吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Jon_Balke

【Disc Review】“Hafla” (2021) Jon Balke Siwan

“Hafla” (2021) Jon Balke Siwan

Jon Balke (Keyboards, Electronics, Tombak)
Mona Boutchebak (Vocals, Quitra) Derya Turkan (Kemençe) Bjarte Eike (Baroque Violin) Helge Norbakken (Percussion) Pedram Khavar Zamini (Tombak) Per Buhre (Vocals, Viola)


Hafla
Jon Balke Siwan
ECM
2022-04-22


 ノルウェーの大御所Jon Balke、北アフリカ、中近東、その他のエスニックな色合いが交錯する摩訶不思議なプロジェクト、ECMレコードでの第三作。
 “Siwan” (2007,2008)、“Nahnou Houm” (2017)ときて、本作。
 メインのボーカリストは前作と同じアルジェリアの女性、他のメンバーは前々作から続いているのだと思います。
 古の地中海周辺をテーマとした(?)プロジェクトだったように思うのですが、ヨーロッパ周辺の経度の南北すべてをカバーしたというか、どこなのかわからない場所、その過去と未来感が交錯する・・・、そんなサウンド。
 アフリカンな感じでナチュラルだけど先端の香りも漂うビート、抑制された打楽器群。
 聞き慣れない音階。
 古楽、あるいは中近東的な弦の響き。
 ヨーロッパな流麗さを纏った、あるいはときに土の香りもするようなストリングス。
 それらが複雑に交錯する美しいアンサンブル。
 そして、何語か分からない透明で美しい女声。
 哀し気ながらどこか懐かし気で穏やかな空気感。
 それら合わせて、紛れもなくメロディアスで美しい音楽、奇を衒った感もないのだけども、強烈な非日常感。
 何が歌われ、語られているのかはわかりません。
 古いのか新しいのかも判然としません。
 あえてカテゴライズするとすれば、古楽とエスニックミュージックとポップスのフュージョン、ってな感じなのだと思います。
 が、それにとどまらず、先端的な色合いを感じるのは、おそらくは静かに鳴り続けるパーカションと、ときおりさり気なく響くシンセサイザー的な音、そして緊張感を高めるストリングス。
 全編哀し気な非日常の音ですが、決して深刻ではなく、気難しくもない、あくまでナチュラルで優しい空気感。
 それが聞きやすさに繋がっているように思います。
 優しいトリップミュージック。




posted by H.A.



【Disc Review】“Discourses” (2019) Jon Balke

“Discourses” (2019) Jon Balke

Jon Balke (Piano, Sound Processing)

Discourses
Jon Balke
ECM
2020-05-15


 ノルウェーのピアニストJon Balkeのソロ作品。
 先端系、フリー系も多い近年のノルウェージャズの親分のひとりなのでしょう。
 本作は、未来的先端系ファンクジャズでも、コンボ~ビッグバンドでの疾走するジャズでも、中近東~地中海エスニックでもない、“Book of Velocities” (2007) あたりと同じ雰囲気、クラシカルな色合いを纏ったピアノの独奏。
 フリーなインプロビゼーション集なのかあらかじめ準備された楽曲なのかはわかりませんが、短く刻まれる演奏集、全16編。
 少し沈んだムード。
 緩急、内省的な感じと外に向かう感じが交錯しつつ、あくまで静かに流れていく音。
 Keith Jarrettほど激しくはなく、Paul Bleyほど甘美でも感傷的でも尖った感じでもない、クールな質感。
 抽象的なフレーズが多いわけではないのだけど、揺れ動くビートもあわせて、どこに向かうのか判然といない不思議な音の流れ。
 そんな音の動きの中から見え隠れする美しいメロディの断片。
 ときおり控えめな電子音なども交えつつ、何かが見てきそうで、やはり抽象的で、いつの間にか終わる音。
 そんな演奏が続きます。
 甘くはならず、かといって不可解でもなく、戯れのような軽さはなく、かといって深層を覗き込むような怖さもなし。
 そんな微妙なバランスが結構聞き易かったりします。
 ベタつかない美しさがクールな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】"Delights of Decay" (2017) Batagraf

"Delights of Decay" (2017) Batagraf


Jon Balke (Keyboards, Percussion, Voice)
Trygve Seim (Tenor, Soprano Sax) Mathias Eick (Trumpet) Helge Andreas Norbakken, Snorre Bjerck (Percussion, Voice) Emilie Stoesen Christensen, Ingeborg Marie Mohn, Julia Witek (Voice)

