吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Latin_Jazz

【Disc Review】“Já Tô Te Esperando” (2005) Edu Ribeiro

“Já Tô Te Esperando” (2005) Edu Ribeiro
Edu Ribeiro (drums)
Chico Pinheiro (guitar) Fábio Torres (piano) Thiago Espírio Santo, Paulo Paulelli (bass)
Toninho Ferragutti (accordeon) Daniel D'Alcântara (trumpet, Flugelhorn)



 ブラジリアンジャズ?のドラマーEdu Ribeiroのリーダー作。
 Chico PinheiroRosa Passosなど、ブラジル系のジャズ、フュージョン、MPBのアルバムでよく見かける人。
 その界隈ではファーストコールな人なのでしょう。
 本作はプロデューサーに現代最高?のブラジリアンジャズギタリストChico Pinheiroも名を連ね、いかにもそんな感じの現代的ブラジリアンジャズ。
 何曲かでエレキベース、エレピは入りますが、基本的にはアコースティックなジャズ。
 Chico Pinheiroが入ると都会的な色合い、クールなジャズ色が強くなるのだけども、もちろんブラジリアンジャズの独特のフワフワした感じは出ていて、心地いいバランス。
 ピアノトリオ+ギターを背景に、アコーディオンの柔らかい音がフワフワと漂い、キリッとしたトランペットとギターが全体を締める、そんな構成。
 ドラム、ギターはもちろんの事、ベースのグルーヴが凄いし、ピアノも、トランペットも、超一線級の演奏。
 さらに、これまた凄い演奏力のアコーディオンが、普通のジャズとは違う空気感を醸し出しています。
 もちろん普通のジャズフュージョンとして聞いても最高にカッコいい演奏だし、CD終盤に向けてドカーンと盛り上がっていく構成もお見事。
 全曲、リーダー、Chico Pinheiroのオリジナル曲。
 キリッとしたジャズ曲、エレキベースがうなるフュージョン曲、さらに南米エキゾチックな曲が交錯しつつ進む、元気いっぱいの演奏。
 アメリカ産のジャズ、フュージョンと比べると、なぜかしなやかで柔らかに感じるリズムと音の流れ。
 ノってくるとなぜかサンバに聞こえてしまうのは気のせいでしょうか?
 その要因はビート感なのか、コードの流れなのか、いまだによくわかりません。
 アメリカンなジャズ、フュージョンに食傷した時、でもヨーロッパ系や重かったり暗かったりする音、さらには直球な南米系もピンとこない時には、こんな感じのジャズが一番気持ちいいですかね。
 明るくて爽やかだしね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Traces” (2015) Camila Meza

“Traces” (2015) Camila Meza

Camila Meza (voice, electric & acoustic guitar)

Shai Maestro (piano, rhodes, wurlitzer, mellotron, pump organ, ampli-celeste) Matt Penman (bass) Kendrick Scott (drums) 

Bashiri Johnson (percussion) Jody Redhage (cello) Sachal Vasandani (voice)
 

Traces
Camila Meza
Sunnyside
2016-02-26


 チリのボーカル&ギタリストのジャジーポップス?、コンテンポラリージャズボーカル?。

 おそらくジャズ畑の人だと思うのですが、このアルバムはSSW(シンガー・ソング・ライター)なんて呼び方が今風でピッタリとくるのかもしれません。

 ガットギターで弾き語る女性はたくさんいるのでしょうが、この人の主力はエレキギター。

 それもクリーントーンのジャジーなギター。

 さらに柔らかいビート感と浮遊感のあるサウンドは、典型的なカッコいいブラジリアンフュージョンな音。

 ま、南米フュージョンの方が適当な形容なのでしょう。

 基本的にはピアノトリオとギターのカルテットに自身のボーカルが乗ってくる形なのですが、このピアノトリオが凄い。

 今をときめくニューヨークコンテンポラリージャズのファーストコールの面々。

 さりげなく軽やかなビートのようで、縦横無尽にスネアがパシパシ入るKendrick Scottのドラム、ちょっとした音がタダモノではない感十分のShai Maestroのピアノ。

