吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

John_Coltrane

【Disc Review】“Selflessness: Featuring My Favorite Things” (Jul.1963,Oct.1965) John Coltrane

“Selflessness: Featuring My Favorite Things” (Jul.1963,Oct.1965) John Coltrane
<Jul.1963>
John Coltrane (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Roy Haynes (drums)
<Oct.14.1965>
John Coltrane (tenor saxophone)
Pharoah Sanders (tenor saxophone) Donald Garrett (bass clarinet, double bass) McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones, Frank Butler (drums) Juno Lewis (vocals, percussion)
 
Selflessness Featuring My Favorite Things
John Coltrane
Impulse Records
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、大人気の“My Favorite Things”バージョンを含むライブアルバム
 いろんなバージョンがありますがやはりこれがベストに異論ありません。
 よく言われるようにRoy Haynesの軽快なドラムが効いていて、重量級のメンバーの重量級の音をいい感じで緩和しているからでしょうかね。
 パタパタと断続的に鳴るスネアが心地よく聞こえます。
 Elvin Jonesだとちょっと重く、もっと激しくなって、Coltraneカルテットらしいのですが、これはお好み次第。
 激しさはほどほどの方が一般受けはする、といったところでしょうか。
 確かにいつもの演奏よりもベースがしっかり聞き取れるし、サックスのソロもスッキリした感じ、ひたすら続くピアノの同じリフが誘う陶酔感もこのバージョンが一番強いかもしれません。
 とても激しい演奏ですが、聞いていると心地よく眠れそう・・・
 “I Want to Talk About You”も決定的な“Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)のバージョンに劣ることのない文句なしの名演。

 それらは安心して聞ける名演ですが、さらに興味深いのがOct.14.1965の激烈フリーの入り口の時期の演奏"Selflessness"。
 “First Meditations” (Sep.2.1965)は激烈ながら普通にジャズ、その同月末からの“Live in Seattle” (Sep.30.1965)、“Om” (Oct.1.1965)は激烈フリージャズ。
 そこを通過したタイミング、“Kulu Sé Mama” (Oct.14.1965)の同セッション。
 確かに“Kulu Sé Mama”していますが、それよりも穏やかなムード、心地よくバウンドする4ビートでよりジャズ的な雰囲気。
 サックスは激しく、途中からグシャグシャになり絶叫系の激烈フリーになりますが、その時間は長くなく、その後の軽快に疾走するMcCoy Tynerがカッコいい演奏。
 サックスが戻るとまた絶叫になりますが・・・
 混沌と調性のバランスが取れた結構な名演、“Kulu Sé Mama”のB面にカップリングして出せばよかったように思うのだけども、その期では没になったのは何故?が気になります。
 レコード会社としてはLP両面が激烈だと売れないと判断したのか、さて・・・?
 この演奏くらいの”一部”絶叫系激烈フリーなら楽に楽しめるんだけどなあ・・・




posted by H.A.



【Disc Review】“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965) John Coltrane

“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
Pharoah Sanders (tenor saxophone, percussion) McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums) 
Donald Rafael Garrett (bass clarinet, bass, percussion) Frank Butler (drums, vocals) Juno Lewis (vocals, percussion, conch shell, hand drums)
 
Kulu Sé Mama (Expanded Edition)
Universal Music LLC
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、公式作品としては“Ascension” (Jun.28,1965)に次ぐアルバム。
 その間で録音された “Sun Ship” (Aug.1965)、“First Meditations” (Sep.2.1965)は世に出ることはなくお蔵に入りし、発表されたのが本作。
 半年ほど間を開けた二つのセッションから構成され、違うムードの演奏が収められています。