DELIGHTS OF DECAY
BATAGRAF
JAZLA
2018-03-16


 Jon Balke率いるBatagraf、ECMではなくノルウェーのJazzland Recordsから。
 アフリカン・フューチャー・ジャズ・ファンク、ポップス度も少々。
 ECMでの“Statements” (2003, 2004)、“Say and Play” (2009)がとてもカッコいいのですが、メンバー、編成、レーベルが変わり、色合いが変わっています。
 アフリカンパーカッションの静かで複雑なビート、背景を作る電子音に妖し気な女声ヴォイス。
 そこまでは同様、フロントの二管もECM御用達のノルウェーコンビですが、妖しさ抑えめ、電子音抑えめ、アフリカ度、ファンク度も抑えめ。
 よりポップでさらにジャズな感じの仕上がり。
 メロディが明確で、女性コーラスの入り方もなんだかオシャレです。
 ホーンの二人が前面に出る場面が多いこともあり、全体的な印象は音は厚めで、音楽の輪郭も明確でジャズ度も高。
 Batagrafサウンドを背景にした、寂寥感たっぷりのホーンのジャズなアンサンブルとインプロビゼーション。
 静かにジワジワ、フワフワとくるBatagrafではなくて、明確でポップ、ときにドカーンとくるBatagraf。
 そのあたりで好みは分かれるのかもしれません。
 クリエイティブでアーティスティックなJon Balkeの音楽、そのわかりやすい系。
 もちろん本作もクール、さらにオシャレです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Nahnou Houm” (2017) Jon Balke, Siwan

“Nahnou Houm” (2017) Jon Balke, Siwan
Jon Balke (piano, keyboards, percussion)
Mona Boutchebak (vocals, oud)
Derya Turkan (kamanche) Pedram Khavar Zamin (tombak) Helga Norbakken (percussion)
Bjarte Eike, Alison Luthmers, Øivind Nussle (violin) Milos Valent, Per Buhre, Torbjørn Köhl (viola) Judith Maria Blomsterberg, Mime Brinkmann (cello) Johannes Lundberg (bass)

Nahnou Houm
Jon Balke
Ecm Records
2017-11-17


 ノルウェーのピアニストJon Balkeの北アフリカ~スペイン・アンダルシア~中近東~アラブ~その他のエスニックミュージックプロジェクト、ECMでの第二作。
 前作“Siwan” (2007,2008)からフロントの女性ボーカルがモロッコのAmina AlaouiからアルジェリアのMona Boutchebakに交代。
 古楽のバンド-Barokksolistene-はそのままなのだと思いますが、そのメンバーは入れ替わっているようです。
 ボーカリストが繊細な感じになり、ビート、展開を含めてオーソドックスになった感じもしますが、不思議感たっぷりのアラビアンなメロディ、アンアンブル、アフリカンなパーカッション、歪んだ時空から聞こえてくるような弦の響きは変わりません。
 前作では前面に出る場面が少なくなかったトランペットが抜け、あくまで弦のアンサンブルとボイスが中心。
 ピアノの登場場面も前作と同様にほとんどありません。
 結果的にはジャズ度がさらに薄くなり、エスニック度、時代不明度が濃くなっています。
 不思議感、妖しさ、緊張感120%のメロディですが、メロディラインが明確であるがゆえに、迷宮感はほんの少し薄らぎ、その地域、その時代のポップミュージックのようにも聞こえます。
 どの場所なのか、どの時代なのかは不明なのですが・・・
 ところどころに見え隠れするサンバなメロディラインの断片、Kip Hanrahan的バイオリンなどからは、地中海~北アフリカ~カリブ~南米との繋がりを意識してしまうのは、考えすぎでしょうか?
 Jon Balkeの一連の作品、北欧~中近東~アフリカ~南米までが混ざり合う無国籍なエスニック感、過去と現在、未来のフュージョン、静謐で悲し気な音、強い浮遊感、ちょっとした気難しさと高尚さ、狂気と正気の交錯、・・・その他含めて、1990年代以降のECMの象徴の一人のようにも思います。
 いずれにしても本作も妖しさ120%、非日常に浸れる音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Siwan” (2007,2008) Jon Balke, Amina Alaoui

“Siwan” (2007,2008) Jon Balke, Amina Alaoui
Jon Balke (Keyboards) Amina Alaoui (Vocals)
Jon Hassell (Trumpet, Electronics) Kheir Eddine M'Kachiche (violin) Pedram Khavar Zamini (Goblet Drum) Helge Norbakken (Percussion)
-Barokksolistene-
Bjarte Eike, Per Buhre, Peter Spissky, Anna Ivanovna Sundin (violin)
Milos Valent (violin, viola) Rastko Roknic, Joel Sundin (viola) Tom Pitt (cello) Kate Hearne (cello, recorder) Mattias Frostensson (bass) Andreas Arend (theorboe, archlute) Hans Knut Sveen (harpsichord, clavichord)

