吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Keith_Jarrett

【Disc Review】“Creation” (2014) Keith Jarrett

“Creation” (2014) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Creation
Keith Jarrett
Ecm Records
2015-05-12
キース ジャレット

 Keith Jarrett、2014年、トロント、東京、パリ、ローマでのステージからダイジェストされたソロピアノ。
 “La Scala” (Feb.1995)に代表されるような1990年代のソロピアノは、各パートの終盤に収められているとても美しいメロディを創り出すために長尺な試行錯誤を続けているイメージ。
 一方、2000年以降のソロピアノは短いパートに分かれ、難解、抽象的な展開も多い中に美しいメロディ、パートが散りばめられている構成。
 もし美味しい所だけを集めたらキャッチーな作品になるのだろうとは思っていました。
 が、さすがにそれをやると、天から降りてきたようなメロディを生み出す過程が見えなくなるのでやらないだろう・・・
 と思っていたのですが、それに近いことをついにやってしまいました。
 それが本作。
 タイトルは、まさにその意味、即興を通じて創造されたメロディ、演奏の意味なのでしょうかね?
 が、単にベストな演奏を集めたといった感じではなく、静かで敬虔なイメージで統一されています。
 元のステージの様子はわかりませんし、必ずしもキャッチーな部分を集めたものではなく、何らかのテーマをもって編集されているのでしょう。
 ここまでのソロピアノ作品の中でも少し異色な作品。
 拍手もカットされています。
 全9編、各々10分弱、全編スローバラード。

 “Part. 1”はゆったりとしたテンポ、少し重苦しいムードの祈るような展開。
 “Part. 2”では少し軽くなりますが、引き続きの祈るような敬虔な音の流れ。
 “Part. 3”~ “Part. 4”はメロディの形が明確になりそうでなり切らないバラード演奏。
 “Part. 5”でようやくはっきりとしたメロディのバラード。
 少し懐かしげな表情の穏やかな演奏、切ないような優しいような複雑な表情、冒頭からグラデーションをつけながら徐々に中盤の締め“Part. 5”に向かって組み立てられていいるようにも思われます。
 “Part. 6”はきらめくような高音の高速なパッセージから、センチメンタルなメロディ、漂うようなスローな演奏からスタート。
 新たな物語が始まったようにも聞こえるし、“Part. 5”からの続きのようにも聞こえるし、強めのタッチ、少し重さはありますが、明るいような切ないような、これまた複雑な表情。
 “Part. 7”は波が寄せては返すような演奏。
 明確なメロディの提示はありませんが、悲し気な表情を見せながらドラマチックな構成。
 “Part. 8”は少しアブストラクト、少し苦し気な音の流れを経て、前向きでメロディアスな“Part. 9”へ。
 これ見よがしな美メロではなく、淡い色合いのバラード。
 ドラマチックながら、とても穏やかな表情で幕を閉じます。

 全体の印象は少し重め、前作“Rio” (Apl.2011) で戻ってきたようにも感じた1970年代を想い起こさせるようなタメと高速なフレーズが交錯する場面もありません。
 抽象的で激しい演奏は採用されていませんが、派手だったり甘かったりするメロディも採用されていません。
 全編通じて穏やかで敬虔なムード。
 2014年のKeith Jarrettの意識はそんな感じだったのでしょう。
 たぶん。

 


 ECM制作以降の作品群。
 ソロピアノ(〇)作品に着目すると、
 ハイテンションでとにかく美しい様式美の1970年代、
 クラシック色合いが強くなり、フリーも織り交ぜながらドラマッチックにゴールを目指すイメージの1980-1990年代、
 休養を経て、ここまでの要素を短い演奏で並べていく2000年代~。
 わかりやすいのは“The Köln Concert” を代表とする1970年代でしょう。
 が、とてつもないのは“La Scala”(Feb.1995)。
 フリー混じりでこわもてな1980-1990年代ですが、終盤の美しい旋律を構築するまでの凄まじいまでのドラマ。
 凄いアートだなあと思います。
 “Rio”(Apl.2011)の後半もいいなあ。

