吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Lars_Danielsson

【Disc Review】“Summerwind” (2018) Lars Danielsson & Paolo Fresu

“Summerwind” (2018) Lars Danielsson & Paolo Fresu 

Lars Danielsson (bass, cello) Paolo Fresu (trumpet, flugelhorn)

Summerwind
Paolo Fresu
Act
2018-09-28


 スウェーデンのベーシストとイタリアのトランペッター、大御所二名のDuo作品。
 下の方でうごめくベースあるいはチェロと、ゆったりと漂うようなクールなトランペット。
 冒頭、あの”枯葉”が別のモノのように響きます。
 二人のオリジナル曲を中心に、いくつかのヨーロピアンメロディ。
 Lars Danielssonのあの激甘メロディは抑制され、淡い色合いの漂うような音の流れ。
 内省的で沈んだ空気感。
 躍動するベースと、ゆったりしたトランペットの感傷的な音。
 今にも静止しそうなほどに漂いながら、ときに強烈に加速しながら、静かな時間は進んでいきます。
 各曲短い演奏、三分に満たない楽曲も散りばめられ、次々と切り替わっていく淡い景色。
 遠い過去を眺めているようにも聞こえるし、何気ない日常のクールダウンのようにも聞こえます。
 クールな佇まい、静かでスタイリッシュ、淡い色合い、沈んだ空気感。
 やはりメロディアス。
 日常の喧騒から離れ、夢うつつな時間が流れていくような心地よさ。
 そんな名人芸。




posted by H.A.



【Disc Review】“Liberetto III” (2017) Lars Danielsson

“Liberetto III” (2017) Lars Danielsson
Lars Danielsson (double bass, cello, piano, wah-wah cello, guembri)
Grégory Privat (piano) John Parricelli (guitars) Magnus Öström (drums, percussion)
Arve Henriksen (trumpet, voice) Mathias Eick (trumpet) Björn Bohlin (english horn, oboe d'amore) Dominic Miller (acoustic guitar) Hussam Aliwat (oud)

LIBERETTO III
V/A
ACT
2017-05-26


 北欧ジャズの大御所Lars DanielssonのLiberettoシリーズ第三弾。
 “Liberetto” (2012)、“Liberetto II” (2014) と変わらない、哀愁短編小説集のような、悲し気でメロディアス、ドラマチックな楽曲。上品、上質なヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 今回のピアニストはカリブのGrégory Privat
 この人のバンドのピアニスト、古くはBobo Stenson、その他以下などの強烈な面々。
  “Libera Me” (2004) Carsten Dahl
  “Pasodoble” (2006,2007), “Tarantella” (2009) Leszek Mozdzer
  “Liberetto” (2012)、“Liberetto II” (2014) Tigran Hamasyan
 よくもまあ、私的な好みの人ばかり連れてくるというか、何と申しましょうか。
 凄まじいテクニック、疾走感もさることながら、それぞれ個性は違えど、Larsさんの頭の中で鳴っている少々沈痛気味の哀愁のメロディに合いそうな人をチョイスしているんでしょうね。たぶん。
 であれば、私の好みに合うのは偶然ではなく必然なのでしょう。たぶん。
 上記の三人のピアニストに比べて、強烈な個性は譲りますが、その分、上品でスッキリした感じ。
 自身のリーダー作“Ki Koté”(2011)、“Tales of Cyparis” (2013)などでは、強烈な疾走感に加えて、カリブ~南米系特有の浮遊感が加わる素晴らしい演奏でしたが、本作でも要所で軽快に突っ走っています。
 さておき、本作も全編哀愁が漂う切ないメロディに圧倒的なバンドの演奏力。
 ピアノトリオ+ギターをベースとして、曲ごとにホーン他のゲストが入る構成。
 ゲストはこの人のアルバムではお馴染みの寂寥感の塊のような音のノルウェー人トランペッター二人に、その他エキゾチック系の楽器などなどなど。
 楽曲ごとに前面にフィーチャーされる人が変わっていきますが、美メロ、美コードをベースに長尺にインプロビゼーションする・・・というよりは、凝った構成とアンサンブルが中心になってきた感じでしょうか?
 クラシック系、アラブ系、スペイン系、ディストーションが効いたギターがうなるロック、ボッサのバラード、いかにもなヨーロピアンピアノジャズ前向き系、沈痛系、尺八のような響きのトランペットの寂寥系、疾走系・・・その他諸々。
 諸々のテイストが混在しているのですが、ここまでの諸作に比べて、全体の演奏がカッチリ、スッキリしている分、また、インプロビゼーションが前面に出る場面が少なく感じられる分、ポップに聞こえるかもしれません。
 そのあたりで好みがわかれるのかな?
 いずれにしてもメロディはあの昭和的?な哀感が漂うLars Danielssonワールド。
  北欧哀愁短編小説ジャズは健在です。