 後のOct.14.1965のセッション、LPレコード片面を占める長尺なタイトル曲は、ボーカル入り激烈フリージャズ。
 前月のセッションに当たる“First Meditations”とは雰囲気が全く異なります。
 重々しいアフロビート、パーカッションの響きを背景にして、呪術的なボーカルとPharoah SandersとColtraneのサックスが、“Ascension”の一部のソロのように、常軌を逸したような絶叫の連続。
 全体のサウンド自体は、ダークで妖しいムードも含めてエスニックなジャズの範囲ですが、サックスが普通ではない空気感を作っています。
 切羽詰まって叫び続ける・・・そんな感じ。
 このサックスの凄まじい音を真正面からとらえることが出来るか、怖い、あるいは別のことを感じて敬遠してしまうかで、好みが分かれるのだと思います。

 LPレコードB面は先のJun.10.16.1965のセッション、Pharoah Sanders他の参加は無く、カルテットのメンバーでの演奏。
 こちらも激しい演奏ですが、“First Meditations”、あるいは“A Love Supreme” (Dec.1964)的な調性が取れたジャズ。
 “Vigil”はJohn ColtraneとElvin JonesのDuo。
 とても激烈な演奏で、“Live! at the Village Vanguard” (Nov.1961)あたりと比べてみると、サックスの音量が上がり、同じところをグルグルとも旋回しているような感じのフレージング。
 が、ビート感は一定しているし、絶叫するような場面は多くはありません。
 “Welcome”は全編ルバートでのスローバラード。
 サックスは鬼気迫るようなこの期の音使いではなく、かつての優しい系に近い演奏。
 長い演奏ではありませんが、安らかで感動的な音。
 このB面の激烈な演奏から穏やかな演奏でクールダウンする流れが、かつての定番。

 が、そんな普通のことでは満足できないColtrane。
 Jun.10,16.1965のセッションから、タイトル曲のOct.1965の間に演奏のスタイルが変わっています。
 そのきっかけは“Ascension” (Jun.28,1965)なのか、Pharoah Sandersの参加なのか?
 ここから先は沈痛で激烈な魂の叫びのようなフリージャズの世界。
 凄いのですが、体調を整え、しっかり身構えて聞かないと・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Om” (Oct.1.1965) John Coltrane

“Om” (Oct.1.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor, soprano saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
Pharoah Sanders (tenor saxophone) Donald Rafael Garrett (double bass, clarinet) Joe Brazil (flute)
 
Om
John Coltrane
Impul
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、極めつけの激烈絶叫フリージャズの一作。
 世に出たのは1968年、Coltraneが逝去した後のようですが、この上もなく凄まじい演奏。
 宗教的なメッセージがあるのだとは思いますが、それはよくわかりません。
 呪文のような朗読から始まり、一気に集団即興、絶叫型。
 前後の作品“Live in Seattle”(Sep.30.1965)、“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965), “Meditations” (Nov.1965)の一部のセッションと同様ですが、本作が最も一番激烈。
 それを通り越して、怖くなるような音。
 各人のソロのオーダーはきちんとあるようで、Coltraneのソロの序盤はかつての作品と大きくは変わらないように思います。
 ピアノソロになるとさらに普通の激しいジャズ、もちろん4ビートです。
 別世界に飛んでいるのはやはりPharoah Sanders。
 常軌を逸したトランス状態で叫び続け、他の二名のリード奏者も同じイメージ、あるいは不思議で陰鬱な音。
 途中では文字通り恐ろしい唸り声、叫び声まで上げて・・・
 ここまで激烈で沈痛、陰鬱な音楽、日常の世界から逸脱したような音もなかなかないでしょう。
 夜、一人では絶対に聞かないでください・・・ってなコピーが似合いそう。
 後期のColtraneは激烈絶叫フリージャズの印象が強いのですが、Coltraneの生前に世に出たアルバムで激烈絶叫系は、“Ascension” (Jun.28.1965)、“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965), “Meditations”(Nov.1965)の三作のみ。
 それ以降の公式アルバム“Live at the Village Vanguard Again!” (May.28.1966), “Expression” (Feb.15.1967, Mar.7.1967) は少し落ち着いた演奏。
 が、 “Expression”の直後に発表されたのがこのアルバム。
 以降、“Selflessness” (Jul.1963,Oct.14.1965) <1969>、“Transition” (May26.Jun.10.1965) <1970>、“Sun Ship” (Aug.1965) <1971>、“Live in Seattle” (Sep.30.1965) <1971>と発表。
 発表と同時に聞いた人は戸惑っただろうなあ・・・
 さて、Coltrane本人が世に問いたかったのはどんな音だったのでしょう?




posted by H.A.

