吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Miles_Davis

【Disc Review】“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983) Miles Davis

“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, synthesizer)
Robert Irving III (synthesizer, synthesizer bass & drum programming) John Scofield (guitar) Darryl "The Munch" Jones (bass) Al Foster (drums)
Mino Cinelu (percussion)
Branford Marsalis, Bill Evans (soprano sax)
 
Decoy
Miles Davis
Sbme Special Mkts.
マイルス・デイビス


 Miles Davis、復帰直後からは音が変わって、ポップ色の強いファンク作品。
 “The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)以来のRobert Irving IIIを迎え、John Scofieldと楽曲提供を分け合っています。
 Teo Maceroがプロデューサーから外れ、Miles Davis、Robert Irving III、甥のVincent Wilburnの三人がクレジットされています。
 Al Foster、Mino Cineluは残っていますが、ベースが現在はRolling StonesのDarryl Jonesに交代。
 ビート感がよりカッチリして、さらに高速なイメージに変わったように感じます。
 ちょっと変わったテイスト、勇ましい系で緊張感が高いながらもポップなファンクは、若い世代のRobert Irving IIIの色合いが強いサウンドなのでしょう。
 クラッピングなども所々に入ったディスコ(懐かしい!)っぽいビートもそこかしこに。
 Branford Marsalisが半数ほどに参加していますが、強い色を出すまでには至っていません。
 前半にRobert Irving IIIの楽曲、後半にJohn Scofieldの楽曲が集められ、後半はちょっとひねったジェットコースターのようなファンクやら妖し気でブルージーなムードやら。
 私の好みは後半ですが、CDで聞くとどうしても前半のイメージが強くなります。
 ここまでくると前作“Star People” (Aug.1982–Feb.1983)ではまだ残っていた、ジャズっぽさはすっかり薄くなってしまったように感じます。
 これが時代の音なのかもしれませんが、ジャズファンとしては複雑な心境。
 そんな古い感覚の人々は置き去りながら、さらにMilesは前進。
 次はさらにポップさが増幅、遊び心も満載の“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)へと続きます。


 

【Disc Review】“Star People” (Aug.1982–Feb.1983) Miles Davis

“Star People” (Aug.1982–Feb.1983) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, Keyboards)
John Scofield, Mike Stern (electric guitar)
Marcus Miller, Tom Barney (bass) Al Foster (drums) Mino Cinelu (percussion)
Bill Evans (tenor, soprano sax)
 


 Miles Davis、長期休養からの復帰第三作、復帰第一幕を締めるアルバム。
 次作“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983) ではまた音が変わりますので、復帰からのインプロビゼーションを中心としたジャズファンクフュージョンの締め。
 復帰時からのコアのメンバーを残しつつ、しばらく活動をともにするJohn Scofieldが参加。
 サックスのBill Evansは一部のみでの参加。
 グワシャーンとロックなギターの音でスタートしますが、弾むベースとギターのカッティングがカッコいいファンキーな演奏。
 シンプルなリフ、ひとつのリズムパターンで10分を超えるハイテンション長尺なインプロビゼーションが何曲か。
 以降、ライブはさておき、スタジを録音ではコンパクトな楽曲が中心となり、その意味では本作がインプロゼーションミュージックとしての最後の作品かもしれません。
 弾みまくるリズム隊と、ギター、トランペットのインプロビゼーションのカッコいいこと。
 激しくてもあくまでスムースなMike Sternのギターに対して、粘りがあってブルージーなJohn Scofieldのギター。
 間々に挟まれる復帰直後からの色合いのファンクナンバーを含めて、このバンドはここで完成したように思うのですが、そこに止まらないのがMiles Davis。
 本作でも一部に出てくる御大自身が弾くキーボードの緊張感の高い音使い、あるいは、とてもあのクールなMiles Davisが書いたとは思えないポップなファンク” U 'N' I”が、後のサウンドを予見させます。
 また、プロデューサーにTeo Maceroのクレジットがあるのもこの作品まで。
 諸々含めて、この作品で1960年代から続く色合いのジャズファンクの音作りからは決別したようにも感じます。
 次は新しい世代の人材Robert Irving IIIを再度迎えて、ポップな色合いが強まる“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983)へと続きます。

 


posted by H.A.


【Disc Review】“We Want Miles” (Jun.Jul.Oct.1981) Miles Davis

“We Want Miles” (Jun.Jul.Oct.1981) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Mike Stern (electric guitar) Marcus Miller (bass) Al Foster (drums) Mino Cinelu (percussion)
Bill Evans (soprano sax)
 
we want miles
miles davis
colum
マイルス・デイビス





 Miles Davis、長期休養からの復帰第二作、ライブ録音。
 “The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)のポップな方のバンドではなく、インプロビゼーションを中心としたジャズファンクフュージョンバンド。
 いくつかのステージからの編集、好不調の波があり、冒頭、緩めの”Jean-Pierre”で始まるので誤解されそうですが、続く"Back Seat Betty"からは激しいインプロビゼーションが続くハイテンションな演奏が続きます。
 Milesはかつての通り、張りのある音で激しいインプロビゼーション。
 ”Fast Track”その他、アップテンポでのブチ切れ具合が凄い。
 トランペッターMiles Davisは健在です。 
 Mike Sternのロックながらスムース、それでいてブチ切れたようなギターがたっぷりとフィーチャーされ、Bill Evansも激しい音で本領発揮。
 音楽的には“Agharta”、“Pangaea” (Feb.1.1975)と同様に激しい演奏を中心としたファンクですが、それらよりもスッキリ洗練された音。
 その分妖しさが失われ、健全で普通にハイテンションなフュージョンになりましたが、そこはお好みでしょう。
 全体のサウンドを締めているのはMarcus Millerのベースでしょうか。
 派手すぎず、地味過ぎず、現代的な弾むグルーヴ。
 “Tutu” (Jan.-Mar.1986) あたりまで行くとデジタル臭が強くなりますが、この期ではあくまでナチュラルに弾むファンクサウンド。
 楽曲は復帰後の緊張感、切迫感の高いメロディのオリジナルファンクに、バラードから様々な表情に変化する”My Man's Gone Now”。
 レゲエから4ビートの”Kix”で少々のジャズの香りを残しながら、復帰第一声の弾むミディアムファンク”Fat Time”で締め。
 “The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)でのポップなアプローチはここでは封印され、あくまで硬派なMiles Davis。
 時代は変わり、サウンドも変わりましたが、完全復活です。
 



posted by H.A.


【Disc Review】“The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981) Miles Davis

“The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981) Miles Davis
Miles Davis (trumpet)
Barry Finnerty, Mike Stern (guitar) Marcus Miller (bass) Al Foster (drum) Sammy Figueroa (percussion)
Bill Evans (soprano sax) 
Robert Irving III (Yamaha CS30 synthesizer, piano) Randy Hall (synthesizer, guitar, celeste, Moog synthesizer, vocals) Felton Crews (bass) Vincent Wilburn (drums)
 
Man With the Horn
Miles Davis
Sbme Special Mkts.
1981-03-01
マイルス・デイビス

 “Agharta”、“Pangaea” (Feb.1.1975)までと思っていましたが、一気に最後まで。
 
 Miles Davis、長期休養からの復帰第一声。
 私的にはこの時代、まだロック小僧で、時代感は全くわかりませんが、ジャズファンの人からすれば神の復活みたいな感じだったのでしょうかね?
 現代からするとそれほど人気作ではないのかもしれませんが、聞き直してみるとこれが気骨溢れるジャズ的な作品。
 Miles御大の作品なのだから当たり前ですか。
 二つのバンドから構成され、“Agharta”、“Pangaea”(Feb.1.1975)と近い楽器編成のジャズフュージョンバンドと、Milesの甥にあたるVincent Wilburnとそのバンド仲間Robert Irving IIIを中心とした新しい世代のファンクフュージョンバンド。
 同じような編成ながら“Agharta”、“Pangaea”(Feb.1.1975)とは全く雰囲気は異なります。
 冒頭はMarcus Millerのヘビーなベースが先導する、スパニッシュの香りも漂うミディアムテンポのファンク。
 バウンドするようなグルーヴ、極めて現代的でスッキリと洗練された音。
 録音がデジタルに移行したこともあるのでしょうが、かつてのグシャグシャドロドロしたムードはありません。
 そんな音を背景にMilesはワウワウを使わず、あの探るようなミュートサウンド。
 ギターもディストーションを掛けたジミヘン風ロックギターですが、ずいぶんスッキリしています。
 Bill Evansのソプラノサックスも本作では柔らかいムード。
 こちらのバンドは、極めて洗練されたファンクフュージョンであるものの、なんだかんだでまだまだジャズ的なインプロビゼーションミュージックの色合いが残っています。
 が、もうひとつのバンドの二曲になると様相が異なってきます。
 ポップです。
 Milesのトランペットは張りのある音で素晴らしいフレージングですが、全体のサウンドはここまでにないというか、想像しにくい質感。
 さらに一曲のボーカル曲は完全にソウルっぽいAOR。
 うーん・・・
 Robert Irving IIIとの共演は後の“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983)、“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985)で復活しますので、Milesとしてはお気に入りだったのでしょう。
 それにしてもポップです。
 それでも最後は長尺な現代的4ビートジャズ。
 まだまだ稀代の天才Miles Davisは健在です。
 
 

posted by H.A.

