吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

MPB

【Disc Review】“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo

“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo
André Mehmari (Piano) Eliane Faria (Voice) Gordinho do Surdo (Surdo)

Tres No Samba
Andre Mehmari
Imports
2017-03-03


 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariのとても穏やかなサンバアルバム。
 ボーカルとパーカッションのトリオ。
 少々クラシックに寄せ気味のピアノに、低い音で静かにビートを刻むスルド。
 その上を踊るボイス。
 ウイスパー系、可憐系ではなく、ちょっと貫禄ある系の落ち着いたしっとり系の声、決して大きな声は出さないブラジル系特有の優しく穏やかな歌。
 サンバ系の伝統曲、スタンダード曲が並んでいるのだと思います。
 どこかで聞いたことがある、誰かが歌っていたメロディばかりなのだけども、思い出せない・・・
 もちろんサンバ特有の明るいようで切ないような、いわゆるサウダージ、郷愁感・・・
 そんな感じで普通の現代サンバ作品と思いきや、普通でないのは、ピアノの動きゆえ。
 この編成であれば、本来は器楽を背景にしてボーカルが踊るはずなのですが、踊り、跳ねまわり、突っ走るのはピアノ。
 スタートはクラシカルな上品なムード、ビートが乗ってくるとジャズなグルーヴが加わり、突っ走り、転げまわるような凄まじい動き。
 バラードでは一転、たっぷりとタメが効いた伸び縮みするビート。
 歌の後ろのオブリガードだけでも普通ではない感たっぷりなのですが、さらにインプロビゼーションのスペースもたっぷり。
 遠いところに飛んで行ってしまいそうになるピアノを大地に引き留めようとしているようなスルド。
 ボーカルさえもそんな役回りを演じているように聞こえます。
 初期~“Veredas” (2005-2008オムニバス)あたりまでのピアノには丸みを感じましたが、この頃は鋭さが際立ちます。
 そんなアグレッシブなピアノを暖かく見守るようなスルドとボイス。
 これしかないようなバランスなのかもしれません
 全体を眺めれば静かで穏やかで優しい音。
 優しく、かつプログレッシブな、とても素敵な現代サンバ。




posted by H.A.

【Disc Review】"Só" (2012) Antonio Loureiro

"Só" (2012) Antonio Loureiro
Antonio Loureiro (piano, vibraphone, rhodes, keyboards, drums, bass, vocal, etc.)
Andrés Beeuwsaert (piano, vocal) Rafael Martini (vocals, accordion) Santiago Segret (bandoneon) Daniel Santiago (guitar)
Federico Heliodoro (electric bass) Trigo Santana (contrabass)
Sérgio Krakowski (pandeiro) Tatiana Parra, Siba (vocal)
Alexandre Andrés (flutes) Thiago França (saxphone) Pedro Durães (programming) and others

ソー
アントニオ・ロウレイロ
SPACE SHOWER MUSIC
2012-11-28


 ブラジルのマルチインスルツメンタリスト?Antonio Loureiroのセカンド?アルバムに当たるのでしょう。
 前作“Antonio Loureiro” (2010)と同様に、さまざまな要素がフュージョンした新感覚のMPB(ブラジリアンポップス)。
 本作には縁が深いのであろうサンパウロ系筆頭?Andre Mehmariの参加はありませんが、Andrés BeeuwsaertTatiana Parraなどのいかにもな人脈の参加。
 本作もボーカルが全編でフィーチャーされますが、そのスペースが相対的に減少し、あくまで楽曲の中の一部のイメージ。
 決して分厚い音ではなく、あくまでナチュラルでアコースティックな質感ですが、変幻自在の構成、凝りに凝ったアレンジは前作と同様。
 フルート、サックス、ビブラフォン、他のインプロビゼーションでドカーンと盛り上がる場面もあり、インスツルメンタルミュージックの色合いが強くなったようにも感じます。
また、強めなビートの場面が増え、それはプログレシッブロックな面持ちだったり、アバンギャルドでアグレッシブな場面はフリージャズの面持ちだったりもします。
 もちろん中心は、漂うようなピアノ、瑞々しいガットギターが主導する、ブラジリアンコンテンポラリージャズの表情。
 いずれにしても一曲一曲がとてもドラマチック。
 全曲を占めるオリジナル曲は、フォルクローレ、ミナス的な色合いながらも意外な方向に飛んでいく不思議系なメロディに、複雑系のビート。
 次々とビートが変化し、ボイスを含めてさまざまな楽器が入れ代わり立ち代わり前面に出る、先の読めない展開、諸々合わせて、おもちゃ箱をひっくり返したような新しい感覚の音楽。
 クラシックの色合いが強くなったとも感じるこの頃のAndre Mehmari諸作に対して、この人の作品はロックの色合いも感じる元気系。
 ・・・と思っていたら、とても静かなピアノと、控えめな電子音、幻想的なコーラスが絡み合う演奏があってみたり、締めは哀愁系のサビのリフレインのサンバな流儀だったり・・・
 やはり変幻自在の新感覚な音楽。
 ま、カテゴライズしようとすること自体が野暮なのでしょうね。
 本作もクリエイティブ、かつわかりやすい新感覚のブラジリアンミュージックな一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro

“Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro
Antonio Loureiro (vibraphone, drums, piano, guitar, voice, etc.)
Rafael Martini (vocals, accordion, piano) Andre Mehmari (piano) Mateus Bahiense, Marcelo Pretto (brimbau, percussion, etc.) Cecilia Pacheco (harp)
Federico Heliodoro, Pablo Souza (bass) Daniela Ramos (table) Segio Krakowski (pandeiro)
Pedro Aristides (trombone) Mauricio Loureiro, Flavia Ferreirra, Diago Mala, Nivaldo Orsi, Luis Afonso “Montanha” (clarinette) Daniel Pantoja (flute) Felipe Jose (cello)
Sergio Perere, Fabiana Cozza, Leonora Weissmann, David Linx (voice) Pedro Durães (programming)

Antonio Loureiro
Antonio Loureiro
Ais
2006-07-31


 さまざまな楽器を操るブラジル人アーティストAntonio Loureiroのデビュー?アルバム。
 サンパウロ出身、スーパーピアニストAndre Mehmariとつながりが深いようで、近作ではDuoで"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro、“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiroではプロデュースを任せ、本作でも一曲客演しています。
 サンパウロ系といったカテゴリがあるようですが、サンバビートではなく、ブラジリアンネイティブ~南米各地のフォルクローレ、あるいはクラシック色も強いショーロ、さらにはミナス系の色合いも強い感じ。
 Andre Mehmari を中心?として、Tatiana ParraDani & Debora Gurgel親子、Mônica SalmasoLeonora Weissmann、アルゼンチンまで地域を広げればAndrés Beeuwsaert、さらにはCarlos_AguirreQuique Sinesiあたりまでもつながりそうな感じ。
 ボーカルが前面にフィーチャーされるMPB仕立てではあるのですが、ビートがボッサボッサしていないだけに、コンテンポラリージャズのボーカル作品のようにも聞こえます。
 リオデジャネイロ中心のサンバ、ボッサ系とは一味違う、南米フォルクローレやクラシックの色合いに、さらに現代的な感覚を加えた新しい音作り。
 冒頭から、Milton Nascimento的なような、そうでもないような、ピアノ、ホーン、ボイスが絡み合いながら、さまざまな表情に景色が移り変わっていくような複雑でダイナミックな音作り。
 さらにはギターとフルートが主導するバラード。
 こちらも同様にさまざまな楽器とコーラスが絡み合いながらのドラマチックな音の流れ。
 さらにはヒタヒタと迫ってくるようなビート感~疾走と浮遊が交錯する、一時期のPat Methney Groupを想起するような場面もあり、これまたドラマチックな演奏。
 あるいは、あくまでナチュラルなサウンドの中に電子音が鳴ったり、素朴なボーカルと優雅で幻想的なハープが絡んでみたりたり・・・
 などなど、いずれも凝ったアレンジ、構成の楽曲が並びます。
 要所に水の音などをSEに加えながら、何かしら自然の状況を描写、表現しようとしているのでしょう。
 そのあたりも現代フォルクローレ通じる空気感。
 全曲、リーダーのオリジナル、変幻自在なメロディと音作り。
 締めはAndre Mehmariを加えて、複雑なアレンジ、強烈なユニゾンが続く、クラシカルなムードのおもちゃ箱をひっくり返したような演奏。
 この頃のAndre Mehmariらしい音といえばその通り。
 あえてカテゴライズするとすればポップス、MPBになるのだと思いますが、そう位置付けてしまうにはあまりにも複雑で新しい、ブラジル発、とてもクリエイティブな音楽。
 もちろんそこはかとない郷愁感とわかりやすさはお土地柄。
 とてもカッコいいと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Encore” (2007) Arthur Verocai

“Encore” (2007) Arthur Verocai
Arthur Verocai (guitar)
Jose Roberto Bertrami, Itamar Assiere(Rhodes)Alex Pilkington (guitar) Alex Malheiros, Luiz Alves(bass)Ivan Conti(drums)Robertinho Silva(percussion)
Altair Martins (trumpet) Ze Carlos(baritone, tenor sax, flute)Ricardo Pontes (alto sax) Johnson de Almeida (trombone) Aulo Guimaraes (piccolo) Dirceu Leite (clarinet) Gabriel Gross (harmonica)
Marcio Lott, Tavito & Clarice Grova, Ronaldo Barcelos, Ivan Lins (vocal)
and strings

