吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Funk

【Disc Review】“Man-Child” (1974-75) Herbie Hancock

“Man-Child” (1974-75) Herbie Hancock

Herbie Hancock (synthesizer, acoustic piano, electric piano, ARP Odyssey, ARP Pro Soloist, Oberheim 4 Voice, Fender Rhodes, clavinet)
Paul Jackson, Henry E. Davis, Louis Johnson (electric bass) Harvey Mason, James Gadson, Mike Clark (drums)
Bennie Maupin (bass clarinet, alto/bass flute, saxello, tenor/soprano sax, percussion) Wayne Shorter (alto/soprano saxophones) Jay DaVersa, Bud Brisbois (trumpet) Dick "Slide" Hyde (tuba, bass trombone) Garnett Brown (trombone) Ernie Watts, Jim Horn (flute, saxophone) 
Dewayne McKnight, David T. Walker (electric guitar) Wah Wah Watson (synthesizer, voice bag, electric guitar) Stevie Wonder (harmonica) Bill Summers (percussion)
 
MAN CHILD
HERBIE HANCOCK
COLUM
ハービー ハンコック



 Herbie Hancock、ファンクフュージョン路線、ポップス寄り。
 レギューラーバンドに豪華ゲストを加えて、軽快かつゴージャスなソウル風アレンジ。
 David T. Walker、Wah Wah Watson、Stevie Wonderなど、ソフトなソウル系のアーティストも迎えて、それらしい音。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davis から五年、その色は全くなくなり、“Head Hunters” (Sep.1973)からポップになったとはいえ、前作“Thrust” (Aug.1974)まで残っていた、硬派なインプロビゼーションミュージックの色合いも薄くなりました。
 二年前のポップファンクへの転換点“Head Hunters” (Sep.1973)からの集大成、あるいは、ポップインスツルメンタルミュージックへの大転換、さらには、1950年代からのジャズ的なムードを完全に捨て去った作品ともいえそうです。
 それが時代の流れ、マニアックで気難し気で難解なモノが受け入れられなくなった時代だったのかもしれません。
 ドイツのECMレコードではまだまだこれからハードでマニアックな作品が制作されますが、それはむしろ例外。
 クリエイティブなジャズの総本山Miles Davisもそろそろ長期休養に入ります。 
 いろんな意味で、ポップなフュージョンの時代の幕開け、その象徴的なアルバムかもしれません。
 ファンキーなギターのカッティングがリズムを刻み、シンセ、エレピがメロディを奏でるポップなフュージョン。
 ワウを掛けたギターのカッティングも、“Dark Magus”(Mar.1974) バンドやJohn McLaughlinとは全く違う、軽快で洗練された質感。
 ギターのオブリガード、シンセサイザーストリングス、ホーンのアレンジ、タメと疾走が交錯するベース、16ビートの軽快感、ちょっと大仰なキメ・・・その他諸々、一世を風靡するフュージョンミュージック、ソフト系の要素がギッシリ詰まっています。
 後の日本のフュージョンやニューミュージックもここからの応用が多いのではないかな?
 ハードなフュージョンの大元はMahavishnu Orchestra、“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973) Return to Foreverあたりなのしれませんが、ソフト系はこのアルバムが大元のようにも思います。
 ソフト&メロー・・・まではもう少しかもしれないけども、ソフトで洗練された音。
 心地よさ、わかりやすさ抜群。
 ところどころで出てくるカッコいいインプロビゼーションが隠し味・・・ってもの時代の変化ですね。
 “Bitches Brew”を端緒とした終着点はこれ!
 ・・・と強弁するつもりはありません。

 この先、日本限定だったライブアルバム“Flood” (1975)は最高にカッコいい演奏だと思いますが、実は次の “Secrets” (1976)以降の作品はきちんと聞けていません。
 ちょっとポップになり過ぎて、残っていたジャズ的なムードも薄くなって、あまり好みの音ではなかったような気がするので・・・
 また機会があればと思って、数十年・・・

 



 なお、同時期、Miles門下生Chick Corea、Keith Jarrett、Joe Zawinul、John McLaughlin は、まだまだ気難しい系か激烈系。
 “Return to Forever” (Feb.1972) Chick Coreaの頃はWeather Report、Chic Coreaが先に進んでいたように思います。
 John McLaughlinもロックファンに大人気だったのでしょう。
 ポップで一般受けもする“Head Hunters” (Sep.1973)で一馬身前に出たのがHerbie Hancock。
 さらにこの期、この作品でHerbie Hancockは一気にぶっちぎり、ジャズとは違う別世界に遷移したように思うのですが。
 これを聞いて一番悔しがったのは・・・?
 ・・・・・?
 Miles Davisではないかな?


posted by H.A.  