【Disc Review】“Live in Seattle” (Sep.30.1965) John Coltrane

“Live in Seattle” (Sep.30.1965) John Coltrane
John Coltrane (soprano, tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
Pharoah Sanders (tenor saxophone) Donald Garrett (bass clarinet, bass)
 
Live In Seattle
Universal Music LLC
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、Pharoah Sanders、Donald Garrettをゲストに迎えた激烈フリージャズ作品。
 “Ascension” (Jun.1965)と同じく、激烈フリージャズに本格的に突入していく端緒。
 但し、リリースされたのは1971年、何かしら気に入らない部分があったのかもしれません。
 いずれにしても“Ascension”をさらに激しくした演奏。
 “Selflessness” (Oct.1965)に収録された演奏の少しだけ前の録音ですが、それよりももっと激しいフリージャズ。
 “Ascension” (Jun.1965) 以降も、“New Thing at Newport” (Jul.2,1965)、“Sun Ship” (Aug.1965) 、直前の“First Meditations” (Sep.2.1965)まで、激しくとも調性があったのですが、ここで完全にタガが外れてしまったような演奏に変わっています。
 激烈フリーの作品に共通することがPharoah Sandersの参加。
 彼が参加するとColtraneも常軌を逸した激しい音使いとなり、彼が参加していないアルバムでは激しくとも調性の取れたジャズになっているように思います。
 Pharoah SandersがColtraneの心のタガを外す役割を担ってのでしょうか。
 絶叫する3人の管楽器奏者。
 ピアノトリオで演奏される時間だけは4ビートのジャズ、ベースソロは幻想的な静かな時間ですが、他は沈痛で激しい絶叫の嵐・・・
 最も長尺、35分を超える"Evolution"。
 陰鬱で激烈。
 三管のクダを巻くような絶叫に音を合わせるのはJimmy Garrisonのみ。
 続くこと10分、美しいピアノと激しいドラムが加わりやっと音楽の形が見えてきますが、管楽器の絶叫は止まりません。
 20分過ぎからは本当の肉声での叫び・・・
 ちょっとこれは・・・本当に怖い・・・
 管楽器が抜け、ピアノトリオになるとやっとジャズになり、終盤は激しくも定常なピアノトリオを背景にした超弩級に激しい音での集団即興演奏、いや、三管の絶叫で幕・・・
 とてつもなく凄まじい演奏は、近々McCoy TynerとElvin Jonesが脱退するのもわかるような気がします。
 それでもJohn Coltraneの前進は止まりません。




posted by H.A.


