吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Kurt_Rosenwinkel

【Disc Review】“Angels Around” (2020) Kurt Rosenwinkel

“Angels Around” (2020) Kurt Rosenwinkel

Kurt Rosenwinkel (guitar) 
Dario Deidda (bass) Greg Hutchinson (drum)

ANGELS AROUND
KURT ROSENWINKEL TRIO
HEARTCORE RECORDS/MOCLOUD
2020-04-15


 Kurt Rosenwinkel、トリオでのジャズ。
 たっぷりのジャズスタンダード曲からの選曲からして、“Intuit” (1998)、“Reflections” (Jun.2009)あたりと同じく、オーソドックスなジャズ路線かと思いきや、さにあらず。
 徹底的に攻めたジャズ。
 近作“Searching The Continuum” (2019)と比べれば、十分にオーソドックスで、メロディもビートもジャズな感じではあるのですが、ディストーションを掛けたファットな音で、例のどこまでもどこまでも続いていくギター。
 ビシバシとアクセントを入れまくるヘビーなドラムに、ウネウネグニャグニャとしながら疾走するギター。
 これでもかこれでもかと攻めてくる、あくまで「ジャズ」。
 壮絶悶絶な“The Remedy“ (2006)に匹敵するような攻撃性、音圧、音数。
 油断していると聞いているほうがヘロヘロになりそうではありますが、キチンと身構えて聞けば、各曲終盤に訪れるカタルシスが何とも心地よい。
 とにもかくにも激しいギターがずーっと鳴りっぱなし。
 それでもロックロックした感じがしないのは、この人ならではの色合い。
 フリーでもない、混沌でもない、1970年代のエネルギー放出型でもない、凄まじいまでに強烈な音。
 実はジャズスタンダード集であったことなど忘却の彼方。
 これまた21世紀の新型ジャズ、ってところでしょう。




posted by H.A.


【Disc Review】“Searching The Continuum” (2019) Kurt Rosenwinkel, Bandit 65

“Searching The Continuum” (2019) Kurt Rosenwinkel, Bandit 65

Kurt Rosenwinkel (guitar, electronics)
Tim Motzer (guitar, guitar synth, electronics) Gintas Janusonis (drms, percussion, circuit bent toys)

サーチング・ザ・コンティニュウム
KURT ROSENWINKEL BANDIT65
MOCLD
2019-10-09


 コンテンポラリージャズのギタリストKurt Rosenwinkelの変則トリオ。
 ハイテンションジャズを極めた後は、モダンジャズやらブラジルやら、いろいろな色合いのアルバムがありますが、本作は少々アバンギャルドな演奏集。
 各国でのステージのライブ録音から選んでまとめたようです。
 フリーなインプロビゼーションなのかもしれませんが、無秩序でも、抽象的な場面ばかりでも、難解でもありません。
 フリーな音の動きが徐々に何かに収斂していく音の流れ。
 冒頭に収められた”Inori”は”祈り”のことでしょうか。
 そんな敬虔なムード、電子音とギター、パーカッションが絡み合う幻想的な音から始まり、漂う音の中から徐々に立ち上がってくるコードの動き、定まってくるビート、そしてあのハードなジャズの演奏そのまま、怒涛のギターインプロビゼーションへ・・・
 そんな流れの演奏が中心。
 全七偏、さまざまな表情ながら、いずれも哀しげなムード、ハイテンションな音、とてもドラマチック。
 静かで妖しい音の流れから徐々に音量とテンションが上がり、気がつけばあのどこまでも続いていきそうな凄まじいインプロビゼーションの渦の中。
 伝統のフォームを守った予定調和にならず、抽象的で不可解にならず。
 そして終盤に向けてドカーンと盛り上がるカタルシス。
 フリー、ミニマル、アンビエント、先端系などに、強烈なジャズインプロビゼーションをフュージョンした新しいバランス、かも。
 とてもカッコいいと思います。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Caipi” (2017) Kurt Rosenwinkel

“Caipi” (2017) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (acoustic & electric guitars, electric bass, piano, drums, percussion, synth, Casio, voice)
Ben street (bass) Andi Haberl (drums) Pedro Martins (voice, drums, keyboards, percussion) Eric Clapton (guitar) Alex Kozmidi (baritone guitar) Mark Turner (tenor saxophone) Chris Komer (french horn) Frederika Krier (violin) Kyra Garéy, Antonio Loureiro, Zola Mennenoh, Amanda Brecker (voice)
 