【Disc Review】“Thrust” (Aug.1974) Herbie Hancock

“Thrust” (Aug.1974) Herbie Hancock

Herbie Hancock (Fender Rhodes electric piano, Hohner D6 clavinet, ARP Odyssey, ARP Soloist, ARP 2600, ARP String Ensemble)
Paul Jackson (electric bass) Mike Clark (drums)
Bennie Maupin (tenor/soprano sax, saxello, bass clarinet, alto flute) 
Bill Summers (percussion)

Thrust
HERBIE HANCOCK
COLUM
ハービー ハンコック



 Herbie Hancock、前作“Head Hunters” (Sep.1973)の路線継続、ポップなファンクフュージョン。
 ポップといっても、まだまだ全四曲、十分を超える長尺なインプロビゼーションも含む構成、“Head Hunters”とは兄弟のようなアルバム。
 人気曲の"Butterfly"も収録されていますが、白眉は名曲"Actual Proof"。
 意外なところでカバーされているアーティスト好みの曲なのでしょう。
 近年では全く遠い所のようなECM、"Spark of Life” (2014) Marcin Wasilewski でカバーされていました。
 オリジナルの本作は、高速ファンクに強烈な疾走感のインプロビゼーションが映える大名演。
 後のライブアルバム“Flood” (1975)での同曲は、恐ろしいぐらいカッコいいベースラインとアコースティックピアノでの凄まじいソロの大名演。
 本作でもそれに勝るとも劣らない大名演。
 あるいは“Head Hunters”の大名演”Sly”に勝るとも劣らない大名演。
 これにはMilesもビックリしたであろう(知りませんが)、ファンキーでぶっ飛んだ演奏。
 しかも端正。
 このベースは何と表現したらよいのでしょう?
 後のJaco Pastriousもびっくりのしなやかさ。
 弾みまくり、動きまくるベース。
 Paul Jackson、なかなか名前が上がってきませんが、この演奏はエレクトリックベースの名演ベスト10に入るであろう大名演。
 フルートのサポートが入り、エレクトリックピアノですが、インプロビゼーションの部分は事実上ピアノトリオ。
 ベースとエレピの凄まじいまでのチェイスとバトル、それを激しく煽るドラム。
 凄まじい演奏。
 ピアノトリオでここまで凄い演奏は、古今東西、現代の超絶技巧の若者の演奏を含めて、なかなかないでしょう。
 この曲、このインプロビゼーションだけで名アルバムでしょう。
 この作品がどの程度ヒットしたのかはわかりませんが、ポップでファンクな曲、アレンジに対して、インプロビゼーション自体はかつてのジャズ時代のムード、エキサイティング系。
 激烈、混沌に突っ込むことはない、どう演奏してもクールで端正に仕上がるHerbie Hancockの演奏。
 それでも超弩級にエキサイティング。
 次作は一曲一曲を少しコンパクトに、さらにポップにソウルっぽく仕上げた、“Man-Child” (1974-75)へと続きます。 




posted by H.A.  


【Disc Review】“Head Hunters” (Sep.1973) Herbie Hancock

“Head Hunters” (Sep.1973) Herbie Hancock

Herbie Hancock (Fender Rhodes electric piano, Hohner D6 clavinet, ARP Odyssey synthesizer, ARP Soloist synthesizer)
Paul Jackson (electric bass, marímbula) Harvey Mason (drums)
Bennie Maupin (tenor/soprano sax, saxello, bass clarinet, alto flute)
Bill Summers (congas, shekere, balafon, agogô, cabasa, hindewhu, tambourine, log drum, surdo, gankogui, beer bottle) 