Siwan (Ocrd)
Jon Balke
Ecm Records
2009-06-30


 ノルウェーのピアニストJon Balkeとモロッコの女性ボーカリストAmina Alaouiの北アフリカ~スペイン・アンダルシア~中近東~アラブ~その他諸々がフュージョンするエスニックミュージック。
 古楽のバンド-Barokksolistene-と絡みつつ、どこかなのか、いつの時代なのか、わからない時間。
 Jon Balkeはピアノを封印して、作曲とサウンドメイクに徹しています。
 不安感を煽るかのようなメロディ、聞き慣れない音階と妖し気な弦楽器の響き。
 時空が歪んだかのように揺れ動くアルコを中心に、ときおりの哀し気なアルペジオ。
 そんなサウンドを背景に、Amina Alaouiは哀し気な表情の朗々とした声、緊張感の高い歌は、どこか宗教的な色彩も帯びた妖しい音の流れ。
 さらにはアフリカンなパーカッションに、思い出したように響くジャズなトランペット。
 妖しさ120%
 現代の日常とは乖離した不思議な時間。
 憂いに満ちた深刻な音の流れ、荘厳なムードは、神々しい・・・畏れ多い・・なんて言葉が似合いそう。
 それが中世の地中海沿岸の日常の空気感、そこでの音楽はそんな感じの存在だったのかもしれません。
 また、別のバンド“Batagraf”と同様、なぜか本作でも聞こえるKip Hanrahan諸作に似たバイオリンの動きは、大西洋を隔てたキューバとの浅からぬ関係が・・・
 ・・・とかなんとか、歴史の事はよくわかりませんが、そんな感じで数十万キロ、数百年トリップ出来る音。
 さすが、Jon Balke、ECM。
 このプロジェクトの第二弾は、十年後の“Nahnou Houm” (2017)。
 古いようでプリミティブなようで、新しくてクリエイティブな凄みが詰まった一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Say and Play” (2009) Batagraf, Jon Balke

“Say and Play” (2009) Batagraf, Jon Balke
Jon Balke (Piano, Keyboards, Electronics, Percussion)
Erland Dahlen (Drums) Helge Andreas Norbakken (Percussion)
Torgeir Rebolledo Pedersen (Poetry Reading) Emilie Stoesen Christensen (Vocals)

Say And Play
Universal Music LLC
2017-07-28


 ノルウェーのピアニストJon Balke、アフリカン~エレクトロニクスなプロジェクトBatagrafでの作品。
 このプロジェクト、ECMでは“Statements” (2003, 2004)に次ぐ二作目。
 前作からとてもカッコよかったサックス、トランペットが抜け、アフリカンなボイスの登場場面も減っていますが、その分シンプルで静かな音。
 電子楽器が前面に出る場面が増え、アコースティックピアノのインプロビゼーションのスペースもしっかりと確保されています。
 温かなアフリカンパーカッションに、複雑なビート。
 クールな電子音と美しいピアノ、これまたクールな女声。
 その妖しい声の主は、あのECM御用達、ノルウェーの名ドラマーJon Christensenの娘さんのようです。
 前作と異なり基本的には静かな音、強烈なビート、強い音はあまりありません。
 静かながら複雑なビート、強いグルーヴと、悲し気なメロディ、美しいピアノ、妖しげなボイス・・・
 エスニックなビートと電子音、肉声の静かな絡み合い、高速に突っ走るジャズピアノとスローテンポで漂うボイスの絡み合い、あるいはWeather Reportのような軽快なグルーヴとシンセサイザーの絡み合い、はたまた前作と同様、妖しくてオシャレなKip Hanrahan諸作を想い出す場面・・・などなど。
 マニアックなようで、とてもポップに聞こえます。
 おそらく、プリミティブな雰囲気なようで、それも含めて計算尽く、とてもとても洗練されているのでしょう。
 The Magnetic North Orchestraでの作品は不思議で妖しい北欧ジャズ、Siwanでは地中海沿岸~アラブなエスニックミュージックですが、Batagrafはアフリカンと未来のフュージョン。
 血肉とエレクトロニクス、原始と現代、未来が交錯するような不思議で妖しい、エレトリック・エスニック・ポップ・ミュージック。
 とても心地いいトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Book of Velocities” (2007) Jon Balke

“Book of Velocities” (2007) Jon Balke
Jon Balke (piano)

