“La traverse” (2019) Matthieu Bordenave

Matthieu Bordenave (Tenor Saxophone)
Florian Weber (Piano) Patrice Moret (Double Bass)

La traversée
Matthieu Bordenave
ECM
2020-09-25


 フランスのサックス奏者Matthieu Bordenave、ドラムレストリオ。
 日本人ドラマーのECMでのアルバム“For 2 Akis” (2017) Shinya Fukumoriに参加していた人。
 そちらと同様、とても繊細な音。
 サポートはドイツの名ピアニストFlorian Weberに、ベースはスイスのColin Vallon Trioの人。
 近年のECMの管楽器入りアルバム、オーソドックスなジャズな感じのモノも多い印象がありますが、本作は違うテイスト。
 静かでほどほど抽象的、フリー混じりのコンテンポラリージャズ。
 終始ゆったりした漂うようなビート。
 ドラムレスゆえの浮遊感と余白。
 ほどよいサブトーンを含んだ力みのないサックス、零れ落ちてくるピアノ、穏やかなベースの絡み合い。
 サックスはECMのCharles Lloydをさらに繊細に淡くした感じでしょうか。
 不思議感たっぷり、普通にメロディスな感じとは少しズレた感じの音の流れ。
 但し、極めて美しい音。
 最初から最後までゆったりと、美しい音が漂い、ときに軽やかに疾走しながら、サラサラと流れていきます。
 普通ではないながら気難しく聞こえないのは、美しい音と、個々のフレーズがメロディアスだからでしょうか。
 さわると壊れてしまいそうな繊細さ。
 集中して聴けば緊張感たっぷり。
 が、暗くなくない優しい音、サラサラした質感ゆえ、BGMとしてもいい感じ。
 白い壁の現代美術館で流れていそうな感じもしますが、それよりも温度、湿度高め、少々脂がのった人臭い音、そんなバランス。
 ジャケットもそんな感じですね。
 いずれにしても淡くて美しい時間。
 どう使うかはその時の気分次第。


 

posted by H.A.