Caipi
Kurt Rosenwinkel
Razdaz
2017-02-10
カート・ローゼンウィンケル

 もう若手ではないのでしょう、コンテンポラリージャズギターの第一人者Kurt Rosenwinkelの最新作。 
 前作 “Star of Jupiter” (2012) はシンプルなギターカルテットでのロック色も強い作品でしたが、本作のイメージは少々異なります。
 いつものハードコアでハイテンションな質感、これでもかこれでもかと押し込んでくる感じはありません。
 またバンドでの演奏ではなく、ピアノ、ドラム、ベースも自身での演奏が中心、楽曲ごとにゲストを加える形。
 いきなりボサノバビートのタイトル曲。
 他にもブラジリアンな感じの曲が多く、フォークロック、現代的ロックな曲も何曲か。
 多くの曲でボイス、ボーカルがフィーチャーされます。
 メロディ自体は彼らしいウネウネ、ネトネトとしたねちっこいラインですが、全編ポップで明るいムード。
 柔らかいビート感と柔らかなボイスは“Still Life (Talking)” (1987)あたりのPat Methenyっぽい感じもありますが、それよりもちょっとハードで、もっとポップス寄り。
 前作“Star of Jupiter” (2012)ではプログレッシブロック色が強い感じでしたので意外な展開ではあるのですが、それをマイルドにして、ボサノバの色合いを加えて、ポップさを強調した感じ、といえばそうかもしれません。
 素直に考えば、前作は宇宙がテーマ、本作はブラジルがテーマってな感じでしょうかね?
 いずれにしても、バンドで現代ジャズを汗が噴き出すような演奏でドカーンと盛り上がって・・・ってな感じではなく、ボイスが前面に出た柔らかな楽曲中心。
 ジャズからの距離はさらに大きくなっているようにも思います。
 アコースティックギターも多用されていますが、もちろんエレキギターはいつものファットな音。
 ウネウネとどこまで続いていきそうなソロは随所にフィーチャーされ、それは他の人では聞けないハイテンションな音。
 一部で本人よる凄まじいピアノソロがあったり、盟友Mark Turnerのサックスもいい感じでバンドサウンドに溶け込んでいて、インプロビゼーションはたっぷり。 
 一曲に参加したEric Claptonは顔見せ程度ですかね。
 ボーカルはKurt Rosenwinkel本人が中心。
 ま、うまいわけではなさそうですが、いつものギターとのユニゾンのコーラスと同様にフワフワとした感じ。
 何曲かにフィーチャーされるPedro Martin、Eliane Elias の娘さんAmanda Breckerを含めたゲスト陣のさり気ないスキャットも幻想的でとてもいい感じ。
 ポップでコンパクトな演奏が揃っているのですが、その寄せ集めといった感じではなく、トータルアルバムとしてもキッチリまとまった感じの構成。
 最後は穏やかなバラード風ながらじわじわと盛り上がってドラマチックに、華やかに幕。
 最初に聞いた感じはアレレ?でしたが、何度か聞いていると、やはりKurt Rosenwinkelでなければできそうにない独特の色合い。
 とても聞きやすい感じなのですが、ほどほどにひねりが効いていて、やはりクリエイティブ。
 凄い作品のように思えてきました。
 ハイテンションでごっつい音楽の印象が強い人なのですが、こんなソフトな感じも気楽に聞けていいのかも。
 さて、次はどこに行くのでしょう?
 

 

posted by H.A.