〇(Nov.1971) "Facing You"
 (Apl.1972) "Expectations"
 (Jun.1972) "Hamburg '72
 (Feb.1973) "Fort Yawuh"
 (Feb.1973) "In the Light"
〇(Mar.Jul.1973) ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” 
 (Feb.1974) “Treasure Island” 
 (Apl.1974) Belonging” 
 (Apl.1974) “Luminessence” 
 (Oct.1974) Death and the Flower” ,“Back Hand” 
〇(Jan.1975) The Köln Concert” 
 (Feb.13.1975) “Solo Performance, New York ‘75” 
 (Jun.1975) "Gnu High"   Kenny Wheeler 
 (Oct.1975) Arbour Zena” 
 (Dec.1975) Mysteries” 
 (???.1975) Shades” 
 (Mar.1976) Closeness”  Charlie Haden
 (Apl.1976) The Survivor's Suite” 
〇(May.1976) Staircase” 
 (May.1976) Eyes of the Heart” 
 (???.1976) “Hymns/Spheres” 
 (Oct.1976) Byablue”、“Bop-Be” 
〇(Nov.1976) Sun Bear Concerts” 
 (Jun.1977) “Ritual” 
 (Feb.1977) Tales Of Another” Gary Peacock 
 (Oct.-Nov.1977) “My Song"    
 (Apl,16-17.1979) “Sleeper”, “Personal Mountains” 
 (May,1979) Nude Ants:Live At The Village Vanguard
 (1979,1980) "Invocations/The Moth and the Flame"
 (Mar.1980) "G.I. Gurdjieff: Sacred Hymns", "The Celestial Hawk"

〇(May.1981) ”Concerts:Bregenz” 
〇(Jun.1981) ”Concerts:Munchen
 (Jan.1983) Standards, Vol. 1”、“Standards, Vol. 2” 、“Changes
 (May-Jul.1985) "Spirits"
 (Jul.1985) "Standards Live"
 (Jul.1986) "Still Live", "Book of Ways", "No End"
〇(Apl.1987) "Dark Intervals"
 (Oct.1987) Changeless” 
〇(Oct.1988) Paris Concert
 (Oct.1989) ”Standards in Norway” 
 (Oct.1989) “Tribute”
 (Apl.1990) “The Cure”
〇(Sep.1991) “Vienna Concert
 (Oct.1991) “Bye Bye Blackbird”
 (Sep.1992) “At the Deer Head Inn”
 (Mar.1993) “Bridge of Light”
 (Jun.1994) “At the Blue Note”
〇(Feb.1995) “La Scala
 (Mar.1996) “Tokyo '96”
〇(Oct.1996) “A Multitude of Angels” 

〇(1998)   “The Melody At Night, With You” 
 (Jul.1999) “Whisper Not”
 (Jul.2000) “Inside Out” 
 (Apl.2001) “Always Let Me Go”
 (Jul.2001) “My Foolish Heart”
 (Jul.2001) “The Out-of-Towners”
 (Apl.2001) “Yesterdays”
 (Jul.2002) “Up for It”
〇(Oct.2002) “Radiance
〇(Sep.2005) “The Carnegie Hall Concert
 (2007)   ”Jasmine”, “Last Dance
〇(Oct.2008) “Testament
 (May.2009) “Somewhere”
〇(Apl.2011) “Rio
〇(2014)   “Creation

posted by H.A.

【Disc Review】“Rio” (Apl.2011) Keith Jarrett

“Rio” (Apl.2011) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Rio
Keith Jarrett
Ecm Records
2011-11-08
キース ジャレット

 Keith Jarrett、ブラジルでのソロピアノ。
 本作も21世紀型のソロピアノ、短めの楽曲を次々と演奏していくスタイル。
 ブラジルのイメージ、ジャケットのムードから明るくて陽気かも・・・とはなりません。
 CD一枚目は重い感じです。
 やはり“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005), “Testament” (Oct.2008)と同じ感じの21世紀型か・・・
 が、CD二枚目に明るい演奏がたっぷりと収められています。