Encore [12 inch Analog]
Arthur Verocai
Far Out Recordings
2017-06-02


 ブラジルのベテランプロデューサー&シンガー・ソング・ライターArthur Verocaiの2007年作。
 1960年代から活躍している人、 Elis Regina、Ivan Linsなどのプロデューサーだったようですが、リーダー作品ではこれが三作目の超寡作家。
 とても素敵なAOR風ブラジリアンポップス、その他諸々。
 これぞレアグルーヴってな感じの楽曲が中心。
 ブラジリアンなフュージョンサウンドに、お洒落なホーン陣、ストリングスなども加わって豪華な音。
 柔らかなビートに、これでもかこれでもかと続くキャッチーで哀愁の漂うメロディ、洗練されたアレンジに洒落たコーラスとくると、もう一人のSergio Mendesってな感じの音。
 そんなオシャレな音、ボーカル入りのポップス仕立ての楽曲が目立ちますが、何曲かのインスツルメンタル曲はAntonio Carlos Jobim的な優雅な感じであったり、ジャズ的なインプロビゼーションの場面がたっぷりあったり。
 あるいは、ちょっと時代を感じるサイケな音作りがあったり、“Big Band Bossa Nova” (1962) Quincy Jones風のコミカルなジャズサンバなどもありますが、それもご愛敬。
 Azymuth が三曲、Ivan Linsや一曲に参加している楽曲も、いかにも彼らのサウンドで、いい感じの彩りになっています。
 ジャケットは1960年代のブルーノートかリバーサイドのジャズレコードのような顔立ちですが、中身は1970-80年代のブラジリアンフュージョン、ボーカル入り、あるいは、ブラジリアンAORってな感じ。
 レアグルーヴってのには、近年の作品にすぎるのかもしれないけども、そんな感じのちょっとだけノスタルジック、とても柔らかで心地よい音。
 ブラジル音楽に詳しい人にとっては当たり前な名作なのかもしれませんが、思い出したように南米音楽をチェックしてみる立場としては、こういう知らなかった名作がたくさんあるから、やめられまへん。


 

 posted by H.A.


【Disc Review】“Garra” (2015) Dani & Debora Gurgel Quarteto

“Garra” (2015) Dani & Debora Gurgel Quarteto
Dani Gurgel (vocal) Debora Gurgel (piano) Sidiel Vieira (bass) Thiago Rabello (drums)
Romero Lubambo (guitar)

GARRA
Dani & Debora Gurgel Quarteto
Rambling RECORD
2015-08-26


 ジャジーMPBのDani & Debora Gurgelバンドの第三作。
 “UM” (2013)はフルアコースティック、前作“LUZ” (2014)は一部でエレピ、エレキベースを導入しペースを変えていましたが、本作はギターがゲスト参加。
 もちろん全体の質感は変わらない、明るくファンキーなブラジアリアンコンテンポラリージャズ的ボーカルアルバムなのですが、少しずつ変化をつけようしているのかもしれません。
 いきなり怒涛のスキャットがフィーチャーされる曲の連発。
 作品が新しくなるにつれ、段々と跳びはね方に拍車がかかってきたと感じるのは気のせいでしょうか?
 これでもかこれでもかのスキャットと、それに寄り添い、一緒に突っ走るバンド。
 本作ではエレキベースが使われていないのが残念ですが、バンド全体が洗練されてきた感もあり、ブラジリアン・アコースティック・ファンク・ジャズに徹するのもいいのかもしれません。
 ドラムの音も、善し悪しはさておき、普通っぽくなったもんね。
 ギターが二曲にゲスト参加しているのもチェンジオブペース。
 いかにもショーロ~ボッサなブラジル音楽、その洗練されたモード。
 ブレークと切り返しがキッチリ作り込まれたアレンジに、グルーヴィーなビート、完璧な演奏、さらに洗練。
 そのうえで自在に踊るスキャット・・・
 ここまではあまり目立たなかった、しっとり系の楽曲もいくつか交えつつ、バンドサウンドとして完成しましたかね。
 演奏力、独特のバンドサウンドを備えた完璧なバンド。
 最後にさり気なく納められたEgberto_Gismontiナンバー”Loro”は、ドラムとスキャットの激しいインタープレーから、いかにもこのバンドな明るく元気なコンテンポラリージャズ。
 縦横無尽なスキャットを含めて強烈にテクニカルな演奏なのですが、Gismontiさんのある種の気難しさがなくなり、あっけらかんと明るい音。
 それがこの人、このバンドの最大の魅力なのでしょうね。たぶん。

 


posted by H.A.
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