【Disc Review】“Directions” (Mar.1960-May.21.1970) Miles Davis

“Directions” (Mar.1960-May.21.1970) Miles Davis 
 
Directions
Miles Davis マイルスデイビス
ソニーミュージックエンタテインメント
1997-06-20


 Miles Davis、"Kind of Blue"(1959)~“Jack Johnson"(Feb.18,Apl.7,1970)のアウトテイク集。
 現在は各種コンプリート版に分散して収録されているようで、未発表曲集としての価値はないのかもしれませんが、Miles長期休養期終盤1981年のリリースのようで、当時世にアピールできる音はどんな感じだったのか、推察するにはいい材料。
 モダンジャズ期のセッションについてはいわずもがな、アウトテイクでもなんでも名演に間違いなし。
 が、エレクトリック期になると実験的な要素も強くなり、いいのもあれば、???なのも・・・
 よければよいで没になった理由が気になり、???なものはいったい何がしたかったのか気になってきます。
 本アルバムにもいろんな演奏が詰まっていますが、"Directions I & II"、"Willie Nelson"のJack DeJohnetteのドラムだけでもこのアルバムの価値あり、は贔屓に過ぎますかね。
 あるいは“Jack Johnson"セッションの未発表曲"Duran"は本作とはまた違ったファンキーなカッコよさ。
 さらにKeith Jarrettのとても穏やかで美しいエレピが聞ける"Konda"も文字通りの掘り出し物の素敵な演奏。
 などなど、バラバラな印象なのはオムニバスゆえの悲しさですが、それぞれカッコいい演奏が粒ぞろいのカッコいい未発表演奏集。
 

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<Mar.11,1960>"Song of Our Country"
Miles Davis (trumpet, flugelhorn) Gil Evans (arranger, conductor) Paul Chambers (bass) Jimmy Cobb (drums) Elvin Jones (percussion) Johnny Coles, Bernie Glow, Ernie Royal (trumpet) James Buffington, Tony Miranda, Joe Singer (French horn) Frank Rehak, Dick Hixon (trombone) Bill Barber (tuba) Albert Block, Harold Feldman (flute) Danny Bank (clarinet) Jack Knitzer (bassoon) Romeo Penque (oboe) Janet Putnam (harp)

<Apl.22,1961>"'Round Midnight"
Miles Davis (trumpet) Wynton Kelly (piano) Paul Chambers (bass) Jimmy Cobb (drums) Hank Mobley (tenor saxophone) 

<Apl.16,1963>"So Near, So Far"
Miles Davis (trumpet) Victor Feldman (piano) Ron Carter (bass) Frank Butler (drums) George Coleman (tenor saxophone)

<May.9,1967>"Limbo"
Miles Davis (trumpet) Herbie Hancock (Wurlitzer electric piano) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums) Wayne Shorter (tenor saxophone)

 ここまでは、モダンジャズ期で説明無用の名演奏揃い。
 単にLPレコードの収録時間の問題だけでしょう。
 エレピ?が入った"Limbo"<May.9,1967>はアコースティックの音で弾いています。
 このままアコースティックでやっていても、いくらでもカッコいいアルバムは出来ていたのでしょうが、そうはいかないこの人、このバンド。
 エレクトリックの導入に向けた試行が始まります。


<Dec.28,1967>"Water on the Pond"
Miles Davis (trumpet)
Herbie Hancock (Wurlitzer electric piano) Joe Beck (guitar) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor saxophone)

<Jan.11,1968>"Fun"
Miles Davis (trumpet)
Herbie Hancock (Wurlitzer electric piano) Bucky Pizzarelli (electric guitar) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor saxophone)

 エレピとギタリストの導入、“Miles in the Sky”(Jan.May.1968)に向けたセッションでしょう。
 結局ギタリストはこれらのセッションのJoe Beck、Bucky PizzarelliではなくGeorge Bensonに。
 エレピの音も今一つで、これらは文句なしの没テイク。
 "Water on the Pond"<Dec.28,1967>は複雑な構成のMilesの曲。
 三分の二ほど吹き続けるMilesのミュートがカッコいいし、続くテナーもいい感じ。
 が、楽曲が複雑すぎてか、リズム隊が今一つまとまらず、Joe Beckの活躍の場もなく、残念ながらフェイドアウト。
 "Fun"<Jan.11,1968>は明るいラテン調、こちらもMilesの曲、これまた複雑な曲。
 テナーとエレピがソロをとり、テナーはカッコいいのですが、エレピの音がまだスッキリしません。
 これまたBucky Pizzarelliの活躍の場面なく、未完でフェイドアウト。
 エレピもギターの導入もまだまだ試行錯誤中といったところ。
 ここから一気に?完成された“Miles in the Sky”(Jan.May.1968)へと向かいます。


<Nov.27,1968>"Directions I & II"、"Ascent"
Miles Davis (trumpet)
Herbie Hancock, Chick Corea (electric piano) Joe Zawinul (piano) Dave Holland (electric bass) Jack DeJohnette (drums)
Wayne Shorter (soprano saxophone)

  “Filles de Kilimanjaro”(Jun.Sep.1968)と“In a Silent Way”(Feb.1969)の間、“Water Babies” (Nov.11-12.1968)のセッションよりも後。
 Dave Hollandは“Filles de Kilimanjaro”からの参加、Joe Zawinulは二度め、Jack DeJohnetteは初めての参加でしょうか? 
 ここまでのアルバムとは違うムード。
 楽曲も提供したJoe Zawinulの色合いが強く、それが“Filles de Kilimanjaro” “Water Babies”と“In a Silent Way”の大きな違いに繋がっているのでしょうか?

 "Directions I & II"はいわずと知れた(?)Bitches Brewライブでの定番オープニング曲。
  ライブの主だった演奏もテーマがゆっくりしていて、もったりした感じもありますが、それでもあのハイテンション感は十分。
 Jack DeJohnetteのドラムが凄い。
 “In a Silent Way”では再び Tony Williamsに戻りますが、ちょっとびっくりの凄まじいドラム。
 後のECM時代まで続く、ヒタヒタと迫ってくるビートはこのセッション、この曲からなのでしょうか?
 さらに、徐々に音量を上げながら叩きまくり。
 天才Tony Williamsに代わる人はこの人しかいなかった、と思える凄い演奏。
 ここから続いて“In a Silent Way”にも参加するDave Hollandも凄まじいベース。
 ホーン陣もそれにつられてか、ライブでのこの演奏と同じようなハイテンションなソロ。
 “Bitches Brew”(Aug.19-21,1969)もさることながら、"1969Miles” (Jul.25,1969)、“Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)などの一連のライブの激烈な演奏は、Jack DeJohnette、Dave Hollandコンビのこの曲から始まったように思います。
 “In a Silent Way”、“Bitches Brew”のどちらにでもいけそうな感じがありますが、なぜアルバムに入れなかったのかはわかりません?
 なお作者はJoe Zawinul、”Live in Tokyo”(1972)("I Sing the Body Electric"(1971,1972))Weather Reportで演奏していますが、このスタジオ録音のイメージではなく、Milesのライブ"1969Miles”で聞かれるようなハイテンポ、さらに明確な4ビート。
 さて、Milesのライブでの演奏は誰のアレンジだったんだろう? 

 "Ascent"は淡いメロディ、長尺な漂うようなバラード。
 複数のエレピの絡め方の試行開始といった感じでしょうか。
 エレピの幻想的なインタープレーが続きます。
 この幻想的な不思議感は“Filles de Kilimanjaro”、“Water Babies”とは違うムード。
 やはりJoe Zawinulの参加が大きいのでしょう。
 前半でとてもカッコいいソプラノサックスのソロが入りますが、MilesバンドよりもWeather Reporを思わせるムード。
 さらに全体ではHerbie Hancock的な端正な色合いも強い感じでしょうか。
 中盤過ぎてやっと登場するトランペットのソロも素晴らしい音、素晴らしいフレージング、悠々としたカッコいい演奏。
 編集すれば素晴らしい演奏になりそうですし、このままでも長尺でいくとしても、ほんの少し整理すれば幻想的でカッコいいムードの演奏になりそうなのですが・・・




<Feb.17,1970>"Duran"
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Dave Holland (electric bass) Billy Cobham (drums)
Wayne Shorter (soprano saxophone) Bennie Maupin (bass clarinet)

 “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)セッションの前日。
 ドラムのBilly Cobhamが”On The Corner” (Jun.1972)的な粘って跳ねるファンキーなカッコいいビートを出しています。
 これを聞くと”On The Corner”のビートの元はJack DeJohnette ではなく、Billy Cobhamだったか?と思ってみたり。
 Billy CobhamがMilesバンドで活躍するのは“Jack Johnson"のみ。
 “Big Fun”収録の"Great Expectations/Orange Lady"、"Yaphet" <Nov.19.1969>などのセッションでもファンキーなカッコいいドラムを叩いていましたが、お蔵入り。
 この後はJack DeJohnetteに戻り、”On The Corner”のセッションには呼ばれていたようですが、演奏した楽曲は採用されず。
 結局、ドラマーは後にAl Fosterには固定。
 さて、この三人のドラマー、さらにBilly Hartを含めて、御大Milesは何を考えていたのでしょう?
 楽曲としての面白みはさておき、ドラムのカッコよさに加えて、各人のソロ、ギターとの絡み方もカッコいいので、上手くピックアップして“Jack Johnson"に入ってもよさそうなのですが、そうはならなかったことも謎・・・かな?


