“Tenderness” (1988-1990) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Voice, Percussion)
Don Pullen (Piano) Leo Nocentelli (Electric, Acoustic Guitars)
Sting, Fernando Saunders (Voice, Electric Bass) Andy González (Acoustic Bass)
Ignacio Berroa, Robbie Ameen, Andrew Cyrille, Marvin Smith (Drums)
Milton Cardona (Percussion, Congas) Giovanni Hidalgo (Percussion, Congas, Quinto) Cecilia Engelhardt (Percussion) Richie Flores (Percussion, Congas)
Chico Freeman (Tenor Sax) Alfredo "Chocolate" Armenteros (Trumpet) Alfredo Triff (Violin)
Lucy Penebaz, Diahnne Abbott, Carmen Lundy (Voice)
キップ・ハンラハン アフロキューバンなジャズ~ポップスKip Hanrahan、本作あたりが一番の人気作なのでしょうか?
それとも“A Thousand Nights And A Night: Red Nights”(1996)なのかな?
この期のKip Hanrahanサウンドに強烈な色を付けるピアノのDon Pullenが定着。
サックスのDavid Murrayは抜けてしまいましたが、代わりにChico Freemanの復帰という何ともマニアックな人選。
Jack Bruceはクレジットされておらず、誰かはわからないものの、囁く激渋ボイスの男声はフィーチャーされています。
妖しいボイスのCarmen Lundyが継続参加し、超大物Stingも参加しています。
さらにAstor Piazzollaバンドを意識してか否か、前作辺りから大きくフィーチャーされる揺らぐようなバイオリンが妖し気なムードと緊張感を助長しています。
CDのフォーマットでは穏やかなソウル~ポップス調のソフトなバラード、LPではブルージーなバラード(?)から始まりますが、助走はそこまで。
以降は激しい演奏がてんこ盛り。
延々と続くシンプルなリフと怒涛のように押し寄せるラテンパーカション、別の次元から聞こえてくるような妖し気なバイオリンの音が誘う陶酔感。
さらに、そんな陶酔感の中、Don Pullenのとてつもなく激しいピアノが意識をグチャグチャにかき回します。
ぶっ飛んでいます。
特に2~4曲目、“When I Lose Myself in the Darkness and the Pain of Love, No, This Love”、 “She Turned So the Maybe a Third of Her Face Was in This Fuckin' ...”、“At the Same Time, as the Subway Train Was Pulling Out of the Station”(タイトル長すぎ!)あたりは、エレクトリックMilesハンドもビックリの激しさ。
ラテンなビートとコード進行が類似しているRolling Stonesの”Sympathy for the Devil”を何倍も激しく妖しく混沌にした感じの、呪術的ですらある音の流れ。
そんな超弩級に激しい音を背景にした、男声、女声が交錯する囁きボイス・・・
これは超、妖しく危険。
このサウンドが、ハードなアフロキューバンジャズのKip Hanrahanの完成形でしょうか。
次作“Exotica” (1993)、千夜一夜シリーズ“A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996) に繋がっていると思います。
トリップミュージックと呼ぶには輪郭が明確に過ぎ、煽情的に過ぎる感じではありますが、どこか遠い非日常に連れて行ってくれるような素敵な音。
行き着く先はキューバなのか、ニューヨークの薄暗い地下室なのか・・・
どこが”Tenderness”やねん?ってな感じではあるのですが、もちろんいつもながらに、さり気なくオシャレ。
しかもクールでハードボイルド。
いつもながらにカッコいいKip Hanrahanワールド。
これが代表作に異論なし。
posted by H.A.