【Disc Review】“First Meditations” (Sep.2.1965) John Coltrane

“First Meditations” (Sep.2.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
First Meditations
John Coltrane
Grp Records
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、“Sun Ship” (Aug.1965)から一カ月後の録音、生前にリリースされたスタジオ録音としては“Ascension” (Jun.1965)と“Meditations” (Nov.1965)の間の録音。
 こちらもしばらくお蔵入りしていたようで、リリースはColtraneの死後の1971年。
 “Transition” (May.Jun.1965)、“Sun Ship” (Aug.1965)と同様にお蔵入り。
 この作品はPharoah Sanderを加えて録音し直し、“Meditations” (Nov.1965)として世に出ています。
 その習作になるのでしょうが、とてもそうは思えない素晴らしい演奏揃い。
 私にとっては、“Om” (Oct.1965)、“Meditations” (Nov.1965)は怖くて聞けない作品。
 それらを「瞑想」しながら聞けるほど精神的に成熟してないというか、なんというか・・・
 さておき、本作は“A Love Supreme” (Dec.1964)的なハイテンションジャズ。
 “Sun Ship” (Aug.1965)と同じく旋回するようなメロディが増え、サックスはフリーキー度を増していますが、まだまだバンドとしても調整が取れています。
 かつてを想わせるとても穏やかなサックスとフリービートのバラードで始まり徐々にテンションを上げ、激情をほとばしらせるサックス。
 サックスが休んでも感動的な演奏を続ける美しいピアノトリオ。
 サックスの再登場でクライマックスが数分間続く素晴らしい演奏。
 続くはあのトレードマークだったハイテンションなジャズワルツ。
 “My FavouriteThings”とは全く質感は異なりますが、フリーキーで激情なサックスがカッコいい演奏。
 などなど、最後までハイテンションな凄い演奏が続きます。
 中にはこの期では珍しく明るいムードの演奏もありいい感じのチェンジ・オブ・ペース。
 最後はフリービートの激しく沈痛なバラードで締め。
 激烈フリー突入直前のColtraneバンドの危うさの微妙なバランス。
 その緊張感のピークゆえのカッコよさ。
 なぜお蔵に入れたんだろう?と思う私は、まだまだ精神的に未熟なのでしょう。
 本作を“A Love Supreme” (Dec.1964)を凌ぐ大名作と思うのは少数派?
 私的John Coltraneベストアルバムに格上げしようかな。




posted by H.A.


【Disc Review】“Sun Ship” (Aug.1965) John Coltrane

“Sun Ship” (Aug.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
Sun Ship: the Complete Sessions
John Coltrane
Verve Select
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、スタジオ録音としては“Ascension” (Jun.1965)の次に当たる作品。
 しばらくお蔵入りしていたようで、リリースはColtraneの死後の1971年。
 “Transition” (May.Jun.1965)も本作も“First Meditations” (Sep.1965)も、ものすごくカッコいいハイテンションなジャズ。
 が、世には出ず、リリースされたのはPharoah Sandersを加えて録音された“Kulu Sé Mama” (Jun.Oct.1965)。
 Coltraneの中ではこの種の“A Love Supreme” (Dec.1964)的なハイテンションながら調性が取れたジャズは過去のものだったのでしょうか。
 本作も“Transition” (May.Jun.1965)に準ずる名演。
 繰り返し専旋回するような、あるいは違和感があるぐらいに繰り返されるシンプルなリフ、といった後のオリジナル曲のイメージが増えていますが、フリーキーなサックスはほどほど、ここまでのColtraneバンドと遠くないサウンド。
 むしろバンド全体が絶好調に聞こえます。
 フリーキーな音が飛んでも、落ち着くところ落ち着いていくような安心感のある展開。
 ドラムソロ状態の場面が多くともビートは崩れず、フロントの音に的確に反応するElvin Jonesに、後ろでしっかりとした背景を作るMcCoy Tynerのピアノ。
 後の激烈フリージャズに近づきつつあるのは確かですが、調性は崩しておらず、このバンドの超弩級にエキサイティングな演奏はまだまだ健在です。
 それを予定調和でつまらないと感じるか、このギリギリで踏み止まったようなバランス感覚、緊張感が最高にカッコいいと感じるか。
 私的にはこのくらいのバランスが一番いい感じ、カッコいいアルバムだと思います。




posted by H.A.


【Disc Review】“New Thing at Newport” (Jul.2,1965) John Coltrane, Archie Shepp

“New Thing at Newport” (Jul.2,1965) John Coltrane, Archie Shepp
John Coltrane (soprano, tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
Archie Shepp (tenor saxophone)
Bobby Hutcherson (vibes) Barre Phillips (double bass) Joe Chambers (drums)
 