<Feb.27,1970>"Willie Nelson"
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Dave Holland (electric bass) Jack DeJohnette (drums)
Steve Grossman (soprano saxophone)

 “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)の一度目のセッションの再演。
 “Jack Johnson"_“Yesternow” (14:00~)に収められたバージョンよりも、こちらの方がテンポ速め、ドラムのビートが細分されていて、ファンキーな演奏。
 公式盤に採用された演奏よりも倍ぐらいの数を高速に叩き続けているイメージ。
 もしTony Williams だったらもっと爆発的なドラムを叩いていたように想像されますが、Jack DeJohnetteの場合はひたすらヒタヒタと迫ってくるような抑えられた凄み。
 さり気ないようで凄いドラム。 
 Dave Hollandのベースもよく動いています。
 “Big Fun” 収録の"Go Ahead John"<Mar.3.1970>ではちょっと苦しそうでしたが、ここではファンキーなベース。
 各人のソロもカッコいい演奏揃い。
 公式盤に採用された演奏はもう少しゆったりとして静かな場面から。
 それよりもこちらの方が好みだけども、採用されなかったのは、そちらの方がJohn McLaughlin のソロ、エレピを含めたインタープレーがカッコよかったから?
 Jack DeJohnetteが軽く細かく叩いているので、他の楽曲と合わなかったから? 
 こちらのバージョンが採用されなかったことにも、何かしらの意味がありそうです。
 いずれにしてもJack DeJohnetteの最高のドラムが聞けるカッコいい演奏。
 未発表集に入れておくにはもったいないような名演です。


<May.21,1970>"Konda"
Miles Davis (trumpet)
Keith Jarrett (electric piano) John McLaughlin (electric guitar) Airto Moreira (percussion)

 “Get Up with It”に収められていた"Honky Tonk"<May.19,1970>の二日後のセッション。
 Keith Jarrettの加入直後の演奏でしょう。
 珍しくベースレス。
 Miles作の明るい雰囲気のメロディ、三拍子系?の不思議で優雅なビート感。
 とても柔らかく浮遊感のある演奏です。
 冒頭から9分間Milesのソロが続き、クレジットにはありませんが、ドラム(Jack DeJohnette?)が入ってピアノとギターのインタープレー開始。
 徐々にテンションが上がって、エキサイティングな展開へ移って、残念ながらフェイドアウト。
 楽曲集めて整理していけば、この編成でアルバム一枚作っても結構な名作になってしまいそうな予感。
 が、この編成、このテイストの演奏はこれっきり。
 Milesのやりたい音のイメージとは違っていたのでしょうね。


posted by H.A.

【Disc Review】“Circle in the Round” (Oct.27.1955-Jan.27.1970) Miles Davis

“Circle in the Round” (Oct.27.1955-Jan.27.1970) Miles Davis
 
サークル・イン・ザ・ラウンド
マイルス・デイヴィス
ソニー・ミュージックレコーズ
2001-07-18


 Miles Davis、“'Round About Midnight” (1955)~“Jack Johnson"(Feb.18,Apl.7,1970)のアウトテイク集。 
 リリースは休養期の1979年。
 1977年に発表された“Dark Magus”(Mar.1974)、1981年に発表された“Directions” (Mar.1960-May.21.1970)の間のようです。
 ハードバップ期とエレクトリック期が混ざる編集は、聞く方からすると面倒なのですが、マーケティングからすれば、両方のファンにアピールする作戦だったのでしょうかね。
 近年はコンプリート版と称して同年代で集めているようですが、ほとんどがこれらと重複だったり、未発表音源がいくつか含まれていたり、まあややこしい。
 本アルバムは“Miles in the Sky” (Jan.16.,May.15-17.1968)周辺でのセッションが多い感じ。
 目玉はアバンギャルドな<Dec.4.1967>"Circle in the Round"と<Jan.27.1970>"Guinnevere"でしょうか。
 前者は意外にも早い時期、“Miles in the Sky”期の長尺な激烈セッション。
 後者は“Big Fun”収録の近い時期のセッションと合わせて、新しいアルバムを作ろうとしていたのだろうと推察されます。
 インド楽器が鳴り響くエスニックかつアバンギャルドな音が揃っていますが、正規アルバムとして出ていたら面白かったんだろうなあ。
 “Big Fun”をそう編集すれば、あるいはそちらはファンクで絞って、別にこの種のアバンギャルド系を集めればよかったようにも思うのだけども、これまたマーケティングの妙なのかな?
 聞く方は面倒だし作品としての価値がなんとも・・・

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<Oct.27.1955> "Two Bass Hit"
Miles Davis (trumpet)
Red Garland (piano) Paul Chambers (bass) Philly Joe Jones (drums)
John Coltrane (tenor sax)

<May.26.1958> "Love for Sale" 
Miles Davis (trumpet)
Red Garland, Bill Evans (piano) Paul Chambers (bass) Jimmy Cobb (drums)
John Coltrane (tenor sax) Cannonball Adderley (alto sax)

<Mar.21.1961> "Blues No. 2"
Miles Davis (trumpet)
Wynton Kelly (piano) Paul Chambers (bass) Philly Joe Jones (drums)
Hank Mobley (tenor sax)

 こちらはモダンジャズ、ハードバップ期、“'Round About Midnight” (1955), “1958 Miles” (1958), “Someday My Prince Will Come” (1961)の名作の録音時のアウトテイク。
 これは説明無用でしょう。
 10分を超える"Love for Sale"が全く退屈なし。
 何をどうやっても名演です。


<Dec.4.1967> "Circle in the Round"
Miles Davis (trumpet, bells, chimes)
Joe Beck (guitar) Herbie Hancock (celeste) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor sax)

 “Nefertiti” (Jun.Jul.1967)と“Miles in the Sky” (Jan.May.1968)の間、“Live in Europe 1967: Best of the Bootleg, Vol. 1"(Oct,Nov.1967)の後のセッション。
 まだモダンジャズの香りが残る時代なので・・・と思っていたら大間違い、ちょっとびっくりの激しくアバンギャルドな印象の演奏。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)以降のインド系のセッション?と思ったらずいぶん前で、ギター?がJoe Beck?
 シタールか琵琶のような音が終始鳴り響き、沈痛で複雑なメロディ。
 さらにピアノではなく、エレピっぽいセレステ(エレピ?)。
 しかも26分を超える長尺。
 Tony Williamsが最初からドラムソロ状態。
 決してフリーではなく、“Bitches Brew”的でもないのですが、不思議で激しい演奏が続きます。
 それでも少しスペインチックな展開に乗ったトランペットのソロはカッコいいし、サックスも素晴らしい演奏。
 これも“Miles in the Sky”に収めるつもりだったのでしょうか?
 もし入っていたら、一気に問題作になったのでしょう。
 それにしてもギターが・・・
 



<Jan.16.1968> "Teo's Bag"
<Feb.13.1968> "Side Car I","Side Car II"
Miles Davis (trumpet)
Herbie Hancock (piano) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor sax) George Benson (guitar)

 “Miles in the Sky” (Jan.16.,May.15-17.1968)のセッション。
 George Bensonの参加は"Side Car II"のみ。
 どちらもMilesの曲ですが、"Teo's Bag"はクールなジャズ。
 これはアウトテイクには惜しいハイテンション名演。
 "Side Car ”は変拍子的、メカニカルで新しいムード、難曲にも思えます。
 それらを全く瑕疵なくサラリと演奏してしまっているようなクインテット。
 特にTony Williamsの爆発的なドラムが凄い。
 他のメンバーの凄まじい勢いに対して、George Bensonも頑張っていますが、少々自信なさげでしょうか。
 "Teo's Bag"のようなジャズはもう終わりにして、"Side Car ”のような新しい世界に行こうとしていた記録、といったところでしょうか。
 試行中であったとしても凄い演奏、凄いバンドです。


<Feb.15.1968> "Sanctuary"
Miles Davis (trumpet)
George Benson (guitar) Herbie Hancock (piano) Ron Carter (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor sax)

 “Miles in the Sky” (Jan.16.May15-17.1968) の一連のセッションでしょう。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969)で再演される曲ですが、雰囲気は全く異なります。
 あちらは漂うようなバラードから激情に遷移する凄い演奏でしたが、こちらはふわふわとした質感、でもビートはしっかりとした不思議な演奏。
 George Bensonも参加していますが、黄金のクインテットのムード。
 ふわふわとしたビートの中で端正なトランペット、サックス、ピアノの完璧なソロ。
 George Bensonはどう動くべきか迷っている様子。
 そうこうするうちに演奏が終わってしまいます。
 いきなりこの中に入るのは難しいのでしょう。
 さすが、黄金のクインテットと言うべきか、そのさりげない凄まじさがわかる演奏でしょう。
 George Benson は、Jan.16.、Feb.13.、Feb.15.1968の三回のセッションで終了?
 このセッションが最後だとすれば寂しい感じもしますが、一ヵ月セッションしてみてバンドに融け込めなかったといったところでしょうか。
 Milesはこの後バンドに誘ったとのことですが・・・


<Nov.12.1968> "Splash"
Miles Davis (trumpet)
Chick Corea, Herbie Hancock (electric piano) Dave Holland (bass) Tony Williams (drums)
Wayne Shorter (tenor sax)

 “Filles de Kilimanjaro” (Jun.Sep.1968) と“In a Silent Way” (Feb.1969)の間、 “Water Babies” (Jun.1967,Nov.11-12.1968) に収められた同曲の別テイク。
 明るく軽快なジャズロック。
 Tony Williamsが激しい“Water Babies”か、まとまりと軽快感ならばこちら。
 さて、どちらのバージョンがカッコいいか?
 考えてみればこの手のストレートなジャズロックはMilesの公式アルバムには無いかな?
 4ビートはもちろん8ビートでも、この種のシンプルな楽曲やスタンダードならなんでも名演になってしてしまう人たちなので・・・