 Lars Danielson諸作、私が知る限り。
 他にもたくさんの参加作品があるのでしょう。
 現在のACTのシリーズとその前の作品の間で期間が空いています。
 オリジナル曲の作風がその間で変わっているのが面白いところ。
 くどいまでの美メロはそれまでの親分Lars Janssonの影響が強かったりするのかな?
 いずれにしても現代の北欧ジャズの親分、その最右翼の一人、ですかね。

Time Unit” (1984)
"New Hands" (1986)
"Tiá Diá" (1987) with Alex Acuña
  "The Eternal Now" (1987) Lars Jansson
"Nightlight" (1990) with Alex Acuña
"Poems" (1991)
  "A Window Towards Being" (1991) Lars Jansson
"Fresh Enough" (1992)
"Far North" (1994)
"Continuation" (1994)
"European Voices" (1995)
  "Invisible Friends” (1995) Lars Jansson
  ”The Time We Have” (1996) Lars Jansson
  "Our Standards" (1996) Joey Calderazzo
"Origo" (1997)
"Live At Visiones" (1997)
  ”Hope” (1999) Lars Jansson
  "Witnessing" (2002) Lars Jansson

Libera Me” (2004)
The Time” (2005) Leszek Mozdzer, Lars Danielson, Zohar Fresco
“Live” (2005,2006) Możdżer, Danielsson, Fresco
Melange Bleu” (2006) Lars Danielsson
Salzau Music On The Water” (2006) Danielsson, Dell , Landgren
Between Us & The Light” (2006) Możdżer, Danielsson, Fresco
  "Notes From The Heart" (2006) Ulf Wakenius
Pasodoble” (2006,2007)
  "Love Is Real" (2008) Ulf Wakenius
  "Voyage" (2008) Youn Sun Nah
Tarantella” (2009)
  "Same Girl" (2010) Youn Sun Nah
  "Arabesque" (2011) ‎with Cæcilie Norby
  "Vagabond" (2012) Ulf Wakenius
Liberetto” (2012)
  "Lento" (2012) Youn Sun Nah
Polska” (2013) Możdżer, Danielsson, Fresco
Liberetto II” (2014)
  "Just The Two Of Us" (2015) ‎with Cæcilie Norby  
Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer
  "Sun Blowing" (2016) with Marius Neset, Morten Lund
Liberetto III” (2017)

posted by H.A.

【Disc Review】“Melange Bleu” (2006) Lars Danielsson

“Melange Bleu” (2006) Lars Danielsson
Lars Danielsson (cello, acoustic bass, Fender bass, piano, Fender Rhodes)
Bugge Wesseltoft (piano) Eivind Aarset (guitar) Gustaf Ljunggren (steel guitar, syntheziser) Jon Christensen (drums, percussion) Anders Engen (drums)
Jan Bang (samples, livesampling) Pål ''Strangefruit'' Nyhus (vinyl channeling) Vytas & Mario Basanov (beats & samples) Xavier Desandre Navarre (percussion)
Nils Petter Molvaer (trumpet) Cæcilie Norby (voices)
Copenhagen Concert Orchestra

