吉祥寺JazzSyndicate

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Giovanni_Guidi

【Disc Review】“Avec Le Temps” (2017) Giovanni Guidi

“Avec Le Temps” (2017) Giovanni Guidi

Giovanni Guidi (Piano)
Thomas Morgan (Bass) João Lobo (Drums)
Roberto Cecchetto (Guitar) Francesco Bearzatti (Tenor Saxophone)

Avec Le Temps
Giovanni Guidi
Ecm
2019-03-21


 イタリアのピアニストGiovanni Guidi、トリオにサックス、ギターが加わる編成。
 ベースにThomas Morganが戻り、名作”This Is the Day” (2014)などを制作したレギュラーバンドなのであろうトリオを中心に、一部にサックス、ギターが加わる編成。
 柔らかくて淡い色合いの前々作”This Is the Day” (2014)と、ハイテンションで少々ぶっ飛び気味だった前作“Ida Lupino” (2016)の半ばな色合い。
 冒頭はトリオ、甘くてセンチメンタルなイタリアンメロディを、終始今にも止まりそうなスローなルバートで奏でる、強烈な浮遊感、感傷と郷愁の”This Is the Day” (2014)の世界。
 続くはスペーシーなギターと激情系サックスを加えて、これまたルバート風、フリー混じりの沈痛系。
 さらにフリー度を高め、攻撃的でハイテンションな演奏へとなだれ込み、静かなフリージャズと交錯する世界へ・・・
 そして終盤、再び甘美なルバートでのバラード、その連続、あの”Nuovo Cinema Paradiso”の世界。
 穏やかに始まり、中盤の混沌を経て穏やかに締める、一編の映画のような時間。
 紆余曲折を経て、ハッピーエンドのようなそうでもないような、懐かしさと感傷が交錯するエンディング。
 甘美なルバートでのスローバラードが続く”This Is the Day” (2014)のようだったら・・・とか何とか思いながらも、本作は少々沈痛系、激情系もいくらか。
 甘くはありませんが、やはりイタリアンシネマのよう。
 ドラマのような一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella

“Ida Lupino” (2016) Giovanni Guidi, Gianluca Petrella
Giovanni Guidi (piano) Gianluca Petrella (trombone)
Louis Sclavis (clarinet, bass clarinet) Gerald Cleaver (drums)
 
Ida Lupino
Universal Music LLC
2016-09-02
ジョヴァンニ グイディ

 イタリアンピアニストGiovanni Guidi、”City of Broken Dreams”(2013)、“This Is the Day” (2014)に次ぐECM第三作。
 前二作はオーソドックスなトリオ編成、ルバートでのバラードてんこ盛りの前作“This Is the Day” (2014)は私的大名作でしたが、本作はベースレスの変則のコンボ。
 Giovanni Guidiの作品としてみると作風は少し変った印象。
 Giovanni Guidi とGianluca Petrellaの共作クレジットの曲が多く、二人がリーダー、そのDuoにドラムがサポート、Louis Sclavisは客演で彩りを付ける役割といったイメージなのでしょう。
 Gianluca Petrellaは元Enrico Ravaバンドの人で “Tribe” (2011) で共演、おそらくイタリアン。
 Gerald Cleaverは “Wislawa” (2012) Tomasz Stankoなどに参加のアメリカン。
 Louis SclavisはECMにも諸作あるフリージャズ中心のフレンチ。 
 ベースレスの強い自由度、浮遊感は好みなのですが、ここまでの作品に参加してきた素晴らしいベーシストThomas Morganが参加していないのは残念なところ。
 冒頭からこの人の色合い、強い浮遊感、淡いメロディ。
 が、ビートは複雑ながら明確。
 淡いピアノと柔らかなトロンボーンのインタープレーが続きます。
 二曲目、Louis Sclavisが加わると少しムードが変わります。
 フリーインプロビゼーションではありませんが、穏やかなフリージャズのムードが濃厚。
 穏やかながら聞き慣れない音階を多用したような不思議感の強い演奏が数曲続きます。
 が、中盤、タイトル曲Carla Bleyの“Ida Lupino”からは少しムードが変わってメロディアスな演奏が並びます。
 とてもドラマチックなイタリア曲“Per i morti di Reggio Emilia”、オリジナル曲“Gato!”、“La Terra”と素晴らしい演奏。
 哀愁漂うメロディとほのかに明るいムード。
 定まるような定まらないような漂うビートの淡い演奏。
 ピアノとトロンボーンの柔らかな音の絡み合い。
 ところどころの思索的なフレーズの繰り返しなど、柔らかなKeith Jarrettといった面持ちもあります。
 これは桃源郷。
 哀愁と柔らかなムードはこの人ならではの色合い、根底には哀愁と明るさが入り混じるイタリアンなムードが流れているのでしょう。
 が、8曲目以降は再び深刻なムードも漂う静かなフリージャズ色が強い演奏が再び始まります。
 最終曲で再びメロディアスな漂うなバラード。
 これが出てくるとホッとするというかとても優しい心持ちなる、そんな演奏。
 とても素晴らしいエピローグ。
 アルバム一枚で何かしらのメッセージがあるのかもしれません。
 が、これを冒頭にもってきて、曲順を変えるとアルバムの印象はガラッと変わるんだろうなあ。
 冒頭から聞いてあれれ?と思った人、フリーが苦手な人は、4~7曲目を中心に聞いてみましょう。
 それらのような演奏、あるいは“This Is the Day” (2014)の穏やかでメロディアスなルバートでのバラード路線を増やして欲しかったような気もしますが、それはやりたいことの一コマでしかないのでしょうね。
 その前後のフリー路線も怖かったり不快な感じだったりではないので、しばらく聞いていると慣れる、あるいは何か新しいモノが見えてくるのかな?
 さて?