 冒頭、” Part 1”は甘いメロディを排したフリージャズ~現代音楽のような展開。
 ぶっ飛んだような激しい音。
 “Part 2”、ゆったりとしたテンポの中から美しいメロディが見え隠れするような展開となりますが、まだもどかし気に試行錯誤しているようにも聞こえます。
 続く“Part 3”は不思議なワルツ。
 ビートが入って音の流れが少しずつ軽快になっていきますが、左手が不思議なコードを奏で続け、重いムードは抜けません。
 “Part 4”でソロピアノでは珍しいジャズバラード風の演奏、” Part 5”は“Treasure Island”(Feb.1974)風の軽快で明るいフォークロック。
 ようやく陽光が見えてきた感じですが、右手は軽快にメロディを奏でるものの、なぜか左手を中心とした重いムードはまだ抜けず、それは“Rio, Pt. 6”でも続きます。
 まだ上空の重々しい雲はなくなっていません。

 CD二枚目に入って“Part 7”は漂うようなムードのセンチメンタルなバラード。
 ここで重いビートが消えるとともに、メロディが明確になり、1970年代が想い起こさせるようなタメと高速なフレーズが交錯する素晴らしいインプロビゼーション。
 ようやく本当に陽光が差し始め、楽し気なワルツの“Part 8”を経て、得意の日本的な音階が散りばめられた雅な感じのバラード、とても美しい” Part 9”に展開します。
 この“Part 7”, “Part 8”,“Part 9”がこのステージのピークの一つでしょう。
 それを求めて試行錯誤し、ここで第一部が結実、完了したようにも聞こえます。

 それに安堵した?かのように” Part 10”から再び抽象的な音の流れが始まります。
 鬼神のような激しい演奏ですが、前半のような重さはなくなっているようにも感じます。
 軽快なブルース“Part 11”、思索的な“Part 12”を経て、もう一つのピークが“Part 13”。
 とてもセンチメンタルなメロディとタメと疾走の交錯。
 やはり1970年代 Keith Jarrettが戻ってきたかのような素晴らしい演奏。
 明るいフォークロックな“Part 14”から、最後はとてもセンチメンタルな美しいバラード“Part 15”。
 ”Part 10”から第二部が始まり、“Part 13”, “Part 14”, “Part 15”の創造、またはゴールを目指して試行錯誤をしていたようにも思えます。
 とても素晴らしい、美しく前向きなエンディング。
 気が付けば空は晴れ渡り、ジャケットのような明るいムード。

 結果としては馴染みやすい演奏がCD二枚目に集まっています。
 後半の明るいムード、1970年代型のKeith Jarrettのピアノが戻ってきた感じの場面も多々。
 これが2010年代型 Keith Jarrettのソロピアノの形かも・・・と思っていましたが、次作“Creation” (2014)を聞く限りは、見事に読みを外しましたかね・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Testament” (Oct.2008) Keith Jarrett

“Testament” (Oct.2008) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Paris London: Testament
Keith Jarrett
ECM
2009-10-06
キース ジャレット

 Keith Jarrett、パリとロンドンでのソロピアノ。
 “The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005)から三年空いて、間の作品はCharlie HadenとのDuo、”Jasmine”, “Last Dance” (2007)のみで、スタンダーズも公式録音は2017年現在、発表されていません。
  “Radiance” (2002)、“The Carnegie Hall Concert”と続く21世紀型ソロピアノ、短編小説集のような構成。
 “La Scala” (Feb.1995)のような明確なゴールがあるわけではなく、抽象的な展開の時間が長い演奏。

 パリのステージ、冒頭から抽象的な音の流れ、怒涛のような激しい演奏。
 二十年前の“Paris Concert (1988)から完全にモデルチェンジしたソロピアノ。
 Part.2に入っても激しく重い空気感は拭えませんが、ビートが定まり、ジャズ的なインプロビゼーションの切れ味は増してきます。
 Part.3はスローバラード、漂うようなルバートでスタート。
 Keithの真骨頂、懐かしいような悲しいようなメロディの芯が見え始め、リズムが定まったと思ったらまた崩れ・・・とてもドラマチックに展開します。
 もっともっと長く続けてくれたらいいのに、と思う素晴らしい演奏。
 が、その安堵も束の間、Part.4では再び抽象的で激しいフリーな演奏が始まります。
 Part.5は穏やかながら祈るような質感。
 メロディが見えそうで見えてこない、複雑な表情のこの期のKeithの得意な展開。
 Part.6では強いビートが入り、ジャズ的なムードが強いノリのいい演奏。
 演奏後、長く続く拍手から考えると、ここでステージが終わったのかもしれません。
 Part.7でようやく登場するセンチメンタルなメロディ、フォークロック調の演奏。
 準備された曲なのだろうと思いますが、懐かし気で切ない、どこかで聞いたことがあるようなメロディ”My Song”なKeith Jarrett。
 締めの”Part.8”は激しいフリーからスタート。
 長尺な演奏、どこかで変わることを願いつつも、最後まで凄まじいフリーでパリのステージは幕。
 やはり“La Scala” (Feb.1995)的ではなく、“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005)的なステージ。
 1970年代型、1980年代型はもとより、1990年代型も終わり、21世紀型ソロピアノに遷移しているようです。