Melange Bleu
Lars Danielsson
Act
2006-10-24


 Lars Danielsson の静かでクールなフューチャージャズ的作品。
 メンバーには“Libera Me” (2004)にも参加していたノルウェーのNils Petter Molvaer人脈の面々の名前。
 Nils Petter Molvaerの諸作ほど暗くて激しい場面があるわけはありませんが、いかにもそれらしいビート、展開もしばしば。
 が、全体の音の流れはあくまで静謐です。
 Bugge Wesseltoftの色合いが最も強く出ているのかもしれませんが、いずれにしてもノルウェー系のクリエイティブ系ジャズ、あるいはラウンジ系ミュージックの色合い。
 そんな電子音を含めたクールで淡々とした色合いと、Lars Danielssonの昭和的?哀愁ジャズのフュージョンミュージック。
 悲し気なメロディとクールで電子的なビートを背景にして、寂寥感の塊のようなトランペットやら、美しいピアノやら、チェロやら・・・
 私が知る限りのLars Danielsson諸作ではほとんどなかった無機質な感じが強く、とてもクール。
 ちょっと聞いただけでは彼の作品とは思わないかもしれません。
 ひんやりとした質感と淡々と進むリズム、少々のデジタル臭~人工感。
 彼の作品としては異色で、ジャズ的な色合いも薄いのですが、とても心地よい音。
 ジャズジャズした他の作品よりもポップに聞こえるかもしれません。
 この作品のピアノはノルウェーのBugge Wesseltoft
 近作の若手ピアニストのように突っ走ることはありませんが、電気楽器の使い方を含めて、とてもクールでかつ悲し気な表情。
 Lars Danielssonバンドのピアニスト、古くはスウェーデンの大御所Bobo Stenson、先の“Libera Me” (2004) ではデンマークのCarsten Dahl
 さらに本作と並行して、あるいはこの後、ポーランドのLeszek Możdżerとのコラボレーション“The Time” (2005)、“Between Us & The Light” (2006)、”Pasodoble” (2006,2007)、“Tarantella” (2009)・・・・ ‎が始まり、次いでアルメニアのTigran Hamasyanを迎えて“Liberetto” (2012)、“Liberetto II” (2014)、最近作の“Liberetto III” (2017)ではフランス領カリブ系のGrégory Privatと、凄いピアニストが並びます。
 どの人もスーパーピアニスト、本作含めて、どれも名作です。




posted by H.A.


Disc Review】“Live at Visiones” (1997) Lars Danielsson

“Live at Visiones” (1997) Lars Danielsson
Lars Danielsson (bass, synthesizer, piano)
Bobo Stenson (piano) Jon Christensen (drums)
David Liebman (soprano saxophone)

Live at Visiones
Lars Danielsson
Imports
2010-01-05


 Lars Danielsson、若手~中堅時代のコンテンポラリージャズ作品、ライブ録音。
 少々妖しげ、ヨーロピアンなコンテンポラリージャズ。
 Bobo StensonDave Liebman、Jon Christensenといったビッグネームと組んだこの期のレギュラーバンドでの最終作。
 このステージでもDave Liebmanと楽曲を分け合い、このバンドの集大成的な位置づけでもあるのだとは思います。
 フロントに立つのはソプラノサックスですが、全体の音を支配しているのは、カミソリのように鋭く繊細で美しいBobo Stensonのピアノのようにも感じます。
 サックスが抜けてピアノトリオになった場面はもちろん、さり気ないバッキングでもタダモノではない音の流れ。
 Bobo Stenson はECMに復帰して制作を続けている時期で、近作は“War Orphans” (1997)あたり。
 独特のクールな緊張感が全編に漂います。
 各曲がコンパクトにまとめられていたスタジオ録音作品ではあまり感じなかった少々重めの質感、あるいは、John Coltraneのムードが漂うのは、モーダルな演奏に加えて、その時代を経たミュージシャンならではの空気感でしょうか。
 Lars Danielssonはこの後ACTに移籍。
 若手メンバーを集めつつ、作品のムーどは大きく変わって、“Libera Me” (2004)を始めとする沈痛なまでに悲し気でメロディアスな作品を連発。
 そこに至るまでの、ミステリアスなヨーロピアンジャズのLars Danielsson。
 20世紀も最終局面、21世紀との狭間、そんな音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Poems” (1991) Lars Danielsson

“Poems” (1991) Lars Danielsson
Lars Danielsson (bass)
Bobo Stenson (piano) Jon Christensen (drums)
David Liebman (soprano saxophone)

Poems
Dragon Records
2017-03-31


 Lars Danielsson、若手~中堅時代のコンテンポラリージャズ作品。
 この前、“Time Unit” (1984)のようなフュージョン的な作品もいくつかあるようですが、このバンドではあくまでアコースティックなヨーロピアンなコンテンポラリージャズ。
 この期のパートナーはBobo Stenson、さらにDave Liebman
 ドラムのJon Christensenを含めてスーパーな人たち、ECMな人たちによるいかにもそれらしい音。
 リーダー自身はなぜかECMとほとんど縁がない人なのですが・・・
 アメリカンのDave Liebmanもソプラノサックスに徹してヨーロッパっぽいムードが漂っています。
 後の激甘なメロディはまだなく、半数がDave Liebmanの楽曲。
 オーソドックスかどうかはさておき、近作などと比べてジャズの香りが強いのは、そのせいもあるのでしょう。
 “Shimri” (1976) Arild Andersen、“Silent Feet” (1977) Eberhard Weber、“Motility” (1977) Steve Kuhnあたり、ECM1970年代ヨーロピアンジャズフュージョン諸作に近いムード。
 少々悲し気な面持ちの楽曲と、しなやかなグルーヴ、透明度の高いクラシック色も強いピアノとソプラノのサックスの組み合わせ。
 フリーな演奏、実験的な作品もシレっとできてしまいそうな面々ですが、冒険がない分、安心して聞けます。
 いかにもなヨーロピアンジャズ、アバンギャルドではない、上品な系。
 このスーパーなメンツ、もちろん名演です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer & Friends

“Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer & Friends
Leszek Możdżer (piano)
Lars Danielsson (bass & cello) Zohar Fresco (percussion)
Atom String Quartet :
Dawid Lubowicz (violin) Mateusz Smoczyński (violin) Michał Zaborski (viola) Krzysztof Lenczowski (cello)
 
レシェック モジジェル

 ヨーロッパのスーパーピアノトリオ、ストリングスをゲストに迎えたライブアルバム。
 “The Time”(2005)、“Between Us & The Light”(2006)、“Polska” (2013)といった一連のトリオ作品の延長線、楽曲もその他の作品からチョイスが中心。
 が、ライブという事もあるのでしょう、それらの淡い色合いと比べると、強烈なインプロビゼーションが前面に出る場面が多いと思います。
 やっと弾いてくれたか、と思う一方、Zohar Frescoのボイスが出る場面はなく、彼が主導していたと思われるエスニックで幻想的な空気感は抑え気味。 
 Leszek Możdżerの楽曲、クラシック色の強い演奏が多く、クレジット通り、トリオというよりも彼の色合いが最も強い作品。
 クラッシック~現代音楽?ベースのとんがった激しいピアノソロから始まり、Lars Danielssonの哀愁曲、ストリングスを交えた優し気で妖し気な演奏、などなど、Leszek MożdżerLars Danielssonのショーケースのような演奏が並びます。
 とてつもなく透明度が高く美しいピアノのピキピキパキパキした音と、間々に挟まれるLars Danielssonの郷愁感、哀愁感の塊のようなメロディ。
 コンサートのメインはストリングスを交えた優雅ながらテンションが高い演奏なのかもしれませんが、ついついそちらに耳が行ってしまいます。
 Lars Danielsson曲で取り上げられているのは、何処かのアルバムに入っていたいずれも大名曲の”Praying”、”Africa”、”Eden”。
 美しいメロディとコードを背景にして突っ走り飛び回るピアノ。
 氷のように鋭く冷たく、この世のものとは思えないような美しい音、指に加速装置がついているとしか思えないような疾走感を含めて、人間業とは思えない演奏。 
 そのぶっ飛んだピアノと、ベタベタなメロディ、上品なグルーヴの対比がこのバンド、数多くの作品を制作しているこのコンビのカッコよさなのでしょう。
 美しくて上品、かつ、とんがった妖しい音、さらにセンチメンタル。
 “Liberetto” (2012)などのTigran HamasyanLars Danielssonのコンピネーションも素晴らしいのですが、Leszek Możdżerとの組み合わせの方がより繊細な感じがする分、私的には好み。
 Leszek Możdżer、あるいはこのトリオ、このアルバムあたりを集大成として、そろそろ次に行こうとしているのかもしれませんが・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Polska” (2013) Możdżer, Danielsson, Fresco

“Polska” (2013) Możdżer, Danielsson, Fresco
Leszek Możdżer (piano, celesta, vibraphone, synth) Lars Danielsson (cello, bass) Zohar Fresco (percussion, vocal) and Orchestra

