“En attendant” (2019) Marcin Wasilewski Trio
Marcin Wasilewski (Piano)
Slawomir Kurkiewicz (Double Bass) Michal Miskiewicz (Drums)
もはやベテランなのでしょう、ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、トリオ作品。
近作“Arctic Riff” (2019)はJoe Lovanoのサックス入りでしたが、本作はピアノトリオのみ。
おそらくそれに連なるセッションでの録音。
メンバーも長年続くSimple Acoustic Trioそのままですが、“Arctic Riff” (2019)を含めてイメージが少々変わったようにも感じます。
少し抽象的で淡い色合いは、ECMレコードでの初作“Trio” (2004)に近い感じかもしれませんが、もっと複雑。
三者のいわゆるインタープレーを中心とした演奏。
定常なビートよりも、誰かが先導する自由なビートと音の流れに合わせ、他のメンバーがこれまた自由に反応していくような時間がたっぷり。
変幻自在、予測不可能。
あらかじめ準備された楽曲に加えて、フリーなインプロビゼーションと思しき演奏が数編。
十分にメロディアス、ECMレコードのお約束のルバートでの超スローバラードや、8ビートな今風ジャズ、いかにもヨーロピアンなクラシック風味ジャズなどが並びますが、定常なビートの時間が減り、淡い色合いの複雑な表情。
そのうえで、このトリオの軽快さ、明るい色合いはそのまま。
フリーな感じ、妖しいムードは漂っているのですが、難解さや気難しさはなし。
あくまで静かで穏やか、落ち着いています。
そんな音の流れの中、しばしば現れる美メロ、ときおりの疾走が作り出す覚醒の瞬間、そのバランスがとてもいい感じ。
大きな音や長い疾走の場面がない分、全編が穏やかながら強い浮遊感に包まれています。
さらにカラリとした湿度感、サラリとした質感を含めて、大きめの音で流すと心地よさ最高。
繊細で儚く美しい、さらに淡さ軽快さ明るさ、そのうえでのクールネスが21世紀型。
そんな淡麗なヨーロピアンジャズ。
苦からず、甘からず。