 穏やかで上品、柔らかなグルーヴ。

 そんな音を背景にしたボーカルは透明度が高い可憐系。

 ジャズボーカルというよりもポップス然としてはいますが、ナチュラルな感じは多くの人に受けるタイプでしょう。

 ボーカルvsギターの配分は7:3ってところでしょうか。

 そんなバランスで忘れたころに登場する?エレキギターがカッコいい。

 艶のあるクリーントーンですが、Pat MethenyでもToninho Hortaでもなく、もっとジャズ寄り。

 が、ブルージー成分は少なくて、考え抜かれたと思われるメロディアスなフレージング。

 巧拙が気にならない個性的なギター。

 さらに、あのGeorge Benson風スキャットが並走します。

 これはカッコいい。

 楽曲はオリジナルに加えて、チリのスタンダード?にDjavanなどなど。

 これもポップス然としていますが、コンテンポラリージャズな感じがするのはバンドの演奏力ゆえでしょう。

 柔らかくて爽やかでノリがよくてポップなうえに、ハイレベルにジャジー。

 とにもかくにも気持ちいい音。

 今の季節にピッタリ。





 posted by H.A.

【Disc Review】“Infinite Love” (1993) Gil Goldstein / Romero Lubambo

“Infinite Love” (1993) Gil Goldstein / Romero Lubambo
Gil Goldstein (piano, accordion) Romero Lubambo (guitar)
Toninho Horta (rythum guitar, voice) Armando Marcal (percussion) Maucha Adnet (voice)
 

 
 ジャズ、フュージョン?のピアニストGil Goldstein、ブラジルのギタリストRomero Lubamboとの双頭ユニットでのブラジル音楽集。
 まるでゲスト参加したToninho Hortaの作品のよう、と書くと他の人から怒られそうですが、 そんな楽園ムードが漂うフラジリアンフュージョン。
 全曲に参加しているわけではないし、全体を眺めれば全く違うのですが、合間々で彼が声を出してしまうと、それだけでそれらしくなってしまうのですね。
 “My Foolish Heart”なんて聞き飽きたはずのメロディがフワフワと浮遊感が強い音に変わり、とても新鮮に響きます。
 さすがにリーダーがジャズ系アメリカ人なので、純ブラジル系のユニットと比べると、少々音の流れが硬い感じもするのですが、その分クールで洗練されている感じ。
 とても涼し気でさわやかな音。
 ジャズ的なインプロビゼーションの場面もたっぷり。
 Romero Lubamboのギターはスムース、何曲かでフィーチャーされるアコーディオンノスタルジックなムードでいい感じ。
 冒頭の“My Foolish Heart”、最後に収められたDori Caymmiナンバー”Amazon River”の流麗でセンチメンタルなピアノソロなんて最高。
 その他、オリジナル曲、Toninho Horta三曲など。
 アコースティックなブラジリアンフュージョン作品はあまたあれど、ジャズサイドから近づいたアルバムとしては最もいい感じの一作に入るかな?
 他にもっといいのあったかなあ?
 思い出しません、今は。




posted by H.A.


【Disc Review】“Latino / Aqui Se Puede” (1984) Airto Moreira

“Latino / Aqui Se Puede” (1984) Airto Moreira

Airto Moreira (Vocals, Percussion, Drums, Other)
Jorge Dalto (Electric Piano) Kei Akagi (Synthesizer, Keyboards) Oscar Castro Neves (Electric Piano, Guitar) Larry Nass (Guitar) Alphonso Johnson, Keith Jones (Bass) Tony Moreno (Drums)
Cachete Maldonado, Donald Alias, Frank Colon, Giovanni, Laudir De Oliveira (Percussion)
Joe Farrell (Flute) Raul De Souza (Trombone) Jeff Elliot (Trumpet, Flugelhorn)
Geni Da Silva (Lead Vocals) Rafael José, Tite Curet Alonzo (Backing Vocals) Flora Purim (Vocals)
 