 ロンドンのステージは静かに思索的に始まります。
 フリーではなく穏やかですが、少々重め、甘いメロディは出てきません。
 “Part.2”でジャズ的なインプロビゼーション色が強くなり、”Part.3”はフォークロック調。
 “Part.4”は桜が舞い散るような日本的な音使い、短い演奏ですが、とても美しく幻想的な素晴らしい演奏です。
 “Part.5”の激しく長尺なフリーを経て、フォーキーなバラード”Part.6”と、以降も含めて目まぐるしく展開は変わっていきます。
 重めのビートの”Part.7”、フォーキーでドラマチックなバラード”Part.8”、素っ頓狂な疾走曲”Part.9”、不思議な行進曲風”Part.10”・・・
 締めの二曲は、不思議なビート、コードが先導し、メロディが見え隠れするようなバラード“Part.11”、おそらくアンコール?、フォークロックな“Part.12”。
 “Part.11”ではタメと疾走が交錯する1970年代 Keith Jarrettが戻ってきたかのような、また、“Rio” (Apl.2011)を予見するようなインプロビゼーションも聞かれます。
 そして“Part.12”、懐かし気なメロディ、アメリカンロックのLeon Russellを想わせるような展開とともに、前向きに幕。

 混沌を経てとてつもなく美しい演奏に到達する1990年型ではなく、楽曲を短く刻み、フリー度、現代音楽度も高い演奏とフォーキーな演奏が入り混じる21世紀型Keith Jarrettのソロピアノの一作。
 大衆小説、純文学、前衛小説が交錯する演奏。
 難解で散漫な印象もありますが、“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005)と同様に、合間合間に素晴らしいメロディ、演奏が散りばめられています。
 パリの”Part.3”、ロンドンの”Part.4”、”Part.8”、“Part.11”とかカッコいい演奏です。
 それに出会えること、他のパートについても見えてくる景色が変わってくること期待しつつ聞いてみますかね・・・

 


posted by H.A.


【Disc Review】”Jasmine”, “Last Dance” (2007) Keith Jarrett, Charlie Haden

”Jasmine”, “Last Dance” (2007) Keith Jarrett, Charlie Haden
Keith Jarrett (piano) Charlie Haden (bass)
 
Jasmine (Shm-Cd)
KEITH JARRETT
MUSICSTORE
2015-09-21
キース ジャレット
チャーリー ヘイデン

Last Dance
Keith Jarrett
Ecm Records
2014-06-17


 Keith Jarrett、かつての盟友とのDuo作品。
 ”Jasmine”は2010年、“Last Dance”は2014年の発表で、後者はCharlie Haden の遺作、もしくは追悼作になるのだと思います。
 “The Melody At Night, With You” (1998)と並んでKeith Jarrettの作品群の中では異色の静謐なバラードアルバム。
 この二人が揃うと“Death and the Flower” (1974)などのアメリカンカルテット諸作もさることながら、“Closeness”(1976)Charlie Hadenの強烈な演奏を思い出しますが全く異なる質感。
 楽曲も二人の作った数多くの名作バラードは取り上げず、ジャズスタンダードからのチョイス。
 Keith Jarrettの諸作、あるいはCharlie HadenのDuo諸作とは異なる音。
 “The Melody At Night, With You”と同じく不思議な磁力をもった静謐な音。
 ビートに乗った演奏も多いため、それとは違う質感ですが、Keith Jarrettは“The Melody At Night, With You”ほどではないにせよ、同様にタメを効かせて少し遅れ気味に音を置いていくスタイルも目立ちます。
 それに寄り添うように静かに音を置いていくCharlie Haden。
 訥々としたムード。
 それでも十分に流麗で、“The Melody At Night, With You”の凄みのようなものは無いのかもしれません。
 消えかかったろうそくのようにゆらめく“The Melody At Night, With You”に対して、静かに優しく煌めくような本シリーズ。
 興奮もなければ、かつての激情や狂気のようなものの表出もない穏やかな空気。
 その裏に隠された意味は・・・
 なんて野暮なことは考えずに、美しいメロディ、淡々と流れる音の流れに和むのがよいのでしょうね。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005) Keith Jarrett