 


 posted by H.A.

【Disc Review】“City of Broken Dreams” (2012) Giovanni Guidi Trio

“City of Broken Dreams” (2012) Giovanni Guidi Trio
Giovanni Guidi (piano)
Thomas Morgan (double bass) João Lobo (drums)

City of Broken Dreams
Giovanni Guidi
Ecm Records
ジョヴァンニ グイディ


 イタリアのピアニストGiovanni Guidi、ECMでの第一弾。
 イタリアの大御所Enrico Rava バンドでStefano Bollaniの後釜、“Tribe” (2011) で素晴らしいピアノを弾いていた人。
 Ravaさんの推薦かどうかは分かりませんが、Eicherさんのお眼鏡にもかなったのでしょう。
 冒頭のタイトル曲、いきなりもの悲しいルバートでのバラードからスタート。
 柔らかなタッチ、微妙なタメが入りながら、伸びたり縮んだりフワフワと漂う音。
 まさにタイトルのような音。
 それでも悲壮感が漂うのではなくてあくまで淡い寂寥感。
 あくまで柔らかな音。
 そんな演奏がたくさんあるといいのだけど、本作では三曲ほど。
 その他、淡いメロディのジャズ、不思議なワルツ、Ornette Coleman的フリーインプロビゼーション的な演奏、その他諸々。
 全体的にはメロディが曖昧で抽象度の高い音作り。
 予測できない展開、聞き慣れない音階の使用も含めて不思議感たっぷり。
 それでも決して暗くはならないのが、さすがにイタリアの人。
 さらにフリーな部分を含めて、全編通じてピアノ、音楽ともに柔らかで淡い色合い。
 それがこの人の特徴なのかもしれません。
 なおベーシストのアメリカ人Thomas Morganは近年のECM諸作でよく見かける人。
 “Wait Till You See Her” (2008) John Abercrombie, ”Wislawa” (2012) Tomasz Stanko New York Quartet, “Gefion” (2015) Jakob Broなどなど。
 スウェーデンの名手Anders Jorminを想わせる素晴らしいベースを弾く人。
 決して派手な音は使わず、沈み込みながら穏やかなグルーブが出せる稀有な人と見ました。
 本作ではまだ手探りな感じがありますが、近い将来化けるかも。
 次作も同じメンバーでのトリオ。
 私的超お気に入りの名作、淡くて美しいメロディ、ルバートでのバラードてんこ盛りの“This Is the Day” (2014)へと続きます。




【Disc review】“Tribe” (2011) Enrico Rava

“Tribe”(2011)Enrico Rava
Enrico Rava(Trumpet)
Gianluca Petrella (trombone) Giovanni Guidi (piano) Gabriele Evangelista (bass) Fabrizio Sferra (drums) Giacomo Ancillotto (guitar)
 