 ノルウェーのピアニストJon Balkeのソロピアノ作品。
 ピアノによるとても美しい断片のコラージュ。
 4部構成、全19曲。
 即興のような、準備されたメロディがあるような、淡いイメージの音の流れ。
 ピアノのイメージは、Paul Bleyに近い感じ?、彼をもう少し丸く柔らかくした感じでしょうか。
 強烈なグルーヴを作りつつ突っ走ることが出来る人なのですが、そんな場面は少なく、静かでゆったりとした、余白が多い時間。
 抽象的な音の流れ。
 一分~長くて四分程度で楽曲は変わり、次々と周囲の景色が流れていきます。
 Keith Jarrettのソロピアノは手に汗握るスぺクタルですが、こちらはもっとカジュアルな空気感。
 但し、少し日常からずれたような不思議な感覚。
 フリージャズ的で抽象的だし、応用編である事は否定しませんが、慣れてしまえば不思議な心地よさ。
 極上に美しいピアノの音に加えて、とても静かで間が多いからでしょう。
 一日中流れていても違和感のない音楽の一つ。
 聞き流してもよさそうな感じなのですが、周りに誰もいない静かな時間に聞くと、何か意外なものが見えてくるかも・・・
 そんな静かなピアノミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Diverted Travels” (2003) Jon Balke The Magnetic North Orchestra

“Diverted Travels” (2003) Jon Balke The Magnetic North Orchestra
Jon Balke (piano, keyboards)
Per Jørgensen (trumpet, vocals) Fredrik Lundin (bass flute, saxophones) Bjarte Eike, Peter Spissky (violin) Thomas Pitt (bass violin) Helge Andreas (Norbakken percussion) Ingar Zach (percussion)

Diverted Travels
Jon Balke
Ecm Import
2004-08-31


 ノルウェーのピアニストJon Balkeの変則な編成のコンボ作品。
 このバンド、ECMでは“Further” (1993)、“Kyanos” (2001)に続く三作目でしょうか。
 メンバーは少しずつ変わっていますが全体のトーンは変わらず、ストリングスとホーンが妖しく絡み合う、不思議系北欧コンテンポラリージャズ。
 上記二作と比べると、静かさが増した感じでしょう。
 また、数分の短い楽曲を繋ぎ合わせ、次々と場面が変化していくような、この期のJon Balkeの作品と類似する構成。
 この人の作品の多くは何かのイメージを物語的に構築していく感じなのだと思うのだけども、本作は“逃避?”でしょうか。
 もどかし気、やるせなさ気なピアノの徘徊からスタート。
 アフリカンなパーカッションとストリングスが絡み合う妖しい音の流れ。
 ベースレスゆえ、ビートが入っても不思議な浮遊感。
 ゆらゆらと揺れる背景を作るストリングスとバーカッション、断片的にコラージュされていくような、美しいピアノ、ホーン、ボイス。
 Nils Petter Molvaer、あるいはMiles DavisっぽいトランぺッターPer Jørgensenが大活躍。
 ミュートトランペットとピアノが加速しながら高速チェイスする場面も目立ちます。
 中盤に収められた全編それの“Climb”なんて最高にカッコいいジャズ。
 沈痛さ、陰鬱さは無いのですが、妖しさ、不思議さは満点。
 締めは、放心したような静かなノイズの響きから、この上なく悲し気な“Falling”。
 タイトルのイメージ通り、レクイエムのような音、祈りのようなエンディング。
 いかにもこの人作品、不思議系ジャズで綴った物語。




posted by H.A.


【Disc Review】“Statements” (2003, 2004) Batagraf

“Statements” (2003, 2004) Batagraf
Jon Balke (Keyboards, Percussion, Vocals)
Frode Nymo (Alto Saxophone) Kenneth Ekornes, Harald Skullerud, Helge Andreas Norbakken, Ingar Zach (Percussion) Arve Henriksen (Trumpet) Sidsel Endresen, Miki N'Doye (Recitation) Solveig Slettahjell, Jocelyn Sete Camara Silva, Jennifer Mykja Balke (Voice)