Polska
Leszek Mozdzer
ACT
2013-12-25
レシェック モジジェル
 
 ヨーロッパのスーパーピアノトリオ、“The Time”(2005)、“Between Us & The Light” (2006)に続く第三作。
 間にライブ作品“Live” (2005,2006)もありますが、かなり間を空けての作品のようです(?)。
 前の作品まではポーランドのレーベルからでしたが、本作はドイツのACT。
 ACTでこのトリオでは初めてですが、“Tarantella”(2009) Lars Danielsson、“Komeda”(2011)Leszek Mozdzer、"The Last Set" (2012) Walter Norris & Leszek Mozdzerなど、さまざまな作品をACTで制作しています。
 レーベルは変わりましたが、トリオの色合いは変わりません。
 穏やかで美しい、でもちょっと不思議系のヨーロピアンジャズ。
 Leszek Mozdzerの作品よりも穏やかなことはもちろん、Lars Danielsson諸作よりも穏やかでしょう。
 録音の感じは、少し丸くなったイメージでエコーもたっぷり。
 あのカミソリのようなピアノが少々マイルド、とても心地よい音。 
 相変わらずLeszek Mozdzerのクラシックの香りとアグレッシブさ、Zohar Frescoのエキゾチシズムと寂寥感、郷愁感、Lars Danielssonのセンチメンタリズムが交錯する音。
 本作は冒頭から敬虔なムードが漂う音。
 この色合いはLeszek Mozdzer、Lars Danielsson諸作にはあまり無かったかな?
 近年ECMあたりではGeorges I. GurdjieffやJalaluddin Rumiあたりの宗教系、教会系、精神性系がプチブーム?な感もありますが、そんな空気が漂います。
 澄み切ったとてつもなく美しいピアノが静かに流れ、Zohar Frescoのボイスが乗ってくるとさらに幻想的なムード。
 どこか遠い所に連れて行ってくれそうな音。
 そんな色合いは冒頭のみのようで、中盤までいつものLeszek Mozdzer、Zohar Frescoの淡い色合い、寂し気で不思議なムードぼ演奏が続きます。
 が、中盤、Lars Danielssonの曲になると一気にメロディアスで浮世に戻った感。
 本作でも二曲のみですが、さすが北欧哀愁小説的音楽の巨匠。
 いつもセンチメンタルでロマンチック、少々沈痛。
 ジャズにはこだわりがなさそうでシレっとどこかに飛んで行ってしまいそうな若手の二人を現実に引き戻す役回り・・・かどうかはわかりませんが、そんなとても素敵なバランス。
 冷たいピアノと暖かいパーカッションとメロディアスなベーシスト。
 これまた素敵なバランス。
 Leszek Mozdzer、普通にヨーロピアンジャズが聞きたければLars Danielssonの作品、ぶっ飛んだピアノが聞きたければリーダー作、ちょっと淡くて妖しげなのを聞きたければ本トリオ。
 ジャズジャズしていないところ、エキゾチシズムと淡々とした独特のクールネスが新しい感じなのだと思うし、普通のジャズピアノトリオには食傷気味の耳にはとても心地よいバランス。
 最後は一曲のみオーケストラ入りの“Are you Experienced?”。
 もちろんJimi Hendrix。
 妖しさ全開、かつクラシカルで高尚な演奏。
 なんだか凄い人たち。




posted by H.A.


【Disc Review】“Between Us & The Light” (2006) Możdżer, Danielsson, Fresco

“Between Us & The Light” (2006) Możdżer, Danielsson, Fresco
Leszek Możdżer (piano, keyboards) Lars Danielsson (cello, bass) Zohar Fresco (percussion, vocal)
 
Between Us & The Light
Mozdzer Danielsson Fresco
Imports
2015-10-23
レシェック モジジェル

 ヨーロッパのスーパーピアノトリオ、“The Time”(2005)に続く第二弾、になるのだと思います。
 本作も淡くて穏やか、静謐なコンテンポラリージャズ。
 切ないメロディの楽曲群、少々の妖しさ、インプロビゼーションというよりもアンサンブルを中心にしたこのトリオの色合い。
 ドラムではなく、パーカッションなことが、なんともいえない淡い感じを醸し出しているように思います。
 冒頭からとても悲し気なLeszek Możdżerのメロディ。
 Leszek Możdżerはもちろん、 Lars Danielssonにもたっぷりのソロスペースがあるのですが、激しくは弾きません。
 静かな音の流れの中で響くパーカッションの乾いた音が寂寥感を醸し出します。
 もちろん強烈なインプロビゼーションの場面もあるのですが、各人のリーダー作ほどではなく、バンドが一体となったサウンドを重視しているように聞こえます。
 “The Time”(2005)と同様にLeszek Możdżer、Zohar Frescoの曲が多く、Lars Danielssonは二曲のみ。
 北欧の親分Lars Danielssonのメロディは甘くてとても素敵なのですが、若手二名の現代的なクールな質感、そこはかとないエキゾチシズムが強い構成。
 時折のZohar Frescoの幻想的なボイスがいい感じのアクセントになっているのも“The Time”(2005)と同様。
 透明度が高くとても美しいLeszek Możdżerピアノは、刃物のように周囲を切り裂いていくイメージのリーダー諸作とは違って、空からキラキラと舞い降りてくる感じ、あるいは穏やかに周囲を舞っている感じ。
 さらにLars Danielssonの落ち着いたベース。
 全曲とても切なげで悲し気なメロディですが、なぜか湿っぽさ、悲壮感はありません。
 クールで穏やかな寂寥感。
 前作“The Time”(2005)を最初に聞いた際、もっと弾いて欲しいと思ったのですが、実はこのくらい弾かないのがいいのかもしれません。
 どこか懐かしい穏やかな世界に連れて行ってくれるトリップミュージック。
 やはり特別な人たちによる特別なバンド、とても素敵なアルバムです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Pasodoble” (2006,2007) Lars Danielsson & Leszek Możdżer ‎