“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Carnegie Hall Concert
Keith Jarrett
Ecm Records
2006-09-26
キース ジャレット

 Keith Jarrett、“The Melody At Night, With You” (1998)で病床から復帰し、“Radiance” (2002)に続くソロコンサート。
 本作も前作に続き10分以内の短めの演奏集、抽象的、現代音楽的な演奏が中心。
 “La Scala” (Feb.1995)ようなドラマチックな展開を期待してしまうのですが、そうはなりません。
 以降の作品を眺めても“Radiance”からは、21世紀型のソロピアノのスタイルに遷移したようにも思います。

 冒頭から抽象的な演奏の連続。
 特に前半は、少なくともポップミュージック、ジャズ的な意味でのメロディアスな演奏ではなく、現代音楽的な音の流れ、あるいはヘビーなビート感が目立ちます。
 Part IIIでようやくセンチメンタルなメロディの漂うような演奏が登場しますが、これも少し重いムード、発展させることなく短く終わり、Part IVのぶっ飛んだフリーの展開へと続きます。
 さらに重々しく始まるPart Vの中盤から美しいメロディが見え隠れし始め、ドラマチックな展開になるか・・・?と思わせながら大きく盛り上がることなく、淡く悲し気な空気を残したまま終了、再びぶっ飛んだフリーなPart VIが始まります。
 中盤、Part VIIに”Let It Be”っぽいフォークロックな展開が登場、続くPart VIIIでセンチメンタルなメロディがようやく奏でられ、静かながら胸に迫るような演奏。
 “La Scala”にもあったどこか懐かし気な美しいメロディ。
 後の名作“January” (2008) Marcin Wasilewskiなどは、“La Scala”、あるいはこのあたりからの影響が強いのかな、と思ったり。
 さらに抽象的で激しいPart IXに続いて、締めのPart Xは祈るような敬虔なムード、シンプルなリフをベースとした、熱は高くはないものの、かつてのゴスペルチックな演奏。
 場面々をとらえれば、紛うことなき1970年代から続くKeith Jarrettのピアノミュージック。
 抽象的、離散的な演奏ばかりではありませんし、かつての演奏を髣髴とするような場面も多々ありますが、展開の予想はできません。
 その時々に降りてきたモノを音に変えていくスタイルも変わっていないのだと思いますが、連続するインプロビゼーションの中から美しいメロディを生みだす、あるいはそれに到達する“La Scala”のようなやり方はあまり前面には出ません。
 Part VIII~Part Xがそのゴールに当たるのかもしれませんが、演奏が分断されていることもあり、長編映画を見ていた感覚の“La Scala”に対して、短編小説を読むような本作。
 大衆小説、純文学、前衛小説が交錯するようなステージ。

 そして、三分以上続く拍手の後に始まるアンコールは大衆小説のオンパレード。
 既成?の美しい楽曲“The Good America”、さらにあの”Mon Coeur Est Rouge(Paint My Heart Red)"、なんと “My Song”・・・以降も続く演奏。
 アンコールというよりも第二部。
 難解だとか、流れが見えないとか、なんとか言わずにKeith Jarrettの感性の動きを感じるのがよいのでしょうね。
 私はまだそこまで大人には成れていませんが。
 それでもPart VIII、Part Xなんて美曲、直接的に胸に迫るような演奏が潜んでいるので聞き逃せないことは、ファンゆえの悲しい性でしょうか・・・




posted by H.A.


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