“Slaves Mass” (1977) Hermeto Pascoal
Hermeto Pascoal (piano, keyboards, clavinet, melodica, soprano sax, flutes, guitar, vocals)
Ron Carter (acoustic bass) Alphonso Johnson (electric bass) Airto Moreira (drums, percussion, vocals) Chester Thompson (drums)
Raul de Souza (trombone, vocals) David Amaro (guitars) Flora Purim (vocals) Hugo Fattoruso, Laudir de Oliveira (vocals)
ブラジルのピアニスト、マルチ楽器奏者~クリエーターHermeto Pascoalのブラジリアンフュージョン。
元々、Airto Moreira が渡米しMilesバンド加入する直前まで同じバンドで活動していたようで、本作のプロデュースもAirto Moreira、Flora Purim夫妻。
ジャズマニアから見ればあのごっついアルバム”Live Evil” (Feb.Jun,Dec.19,1970) Miles Davisに数曲だけ参加して、場違いとも思える穏やかで柔らか、不思議なテイストを醸し出していた人。
Miles Davisからすれば、Chick Coreaに変わってKeith Jarrettとツインキーボードができて曲が書けるヤツを連れてこい、とAirtoに頼んだのでしょうかね?
あるいは、Flora Purim “Open Your Eyes You Can Fly” (1976)、“Encounter” (1976、1977)の音作りの中心人物のひとり、といったイメージでしょうか。
それらのアルバムでは、ハードなGeorge Duke主体と思われる曲に対して、柔らかな音楽、特にアルバム全体がHermeto Pascoal が音作りの中心と思われる“Encounter” (1976、1977)は隠れた大名作。
本作もFlora Purim諸作と同時期、同じようなジャズ系、Weather Report系のメンバー、ブラジル人メンバーを集めたブラジリアンフュージョン。
ブラジル東北部の人のようで、ボッサ、サンバっぽさはありませんが、ブラジリアン特有の柔らかさの漂う音。
少々の毒気、サイケっぽさは感じないでもないですが、とてもしなやかなブラジアリアンフュージョン。
エレピが主導する柔らかで最高に心地よいブラジリアングルーヴと柔らかなメロディを中心に、ブラジルの山奥っぽい音、フォークロックっぽい曲、Weather Report的、あるいは“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis的ジャズファンクから混沌~激烈なインプロビゼーション、さらにはEgberto Gismontiっぽい曲、ピアノソロ、などなど、1970年代のブラジルてんこ盛り。
いろいろ混ざっていることもあり、ちょっと聞きでは違和感があるかもしれませんが、構成に慣れてしまえば、いろんなところから素敵な演奏が飛び出してくる面白い作品。
LPレコードでは最後の曲、”Cherry Jam”などWeather Report、あるいは初期Return to Foreverの香りが漂う最高にカッコいい演奏。
さらにそれに続く、CDのボーナステイクの長尺の演奏がちょっとびっくり、強烈な疾走感と柔らかなグルーヴが合体した最高の演奏。
ファンキーかつ疾走感のあるグルーヴと哀愁が漂うメロディと強烈なインプロビゼーションの連続。
Weather Reportに匹敵するようなカッコよさ。
超絶なリズム隊なゆえになせる業なのでしょう。
心地よさ最高。
とても怖いジャケットですが、中身、特に終盤は最高です。
posted by H.A.