ニュー・シング・アット・ニューポート (紙ジャケット仕様)
ジョン・コルトレーン&アーチー・シェップ
ユニバーサル ミュージック クラシック



 John Coltrane、Archie Sheppそれぞれのステージのカップリング。
 “Ascension” (Jun.1965)と“Sun Ship” (Aug.1965)、“Kulu Sé Mama” (Jun.Oct.1965)の間、すでに激烈フリーを始めていますが、このライブはまだその手前に戻って激烈モードジャズ。
 CDでは“My Favorite Things”が収録され、二年前の“Selflessness” (Jul.1963.Oct.1965) のバージョンにも近いムード。
 同アルバムのOct,1965のライブではすでに激烈フリーな場面が登場していますので、本当の転機はここから二~三カ月だったのでしょう。
 お蔵に入った“Sun Ship” (Aug.1965), “First Meditations” (Sep.2.1965) までは、激烈ながら普通のモードジャズですが、続く同月末の録音の“Live in Seattle” (Sep.30.1965)でPharoah Sandersが参加してから本格的に絶叫の色合いが強くなった感じでしょうか。
 グラデーションをつけながら徐々に激しくなってきたサウンドが“A Love Supreme” (Dec.1964)で一定の決着を見て、さらに激しさを増していく途上での演奏。
 “One Down, One Up”と全二曲、過渡期の激しく長尺な演奏です。

 Archie SheppのステージはEric Dolphy“Out To Lunch” (1964) っぽい離散系フリージャズ、あるいは新主流派系フリージャズ。
 Bobby Hutcherson、Joe Chambersのメンバーの色合いも大きいのでしょう。
 もちろんクールといった感じではなく、ど熱いArchie Sheppの激烈ブロー。
 この期の音楽としてはColtraneよりもぶっ飛んでいるように思いますが、サックスはColtraneの方がぶっ飛んでいるように思います。
 だからArchie Sheppではなく、Pharoah Sandersを相方に選んだのでしょうかね?
 などなど考えてしまう、過渡期の激しいジャズのワンショット。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ascension” (Jun.28.1965) John Coltrane

“Ascension” (Jun.28.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
Freddie Hubbard, Dewey Johnson (trumpet) Marion Brown, John Tchicai (alto saxophone)  Pharoah Sanders, Archie Shepp (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Art Davis, Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
Ascension: Editions I &amp; II (Reis) (Rstr)
John Coltrane
Verve
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、激烈フリージャズの事始め。
 この先の演奏が全てフリージャズではありませんし、本作でもリズム隊は定常な4ビートを出しています。
 Elvin Jonesもドラムソロ状態の場面も多いのですが、この前後のアルバムとそう大きく変わった演奏をしているわけではないと思います。
 フロント陣の激しい集団即興にしても、その場面も各人の音に耳を傾けてみると特別に変わった音を出しているわけではないように思います。
 キチンとテーマ~順に一人ずつのソロ回しといったジャズの流儀に乗っ取った展開で、特にトランペット陣は端正だったりもします。
 ピアノソロなどは、まんまいつものこのバンドのMcCoy Tyner。
 最も変わった音を出しているのがJohn Coltraneをはじめとするテナーサックス陣。
 ピーとかギーとかギャーとかギュルギュルギュルとか、そんな感じ。
 聞き慣れたフレーズは出てくるのですが、フレーズを紡いでインプロビゼーションを組み立て行くといった感じではなく、ひたすら激情を吐露していく、そんな感じ。
 鬼気迫るというか、常軌を逸したというか、ちょっと怖い後々の激烈フリーのColtraneサウンド。
 前後の作品を並べてみると突然変異のようにも聞こえますが、本作を含めてPharoah Sandersが参加した作品が少し異質で、彼が発火剤になってJohn Coltraneが変化するようにも思えます。
 Edition IのColtraneのソロなどは決して怖くないのですが、Edition IIはちょっと怖いかも・・・凄いけど。
 あくまで4ビートジャズなのですが、これを調性が取れたジャズが好きな人に勧めるのは無理でしょう。
 この大音量の激しい音の洪水を浴びることを気持ちいいと思うか、あるいは激情がほとばしる魂の叫びのような音を聞きたいか否かで評価はわかれるのででしょう。
 賛否両論あるのもさもありなん。