<Jan.27.1970> "Guinnevere"
Miles Davis (trumpet)
Chick Corea, Joe Zawinul (electric piano) Dave Holland (bass) Harvey Brooks (electric bass) Billy Cobham, Jack DeJohnette (drums) Airto Moreira (percussion)
Wayne Shorter (soprano sax) Bernie Maupin (bass clarinet) Khalil Balakrishna (sitar)

  “Bitches Brew” (Aug19-21,1969), “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)の間、多くが“Big Fun”に収録された以下の一連のセッションの中のひとつ。
 "Lonely Fire"と同日、同メンバー、Joe Zawinulが参加したセッション。

  <Nov.19.1969> "Great Expectations/Orange Lady" "Yaphet"
  <Nov.28.1969> "Trevere" "The Little Blue Frog"
  <Jan.27.1970> "Lonely Fire" 

 楽曲はフォークロックのCrosby, Stills & Nashの曲のようですが、とてもそんなムードはありません。
 沈痛でダル、ヘビーなムード。
 ゆったりとしたリフと、シタール、パーカッション群、エレピの響きが妖しい空間。
 一連のセッションでは、ゆったりとしたテーマメロディの繰り返しの間に、誰のソロとは決まらないインタープレーを挟んでいく構成が多いのですが、この曲は違います。
 普通にテーマ~インプロビゼーション。
 常時インタープレーが続いていて、普通な感じには聞こえませんが。 
 メロディの流れはあるのですが、ひとつのリフを延々18分繰り返しているようにも聞こえます。
 その上にトランペット、サックス、バスクラリネットが絡みながらのテーマ提示、ソロ、“Bitches Brew”的エレピ、さらにシタールのカウンターを中心としたインタープレーの連続。 
 これらのセッションを集めれば楽にLP一枚は作れそうなのですが、お蔵入り。
 どのセッションも少々重めで、ちょっとマニアック。
 問題作になったのは確かでしょうね。
 “Bitches Brew”を沈痛にした感じ、”Jack Johnson"に繋がるイメージはありません。
 “Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970)に繋がる感じはありそうですが。
 さてここでMilesの頭で鳴っていたのは、ヘビーな混沌系ジャズか、ストレートなファンクなのか?
 いずれにしても、アルバムとしてまとめ、世に出してみて欲しかったセッションではあります。
 


posted by H.A.

【Disc Review】“Pangaea” (Feb.1.1975) Miles Davis

“Pangaea” (Feb.1.1975) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, organ)
Pete Cosey (guitar, percussion, synthesizer) Reggie Lucas (guitar) 
Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (congas, percussion, rhythm box, water drum)
Sonny Fortune (alto, soprano sax, flute)

パンゲア
マイルス・デイビス




 Miles Davis、“Dark Magus”(Mar.1974)からサックスが交代した大阪公演、夜のステージ。
 第一部は疾走するファンクビートでの超弩級にハードなインプロビゼーションミュージックですが、第二部は異なります。
 ラテンロック、フュージョン、4ビートジャズが入り混じる不思議な質感。
 本作“Pangaea”は日本以外ではしばらくお蔵入りしていたようで、“Dark Magus”と同様にMilesのイメージする音とは既にズレていたのかもしれません。
 頭の中では次の音が鳴っていたのでしょうか?
 それは本シリーズで提示されているようなファンキーな16ビートなのか、AORなのか、ファンクフュージョンの延長線なのか、まさかの4ビート、あるいはラテンロック、はたまた電子混じりのアバンギャルドなのか? 
 既に世に出ていた“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974)から推察すると、ファンキーで、ポリリズミックで、疾走する音楽のようにも思いますが 、このステージでその種の演奏はありません。
 さて・・・?
 
 その真相はこの後の長期離脱で謎に包まれたまま。 
 それが余白になっているのも、ファンを惹きつける魅力なのでしょう。
 いろんな意味で先が読めない、スリルの塊のようなバンドでした。
 おっと、かつてのバンドからいつもそうでしたね。

 いずれにしても、エレクトリックマイルス第一弾(第二弾?第三弾?第四弾?)はこれで小休止。
 この時にどんな音が鳴っていて、どんなメンバーが頭にあったのかは謎ですが、この後、長期離脱し、次の作品は“The Man with the Horn” (1980,1981)。
 そこに繋がるようにも思えるような、思えないような・・・

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 CD一枚目、第一部は疾走するファンクでスタートします。
 これでなければこのバンドはねえ・・・と思う人も多いのでしょうか?
 ハイハットがシャンシャンシャンシャン・・・と鳴り続け、アクセント、スネアがパターンを変えながら、均等に同じポジションに入るドラム。
 言葉で書くと退屈っぽいのですが、他のドラマーとは全く違う強烈な疾走感。
 ドドドドドドドドド・・・とこれまた動き続けるベースとの組み合わせがいいんでしょうね。
 さらにワウを掛けたギターのカッティングがうねりを加えて、このバンド独特の超弩級に疾走するビート。
 粘って跳ねる印象も強い“Agharta” (Feb.1.1975)的なものとどちらがよいかはお好みでしょう。
 凄まじいまでの疾走感と激烈なインプロビゼーション。
 ワウを掛けたトランペットに続く、サックス、ギターと眩暈がしそうな激烈さ。
 突然のビートの停止~カデンツアor 空白~次のパターンへの展開もバッチリ。
 あたかも譜面があるように、一斉に方向を変えるバンド。
 突っ走るパターン、粘るパターン、ヘビーなパターン、静かなパターン・・・・
 この展開方法は一年前の“Dark Magus”(Mar.1974)よりも徹底されてきているのでしょう。
 これどこかで聞いたよなあ・・・と思いながら激烈なインプロビゼーションに唖然としていると、早々に次の展開へ・・・
 終盤34:00頃にMichael Hendersonが“On The Corner”(Jun.1972) “Black Satin”のパターンを出すも、誰も反応しないで別のパターンに流れるのもご愛敬。
 最後は熱を落としてパーカッションのソロ+αとvoiceで幻想的に締め。
 さて一休みして次も激烈疾走ファンクか・・・と思っていると・・・

 CD二枚目、夜の第二部は意外にもゆったりとした幻想的なムードから始まります。
 ラテンなパーカッションとオルガン、ワウを掛けたギターがSantanaを想い起こすようなムードと穏やかなフルート。
 と思ったのはわずかな時間、音量が上がるにつれ、全く別の質感の軽快で穏やかなロック・フュージョンへ展開。
 さすがにここではズルズルギターで暴れることはできず、カリンバで応戦。
 これまた穏やかながら妖しいムード。
 “Ife”のテーマからMilesが入ると徐々に音量を上げ、山場を作るバンド。
 引き継いだディストーションを外したギターがしおらしく音を出すのは少々の時間のみ。
 オルガンの合図でヘビーなバラードへ展開。
 こうなるとズルズルギターの本領発揮。
 テンポと音量を上げながら弾きたい放題の激烈ロックバラード。
 例によってビートの停止~空白の次のパターンもヘビーなロック。
 その中でMilesが吹くのはもの悲しいメロディ。
 コードは制約されましたが、4ビートで行くか、シャッフルで行くか、ロックで行くか、数分間探り合うバンド。
 結論は4ビート。
 しばらく続く4ビートを崩すのは誰か?と緊張していると、そのまま音量を上げて、最後はアバンギャルドな電子音、SE的な音で幕。
 二部は強烈な疾走の場面はないまま。
 Milesの休養前の活動は謎を孕みつつ、拍手もなく終了します。





 Miles、1960年代からの変遷。
 突然変異的な作品がいくつかありますが、概ねグラデーションをもって変化しているように思います。
 どれが一番いいんだろ?
 好みは激烈ジャズの“Live At The Fillmore East - It's About That Time”だけど、凄みは“Live Evil”、“On The Corner” に感じるなあ。
 “In a Silent Way” もぶっ飛んでいるけど。
 もちろん"Kind of Blue"、“Bitches Brew”が金字塔、聖典なのであることに異論はありません。 


◆モダンジャズ、ハードバップ
(1959)      "Kind of Blue"
(Mar.1961)    "Someday My Prince Will Come"
(Apl.1961)    "In Person Friday and Saturday Nights at the Blackhawk"
(May.1961)    "Miles Davis at Carnegie Hall"
(1962)      “Quiet Nights”  
(Apl.May.1963)   “Seven Steps to Heaven” 

◆モーダル新主流派ジャズ
(Jul.1963)     “Miles Davis in Europe” 
(Feb.1964)     “Four & More”、“My Funny Valentine” 
(Jul.1964)     “Miles in Tokyo” 
(Sep.1964)     “Miles in Berlin” 
(Jan.1965)     “E.S.P.” 
(Jul.1965)     “(Highlights From) Plugged Nickel” 
(Oct.1966)     “Miles Smiles
(May.1967,1962)  “Sorcerer
(Jun.Jul.1967)   “Nefertiti” 
(Oct,Nov.1967)  “Live in Europe 1967: Best of the Bootleg, Vol. 1"

◆電化ジャズ、ファンクジャズ
(Jan.May.1968)    “Miles in the Sky” 
(Jun.Sep.1968)    “Filles de Kilimanjaro” 
(Jun.1967,Nov.1968)  “Water Babies” 

