音。
 パキーンとした音、人力ながらデジタルな感じも戻ってきました。
 ベーシストが交代しパーカッションが抜けたこともあるのか、マッチョな感じが希釈され、よりシャープにスッキリしたようにも感じます。
 冒頭は“Continuum” (2015)で演奏されていた”Modul60”。
 そちらのKing Crimsonな感じがジャジーでクールな印象に様変わり。
 続く18分を超える”Modul 58”は、複雑な構成のハードなビート、スピードを上げつつ、はるか彼方にぶっ飛んでいくハイテンションファンク。
 妖しく漂うような”A”を経過し、再びハイテンションなファンク”Model 36”へ。
 ってな感じで、ハイテンションな疾走、高揚と幻想が交錯する構成。
 ”Model 36”は、“Stoa” (2005)に収められた曲の再演となりますが、カッチリしていてプログレッシブロックっぽい感じのそちらに対して、少し線が細め、シャープになった本作のバージョン。
 ジャズなインプロビゼーションの場面はありません。
 が、スッキリと軽快になった印象に加えて揺らぎが強い分だけジャズに寄ったようにも感じます。
 ハードで躍動感が強い“Stoa” (2005), “Holon” (2007)、沈んだ感じの"Llyrìa" (2010)、妖しい“Continuum” (2015)、スッキリした本作、ってな感じでしょうか。
 いずれにしても、繰り返しされるリフが誘う陶酔感、緊張感と疾走がもたらすカタルシスに浸るか、徐々に遷り変わる景色の変化を楽しむか。
 スッキリしたミニマルファンク・ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Continuum” (2015) Nik Bärtsch's Mobile

“Continuum” (2015) Nik Bärtsch's Mobile

Nik Bärtsch (piano)
Sha (bass clarinet, contrabass clarinet) Kaspar Rast (drums, percussion) Nicolas Stocker (drums, tuned percussion)
Etienne Abelin, Ola Sendecki (violin) David Schnee (viola) Solme Hong,  Ambrosius Huber (cello)

Continuum [12 inch Analog]
Nik's Roni Baertsch
Ecm
2016-03-18


 スイスのピアニストNik Bärtsch、ミニマル系ジャズ。
 ここまでのNik Bärtsch’s Roninからベースが抜け、一部でストリングスが加わる新しい編成。
 音の構成は、同じフレーズを繰り返しつつ抑揚とうねりをつけていくここまでの諸作のスタイルと同様ですが、ファンク色が抑制されたイメージ。
 輪郭が明確だった音に紗が掛かった感じ。
 音量、躍動感が抑えられ、妖しさダークさが増幅。
 ストリングスも華やかさや優雅さではなく、妖しく沈んだ色合いを加える役回り。
 ファンクなエレキベースが抜けることで揺れが増し、より繊細になり、人力ながらデジタルな感じが希釈されたイメージ。
 静謐で凛とした感じ、雅な瞬間もちらほら、Ronin諸作よりも日本的かもしれません。
 あるいは、緊張感のあるリフをひたすら繰り返しつつ徐々に高揚していく中、もの哀しげなバイオリンの音が飛び交う様は、一時期のKing Crimsonのよう。
 全編通じて沈んだムードの映画のサントラのように聞こえてきます。
 いずれにしても繰り返しが陶酔を誘う麻薬性の高い音。
 抑制された緊張感、ダークネスに包まれた高揚感、陶酔感を求める向きには、こんな感じがいいんだろうなあ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin

“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (alto saxophone, bass clarinet, contrabass clarinet) Thomy Jordi, Björn Meyer (bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Nik Bartsch's Ronin: Live
Nik Ronin Bartsch
Ecm Records
2012-10-02


 スイスのピアニストNik Bärtschのライブアルバム。
 ECMで “Stoa” (2005), “Holon” (2007), “Llyria” (2010)といった作品を制作したバンドNik Bärtsch's Roninの集大成的な意味合い、それらのアルバムからのベストな選曲、各国でのステージからのベストな演奏のチョイスなのでしょう。
 もちろんファンクなビートと徹底したリフの繰り返しを中心とした、少々ダークなミニマル・ファンク・ジャズ。
 どこに入るか全く予想できないブレークを含めた複雑でポリリズミックなファンクビートと、これまた複雑なアンサンブル。
 音の構成はスタジオ録音諸作と同様なのですが、それらのどこか電子的で硬質なビート感と比べると、柔らかで、よりナチュラルなグルーヴが強調されているようにも感じます。
 さらにスタジオ録音作品ではあまりないジャズ的なインプロビゼーションの場面もそこそこの時間。
 ベースのソロから始まり、うねうねと動き回るそれと、静かだけども変幻自在のドラムを背景にかき回されるピアノ・・・
 前作"Llyria" (2010)はジャズ色も強い静かな感じでしたが、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)のデジタル世代、現代のトランスミュージックっぽい雰囲気は薄くなっているようにも。
 それらここまでの三作の色合いを集約したようにも思われます。
 もちろん不思議感、徹底されたリフレインによる陶酔感と、じわじわと盛り上がっていく高揚感はそのままなのですが、微妙な空気感の違いが面白いところ。
 作品が新しくなるにつれ柔らかくなってきているようにも感じられ、この時点での最近作“Llyria” (2010)の流れがそのまままLiveで・・・といった感じでしょうか。
 このバンドの特徴であろう硬質でクールな質感がより強い方がよければ、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)の方がよいのでしょうかね?
 そのあたりはお好み次第。
 クールな現代的トリップ&グルーヴミュージック、そのナチュラル&しなやかバージョン・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin

