“Travelers” (2017) Nicolas Masson, Colin Vallon, Patrice Moret, Lionel Friedli
Nicolas Masson (Tenor, Soprano Saxophone, Clarinet) Roberto Pianca (Guitar) Emanuele Maniscalco (Drums, Piano)
スイスのサックス奏者Nicolas Masson、ECMでの第三作。
編成は“Third Reel” (2012), “Many More Days” (2014)のギターを交えた変則トリオから、ピアノトリオとのオーソドックスなワンホーンカルテットに変わりました。
ベースが入り、ビートと音楽の輪郭が明確になりました。
その上での例の漂うような音使い。
あくまで静かな音、ゆったりとしたテンポ、沈んだムード、哀し気な空気感、不思議感はそのまま、“Third Reel” (2012)の沈痛系と “Many More Days” (2014)の穏やか系が交差する楽曲。
ピアノは同じくスイスのColin Vallon。
漂うような零れ落ちるような、繊細な音がたっぷりとフィーチャーされます。
リーダー作でもそうでしたが、どの方向に動いていくのかは予測できません。
浮遊と疾走が交錯するとても美しい音。
予測しずらいのはサックスも同様。
但し、疾走はしません。
あくまで漂うような演奏、いかにもECMのサックスらしく、サブトーン、ビブラートのない張り詰めた音。
ビートが明確な分、トリップミュージックな感じは薄らいだのかもしれません。
でも不思議感はたっぷり。
これが現代のスイスの空気感なのかどうかはわかりませんが、少し沈みながらも落ち着いたクールなムード、儚く美しい、そして妖しい現代のジャズ。
posted by H.A.