【Disc Review】“Star of Jupiter” (2012) Kurt Rosenwinkel

“Star of Jupiter” (2012) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitars)
Aaron Parks (Piano) Eric Revis (Bass) Justin Faulkner (Drums)

Star of Jupiter
Kurt Rosenwinkel
Imports
カート・ローゼンウィンケル


 コンテンポラリージャズギターのドン?Kurt Rosenwinkel、2016年の時点ではまだこれが最新作なのでしょう。
 ビッグバンドとの共演“Our Secret World” (2009)以来のアルバム。たぶん。
 本作はピアノトリオを従えたギターカルテット編成での二枚組、コンテンポラリージャズ作品。
 編成は普通ですが、やはり普通のギターカルテットとは違う音、ロック寄りの質感でしょう。
 ここまでと異なるのが、スッキリと整った音作りになっていること。
 それでも整ったジャズ、ロック、フュージョンではなく、新しい質感の音。
 いつもながらに複雑だけども、スッキリした印象のビート。
 少々重めのビート、軽快で突っ走るビートをメリハリをつけて使い分けている感じもあります。
 メロディも不思議系が薄らいで、素直な感じ、しかもドラマチックな構成。
 シンプルではなくて十分に複雑ですが、ある種のルーズさがなくなりタイトな印象。
 結果として、ジャズのムードも薄くなっているようにも思います。
 もちろん一線を越えた圧倒的な演奏力。
 強烈な加速感と疾走感、ノリは凄いしインプロビゼーションはキレまくり。
 ギターはいつものディストーションが掛かったファットな音、さらにはエフェクティングも多用して変幻自在。
 ギターシンセサイザー的な音作りも何曲かあります。
 いつものこれでもかこれでもか、うねうねねちょねちょ、グリグリゴリゴリ、どこまでも続いていくような怒涛のギター。
 フレージング含めて、スムースなディストーションサウンド。
 これはいつも通りかもしれませんが、ここまでくるとジャズギターのイメージはなくて、かといってロックとも距離がある彼独特の音。
 サポートメンバーも個々はジャズな演奏なんだけども、全体の音はジャズジャズしていません。
 たまに挿入されるジャズの流儀のバース交換がなんだか微笑ましい。
 名手Aaron Parksも強烈に弾く場面は少なく、他のメンバーも含めてリーダーが暴れる背景作りに徹している印象。
 宇宙がテーマ、確かに宇宙船に乗って突っ走る、そんなイメージの音でしょう。
 ドラマチックでもあります。
 ここまでくるとジャズではないんだろうなあ・・・少なくとも普通のジャズではありません。
 であればいつもそうか・・・
 本作も激烈、痛快です。
 おなか一杯、ごちそうさまでした。




posted by H.A.

【Disc Review】“Our Secret World” (Sep.2009) Kurt Rosenwinkel

“Our Secret World” (2009) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Abe Rabade (Piano) Carlos Azevedo (Piano) Demian Cabaud (Bass) Marcos Cavaleiro (Drums) and horns

Our Secret World
Kurt Rosenwinkel
Imports
2015-01-06
カート ローゼンウィンケル




 前掲のJonathan Kreisbergで思い出して久々に。
 いまや大御所Kurt Rosenwinkelのビッグバンドアルバム。
 ゴージャス&ドラマチック。
 気合入ってます系のコンテンポラリージャズ。
 前掲のJonathan Kreisbergの作品も近いといえばそうなのですが、これと比べると抑制気味、こちらは情け容赦一切なし。
 聞いていて汗が吹き出してくるような、サウナの中で全力疾走しているような?、そんな音。
 リズム隊、ホーン共に強烈ですが、ピアノ、ホーン陣などメンバーのソロはほとんどなく、あくまでアンサンブル。
 その分厚い音、強烈なグルーブの上でギターを文字通り弾きまくり、全編長尺なインプロビゼーション。
その全てがドラマチック。
 次から次へと新しいフレーズ、展開がこれでもかこれでもかと、あるいは汲めども尽きぬ泉のように続く、そんな演奏ばかり。
 全編、緊張感、昂揚感の塊。
 こりゃ凄まじい。
 ここまで続くとマンネリになってしまいそうな感もあるのですが、決してそんなことはありません。
 ピークに向けての展開が明確というか、極めて自然というか。
 構成は複雑なのだけども、リズムと個々のフレーズが明快なのと、徐々に自然に盛り上がりながら音量が上がり、突っ走っていくといった起承転結が見える流れだからかなあ。
 手に汗握るような展開が延々と続き、終わるとホッとするようなそんな展開。
 全てのインプロビゼーションがそうなのだから凄い音楽です。
 ギターの音、このアルバムではディストーションを掛けたファットな音が中心。
 ディストーションはあまり好きではないのですが、この人はなぜかOK。
 触れるとはじけてしまいそうな張り詰めた音。
 一音一音がキレイ。
 不思議系のフレージングとピッタリなのでしょう。
 この人のギターはロック的なのかジャズ的なのか?
 うーん?よくわからん。
 いずれにしても、若手ジャズ系の人の中でもカッコよさ、緊張感はピカイチ、ロック好きとして聞いてもこれだけカッコいいのは少ないのでは。
 曲は不思議系、複雑系。
 愛想は無いし、リラックスできる感じも無いのですが、逆に男臭い緊張感、切迫感がカッコいい。
 ギター、楽曲等々極めて今風ではありますが、アルバム全体ではあくまでジャズの雰囲気。
 強烈なリズムとホーン。
 複雑な構成の中、思い出したように出てくるシンプルな4ビートが気持ちいい。
 コンボでのライブ盤”The Remedy”(2006)も凄まじいアルバムでしたが、勝るとも劣らず。
 エキサイティング系、昂揚感系ジャズ、体育会系ジャズ、筆頭の一つ。