"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Llyria
Nik Bartsch's Ronin
Ecm Records
2010-10-12


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第三作。
  “Stoa” (2005), “Holon” (2007)と同様のミニマルファンクジャズ。
 いつも通りの複雑なビート、不思議系な音階のクールで無機質な質感のリフの繰り返しを中心としたミニマル的なファンクではあるのですが、前掲の二作とは少々雰囲気が異なります。
 落ち着いているというか、沈んだ感じというか、静かというか、ゆるいというか、有機的な感じが強く出ているというか、ジャズっぽくなったというか・・・
 冒頭の“Modul 48”は妖しい感じはそのままに、浮遊感が強くてなんだか優しい感じ、ホーンのインプロビゼーションのスペースもそれなりに。
 続く“Modul 52”もインプロビゼーションらしい場面はありませんが、ホーンがリードしつつ軽快です。
 もちろん甘いメロディなどはありませんが、終始静かで穏やかな表情。
 ドカーンとはこない分、逆に複雑でヒタヒタと迫ってくるようななグルーヴを叩き出すドラムとベースの絡みがよく見えて、よりカッコよく聞こえるように思います。
 締めに向けた“Modul 51”のウネウネと動くベースラインがとてもカッコいいし、最後の”Modul 49_44”も少し沈みがちな変化自在なファンク。
 おっと、確かにこれは”Ronin”,”Zen_Funk”な看板に相応しい日本的な音階だし、そんな展開がアルバムのそこかしこに・・・
 そんなこんなでいつも通りにダークながら、浮遊感強めで、ちょっと軽め、ちょっと沈みがちの不思議なバランス。
 ハイテンション好みな人は“ “Stoa” (2005), “Holon” (2007)、より静かな感じがよければ本作・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin

“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet, contrabass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Stoa
Nik Bartsch
Ecm Records
2006-05-02


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第一作。
 ミニマル・ファンク・ジャズとでも呼ばれているのでしょうか?
 Ronin(浪人)もさることながら、“Zen(禅)Funk”なる呼び方もあるようで、日本的なイメージも強く持っているのでしょう。
 果たして日本的な音かどうかはさておき、少々妖し気、不思議系で悲し気なリフと、ファンクなビートの組み合わせ。
 それを徹底的に繰り返すのがこの人の音楽。
 ファンクやエレクトリックMiles諸作と構造的には近い感じもする・・・ってなのは古い感覚で、全く違う複雑なビートとクールで無機質な空気感。
 映画"エクソシスト"を時代の流れの中で経験した世代としては、そのテーマ"Tubular Bells" (1973) Mike Oldfieldを想い起こします。
 その方向には明るくありませんが、その流れ、ミニマル、テクノの色合いを強く取り入れたジャズ、といったところなのでしょう。
 複雑なビートはなぜか硬質で電子ビートっぽくも聞こえるし、全体のムードはプログレッシブロックっぽくも聞こえるのだけども、あくまでアコースティックな静謐系ジャズ。
 そんな微妙なバランスの組み立て。
 インプロビゼーションの場面は少なく、アンサンブル中心。
 フロントのピアノやバスクラではなく、むしろウネウネと動くファンクなエレキベースと、定常なようで微妙に変化し続け、意外なところに入るアクセントが入る変幻自在のドラムの方が印象に残る不思議なバランス。
 そんな組み立てでの徹底的なリフの繰り返し。
 単調なようで少しずつ景色が変わっていくような不思議な楽器の絡み合い。
 あくまでクールな音の流れ。
 が、徹底したリフレインは、ファンクやゴスペル、エレクトリックMiles、あるいはサンバと同様に陶酔感を誘い、徐々に盛り上がっていく高揚感、疾走感。
 それがジャズとは異質な心地よさ。
 デジタル世代、クラブ世代、ゲームミュージック世代、現代のトランス&グルーヴミュージック。
 その界隈で人気なのもさもありなん。
 次作“Holon” (2007)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】"Holon" (2007) Nik Bärtsch's Ronin

"Holon" (2007) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch(Piano)
Sha (Bass Clarinets, Alto Saxophone) Björn meyer (Bass) Kaspar Rast (Drums) Andi Pupato(Percussion)

Holon
Nik Bärtsch's Ronin
ECM
ニック・ベルチェ


 アルファベット以外の文字打ち出すのってホント大変です。
 時間掛かりました。
 スイス人ピアニスト、ニック・ベルチェ。
 読み方、合ってますかね?
 初めてライブを見に行った時は、普段CDで聞いている音の綺麗な箇所と、ライブならではの音の美しさが、手法は違えども、凄く近い!
 いったい何?
 PAさんとの意思疎通でこんなにも音楽を表現できる物なのかと、まるで手品を見ているかのように驚いた事を覚えています。
 このCDの中で一番惹き付けられたのは、2曲目”Modul 41_17”。
 テクノのアーティストUnderworldの”Beaucoup Fish”の冒頭曲”cups”を想わせる展開。
 一定の流れの後にくる、テンポが変わったとさえ感じる、力強いシンプルなシンセコード。
 ミニマルな進行から突然色々な要素を重ねる、リスナーをいい意味で裏切る構造。
 それに近いモノが“Modul 41_17”にはあります。
 少量ずつ音を足して行き、時間軸上此処だ!と言う所で一気に全体表現に移る瞬間・・・
 ぐっと来ます。
 曲の起承転結を考えた時、前後関係が大事だなといつも思います。
 この曲はその大事な部分を見事に形にしています。
 心地よく、力強い音楽を聴きたい方にお薦めな1曲です。




posted by N.A.
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