◆電化ジャズ、ファンクジャズ、フリージャズ
(Feb.1969)      “In a Silent Way” 
(Jul.5,1969)      ”Bitches Brew Live” /一部 
(Jul.25,1969)     ”1969Miles - Festiva De Juan Pins” 
(Jul.26,1969)     “at Festival Mondial du Jazz d’Antibes, La Pinede, Juan-les-Pins, France” 
(Aug.19-21,1969)   “Bitches Brew” 
(Oct.27,Nov.4,1969)  “Live in Copenhagen & Rome 1969” <DVD>
          “Live at the Tivoli Konsertsal, Copenhagen, Denmark” <DVD>
(Nov.5,1969)     “at Folkets Hus, Stockholm"
(Nov.7,1969)     “Berliner Jazztage in the Berlin Philharmonie" <DVD>
(Mar.1970)     “Live At The Fillmore East - It's About That Time” 
(Feb.18,Apl.7,1970)  “Jack Johnson
(Apl.10.1970)    “Black Beauty / Miles Davis At Fillmore West” 
(Apl.11.1970)    “Miles At Fillmore(完全版)”/一部
(Feb.Jun.1970)   “Live Evil” /一部 
(Jun.1970)      “Miles Davis At Fillmore(公式版)”、”Miles At Fillmore(完全版)” 
(Aug.18,1970)    “Live at the Berkshire Music Center, Tanglewood, MA
(Aug.29,1970)    ”Bitches Brew Live /一部” (at the Isle of Wight Festival)
(Dec.16-19,1970)   “Live Evil”、“The Cellar Door Sessions1970”、 
(Nov.6.1971)     “The 1971 Berlin Concert” <DVD>

◆ボリリズミックファンク
(Jun.1972)      “On The Corner” 
(Sep.1972)      “In Concert” 

◆疾走ファンク
(Oct.27,1973)    “Live in Stockholm 1973” <DVD>
(Nov.3,1973)     “Stadthalle, Vienna 1973” <DVD>
(Mar.1974)      “Dark Magus” 
(May.1970-Oct.1974) “Get Up with It” (未発表録音+新録。ボリリズミックファンク寄り。) 
(Feb.1.1975)     “Agharta”、“Pangaea

◆未発表録音集
(Nov.1969-Jun.1972) “Big Fun”  (ファンクジャズ+ボリリズミックファンク。) 
(Oct.27.1995-Jan.27.1970) “Circle in the Round”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)
(1960-1970)    “Directions”  (モダンジャズ~ファンクジャズ。)

posted by H.A.

【Disc Review】“Agharta” (Feb.1.1975) Miles Davis

“Agharta” (Feb.1.1975) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, organ)
Pete Cosey (guitar, percussion, synthesizer) Reggie Lucas (guitar) 
Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (congas, percussion, rhythm box, water drum)
Sonny Fortune (alto, soprano sax, flute)
 
アガルタ
マイルス・デイビス




 Miles Davis、“Dark Magus”(Mar.1974)からサックスが交代した大阪公演、昼のステージを収録したライブアルバム。
 オムニバスアルバム“Big Fun” (Nov.1969-Jun.1972) がApl.1974に、“Get Up with It”(May.1970-Oct.1974) がNov.1974にリリースされた直後。
 ”Dark Magus”、“Pangaea”ともにしばらくお蔵入りしていたとのことで、世界的には休養前の最後の作品はこのアルバム。
 ”Dark Magus”のような疾走するファンクビートでのハードなインプロビゼーションミュージックだけではなく、別のスタイルが加わったステージ。
 激しい演奏ですが、突っ走っているのは、昼の部“Agharta”、夜の部“Pangaea” (Feb.1.1975)のともに一部で、ゆったりとして落ち着いた時間もかなりあります。
 また、本作、昼の部は粘って跳ねるファンキーな色合いが強く、さらに、一部、二部共に終盤にポップというか俗というか、そんな色合いが混ざってきているように思います。
 Milesが次にやろうとしていたことのヒントはこのステージの中にあるのでしょうか?
 うーん?
 とにもかくにも、激烈疾走ファンクのようでそれだけではないライブ。
 激しくてファンキー、しかもポップな色合いもいくらか。
 少々の謎を残しつつ、1970年代Miles Davisはこの作品で終了します。

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 CD一枚目、ステージはゆったりとしたファンクビートで幕を開けます。
 鳴り続けるハイハット、ベビーなベース、ワウを掛けたファンキーなギターのカッティング、
 ワウを掛けたMilesもまずは抑え気味、続くSonny Fortuneもあいさつ代わりのスムースかつハイテンションなソロ、さらにはズルズルグチョグチョギターの激烈ソロが続きます。
 時折のブレーク、無音の空間、あるいはそこに響くオルガン、ホーンが緊張感を高めます。
 次第にベースが激しく動き出し、音量、テンションが上がり、激情状態に突入。
 ブチ切れたようなズルズル激烈ギターで締めた概ね16:30から、リズムパターンが変わります。
 抑え気味に始まりますが、粘っこく跳ねるビート。
 次第にベースが動き出して、ファンキー度大幅アップ。
 トランペットソロに続いて、22:00前後には短いながら"Turnaround"(?)のテーマの二管アンサンブルからサックスソロ。
 これはオシャレ・・・とは言いませんが、ソフィスティケイトされたソウルのような時間。
 これは何かの予見かと思っていると・・・
 以降、ズルズルギターが続きますが、その後、32:30頃から唐突に始まるのがボッサAORな”Maysha”。
 鬼のようなバンド、鬼のようなカッティングが続いたギターが優しく音を出し、これまた鬼のようなSonny Fortuneが奏でる優しいフルート。
 “Get Up with It”収録のオリジナルに忠実に、後のStuff、Gordon Edwards的なグルーヴに、情け容赦のないズルズルグショグショギターのソロ。
 ドカーンと盛り上がって、最後に御大の優しいトランペット。
 約10分間の天使と悪魔の時間が終わり、その流れの明るいグルーヴで第一部は幕。
 出だしもいいのですが、私はリズムが跳ね始めファンキー度アップの中盤から終盤がお気に入りです。

 CD二枚目、昼のコンサートの二部は冒頭からハイテンション。
 “Jack Johnson" (Feb.18,1970)からSly and the Family Stone的な例のどカッコいいリフからスタート。
 オリジナルよりも高速なビートにSonny Fortuneのスムースかつ激烈、超高速サックスが乗ってきます。
 続くはロックギターが唸るヘビーなファンクから、シャッフルビートの”Right Off”、さらにフルートが映える妖しいバラード風演奏に遷移。
 一旦ビートが落ち、“Ife”のテーマから入るMilesの再登場とともに徐々にテンポと音量が上がり、ドラムはサザンソウルのようなタンタンタンタンとスネアが揃うビート。
 エスニックなビートの妖し気な混沌を経て、終盤からはベビーなバラードに激烈な泣きのギターソロ、二編。
 Santanaっぽい定番的泣きの激烈版と、ズルズルグチョグチョ絶叫激烈版。
 Miles的な展開だとは思わないけども、これは凄い。
 最後は御大が静かに登場。
 そのまま、淡々としたビート感のまま、さまざまに表情を変えながら幕。
 不思議で妖しいエンディング。
 夜の部への期待と不安を残したまま、昼のステージは終了、“Pangaea” へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Get Up with It” (May.1970-Oct.1974) Miles Davis

“Get Up with It” (May.1970-Oct.1974) Miles Davis
 
GET UP WITH IT
MILES DAVIS
COLUM
マイルス・デイビス



 Miles Davis、知る人ぞ知る、隠れた傑作。
 “Big Fun”(Nov.1969-Jun.1972)と同様に、1970年代初旬のスタジオ録音を集めた作品。
 但し、“Big Fun”が1972年までの未発表録音を集めたアルバムであることに対して、本作の半分はリリース直前のセッション。
 アウトテイク、未発表曲集ではなく、休養前のMilesがやりたかったであろう音のスタジオ録音作品が収まっています。
 Duke Ellintonの追悼を含めていろんな要素が入っているのでわかりにくくなっているように思いますが、もしこのセッションの中から一部をピックアップし、多少整理、修正し、LPレコード一枚分ででもリリースしていたら、大傑作として奉られていた可能性もあったように思います。
 おそらく、直前のスタジオ録音作品“On The Corner” (Jun.1972)とは違う新しい音のアルバムを作ろうとしてセッションを繰り返し、完成までは今少し。
 その途中経過~成果が本作収録の"Calypso Frelimo"、"Maiysha"、"Mtume"あたり。

 そうこうするうちに、Duke Ellintonが急逝、追悼曲を録音し、この形でリリースに至ったのだと推察されます。
 私見では上記の3曲+α(リリースされた形のCDの2枚目に近いイメージ)を中心に、調整して仕上げれば名作になっていたように思います。
 コンセプト、質感の異なるDuke Ellinton追悼作品は、別途出せばそれでよかったように思うのですが、時間の綾は気まぐれで複雑です。

 また、本作のリリースはNov.1974。
 しばらくお蔵に入って1977年リリースの“Dark Magus”、同じく日本以外ではお蔵に入った"Pangaea” よりも、1974年当時のMilesが世に問いたかったことを示しているように思います。
 “Dark Magus”のような激烈疾走ファンクはスタジオ録音にはありません。
 諸々の状況からすると、Milesがやりたかったのは、本作の"Billy Preston"、"Maiysha"、"Mtume"、"Calypso Frelimo"のような音、と推察。
 特に"Calypso Frelimo"に当時のMilesがやりたかった演奏がぎっしり詰め込まれているように思います。
 生涯の大大大名演。 
 ポリリズミック、かつ、粘って跳ねるファンキーなビート、ラテン混じり、それに加えて疾走する音。
 ファンキーではなく疾走するビートを繰り出すAl Fosterを使い続けた理由もそこにあるように思います。 
 "Dark Magus”、“Agharta”、"Pangaea”にもその一部が表出しているけども、スタジオとは勝手が違って・・・ 
 違うかなあ・・・?