 ノルウェーのピアニストJon BalkeのバンドBatagrafの何とも不思議なアルバム。
 “Clouds In My Head” (1975) Arild AndersenなどからECMに参画している大ベテラン。
 ヨーロピアンらしいクラシックの香りと美しい音、さらに強烈な疾走感がカッコいいピアニスト。
 近年では同じく北欧の若手アーティストのサポート、“The Door” (2007)、“Midwest” (2014) Mathias Eickなどでもよく見かけます。
 バンドでの表現が好きなようで、以下のようないろんなバンドに参加、あるいは自ら作っています。
  Masqualero、“Bande a Part” (1986)  etc.
  Oslo 13、“Nonsentration” (1990)  etc.
  Magnetic North Orchestra、“Further” (1993), “Kyanos” (2001)  etc.  
 それらは十分にジャズな音だったのですが、本作はジャズからはみ出した不思議なバンド。
 詞の朗読なども絡めつつ、ナイジェリア?の「バタ」なる楽器?音楽?を中心とした音なのだと思います。
 メンバーはノルウェーの人が中心のようなのですが、音は完全に無国籍、ノンジャンル。
 アフリカ的なパーカションとフワフワしたエレクトリックピアノ、電子音、声、そしてジャジーながら狂気を秘めたサックスが交錯する不思議な世界。
 ムードとしてはフューチャージャズな感じもあるし、アコースティックなパーカッションがプリミティブな民族音楽的でもあるし。
 ジャズとか何とかのジャンル云々はもとより、一体ここはどこなのか、ヨーロッパなのかアフリカなのか、今なのか過去なのか未来なのか、さっぱりわからない空間。
 さらに、声とか口笛とかが醸し出す、現実なのか非現実なのかすら曖昧なムード。
 でも、あくまで静かで穏やか。
 そんな背景の中に、唐突にコラージュされる乾いた女性のボイス、泳ぐような乾いたサックスの響きがとてもクール。
 ときおり現れる電子音、穏やかで淡い感じは環境音楽的な感じなのだと思いますが、無機質な感じではなくて、あくまでアコースティックな響きが中心。
 ちょっと聞きではなんだこりゃ?
 が、マニアックなようで、エスニックなようで、慣れてしまえばわかりやすくて心地いい音。
 意味不明でも難解でもない、全編通じてとてもカッコいい静かなグルーヴ。
 サックスの動きがジャズっぽいのも、とても心地いいバランス。
 ボイスには、Nils Petter Molværの作品に参加するSidsel Endresenがクレジットされているし、音量を上げ、ハードさ、深刻さを加えると、彼の音にも近い場面が多いのは、ノルウェーの空気感ゆえなのでしょうか?
 全編を漂う哀感、さらにちょっとしたところにオシャレな感じもあり、全く違う音なのですが、Kip Hanrahan を想起します、ってなのは飛躍しすぎなのでしょうかね?
 そちらはニューヨーク&キューバですが、こちらは北欧&アフリカ。 
 さながら静かでエスニックな環境音楽、現実と非現実が交錯するトリップミュージック。
 残念なのは、あの素晴らしいアコースティックピアノが聞けないこと。
 が、さすがに何をやってもタダモノではないクリエイティブなオヤジ。
 とてもカッコいい音、名作だと思います。



 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Kyanos” (2001) Jon Balke & Magnetic North Orchestra

“Kyanos” (2001) Jon Balke & Magnetic North Orchestra
Jon Balke (Piano, Keyboards)
Anders Jormin (Double Bass) Audun Kleive (Drums, Percussion) Morten Halle (Saxophone, Flute) Arve Henriksen (Trumpet) Per Jørgensen (Trumpet, Vocals) Svante Henryson (Cello)

Kyanos
Universal Music LLC
ヨン バルケ


 ノルウェーのピアニストJon Balke、不思議なコンボ作品。
 メンバーは微妙に変わっていますが、コアな部分は同じ。
 新しいビートと不思議なメロディ、端正なアンサンブル、寂寥感、あたりがこのバンドの特徴だと思いますが、そのままの音。
 “Further” (1993)あたりと比べると、パーカッションが抜けたため、躍動感が抑えられるとともに音が薄くなり、余白の多い空間。
 抽象的なメロディ含めて、妖しさ、不思議感が増しているかもしれません。
 漂うビートと不思議なメロディ。
 暗い音楽ではありませんが、抽象度が増し、各人のインプロビゼーションも同じく淡い色合いの演奏。
 トランペットの二名が前面に出る場面が多いように思います。
 サブトーンが極端に多いArve Henriksenが印象に残ります。
 確か尺八の音を目指して云々の人。
 確かにそんなイメージの寂寥感の強い音。
 また要所々でカウンターを当てるチェロもカッコいい音。
 本作もピアノソロスペースは大きくありません。
 素直にビートに乗ったインプロビゼーションの場面はわずか。
 その場面がカッコいいだけに、また、弾けば素晴らしい演奏になることが分かっているだけにいつもながらに少々残念。
 タイトルの意は「群青色」?。
 確かにそんな感じもしますが、もっと淡い感じでしょうか。
 余白の時間が増えた分だけ、想像力をかきたてられる音であることは間違いありません。


※音源がないので別のバンドから。


posted by H.A.
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