(※本投稿は、2015/9/3投稿分から転載しました。)


posted by H.A.

【Disc Review】“Reflections” (Jun.2009) Kurt Rosenwinkel Standards Trio

“Reflections” (Jun.2009) Kurt Rosenwinkel Standards Trio
Kurt Rosenwinkel (guitar) Eric Revis (bass) Eric Harland (drums)

Reflections-Standards Trio
Kurt Rosenwinkel
Imports
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、激烈なライブ“The Remedy” (2006)に次いでは、トリオでのジャズバラードアルバム。
 びっくりするような平和なモダンジャズ。
 あれれ・・・ってなぐらいの変わりようですが、“Intuit” (1998)といったアルバムもありましたので、これがルーツ、好きな世界なのでしょう。
 聞く方は気持ちを切り替えないと面食らってしまいますが・・・
 全曲ジャズスタンダード。
 Thelonious Monk、Wayne Shorterから二曲ずつというのがいかにも不思議系の彼らしいチョイス。
 フレージングはいつも通りなのかもしれませんが、トリオゆえのコードワークを挟みつつの演奏が、いつもの激烈突っ走りのイメージを抑えているのかもしれません。
 ギターは強いディストーションは使っていないものの、いつもファットな音。
 純クリーントーンではなく、ナチュラルなオーバードライブが掛かった感じ。
 もちろんほとんどすべての場面でギターが前面に出るのですが、まろやかなトーンも手伝って、穏やかな印象。
 スローテンポだとちょっとねっとりとした感じでしょうかね?
 少しビートが上がってシングルトーンのソロが始まるとワクワクするような疾走感。
 やはりこの人ならではの個性的な音使い。
 デビュー作“East Coast Love Affair” (Jul.1996)のタイトル曲の再演がありますが、あまり変わった感じはしません。
 革新的クリエーターな印象、確かに全体のサウンドは革新的で常に変わってきていますが、ギター演奏の骨格自体はデビュー時から変わっていないのでしょうね。
 なんだかんだで穏やかながらも不思議系。
 なお、デビュー作から続くギターとユニゾンのボイスがなぜか本作では入っていません。
 “Intuit” (1998)でも入っていなかったと思うので、スタンダード演奏ではやらないことにしたのかな?
 カッコいいのにね。
 ・・・などなど、一休みするのはつかの間、次は本作の三か月後のセッション、またまた激烈な“Our Secret World” (Sep.2009)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Remedy: Live at the Village Vanguard“ (2006) Kurt Rosenwinkel

“The Remedy: Live at the Village Vanguard" (2006) Kurt Rosenwinkel 
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Mark Turner (Tenor Saxophone) Aaron Goldberg (Piano) Joe Martin (Bass) Eric Harland (Drums)