Aqui Se Puede-Latino
Airto Moreira
Montuno
アイアート・モレイラ


 Airto Moreira、サイケなMPB全盛期、フュージョン全盛期を経て、落ち着いたラテンミュージックな一作。
 エレピ、歪んだギターの音はありますが、1970年代の熱は落ち、強烈なファンクも、サイケも、デジタルっぽさもなくなり、落ち着いた大人のムード。
 ブラジリアンビートにアメリカンテイスト混じり、洗練された色合いですが、AORってな感じでもなく、アコースティックな質感、ナチュラルなMPB~フュージョン。
 終始、肩に力が入らないゆったりとした音。
 ブラジルネイティブな音、ポップな音、穏やかなフュージョン、例によって幅のあるテイスト、いろんな音楽が交錯する構成。
 などなど、それぞれいい演奏が揃っているのですが、やはりブラジルナショナルサッカーチームの応援歌“Tombo”の再演に耳が行ってしまいます。
 “Fingers” (Apl.1973)でサイケなギター、エレピ、ワイルドな歌、少々ロックなバージョン、“I'm Fine. How Are You?” (1977)では洗練されたフュージョンなバージョンもありましたが、本作ではあくまでナチュラルなブラジリアンテイスト。
 パーカッション、アコースティック楽器中心に素直なサンバテイスト。
 クィーカーの音とともにゆったりとしたテンポ、いきなりサビのメロディからスタート。
 そのメロディもそこそこに、いきなりこれこそサンバな怒涛のパーカッションと奇声の饗宴開始。
 続くこと数分間。
 クラクラしてきたところで、最後に例の陶酔感を誘うサビのリフレイン。
 やはりブラジル音楽はこんな感じでないとね。
 ・・・などなど含めて、洗練とナチュラルさ、熱狂とクールネス、諸々の要素が混ざり合い、いい感じのバランス。
 これ、素晴らしいアルバムです。
 
 


posted by H.A.  

【Disc Review】“I'm Fine. How Are You?” (1977) Airto

“I'm Fine. How Are You?” (1977) Airto

Airto (Percussion, Vocals)
Hugo Fattoruso (Keyboards) Charles Johnson, Oscar Castro-Neves (Guitar)
Abraham Laboriel, Byron Miller, Jaco Pastorius (Bass)
Airto Moreira, Laudir de Oliveira, Manolo Badrena (Percussion)
Tom Scott (Flute, Sax) Raul de Souza (Trombone)
Flora Purim, Ruben Rada, Hugo Fattoruso (Vocals)
 
アイム・ファイン、ハウ・アー・ユー?
アイアート・モレイラ
ダブリューイーエー・ジャパン



 Airto Moreira、アメリカン&ブラジリアンなMPB作品。
 Flora Purimの“Nothing Will Be as It Was... Tomorrow” (1977)、“Everyday Everynight” (1978)に近い時期、それらにも近い音。
 この人のいつものいろんな色合いが混在するアルバム。
 もちろんパーカションが強め、サンバな曲もいくつか。
 ブラジリアン色も強いのですが、Tom Scottの印象も強く、ファンク混ざりの健全なフュージョンに、Alphonso Johnson 時代のWeather Report色も混ざったようなボーカル入り中心のアルバム、ってな感じ。
 チョッパーベースが唸り、楽し気な歌声とメローなサックスが絡み合う、元気いっぱいな曲からスタートし、ビリンボウとエレピが主導するAOR風の曲、都会的なサンバ、Flora Purimのサイケなスキャットが炸裂するメローな曲?などなど。
 ここでもブラジルナショナルサッカーチームの応援歌“Tombo”が“Celebration Suite”としてカバーされていて、パーカッションと嬌声の饗宴ですが、素直で都会的なスッキリしたサンバの“Tombo”。
 オリジナル?“Fingers” (Apl.1973)バージョンのざらざらしたような質感が無くなり、磨き上げられたような音作り。
 洗練されています。
 最後に収められたJaco Pastorius参加曲はフリーインプロビゼーションでしょう。
 幻想的なスローテンポでスタートし、妖し気なバーカッション、嬌声との共演。
 徐々にビートを上げますが、リズムに乗るのはわずかな時間。
 スペーシーで幻想的なベースの音で締め。
 1970年代初頭のような粗削りな雰囲気、妖しげなムードは無くなりましたが、いつもながらブラジル音楽のいろんな要素てんこ盛り。
 なんだかんだでいかにもなこの人の洗練されたフュージョン系MPB作品。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Fingers” (Apl.1973) Airto

“Fingers” (Apl.1973) Airto

Airto (Drums, Percussion, Vocals)
David Amaro (Guitars) Hugo Fattoruso (Harmonica, Keyboards, Vocals)
Ringo Thielmann (Bass, Vocals) Jorge Fattoruso (Drums, Vocals)
Flora Purim (Vocals)