〇:Pharoah Sanders参加作品
 “Crescent” (Apl.Jun.1964)
 “A Love Supreme” (Dec.1964)
 “Live at the Half Note: One Down, One Up” (Mar.26.May.7.1965)
 “The John Coltrane Quartet Plays” (Feb.17-18, (Mar.28.),May.17.1965)
 “Transition” (May26.Jun.10.1965)
〇“Ascension” (Jun.28.1965)
 “New Thing at Newport” (Jul.2,1965)
 “Sun Ship” (Aug.1965)
 “First Meditations” (Sep.2.1965)
〇“Live in Seattle” (Sep.30.1965)
〇“Om” (Oct.1.1965)
〇“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965)
〇“Selflessness: Featuring My Favorite Things” (Jul.1963,Oct.14.1965)
〇“Meditations” (Nov.1965)
〇“Live in Japan” (Jul.1966)
〇“Offering: Live at Temple University” (Nov.1966)
〇“Expression” (Feb.Mar.1967)
〇“Stellar Regions” (Feb.15.1967)
 “Interstellar Space” (Feb.22.1967)
〇“The Olatunji Concert: The Last Live Recording” (Apl.23.1967)




posted by H.A.


【Disc Review】“Transition” (May26.Jun.10.1965) John Coltrane

“Transition” (May26.Jun.10.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
Transition
John Coltrane
Impulse Records
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、激烈フリーの“Ascension” (Jun.1965)直前の録音の人気作。
 “A Love Supreme” (Dec.1964)以降の調整が取れた激烈ジャズですが、やはり何かただ事ではないムードも漂っているのでしょう。

 LPレコードA面は激烈モードのタイトル曲からスタート。
 シンプルなリフでハイテンションな演奏。
 終始ドラムソロのようなポリリズミックなビートに激しいピアノのリフの繰り返し。
 激しいサックスのインプロビゼーションが混ざり合いながら、陶酔感を誘う空間を作るいつものこのカルテットの演奏。
 そんな激烈な演奏もさることながら、続く優しい系のバラード演奏“Dear Load”も絶品。
 この期ではフリービートの全編ルバートでのスローバラードが増えてきているのですが、珍しく“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)のような穏やかで淡々としたバラード。
 激烈なタイトル曲の後にこれがあるからカッコよさが倍増。
 かつてからのColtraneのアルバムの組み立ての典型的なスタイル。

 B面は組曲”Suite: Prayer and Meditation: Day, Peace and After, Prayer and Meditation: Evening, Affirmation, Prayer and Meditation: 4 A.M.”一曲。
 タイトル通り、さまざまな祈りと瞑想をイメージした演奏なのだと思いますが、起伏に富んだとても激しい演奏。
 “A Love Supreme” (Dec.1964)をコンパクトにLPレコード片面に収めたような演奏。
 冒頭からいかにもColtrane緊迫感の強い音。
 フリー混じりの激しい展開から、テンポと音量をアップダウンしながら進む音。
 ドラムはずーっとソロ状態、ピアノの激しいコンピングは、この期のこのバンドの定番スタイルの激しい演奏。
 前半のテナーの展開の中に“A Love Supreme”Pt.2のようなカッコいいリフが見え隠れしますが、とても激しい演奏の中に搔き消されてしまいます。
 続く静寂なベースのソロ演奏でクールダウン。
 これは“A Love Supreme” (Dec.1964)、あるいは後の激烈フリーになっても変わらないスタイル。
 ピアノのソロから再びテナーの激烈なソロ。
 フリーキーな音も多い激しい演奏、切迫感はより強くなり、後の同じところを来るグル回るようなフレージングも増えてきました
 が、後のような絶叫には至りません。
 終盤はフリービートで全編ルバートでのスローバラードでドラマチックに幕。
 あっという間の二十余分。
 全編手に汗握るスリル、スぺクタルの連続。
 また、絶叫~激烈フリーの世界からはかなり手前の所で止まった調性の取れた演奏です。
 あるいはその世界への行き方が分からずもがいている姿なのかもしれません。
 それがこの上もない緊張感、緊迫感に繋がっているのでしょうか?
 激しさ、緊張感、緊迫感は“A Love Supreme”よりも上。