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 以下、録音日時順に。
 前後の作品との関係を意識しながら聞くと面白い、かな?

Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)
Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)

〇<May.19.1970>"Honky Tonk"
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Keith Jarrett (electric piano) Herbie Hancock (clavinet) Michael Henderson (bass) Billy Cobham (drums) Airto Moreira (percussion)
Steve Grossman (soprano saxophone)

 “Live Evil” (Dec.16-19,1970) でも演奏されている当時のライブの中心曲の一つ。
 “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)の後、Directions” 収録の"Konda"<May.21,1970>の二日前のセッション。
 Keith Jarrett が初参加した演奏でしょうか?
 バリバリのファンクプレーヤーのMichael Hendersonも固定され、一連のBitchesBrew系のライブ作品とロックな“Jack Johnson"を混ぜ合わせて、“Live Evil” に向けて試行中といったところでしょう。
 シンプルな曲ですが、ビート感はシンプルではありません。
 Billy Cobhamのハイハットのキレがカッコいい空間を開けたドラム、ギター、エレピが絡み合う複雑なビート。
 それを背景にしたMilesの堂々としたトランペット。
 Billy Cobhamは先の“Big Fun”収録"Great Expectations/Orange Lady"<Nov.19.1969>でもファンキーなビートを叩きだしていて、Jack DeJohnetteに変わるのはこの人、のイメージがあったのかもしれません。
 あるいは“On The Corner” (Jun.1972) に参加したBilly Hartも考えていたのか?
 結局、後に固定されるのは、その3名ではなく、最もファンキーではない Al Foster。
 そこから読み取れるMilesのドラマーへの要求のイメージは・・・?
 ともあれ、カッコいいドラムです。 
 フェイドアウトされるのが残念ですが、この複雑なビート感がMilesが1974年時点で提示したかった音であり、あえて少し前の音源から選んだ?・・・ようにも思います。

Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)
Live Evil” (Dec.16-19,1970)

〇<Mar. 1972>"Red China Blues"
Miles Davis (electric trumpet with wah-wah)
Cornell Dupree (electric guitar) Michael Henderson (bass) Al Foster, Bernard Purdie (drums) James Mtume (percussion)
Lester Chambers (harmonica) and Brass Section

 “On The Corner” (Jun.1972)の三か月前の録音。
 ドラマーはJack DeJohnette ではなくて、Al FosterとBernard Purdie。
 そろそろジャズドラマーではない、別のビートを出す人を、といった意図があったのかもしれません。
 “On The Corner”はJack DeJohnette抜きではできなかったと思いますが、Al Fosterに大きな可能性を感じていたのは確かなのでしょう。
 演奏は“On The Corner”的ではなく、シンプルでハイテンションなブルース。
 ハーモニカが常時鳴り続け、ブラスセクションがゴージャスな色付け。
 Milesはワウを掛けながらハイテンションなトランペット、全編吹きまくり。
 ソウル系のビッグネームなリズム隊は強い個性を発揮するには至らず。
 隠し味が何かあるのかな・・・

On The Corner” (Jun.1972)

〇<Sep.6.1972>"Rated X"
Miles Davis (organ)
Cedric Lawson (electric piano) Reggie Lucas (electric guitar) Khalil Balakrishna (electric sitar) Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (percussion)
Badal Roy (tabla)

 “In Concert” (Sep.29.1972)と同月、それに先立つその冒頭曲のスタジオ録音。
 Milesはトランペットを吹かず、終始鳴り響くオルガンで主導。
 “In Concert”での演奏の後半部分、ヘビーで緊張感の強い深刻系の演奏です。
 ビートはポリリズミック系。
 Al Fosterはいつものハイハットは抑え気味、複雑なビートを出しているように聞こえます。
 “In Concert”では同曲のみがポリリズミックな展開がなんとかできている感じでしたが、このセッションが土台になっているとすれば、それも納得。
 他の曲についてはどう処理するかが曖昧だった、と考えれば筋が通ります。
 “On The Corner” (Jun.1972)からどう発展させるかを模索中、といったところでしょうか。

In Concert” (Sep.29.1972)

〇<Dec.1972>"Billy Preston"
Miles Davis (electric trumpet)
Cedric Lawson (fender rhodes) Reggie Lucas (electric guitar) Khalil Balakrishna (electric sitar) Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (percussion)
Badal Roy (tabla)
Carlos Garnett (soprano saxophone)

 これはカッコいい。
 “In Concert” (Sep.29.1972)の三ヶ月後のセッション。
 ファンキーに粘って跳ねるビート。
 Al Fosterのハイハットは相変わらず単調に鳴り響いていますが、タメのあるベースとカッコいいカッティングのギターが繰り広げるファンキーかつポリリズミックなグルーヴ。
 タブラも“In Concert”のようなお祭りビートにはならず、いい感じの絡み具合。
 キーボードも含めて、複雑に絡み合うポリリズミックかつファンキーなビートが出来上がっています。
 さらにハイハット(シンバル?)の単調な響きのおかげで、かえって“On The Corner” (Jun.1972)よりもわかりやすくなり、前に進む推進力もつくなっているように思います。
 しかもポップで明るい色合い。
 その上で朗々と鳴り響くトランペットがこれまた最高にカッコいい。
 おそらく“In Concert”でやりたかったのはこんな感じの音だったのでしょう。
 これこそが“On The Corner” の発展型だ、と言われれば納得のカッコよさ。
 これが続くとすれば、ドラマーをJack DeJohnetteからAl Fosterに交代したことにも合点がいきます。 
 もしこの感じで一作作っていたとしたら新たな神話が出来た・・・
 ・・・かもしれません。
 



〇<Sep. 1973>"Calypso Frelimo"
Miles Davis (electric trumpet electric piano, organ)
Pete Cosey, Reggie Lucas (electric guitar) Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (percussion)
Dave Liebman (flute) John Stubblefield (soprano saxophone)

 LPレコード二枚目A面に収められたこの曲がこのアルバムの目玉なのでしょう。
 “Dark Magus”(Mar.1974)、“Agharta”、"Pangaea” (Feb.1.1975)の録音、リリースが前後するので見えづらくなっているのですが、この曲が休養前のMilesがたどり着いたピークのように思います。
 "Billy Preston"<Dec.1972>と同様にポリリズミック系ビートの楽曲、30分を超える長尺な演奏。
 “Dark Magus”でも演奏されていて、そちらも凄い演奏ですが、こちらの方がもっと激烈。
 深刻なムードではなく、ラテン、カリブ混じりのむしろ明るい質感。 
 インド系楽器が抜け、ほぼ“Dark Magus”バンドですが、単なる疾走ファンクではなく、強い疾走感に加えて、パーカッションが強烈に効いたエスニックで複雑なビート感。
 軽い感じではありませんがファンキーなグルーヴ。
 さながら、ファンキーな激烈・疾走・ポリリズミック・エスニック・ファンク。 
 この曲に当時のMilesがやりたかった演奏がぎっしり詰め込まれているように思います。
 当時のWeather Report、Return to Forever、Head Hunters、 Mahavishnu Orchestraが束になっても勝てない凄い音、は大げさでしょうか?
 Miles Davisの演奏としても、過去、将来のすべての中で頂点、たとりついた高み・・・とまではいわないまでも、ベスト10に入る演奏だと思います。
 これがベストといわれても、私的には、そうかもしれませんねえ・・・と納得してしまいます。
 Al Fosterのいつものハイハットでなく、シンバル?を複雑に鳴らし、パーカッションが怒涛のビート。
 ベースライン、ワウのかかったギターもいい感じでファンキーさを醸し出しています。 
 徐々にテンションを上げるヒタヒタと迫ってくる系のビートを背景に、ホーン陣のハイテンションでカッコいいソロの連続。
 最初のテーマの提示が終わった瞬間から、音の塊が怒涛のように押し寄せてくるような凄まじさ。 
 中盤はテンポを落として粘りのあるビート、ハードボイルドなトランペットソロを経て、再びエスニック風のポリリズミックスなビートへ。
 最後は徐々に高揚していくバンドとハイテンションなトランペットソロが一丸となってドカーンと盛り上がって締め。 
 明るいのか、キツイのか、なんとも不思議で凄まじい、ファンキーな激烈・疾走・ポリリズミック・エスニック・ファンクな一曲。
 とにもかくにも凄まじいエネルギーの放出、凄まじい演奏。
 この曲だけでも十分すぎる名作、というよりも、Miles Davis最高の演奏のひとつだと思います。
 



Dark Magus” (Mar.1974)

〇<June.1974>"He Loved Him Madly"
Miles Davis (electric trumpet, organ)
Pete Cosey, Reggie Lucas, Dominique Gaumont (electric guitar) Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (percussion)
Dave Liebman (alto flute)

 “Dark Magus”(Mar.1974)の三か月後の録音。
 “Dark Magus”バンドでのDuke Ellingtonの追悼曲。
 厳かなオルガンと、ダルなムードのギターの幻想的なインタープレーが続くこと十数分。
 ようやくビートが定まり、フルートが奏でる淡く悲し気なメロディ。
 16:00から始まるトラペットが静かに奏でる追悼のメロディ。
 言葉になるような、ならないような、悲しみが滲み出すような音。
 黙祷。