Fingers (Cti Records 40th Anniversary Edition)
Airto
Masterworks
アイアート・モレイラ


 Airto Moreira、CTI作品第二弾。
 レギュラーメンバーなのかどうかはわかりませんが、ブラジリアンを集めたバンド。
 ちょっと派手目のブラジリアンMPB~フュージョン。
 これが当時の彼の自然体の音なのかもしれません。
 エレクトリックMilesのライブでよく響いていたクィーカーの音に導かれるちょっと重めのロック~ポップスから始まりますが、続くサンバ混じり、スキャットも交えたジャズフュージョンがカッコいいグルーヴ、疾走感。
 やはりサンバが似合います。
 その他、エレピが主導する穏やかなフュージョン、ビリンボウ?が響くエスニックな音、アメリカとブラジル混ざったようなメロディ、などなど、例によっていろんな要素、てんこ盛り。
 とかなんとかありますが、本作は何はともあれ、ブラジルナショナルサッカーチームの応援歌”Tombo in 7/4”。
 作者はもちろんAirto。
 カバーもたくさんあるし、本人の別バージョンもありますが、これが一番イケイケでそれっぽくて、よろしいのでは。
 ちょっとサイケなギターと荒っぽい歌、懐かしい感じのオルガン、美しいエレピの響き・・・
 ま、そのあたりは付け足しで、やはりこの曲は鳴り響くパーカッションと、サビのコーラスで決まりでしょう。
 明るいようで哀愁が漂うブラジリアンメロディとサンバのビート、陶酔感を誘うサビのリフレイン。
 心ならずも揺れ動く体。
 ブラジル音楽はこれでないとね。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Free” (Mar.Apl.1972) Airto

“Free” (Mar.Apl.1972) Airto

Airto Moreira (Percussion, Vocals, Wood Flute)
Chick Corea, Keith Jarrett, Nelson Ayres (Piano, Electric Piano) George Bensonm, Jay Berliner (Guitar)
Ron Carter (Bass) Stanley Clarke (Electric Bass)
Barnett Brown, Garnett Brown, Wayne Andre, Joe Wallace (Trombone) Mel Davis, Alan Rubin (Flugelhorn, Trumpe) Joe Farrell (Flute, Bass Flute, Piccolo, Burt Collins, Alto, Soprano Sax, Reeds) Hubert Laws (Flute)
Flora Purim (Vocals)
 
フリー
アイアート
キングレコード
2016-09-07


 Airto Moreira の豪華なメンバーでのフュージョン作品、レーベルはCTI。
 Flora Purim “Butterfly Dreams” (Dec.1973)などと並行して動く、ポストMilesバンドのメンバーの諸作の一作。 
 もう一枚の“Return to Forever” (Feb.1972)、というか、その1-2か月後、タイトル曲は同じメンバーでアレンジもほぼ同じ。
 Chick Corea, Keith Jarrettそれぞれ二曲ずつゲスト参加。
 わずか二分半ですが、George BensonとKeith Jarrettなんてレアな共演もあります。
 Keith Jarrett、Airto MoreiraともにちょうどMilesのバンドから脱退したところでしょう。
 全編ベースがStanley Clarkeだったらあの “Return to Forever” のグルーヴが出ていたかもしれませんが、一曲のみで、柔らかなビートのRon Carter中心です。
 楽曲もさまざま、Flora Purim を含めたオリジナルを中心に、Chic CoreaにKeith Jarrett、ブラジリアントラディショナル。
 CTIっぽい柔らかなホーンアンサンブルとKeith Jarrettのキレのあるソロが映える柔らかな演奏から、ビリンボウとネイティブな奇声が響くブラジリアンネイティブな音、Chic Coreaのピアノがカッコいいブラジリアンフュージョン、などなど幅のある音作り。
 “Return to Forever”が浮いている気がしないでもないですが・・・
 またKeith Jarrettの曲がカッコいい演奏になりそうなのに、さらにGeorge Bensonもいるのに短く終わるのが残念だなあ・・・
 などなど、“Return to Forever”というよりも、アメリカとブラジル、ジャズとブラジリアン音楽の間を行ったり来たりする、ファンクフュージョン。
 過渡期の一作。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Seeds on the Ground” (1971) Airto