Tribe
Enrico Rava
Imports
2011-11-01
エンリコ・ラバ

 イタリアのベテラントランぺッターの2011年作。
 この人、1970年代からコンスタントにアルバムを発表しており、表情はさまざま。
 マイルスっぽかったり、ロックだったり、クラシックぽかったり、フリーぽかったり、映画のサントラぽかったり。
 それでもトランペットは一貫、マイルス的なクールさに加えて、いかにもイタリアンの粋な感じ。
 さらに時折の激情感がカッコよく、スタイリッシュ。
 どのアルバムもよいのですが、近年ではこれが一番お気に入り。
 編成はピアノトリオにトロンボーンを加えたクインテットが中心。
 イタリアの若手中心なのだと思いますが、トロンボーンのGianluca Petrella、ピアノのGiovanni Guidiなどは非凡なものを感じさせますし、リズムも変幻自在でグルーブ感もバッチリ、いいバンドです。
 特に数曲で聞かれるバラードでのルバート的な展開の飽きさせることのない自然な演奏は出色もの。
 冒頭は止まりそうになるくらいに、ゆったりした美しいバラード。
 いかにもRavaさんの演りそうなイタリア映画のサントラっぽい曲。
 シンプルで肩に力が入っていない演奏ですがドラマチック。
 フィルムルノアールか恋愛ものかは、聞く人の自由で想像するとして、ほの暗く切ないストーリーや映像が浮かんできます。
 さらに二曲目も同様の質感。
 三曲目でやっと強めのリズムが入りって来ますが、あくまでクール。
 エキサイティングなトランペットソロを展開しますが、これも熱いようであくまでクール。
 さらには、怪しい系のバラード曲が続き、ここまでRavaさんの面目躍如な展開。
 数曲アップテンポな曲も入りますが、あくまでメロディアスなバラードが中心。
 どこかで息切れする曲があるだろうと思いきや、このアルバムでは最後まで映画のサントラのような、ドラマチック、あるいはロマンチックな佳曲、演奏がこれでもかこれでもかと、てんこ盛り。
 ほの暗かったり、ミステリアスであったりするだけでなく、穏やかであったり、牧歌的であったり明るいイメージも含め、さまざまな表情の音楽。
 さまざまな情景を呼び起こしてくれます。
 とても素敵な映像的な音楽。

(※本投稿は2014/03/20から移動しました。)


posted by H.A.

【Disc Review】“This Is the Day” (2014) Giovanni Guidi

“This Is the Day” (2014) Giovanni Guidi
Giovanni Guidi (piano)
Thomas Morgan (bass) Joao Lobo (drum)

This Is the Day
Giovanni -Trio- Guidi
Ecm Records
ジョヴァンニ グイディ




 
 イタリア人ピアニストGiovanni Guidi、トリオでの最新盤。
 全編あの名画”New Cinema Paradiso”のような素敵な世界。
 大御所Enrico Ravaの近年のバンドでカッコいいピアノを弾いていた人。
 さすがにいい若手を連れてきたなあ、と印象に残っていた人。
 何か凡庸では無いモノを持っているのでしょう。
 流れからすればStefano Bollaniと同じキャリア。
 南欧系だけに、基本的には明るい感じが根底に流れていて、かつてのECMレーベルのピアニストに比べると少々異質。
 でもStefano Bollaniがカラッと明るい感じなのに対して、しっとり感が強いというか、落ち着いているというか。
 ブルース色が薄くてクラシックの香りが強いのはいかにもヨーロピアンなのですが、Bill Evans系な感じではなく、さらりとした質感が現代的。
 さて、全体的にはそんな感じなのですが、さすがにECM、強烈な浮遊感のルバートでのバラードがてんこ盛り。
 これがカッコいい。
 定まっているような、定まっていないような、伸び縮みするリズムで空間を作るベースとドラム、その中を浮遊する透明感のある美しいピアノの音。
 漂うような、こぼれ落ちるような儚い音。
 どこか遠い所に連れて行ってくれそうな、なつかしいような、とても美しい演奏が何曲も。
 少々抽象的だった前作”City of Broken Dreams”(2013)と比べると、同じく淡い色合いですが、メロディがはっきりした曲が多く、ちょっと面持ちが異なります。
 このレーベルでは定番的な展開ですが、かつてのハウスピアニストSteve Kuhn, Richie Beirachあたりと比べるとなぜか爽やか、穏やか。
 狂気や妖しさに欠けるといわれればそうかもしれませんし、もっと攻撃的な演奏でないと退屈、といった向きもあるのかもしれませんが、どことなく醒めている感じ、クールな感じがいかにも今風。
 こちらの方が聞き易くて、慣れてない人も引かずに自然に聞けそうな感じ。
 曲も地味ながらキレイで上品なモノ揃い。
 オシャレなBGMとしても使えるかな?
 もし強烈な美曲が2,3曲あれば、結構な人気盤、名盤になるんだろうなあ・・・
 でもそれだとクールじゃなくて今風でなくなるのかなあ・・・
 とにもかくにも、最近の超愛聴盤。
 とても気持ちが穏やかになる静音ジャズ。
 でも、なぜか夜では無くて、昼のムードの希少盤。



posted by H.A.
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