レメディ~ライブ・アット・ヴィレッジ・バンガード
カート・ローゼンウィンケル
SONG X JAZZ Inc,.
2013-02-27


 2014年現在、現代のトップジャズギタリストなのでしょう、Kurt Rosenwinkelの集大成ともいえるライブ盤。
 とにかく凄まじい。
 音圧、グルーブ感、スピード感、その他諸々。
 各人のインプロビゼーションも凄いが、バンドとしてのノリが凄まじい。
 複雑な構成の曲、激しいビートに乗せて、ディストーションを掛けたギターが唸りまくり。
 さらにMark Turnerのサックスもいつものクールさだけではなく、バンドの音に引っ張られるように激しいインプロビゼーション、ピアノもガンガンゴンゴン。
 特に凄まじいのはEric Harlandのドラム。
 全般煽りまくり、ここまでバコバコ叩く人だったとは。
 疾走しまくり、超音速の戦闘機か何かで何処か遠い所に連れて行かれているような感覚。
 音圧も凄いのですが、ロックっぽいかと言えばそうではなく、バンドは明らかにジャズのノリ。
 ギターのフレーズも変態チックなのだけどもジャズっぽい。
 必ずしも愛想があるとは言えない楽曲や、4ビートとは明らかに違う質感は、モダンジャズファンからは敬遠されるのかもしれませんが、新しいタイプのジャズの完成形の一つなのだと思います。
 Pat MethenyのUnity Bandってこれに影響されていたりして、と思うのは私だけ?
 ヘビー級の現代ジャズ。

(※本投稿は、2014/07/25投稿分から転載しました。)

※メンバーは違いますが。

posted by H.A.

【Disc Review】“Deep Song” (2005) Kurt Rosenwinkel

“Deep Song” (2005) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar)
Joshua Redman (Tenor Saxophone) Brad Mehldau (Piano) Larry Grenadier (Bass) Jeff Ballard, Ali Jackson (drums)

Deep Song
Kurt Rosenwinkel
Verve
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、“Heartcore” (2001-2003)に次ぐアルバム。
 “The Enemies of Energy” (Nov.1996)以来のメンバーを大幅変更。
 Brad Mehldauトリオ、あるいはJoshua Redmanカルテットとの共演作。
 ドラマーのJeff Ballardが三者のバンドの準レギュラーメンバー。
 個性派のビッグネームが揃っていますが、もちろんKurt Rosenwinkelの世界。
 “Heartcore” (2001-2003)ではなくて、“The Next Step” (2001)のイメージ。
 不思議感、妖しさはたっぷりですが、メンバーの色合いも含めて、それよりもマイルドかもしれません。
 ジャズの色合いも戻ってきたように思います。
 結果的にはモダンジャズ作品を除けば、最も取っつきやすいかも? どうだろ?
 もちろんオリジナル曲中心。
 いつもの複雑なビートに愛想のないメカニカルなメロディライン。
 ギターのエフェクティングは前作よりも薄め。
 キレイなディストーションが掛かった音。
 これでもかこれでもかと続く激烈なインプロビゼーションはいつも通り。
 Brad Mehldauのピアノも端正なジャズの場面もあれば、リーダーの変わった音使いにつきあってみたり、変幻自在。
 Joshua RedmanはCo-producerにもクレジットがありますが、強烈な登場場面は少なめ。
 全体的にスッキリした感じがするのが彼の色合いなのかもしれません。
 くどいくらいに激しいギターに対して、熱くなっても上品なサックス。
 そんな対比でバランスが取れているのかもしれません。
 珍しくハイテンションでもオーソドックスな4ビートの演奏や、静謐なピアノに導かれる穏やかな演奏もあります。
 Joshua Redmanに入ってもらって、普通な感じのジャズに引き戻そうとする試みだったとすれば、さてその成否は・・・?
 などなど、諸々の色合いの演奏が収められていますが、なんだかんだでやはり怒涛のような凄まじい演奏のKurt Rosenwinkelワールド。
 21世紀型ニューヨーク系コンテンポラリージャズの典型、少しだけマイルド系に戻ったKurt Rosenwinkel。




posted by H.A.