“Seeds on the Ground” (1971) Airto 

Airto Moreira (Percussion Drums Vocals Berimbau)

Hermeto Pascoal (Keyboards, Piano Flute Bass Japanese Sapho) Severino De Oliveira (Organ) Sivuca (Accordion) Ron Carter (Bass, Cello)

Dom Um Romao (Percussion)

Severino De Oliveira (Viola) Flora Purim (Vocals)
 

Seeds on the Ground
Airto
One Way Records Inc
アイアート


 ブラジリアンパーカッションAirto Moreiraのなんとも不思議なブラジリアンフュージョン~MPB作品。

 ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davis あたりでMilesバンドを抜け、“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Corea、“Butterfly Dreams” (Dec.1973) Flora Purim に先行するアルバム。

 いかにもこの人の作品らしくいろんな色合いが混在していますが、”Live Evil”の一部にも参加していたHermeto Pascoalを中心として、Ron Carter、Airto Moreiraのピアノトリオ+ゲストといった印象が強い感じでしょうか。

 “Butterfly Dreams”でもカバーされる“Moon Dreams”などは、エレピの美しい音、柔らかなベースとドラムが出す穏やかながら疾走感の強いグルーヴ、Flora Purimの幻想的な歌~叫び声・・・などなど、さながら管楽器抜きの初期Return to Forever。

 もし、Ron CarterがReturn to Foreverに参加していたらこんな音だったのでしょう・・と想わせるような柔らかな音。

 “Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaはこの作品の一部が元ネタなのかも?と想わせる音。

 そんな曲が何曲か。

 それが多ければ、ジャズ、フュージョン系の人気作になっていたのかもしれませんが、半数以上はフォーク、ロック、ブラジリアンテイストが入り混じるブラジリアンポップス。

 Rio系の人ではないので、洗練されたボッサ、サンバテイストではなく、ビリンボウが響く素朴な色合い。

 ま、こちらがこの期のAirto Moreiraの音楽の色合いなのでしょう。

 Hermeto Pascoalは何でもできてしまう人のようで、もしMiles Davisバンドでの演奏が続いていたら、あるいはこのアルバムのバンドが続いていたら、それが初期Return to Forever的なバンドになっていたのかも・・・

 あるいは、後の“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoalを聞くと、Weather Reportにもなったかも・・・

 ・・・というのは妄想に過ぎませんが、凄いクリエーターであるのは間違いありません。

 このままこのバンドを続けてもよかったようにも思うのですが、Airto夫妻は“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaへ、さらにCTIと契約し“Free” (Mar.Apl.1972)へと続いていきます。

 Hermeto PascoalとAirto夫妻のコラボレーションも続き、私が知る限りでは、“Encounter” (1976、1977) Flora Purimで最良の形で結実したように思います。

 



posted by H.A.  


【Disc Review】“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoal

“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoal

Hermeto Pascoal (piano, keyboards, clavinet, melodica, soprano sax, flutes, guitar, vocals)
Ron Carter (acoustic bass) Alphonso Johnson (electric bass) Airto Moreira (drums, percussion, vocals) Chester Thompson (drums)
Raul de Souza (trombone, vocals) David Amaro (guitars) Flora Purim (vocals) Hugo Fattoruso, Laudir de Oliveira (vocals)