“Pasodoble” (2006,2007) Lars Danielsson & Leszek Możdżer
Lars Danielsson (Bass, Cello ) Leszek Możdżer (Piano, Celesta, Harmonium)

ラーシュ ダニエルソン
レシェック モジジェル


 親分Lars DanielssonとLeszek Możdżerのデュオ作品。
 ジャズっぽいLeszek Możdżerを聞くとなるとこれが一番いいのかな?
 Larsさんの激甘哀愁曲、Leszek Możdżerのオリジナルを中心に素直な演奏。
 ガンガンゴンゴン、ピキピキパキパキ・・・、ってな感じではないですが、やはり切れ味は抜群。
 ソロ作品ではぶっ飛び気味、共同名義トリオ作品では抑制気味、その中間あたりのLeszek Możdżerの素晴らしいピアノを存分に。
 でもこのアルバムで凄いのはベーシストLars Danielsson。
 いつになく弾きまくり。バックでのカウンターは凄いし、アップテンポでのソロなど鬼気迫るような凄まじさ。
 ともすれば控えめだったバンドやトリオでのベースは、サウンド作りに徹していたからなのでしょうかね。
 Leszek Możdżerを聞こうと思っていても、Lars Danielssonに惹かれる場面が多々。
 やっぱ親分の凄みは一味違うわ。
 もちろん寂寥感あふれる北欧~東欧ジャズとして、素晴らしい作品です。


 


posted by H.A.

【Disc Review】“The Time”(2005)Leszek Mozdzer, Lars Danielson, Zohar Fresco

“The Time”(2005)Leszek Mozdzer, Lars Danielson, Zohar Fresco
Leszek Mozdzer (piano) Lars Danielsson (bass, cello) Zohar Fresco (perc.)

The Time
Leszek Mozdzer
Imports
2015-10-23
レシェック モジジェル
ラーシュ ダニエルソン


 ポーランドのピアニストLeszek MozdzerとスウェーデンのベーシストLars Danielsson、イスラエルのパーカッショニストZohar Frescoによるピアノトリオ。
 Leszek Mozdzerは強烈なスピード感、この上もなく鋭いタッチ、美しい音を出す稀代のスタイリスト。
 とてつもなくいいピアノなのだけれども、リーダー作はクラシック色が強かったり、インプロビゼーションのスペースが抑え目だったり。Jazzファンとしてはエキサイティングなインプロビゼーションも聞きたいところ。
 そこでピアノが前面に出たインプロビゼーションを期待しつつ、このトリオ。
 極度な透明感、この世のものとは思えないような美しさ、そして鋭いピアノの音、乾いた音色のパーカッション、これは来たかも?
 ところが一筋縄ではいきません。
 順にソロを回すオーソドックスなジャズのスタイルではなく、アンサンブル中心。
 Lars Danielssonの激甘系の曲で、長尺のピアノソロが展開されるとものすごくカッコよさそうなのだけども、残念ながらピアノのソロスペースは少なめ。
 さておき、上品で落ち着いた質感、佳曲満載。
 ヨーロッパ的な美しさ、もの悲しさ、ほの暗さ、妖しさがうまくブレンドされている素晴らしい音楽であることは確か。
 寂寥感、哀愁感が漂う楽曲、一つ一つが物語のような質感。
 Leszek Mozdzer,Zohar Frescoの曲の少しエキゾチックで妖しげなムード、そしてLars Danielsonの甘いメロディ。
 アルバム全体が何かのドラマ。
 これもLars Danielsonの諸作と同様「哀愁小説ジャズ」ですねえ。
 普通のモダンジャズとはひと味もふた味も違う、素敵なピアノトリオ。
 超絶なインプロビゼーションへの期待は抑えて、最高に美しいピアノ、最高のアンサンブル、癒される音楽を聴きましょうかね。


  



posted by H.A.
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