〇<Oct. 1974>"Maiysha"、"Mtume"
Miles Davis (electric trumpet, organ)
Pete Cosey, Reggie Lucas, Dominique Gaumont (electric guitar) Michael Henderson (bass) Al Foster (drums) James Mtume (percussion)
Sonny Fortune (flute)

 “Dark Magus” (Mar.1974)、“Agharta” (Feb.1.1975)の間の録音。
 "Maiysha"は“Agharta”にも収められていたオシャレなラテン風味AOR風の曲。
 今でいうところのレアグルーヴ風。
 これが硬派なMiles作曲というのがいまだに今一つピンときません。
 Miles御自らのオルガン、激烈JimiHenギター陣、フルートもちょっと戸惑い気味かな?
 ”Agharta”でのリズムギターとフルートはいかにもそれらしくやりきっていましたが・・・
 トランペットもあまりにも聞き慣れない展開なので、聞いているこちら側が照れてしまいます。
 中盤から我慢しきれずか、少しだけ激烈系が混ざってくるのもご愛嬌。
 さらに中盤の一部に後のStuff、ベースがGordon Edwardsみたいなグルーヴを出してて・・・ 
 ・・・とか含めて聞いていて思わず顔がほころんでしまうのはマニアだけ?
 そんなこんなで演奏は少々パンクなAORといったムードですが、とても素敵な曲です。

  

 "Mtume"はポリリズミックな“On The Corner” (Jun.1972)風。
 ファンキーで複雑なビートと、エスニック風メロディ、電子音が入り混じる、不思議なポリリズミック・ファンキー・ポップといった面持ち。
 Al Foster のドラムがポリリズムの中にいい感じで据わるようになってきました。
 "Billy Preston" "Calypso Frelimo"と同様に完璧でしょう。
 途中で高速なシャッフルに移行する瞬間などは、この人ならではのカッコよさ、疾走感。 
 MilesがAl Fosterにこだわってやりたかったことは、この曲のような演奏なのかもしれません。 
 遠くで音が鳴っているイメージは、新しい時代の”In a Silent Way” (Feb.1969)といった雰囲気も無きにしも非ず。
 このセッションからすれば、この種のポップテイストとポリリズミックアプローチを混ぜ合わせて、さらに粘って跳ねるファンキーな色合いにして、カッコいいやつができないか?と模索していたように思えます。
 深刻、激烈な“Dark Magus”的ではない何か。 
 Jimi Hendrix風ではなく、Santanaをもっともっとファンキーにポリリズミックして、さらに疾走するような音。
 もし、“Agharta”、"Pangaea”以降の長期休養がなかったら?
 想像、妄想は深まるばかり・・・・・・

Agharta”、"Pangaea” (Feb.1.1975)


posted by H.A.

【Disc Review】“Big Fun” (Nov.1969-Jun.1972) Miles Davis

“Big Fun” (Nov.1969-Jun.1972) Miles Davis
 
Big Fun
Miles Davis
Colum
マイルス デイビス


 Miles Davis、1970年代初旬のスタジオ録音を集めた作品。
 “Get Up with It” (May.1970-Oct.1974)がNov.1974のリリースに対して、本作はそれに先立つApl.1974のリリース。
 下記の作品の前後のセッション、“Bitches Brew”以降の没セッションの記録に過ぎないのですが、“Bitches Brew”の後、あるいは“On The Corner”の後に何をやろうとしていたのか、表に出ていないことが見えてきます。
 実験的な要素も強いものの、凄い演奏が揃っています。 

(〇:本作収録)
  “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)
 〇"Great Expectations/Orange Lady"、"Yaphet" <Nov.19.1969> 
 〇"Trevere"、"The Little Blue Frog"<Nov.28.1969> 
 〇"Lonely Fire"<Jan.27.1970>  
 〇"Recollections"<Feb.6.1970>  
  “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)
 〇"Go Ahead John"<Mar.3.1970>  
  “Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)
  “Live Evil” (Dec.16-19,1970)
  “On The Corner” (Jun.1.6,Jul.7.1972)
 〇"Ife"<Jun.12.1972>
  “In Concert” (Sep.29.1972)
  “Dark Magus” (Mar.1974)
  “Agharta”、"Pangaea” (Feb.1.1975)

 “Bitches Brew”直後から、世に出た“Jack Johnson"のようなストレートなファンクではなく、インド楽器の導入を交えて諸々の試行がなされています。
 “Bitches Brew”をベースにして、ジャズでもファンクでもない、エスニックでファンキーでポリリズミックなビートに向けた試行をしているようにも思えます。
 その後、ベーシストをDave Hollandから、ジャズプレーヤーではないMichael Hendersonに交代し、ジャズっぽさと決別。
 “On The Corner” でファンキーでポリリズミックなビートには一定の決着をつけたように思われるのですが、求めていたのはさらに違うビート感。
 ファンキーでポリリズミックな上での疾走感の追求。
 そのためにAl Fosterにこだわり、このアルバムでは"Ife"<Jun.12.1972>にその結実が見られるように思います。
 が、その後の“In Concert”、“Dark Magus”で結果的には少し違った方向へ。
 それでも、“Get Up with It”に収録された"Calypso Frelimo"<Sep. 1973>、"Mtume"<Oct. 1974>などのセッションを聞くと、やりたかったのはファンキーでポリリズミック、かつ疾走するビートだったようにも推察されます。
 諸作にその断片は見えるものの、アルバムとしてそれで通した作品がないのが残念です。

 以上、あくまで私見、事実はわかりませんが、そんな推理ゲームも楽しめることも、この期のエレクトリックMiles諸作ならでは、未発表テイクの面白さだと思います。
 いろんな時期、いろんな要素が混在して一貫性が無いのはオムニバスゆえの悲しさですが、整理して、“Bitches Brew”派生型フリージャズ的作品、“Get Up with It”+本作"Ife"などでポリリズミックファンクの二作に分けると、どちらも名作になりそうなのですが・・・ 

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 <Nov.19.1969>"Great Expectations/Orange Lady"、"Yaphet"
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar) Herbie Hancock, Chick Corea (electric piano)
Ron Carter (double bass) Harvey Brooks (Fender bass)
Billy Cobham (drums) Airto Moreira (percussion)
Steve Grossman (soprano saxophone) Bennie Maupin (bass clarinet)
Khalil Balakrishna (electric sitar) Bihari Sharima (tabla, tamboura)

 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)の三か月後のセッション、“Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)よりも前。
 “Bitches Brew”の編成に近いのですが、ドラムがJack DeJohnetteではなくBilly Cobham、ベースがDave HollandではなくRon Carter+エレキベースのHarvey Brooks。
 Wayne Shorterは抜けましたが、Herbie Hancockが呼び戻されているのも面白いところ。
 さらにインド楽器が加わります。
 本セッション、次のセッション<Nov.28.1969>あたりで次の作品を作ろうとしていたのだろうと推察されます。
 "Great Expectations/Orange Lady"は、長尺27分、妖しく鳴り響くタンブーラとBilly Cobhamが叩きだすファンキーながら淡々としたビートでスタート。
 ヒタヒタと迫ってくるビートと極端にゆったりした憂鬱なテーマのメロディ、繰り返されるブレークが楽曲“Bitches Brew”を想い起します。
 テーマが提示されたのち、スペースが出来てインタープレーが始まり、誰かのソロが始まるのかなと思っていると、再び同テーマが繰り返される展開。
 途中でテンポは変わり、 インタープレーは常に続いていますが、前半約13分この展開、最後まで誰かの明確なソロの場面はありません。
 他にも数曲同じ展開があり、この展開を様々な形で実験していたようです。
 楽曲”Nefertiti” (Jun.Jul.1967)的でもあり、“Bitches Brew”的でもあり、インド楽器の響きが先のバスクラリネットの響きにも増して妖しくもあり。
 中盤からビートが定まらないバラードへ。
 シタール、タンブーラが鳴り響く妖しい空間に鳴り響くゆったりとしたトランペット。
 そこからタブラがビートを作り、徐々にテンションを上げながら、エレピ、シタールなどが絡み合う穏やかで前向きな楽園ムードのグルーヴへ展開。 
 最後はテンポを落としてトランペットと、インド系楽器の絡み合いで幕。
 後半はJoe Zawinul作で、”Weather Report”(1971)、”Live in Tokyo”(1972)Weather Reportで演奏されていて、近いムード。
 Joe Zawinulの参加クレジットはありませんが、このセッションも彼のアイデアだったのでしょうね。
 ジャズともロックともファンクともインド音楽ともつかない新しい音、さらに前半は掟破りの新しい構成。
 不思議感全開ですが、カッコいい演奏だと思います。

 "Yaphet"はCD化の際に追加された演奏。
 "Great Expectations/Orange Lady"と同じ編成、淡々としたビート、繰り返されるゆったりとしたテーマ、ブレークと、構成も同様です。
 こちらは陰鬱ではなく、パーカッションが鳴り響く明るい楽園ムード。
 中盤から徐々にビート感が上がり、エレピが例の狂気のフレーズを弾き出し、混沌まで行くかと思わせますが、その三歩ぐらい手前でとどまります。
 後の“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970)などのライブでは混沌に行ってしまいますが、“Bitches Brew”と同様に抑制されています。

 この期のセッション、総じて言えば“Bitches Brew”にインド色を加えた妖しげなファンクジャズ。
 テーマの徹底した繰り返しと、ソロが前面に出ないインタープレーとの対比も実験していたことなのでしょうか?
 発表されなかった理由は想定よりも飛躍しなかったこと?あるいは売れないと判断したからでしょうか?
 確かに“Bitches Brew”+αなのですが、妖しさ、不思議感全開。
 一般受けする音楽でないとしても、少々の楽園ムードも含めてカッコいいと思います。
 もう少し整理すれば凄いアルバムが出来そうではあるのですが、“Jack Johnson"はリリースされ、こちらはお蔵に入り。
 そのことから推察すれば、既にMilesは、ライブはさておき、スタジオではジャズの香りが残る“Bitches Brew”の世界に見切りをつけていたのでしょうか?