スレイヴス・マス+3 (BOM1120)
エルメート・パスコアル
ボンバ・レコード
2014-07-19


 ブラジルのピアニスト、マルチ楽器奏者~クリエーターHermeto Pascoalのブラジリアンフュージョン。
 元々、Airto Moreira が渡米しMilesバンド加入する直前まで同じバンドで活動していたようで、本作のプロデュースもAirto Moreira、Flora Purim夫妻。
 ジャズマニアから見ればあのごっついアルバム”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davisに数曲だけ参加して、場違いとも思える穏やかで柔らか、不思議なテイストを醸し出していた人。
 Miles Davisからすれば、Chick Coreaに変わってKeith Jarrettとツインキーボードができて曲が書けるヤツを連れてこい、とAirtoに頼んだのでしょうかね?
 あるいは、Flora Purim “Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、“Encounter” (1976、1977)の音作りの中心人物のひとり、といったイメージでしょうか。
 それらのアルバムでは、ハードなGeorge Duke主体と思われる曲に対して、柔らかな音楽、特にアルバム全体がHermeto Pascoal が音作りの中心と思われる“Encounter” (1976、1977)は隠れた大名作。
 本作もFlora Purim諸作と同時期、同じようなジャズ系、Weather Report系のメンバー、ブラジル人メンバーを集めたブラジリアンフュージョン。
 ブラジル東北部の人のようで、ボッサ、サンバっぽさはありませんが、ブラジリアン特有の柔らかさの漂う音。
 少々の毒気、サイケっぽさは感じないでもないですが、とてもしなやかなブラジアリアンフュージョン。
 エレピが主導する柔らかで最高に心地よいブラジリアングルーヴと柔らかなメロディを中心に、ブラジルの山奥っぽい音、フォークロックっぽい曲、Weather Report的、あるいは“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis的ジャズファンクから混沌~激烈なインプロビゼーション、さらにはEgberto Gismontiっぽい曲、ピアノソロ、などなど、1970年代のブラジルてんこ盛り。
 いろいろ混ざっていることもあり、ちょっと聞きでは違和感があるかもしれませんが、構成に慣れてしまえば、いろんなところから素敵な演奏が飛び出してくる面白い作品。
 LPレコードでは最後の曲、”Cherry Jam”などWeather Report、あるいは初期Return to Foreverの香りが漂う最高にカッコいい演奏。
 さらにそれに続く、CDのボーナステイクの長尺の演奏がちょっとびっくり、強烈な疾走感と柔らかなグルーヴが合体した最高の演奏。
 ファンキーかつ疾走感のあるグルーヴと哀愁が漂うメロディと強烈なインプロビゼーションの連続。
 Weather Reportに匹敵するようなカッコよさ。
 超絶なリズム隊なゆえになせる業なのでしょう。
 心地よさ最高。
 とても怖いジャケットですが、中身、特に終盤は最高です。


 

posted by H.A.  


【Disc Review】“A Música Livre de Hermeto Pascoal” (1973) Hermeto Pascoal

“A Música Livre de Hermeto Pascoal” (1973) Hermeto Pascoal

Hermeto Pascoal (electric piano, flute, soprano sax, voice, sapho, percussion, etc.)
Mazinho (alto, tenor sax) Hamleto, Bola (flute, tenor sax)
Nenê (drums, piano) Alberto (bass) Anunciação (percussion, drums)
and Strings, Orchestra, others

ア・ムジカ・リーヴリ・ジ・エルメート・パスコアール
エルメート・パスコアール
ユニバーサル ミュージック
2015-06-10


 ブラジルのピアニスト、マルチ楽器奏者~クリエーターHermeto Pascoalのブラジリアンフュージョン、フラジリアンジャズ、あるいは、インスツルメンタルMPB。
 ビジュアルからは想像できない、とても優しいメロディ。
 Egberto Gismontiの音楽から気難しさを取り除いたといったムードでしょうか。
 ”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davisでも激烈なライブの間に挟まれる、場違いなほど優し気で幻想的な楽曲、演奏を提供していましたが、そんなサウンド。
 ブラジル北東部の出身、サンバ、ボッサの色合いは薄くて、Forroあたりの色合いが一番強いのでしょうかね?
 諸々の要素が入り混じっている感じですが、ブラジル独特の郷愁感が流れるメロディ群。
 Egberto Gismonti的な名曲”Bebe”からスタート。
 ピアノ、フルートとストリングスの柔らかな音が絡み合う優しいアンサンブル。
 とても優雅なメロディとアンサンブルが続きます。
 サックス、フルートを中心としたインプロビゼーションもなかなかカッコいいよくて、とても素敵なブラジリアンジャズの場面もしばしば。
 時にはクラシカルなほど優雅な音、が、突然グシャグシャと崩れ、また何事もなかったような優雅な音に戻るような不思議なアレンジ。
 あるいは端正なジャズビッグバンドかと思っていると、動物の鳴き声が錯綜するわ、とても上手とは言えないボーカルがのってくるわ、囁きやざわめきが・・・
 アバンギャルド、あるいはサイケと言えばそうかもしれませんが、感情むき出しで激烈に、とかいった感じは全くなく、あくまでクール。
 それらの微妙なバランス、アンバランスがこの人の真骨頂であり、人気の秘訣なのでしょうかね。


 

posted by H.A.  


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