【Disc Review】“Heartcore” (2001-2003)Kurt Rosenwinkel

“Heartcore” (2001-2003)Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (Guitar, Keyboards, Drums, Programming)
Mark Turner (Tenor Sax, Bass Clarinet) Ben Street (Bass) Jeff Ballard (Drums) Ethan Iverson (Piano, Keyboard) Andrew D'Angelo (Bass clarinet) Mariano Gil (Flute)

Heartcore
Kurt Rosenwinkel
Verve
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、前作“The Next Step” (2001)に続く、同じメンバー+αでの作品。
 前作でスタイルが出来たのかと思いきや、間髪入れずに次の展開。
 ジャズのムードがなくなり、フログレシッブロック的というか、フュージョン的というか・・・
 なんとも形容しがたい質感。
 これまでにも増して不思議系、そして激烈系です。
 ここまでと比べるとシンプルで少々重めのビート。
 デジタル臭、アバンギャルド臭、さらには民族音楽臭も少々。
 この前後の作品よりも、後の“Star of Jupiter” (2012)にムードは似ているのかもしれませんが、もっと変わっています。
 複雑に上下を繰り返すメカニカルなメロディ。
 淡い感じもあったメロディラインの輪郭がハッキリしていて、これまでにもあった、ある種のしつこさが強くなっているかもしれません。
 ドラマチックといった方が適当なのかもしれません。
 そんな音を背景にしてキレイなディストーションが強めに掛かった攻撃的なギター。
 主力のギターをここで変えたのかもしれません。
 その他のエフェクティングもたっぷり。
 こちらも複雑に上下を繰り返す、どこまでも続いていくようなインプロビゼーション。
 スムースというか、ねっとりとまとわりつくようなというか、なんというか・・・
 激しさ全開、凄まじいギターソロが続きます。
 しつこいと言われればそうかもしれないなあ・・・
 そんなインプロビゼーションが映えるように作曲、編曲しているのかもしれません・・・
 かどうかは分かりませんが、サックスのソロを含めてそう思わせるような不思議な一体感。
 ここまで来ると普通のジャズからはかなり距離が出来てしまった感もありますが、だから新しいのでしょう。
 次作“Deep Song” (2005)では“The Next Step” (2001)に近い感じに戻った感もありますが、傑作ライブ“The Remedy (2006)では本作を含めた三作を突っ込んだような感じ。
 ファットでキレイなディストーションのギターの音色は本作で決まったのでしょうし、諸々含めて少しずつ進化しているのでしょう。
 本作も突然変異ではなく、その流れの中の一作ととらえれば自然かな?
 それにしても変わってるなあ・・・
 これも凄い作品、クリエイティブな人です。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Next Step” (2001) Kurt Rosenwinkel

“The Next Step” (2001) Kurt Rosenwinkel
Kurt Rosenwinkel (guitar, piano)
Mark Turner (sax) Ben Street (bass) Jeff Ballard (drums)

Next Step
Kurt Rosenwinkel
Polygram Records
カート・ローゼンウィンケル


 Kurt Rosenwinkel、“The Enemies of Energy” (Nov.1996)からピアニストが抜けたカルテット。
 これがこの時点でのKurt Rosenwinkelサウンドの完成形なのでしょう。
 ピアノが抜けた分さらにシャープになった音。
 変拍子に、一風変わったメカニカルなメロディラインに、どこまでも続いていきそうなハードなハイテンションサウンド。
 サックス以外のメンバーは変わっていきますが、傑作ライブ“The Remedy” (2006)にそのままつながっていくようなサウンド。
 相変わらず変わっていて愛想も乏しいのですが、全体の整理がついてスッキリしたようにも感じます。
 圧倒的なギターソロ。
 これでもかこれでもかと続く怒涛のような音の流れ。
 その高揚に合わせて音量を上げ、煽りまくるドラム。
 さらにそれに続くこれまたどこまでも続いていきそうなサックスソロ。
 どこに向かって飛んで行っているのかわからないような不思議感、ハイテンションで汗が飛び散るようなサウンドながら、どことなくクールな質感。
 そんな演奏が最初から最後まで。
 次から次へと目まぐるしく変わっていく展開。
 ちょっとねっとりしている感もあり、爽やかなサウンドではありませんが、痛快です。
 これで楽曲に少しでも愛想があれば・・・と思ってしまいますが、そうするとクールさ新しさ、妖しさがなくなるのでしょうかね。
 こわもて、といったほどではないし、フリージャズとかのムードも一切ないのですが、終始漂う不思議感。
 それでも痛快なまでの高揚感。
 “The Enemies of Energy” (Nov.1996)で概ねの形ができた今に至る21世紀型ニューヨーク系コンテンポラリージャズの完成形、その一つ・・・だと思います。




posted by H.A.
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