<Nov.28.1969>"Trevere"、"The Little Blue Frog" 
Miles Davis (trumpet)
Chick Corea (electric piano) Larry Young (organ, celeste) John McLaughlin (guitar)
Harvey Brooks (electric bass) Dave Holland (double bass)
Jack DeJohnette, Billy Cobham (drums) Airto Moreira (cuíca, berimbau)
Steve Grossman (soprano saxophone) Bennie Maupin (bass clarinet)
Khalil Balakrishna (electric sitar) Bihari Sharima (tamboura)

 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)の三か月後、"Great Expectations/Orange Lady"、"Yaphet" <Nov.19.1969>に次ぐセッション、どちらもCD化での追加曲です。
 “Bitches Brew”+インド楽器の編成ですが、ドラムはツイン、キーボード、ベースが交代、John McLaughlinは"The Little Blue Frog"のみに参加しています。
 "Trevere"はフリージャズっぽい幻想的な演奏。
 ドラムはフリーなビート、インド系楽器が鳴り響く空間に、ゆったりとしたテーマを繰り返し奏でるトランペットが鳴り響き、他の楽器がフリーにインプロビゼーションを展開するイメージ。
 "Great Expectations/Orange Lady"の構成を、別の形で実験したイメージでしょうか。
 "The Little Blue Frog"はゆったりとしたビートの不思議な演奏。
 ビートは定常ですが、シタール、タンブーラ、バスクラリネット、さらにクィーカーが妖し気な空間を作り、その中にクールなミュートトランペットが響きます。
 ギターも激しく音を出しますが、フワフワした空間に吸い込まれていくようなイメージ。
 混沌ではありませんが、終始乳濁色なような空間。
 不思議感全開です。


<Jan.27.1970>"Lonely Fire" 
Miles Davis (trumpet)
Chick Corea (electric piano) Joe Zawinul (electric piano, Farfisa organ)
Dave Holland (double bass) Harvey Brooks (Fender bass guitar)
Jack DeJohnette, Billy Cobham (drums) Airto Moreira (Indian instruments, percussion)
Wayne Shorter (tenor saxophone) Bennie Maupin (bass clarinet)
Khalil Balakrishna (sitar, Indian instruments)

 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)、”Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)の間のセッション。
 ここでも“Bitches Brew”+インド楽器の編成。
 二台のエレピを中心とした幻想的な背景にしたミュートトランペットの悲しげな音。
 インド系の楽器が妖しさを付け加えます。
 前半はビートが定まらない、漂うようなバラード。
 この曲も"Great Expectations/Orange Lady"と同様に、ゆったりとしたテーマメロディの繰り返しの間に、誰のソロとは決まらないインタープレーを挟んでいく構成。
 それが続くこと十数分、中盤からはヒタヒタと迫ってくるようなビートに遷移、テーマの繰り返しは断片的になり、インプロビゼーション中心の展開へと変わります。
 徐々にテンポを上げながら、トランペット、サックスの端正なソロ、エレピの狂気混ざりのソロ。
 テーマの流れとは別に、この時点ではまだ世には出ていない“Return to Forever” (Feb.1972)Chick Coreaの”La Fiesta”の展開が断続的に流れていて、エレピがそのメロディを一瞬だけ弾く場面もあります。
 最後はテンポを落とし、再びテーマの繰り返しで締め。

 この期のセッションで度々出てくる、スローなテーマとインタープレーをひたすら繰り返す構成の楽曲は、後の正規リリース中にはなかったように思います。
 実験は実験のまま終わったのか?
 気づいていないだけで、何かの中に取り込まれているのか?
 さて・・・?


<Feb.6.1970>"Recollections" 
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (guitar) Joe Zawinul (electric piano (left) ) Chick Corea (electric piano (right) )
Dave Holland (electric bass)
Jack DeJohnette (drums) Billy Cobham (triangle) Airto Moreira (cuíca, percussion)
Wayne Shorter (soprano saxophone) Bennie Maupin (bass clarinet)

  “In a Silent Way”(Feb.1969)の再演、長尺18分。
 このセッションもCD化の際に追加されたもの。
 穏やかなメロディ、演奏です。
 クレジットされていませんが、シタールとタンブーラの音が入っています。
 "Great Expectations/Orange Lady"がインド色の”Bitches Brew”だとすれば、こちらはインド色の”In a Silent Way”・・・というほどには強烈なインド色はありません。
 終始漂うような穏やかな音の流れ。
 電子的な効果音のようなエレピの使い方も当時としては新しいのかもしれません。 
 最初から最後まで同じ調子、穏やか過ぎて単調と言われればそうかもしれませんが、心地よさは抜群。
 少しずつ微妙に変わる景色を楽しむ、といった妙もあるかも。
 いずれにしてもこの時期、今までの諸作の流れの中にインド色、さらには電子音を取り入れることで新しいモノを作ろうとしていたのは間違いないのでしょう。


<Mar.3.1970>"Go Ahead John" 
Miles Davis (trumpet)
John McLaughlin (electric guitar)
Dave Holland (bass) Jack DeJohnette (drums)
Steve Grossman (soprano saxophone)

 “Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970)、“Black Beauty” (Apl.10.1970)、“Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)と同時期のセッション。
 “Jack Johnson"の流れを継いだと思えるファンク系、長尺な30分弱。
 但し、それとは違うもっとファンキーなビート。
 ここに”On The Corner”(Jun.1972) ”Black Stain”の必殺ドラムがあります。
 John McLaughlinのギターもファンキーさを強調したカッティングの場面も多く、”On The Corner”への道筋が見えてきた感があります。
 各人のソロが長尺に収められていますが、オーバーダビングによるギター、トランペット、ドラムの各二台での掛け合いなど、凝った編集。
 ギターがギュインギュインいってつ場面がありますが、全体的に抑制された演奏で、Milesも熱くならずクールに吹ききっています。
 ファンキーなビートから始まり、中盤からテンポをスローダウン、再度ファンキーに戻る構成。
 ファンキーな部分ではベースが苦しそうかな?と思っていると、Dave Hollandでしたか。
 なるほど・・・
 それにしてもJack DeJohnetteのドラムは切れ味最高。
 ”On The Corner” (Jun.1972)はまだ先ですが、その原点はこれ。
 それとも、このセッションの少し前、“Directions”収録"Duran"Feb.17,1970Billy Cobhamのドラムだったのでしょうか?
 私ならばタイトルは"Go Ahead Jack"にします。




<Jun.12.1972>"Ife"
Miles Davis (electric trumpet with wah wah)
Lonnie Liston Smith, Harold I. Williams, Jr. (electric piano)
Michael Henderson (electric bass)
Al Foster, Billy Hart (drums) James Mtume (African percussion)
Sonny Fortune (soprano saxophone, flute) Bennie Maupin (clarinet, flute) Carlos Garnett (soprano saxophone)
Badal Roy (tabla)

 ”On The Corner”(Jun.1.6,Jul.7.1972)セッションの間の録音、長尺20分超。
 Jack DeJohnetteが抜けてAl Fosterが参加しています。
 Al Foster、“In Concert”(Sep.1972)などの演奏から、疾走感は強いのでけども単調なイメージが強くて、この種のファンキーな演奏には向かないのでは?とも思っていたのですが、このセッションなどを聞くと彼にこだわった理由が推察できます。
 Jack DeJohnetteがやらなかった、シンプルで疾走感のあるビート。
 その疾走感とパーカッション陣のポリリズム、さらにMichael Hendersonのファンクベースを合わせれば、疾走感を伴ったファンキーでポリリズミックなビートが出来るのでは?といった目論見。
 このセッションと“Get Up with It” (May.1970-Oct.1974)のいくつかのセッションで、それが実現しかけているように思います。
 本作のAl Fosterも前半はシンプルなビートで突っ走ります。
 が、もう一台のドラム、パーカッション、タブラなどが絡むことでポリリズミックなビート感が出ています。
 中盤からはドラムも複雑なビート。 
 上手くコンパクトに編集して”On The Corner”に収録されてもよさそうに思うのですが、そうならなかったのは何故でしょう?
 なお、同曲は“In Concert”(Sep.1972)、“Dark Magus” (Mar.1974)でも演奏されていますが、このバーションが一番ポリリズミック感が出ていると思います。
 ビートの整理がついて、本曲、“Get Up with It”収録の"Billy Preston"<Dec.1972>、"Calypso Frelimo"<Sep. 1973>、"Mtume"<Oct. 1974>などの要素を合わせていけば、”On The Corner”に並ぶようなファンキーでポリリズミックで、さらに疾走する、カッコいい作品が出来ていたようにも思います。
 この“Big Fun”、“Get Up with It”の編集~リリースの際にそうすることもできたのでしょうが、しなかったのは何か別の意図があったのでしょうね。


posted by H.A. 
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