吉祥寺JazzSyndicate

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Glauco_Venier

【Disc Review】“Miniatures. Music for piano and percussion” (2013) Glauco Venier

“Miniatures. Music for piano and percussion” (2013) Glauco Venier
Glauco Venier (piano, bells, gong)
 
MINIATURES-MUSIC FOR
GLAUCO VENIER
ECM
2016-06-10
グラウコ ヴェニエール

 イタリア人ピアニストGlauco Venierの美しいソロ作品。
 近年Norma Winstoneと行動を共にしていて、 “Distances” (2007)、 “Stories Yet To Tell” (2009)、"Dance Without Answer” (2012)でとてもしっとりとした美しいピアノを弾いていた人。
 2016年の発表ですが、録音は少し前の2013年。
 ECMではありがちなのだと思いますが、しばらくお蔵に入っていた理由はわからない、素晴らしい演奏集。
 クラシック作品のようなタイトル、確かにそんな感じです。
 長くはない楽曲、パーカッションでのインタールード的な演奏も含めて全15曲、ほぼ全曲スローテンポ。
 静かな空気感の中、現代音楽的な抽象的な演奏と、センチメンタルな演奏が交錯します。
 Norma Winstone諸作での演奏と比べるとグルーヴは抑えられ、思索的な展開が多いのですが、その分静謐、合間々に現れる美しいメロディの楽曲が際立つ構成。
 冒頭から妖しげなパーションの響きと不思議感の強いコード、静かで穏やか、が、抽象的な音の流れ。
 今にも止まりそうなスローテンポの二曲目から美しく悲し気な表情のメロディが見え隠れし始めます。
 さらに中盤の“Serenity”あたりからは少しビートが効いてきて、美しく切ないジャズ。
 が、再び抽象的で敬虔なムード音の流れ・・・、それを繰り返し、締めはとてもセンチメンタルな美しいメロディ。
 少し沈んだ敬虔な空気感、静かな空間にリバーブがたっぷり効いた美しい音が漂う、いかにも近年のECMのソロピアノ作品の色合い。
 ビートが乗ると上品で心地よいグルーヴ、疾走感が出る人だと思うので、静かな演奏ばかりなのは少々もったいない感じもするのですが、本作では穏やかな美しさが勝ります。
 Keith Jarrettソロピアノ諸作のように派手でもキャッチーでも激しくもないし、強烈なインプロビゼーションもありません。
 さらに半数の楽曲では抽象度も高いのだけども、難解だったり意味不明だったり頭でっかちだったりしない音。
 刺激が少ない分、とても穏やかな気持ちになれる優しい音。
 抽象と具体、敬虔、高尚と俗のバランスが絶妙なのでしょう。
 全編通じた美しいピアノの音とあわせて、気持ちが洗われるような穏やかで美しい空間。
 近年では出色、とても美しいピアノミュージック。
 ありそうでない、最高のバランスの名作だと思います。

 


posted by H.A.

【Disc Review】“Distances” (2007) Norma Winstone

“Distances” (2007) Norma Winstone
Norma Winstone (vocal) 
Glauco Venier (piano) Klaus Gesing (soprano sax, bass clarinet)
 
Distances (Ocrd)
Norma Winstone
Ecm Records
2008-05-27
ノーマ ウインストン

 Norma Winstone、新バンドでのECM復帰第一作。
 同じメンバー、別レーベルで”Chamber Music” (2002)といったアルバムもあるようです。
 “Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)と名作が続く端緒。
 編成は、管楽器は違えど、名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home”と同じピアノを中心としたトリオ。
 ピアノは長年の相方John Taylorではなく、イタリアのGlauco Venier
 鋭利なイメージのJohn Taylorに対して丸みを帯びた音。
 妖しさはあまり感じない、美しい音。
 零れ落ちるような繊細な音から、しっとりとした音、グルーヴに乗った演奏まで、何でもできそうなタイプ。
 ドイツのリード奏者Klaus Gesingも同じように、妖しさはほどほど、これまた何でもできてしまいそうなタイプ。
美しいピアノが作る背景と彩を加えるリード。
 静かな空間を駆け巡るようなソプラノサックスもさることながら、バスクラリネットが鳴ると、変わった音を使うわけではないのに別世界に連れていかれそうな妖しいムード。
 そんな音を背景にして、いつもながらの少し沈んだしっとりとしたボイス。
 “Azimuth” (Mar.1977)の頃と比べても変わらないようにも思えるし、さらにしっとりした感じもするし、何よりも優しくなったように感じます。
 ピアノが作る空気感の違いも大きいのかもしれません。
 楽曲はオリジナルのバラード中心にスタンダードを少々。
 何を演奏しようが歌おうが空気感は変わりません。
 ヨーロピアン・クールネスと不思議な温かみが混ざり合い漂う空気。
 この人ぐらい冬の終わりに合う音は少ないのではないでしょうか。
 ひんやりとしていて静的なのだけども、なぜか暖かな空気。
 かつての名作“Azimuth” (Mar.1977)、“Somewhere Called Home” (1986)も、そして本作も今の季節にピッタリの音。
 同質の名作“Stories Yet To Tell” (2009)、”Dance Without Answer” (2012)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】”Dance Without Answer” (2012) Norma Winstone

”Dance Without Answer” (2012) Norma Winstone
Norma Winstone (voice)
Klaus Gesing (bass clarinet, soprano saxophone) Glauco Venier (piano)

ノーマ ウインストン

 Norma Winstoneの音はいつも同じ。
 年月が経っても、齢を重ねても、メンバーが変わっても、背景を作る楽器の音色が変わっても。
 漂うような時間、緩やかな空間、曖昧な意識の中、遠くから聞こえるバスクラリネット。
 そして優しい声。
 静謐で、冷たくて、なぜか少しだけ温かい空間。
 優しい冬の音。




posted by H.A.

【Disc Review】“Stories Yet To Tell” (2009) Norma Winstone

“Stories Yet To Tell” (2009) Norma Winstone
Norma Winstone (voice)
Klaus Gesing (bass clarinet, soprano saxophone) Glauco Venier (piano)

ノーマ ウインストン

 前掲“Somewhere Called Home” (1986) から20余年。
 時代は流れ、メンバーは変われど音は同じ。
 どこか遠いところに連れて行ってくれる音。
 冷たくて、でも、少しの温もり。
 なぜか安心できるところ。
 とてつもなく美しくて悲しい響きの冒頭曲に涙。




posted by H.A.
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