 A面B面通じて極めて完成度の高い素晴らしい演奏集です。
 この世紀のジャズカルテットが行きついた完成形がこのアルバム、といっても過言ではないと思います。
 が、本作はお蔵入りし、日の目を見たのはColtraneの死後の1970年。
 リリースされたのは同月に録音された激烈フリージャズの“Ascension”。
 まだ激しくとも調整が取れたジャズの演奏は続いていますが、Coltrane自身の気持ちは次の世界に移っていたのでしょう。




posted by H.A.


【Disc Review】“Live at the Half Note: One Down, One Up” (Mar.26.May.7.1965) John Coltrane

“Live at the Half Note: One Down, One Up” (Mar.26.May.7.1965) John Coltrane
John Coltrane (soprano, tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
One Down One Up: Live at the Half Note
John Coltrane
Impulse Records
2005-10-11
ジョン・コルトレーン

 John Coltrane、激烈さが増してきた“The John Coltrane Quartet Plays” (Feb.17-18, (Mar.28.),May.17.1965) のレコーディングの間でのライブ録音。
 リリースは2005年ぐらいの未発表音源。
 ブートレグでは出回っていたのかもしれませんが、録音もまずまず良好です。
 あっちの世界に行ってしまいそうで行かない激しい演奏が続きます。
 ギリギリの・・・ってな感じでもなくてまだまだ激烈フリーまでとは距離のある調性の取れた音。
 McCoy Tyner以下のピアノトリオは激しさを増していますが、1960年代初頭と基本的には大きく変わっていないようにも思います。
 変わってきているのはJohn Coltrane。
 タイトル曲で一通りにソロを回した後、ピアノが抜けてベースが抜けて始まるElvin Jonesとの凄まじいDuo。
 10分を超えるいったいどこまで続くんだろうと思わせる長尺さ。
 決してフリーキーではなく、ビートも崩しませんが、“Live! at the Village Vanguard” (Nov.1961)、“Live at Birdland” (Oct.Nov.1963)と比べると、切迫感の強い音使いが増えてきています。
 吹いても吹いても吹き切れないもどかしさなのか、吹くことが心地よくて止められないのか、よくわかりませんが、全体のムード、後の作品のムードを考えると前者のように感じます。
 それにピッタリと寄り添うElvin Jonesも凄い人。
 “Afro Blueも” “Live at Birdland”よりもテンポが上がりハイテンション。
 果てしなく続いていきそうなソプラノサックスのソロの途中でアナウンスがかぶり、フェイドアウトされてしまうのが残念。
 さらに“The John Coltrane Quartet Plays”では全編ルバートのバラードだった“Song of Praise”が序盤からアップテンポで演奏され、フリーキーなテナーが大爆発。
 My Favorite Thingsは、意外にも“Selflessness” (Jul.1963)に近い、このライブの中では相対的にスッキリしたムード。
 やはり過渡期、方向を探っていた時期なのでしょう。
 次の録音は“Transition” (May26.Jun.10.1965) 。
 このライブはそれ、あるいは“The John Coltrane Quartet Plays” (Feb.17-18, (Mar.28.),May.17.1965)に近い、調整が取れた上での激烈ジャズ。
 次月には激烈フリーな“Ascension” (Jun.28.1965)となりますが、Coltraneの頭の中では既にその音が鳴っていいたのでしょう。
 それをやりたくて・・・が、まだ踏ん切りがつかなくて、あるいは方法論が見えていなくて・・・そんな感じでしょうか。
 本作とPharoah Sanders が参加した4か月後の“Live in Seattle” (Sep.30.1965)の違いが、迷いつつも激烈フリーに向けて進むColtraneのベクトルであり、その過渡期のドキュメント。




posted by H.A.


Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