ヘッド・ハンターズ(期間生産限定盤)
ハービー・ハンコック
SMJ
2016-04-27


 Herbie Hancock、大ヒット作。
 メンバーを一新してポップなファンク路線。
 ここまでの作品の気難しさ、ジャズ的なムードを一掃。
 やっと“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの呪縛から解放されたような質感。
 ジャズ的ムードを排したのはMilesのほうが早かったのですが、この時期の作品“Dark Magus”(Mar.1974) Miles Davisなどには、まだ気難しさが残っています。
 Miles門下のクリエーターたちも“Mysterious Traveller” (1974) Weather Report、“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973) Return to Forever、”Birds Of Fire” (1973) Mahavishnu Orchestra、などまだ気難しいか、激烈系。
 それらを一気に抜き去ったようなポップなムード。
 キッチリとしたビートとわかりやすいメロディについて好みは分かれるのでしょうが、マニアではない普通の人に受け入られるにはこのくらいがよかったのでしょう。
 とはいえ、ビートと全体の質感をスッキリさせただけで、LP全4曲、長尺インプロビゼーションてんこ盛り路線。
 さすがにポップな“Chameleon”、”Watermelon Man”はごちそうさまですが、”Sly”は他にはない出色のカッコよさ。
 私的にはこの一曲のみで買いですし、大仰なブレークを除けば、今の耳で聞いても古くない音だと思います。
 “On The Corner” (Jun.1972) Miles Davisを発展させたような、16ビートの軽くてファンキー、かつポリリズミックなビート感、しかも強烈な疾走感。
 Sly and the Family Stone、あるいは“Jack Johnson" (Feb.18,Apl.7,1970) Miles Davis、"Willie Nelson"のパターンの変形版ですが、ビート感、疾走感が違います。
 後追いでこの時期のMilesの未発表音源などを聞くていくと、Milesも実はこのビート感、この路線に行きたかったんじゃないのかなあ・・・と勝手に思っています。
 その上でのエキサイティングでカッコいいインプロビゼーション。
 何をやっても洗練されてしまうHerbie Hancock。
 カッチリした音楽をやってしまうと平板に聞こえてしまう感、無きにしも非ずなのですが、そのカッコよさが最大限に発揮されたトラック、だと思います。
 この曲でのエレピソロが、私が知る限りの彼のキャリア最高のソロのようにも思います。
 このアルバムが苦手な人(私もそうでした)は、CD3曲目から聞いてみましょう。
 始まって二分過ぎぐらいから、とんでもなくカッコいいグルーヴが始まります。
 これを聞いた御大Miles Davisは悔しかったのでは?大ヒットもしたようですし・・・
 それにしても、この人のレコードジャケット、何とかならないものですかねえ。
 ”Maiden Voyage” (1965)、“Speak Like a Child” (Mar.1968)は最高、前作“Sextant” (1972)はいいとしても、本作含めて他はちょっとねえ・・・
 ピアノはファンクでも激烈でも端正なのに・・・




posted by H.A.  


【Disc Review】“Fat Albert Rotunda” (May.Jun.1969) Herbie Hancock

“Fat Albert Rotunda” (May.Jun.1969) Herbie Hancock

Herbie Hancock (piano, electric piano)
Buster Williams (electric, acoustic bass) Albert "Tootie" Heath, Bernard Purdie (drums)
Joe Henderson (tenor sax, alto flute) Joe Farrell (tenor sax) Garnett Brown (trombone) Johnny Coles (trumpet, flugelhorn) Joe Newman (trumpet) Eric Gale (guitar)

Fat Albert Rotunda
Herbie Hancock
Warner Bros UK
ハービー ハンコック



 Herbie Hancock、ポップでストレートなジャズロック~ファンク。
 前作“The Prisoner” (Apl.1969)の次月の録音、似たような編成、メンバーですが、質感は全く異なります。
 TVアニメのテーマソング?として作られたのでしたかね?
 いかにもそんな感じの音。
 ホーンのアレンジもブルース、ソウルバンドのそれ。
 8ビートにノリノリのホーン陣、エレピ中心。
 ジャズメンが素直にファンクを演奏するとこうなるといった見本。
 逆に“Bitches Brew” (Aug19-21,1969)がいかに変わっていたのか、換言すればクリエイティブだったのか、改めて納得してしまいます。
 ”Maiden Voyage” (1965)、“Speak Like a Child” (Mar.1968)、“The Prisoner” (Apl.1969)が高尚なムードの映画のサントラ的な音だったのに対して、本作はカジュアルで親しみやすいいかにもTV的な音。
 目的にピッタリ、その意味ではいい仕事しています。
 それでも何曲かはノーブルな音。
 後々まで演奏される"Tell Me a Bedtime Story"のオリジナルはこのアルバム?
 “Speak Like a Child” 的な優雅さはあるのですが、ちょっとノリがよすぎるかな?
 同じくバラード"Jessica"も“Speak Like a Child”的な漂うようなバラード。
 これがカッコいいなあ。
 ファンクも悪くないですけどね。
 ピアノはさすがのカッコいい演奏の連続。
 この人の場合、何を演奏しようが端正で繊細です。
 次作はガラッと変わって“Bitches Brew” (Aug19-21,1969)な“Mwandishi” (Dec.1970)へと続きます。




posted by H.A.  


【Disc Review】“Doo-Bop” (1991) Miles Davis

“Doo-Bop” (1991) Miles Davis
Miles Davis (composer, primary artist, trumpet) 
Easy Mo Bee (performer, producer) Deron Johnson (keyboards) J.R, A.B. Money (performer) and others
 
ドゥー・バップ
マイルス・デイヴィス



 Miles Davis、制作途上だったHip Hopアーティストとのコラボレーション作品。
 逝去する前にどこまでが出来ていたのかはわかりませんが、全体の完成度は高く、在命中に世に出ていたとしても概ねこの形だったように推察します。
 復帰作“The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)からのファンクフュージョン路線が、ポップな色合いを強くしながら前作“Amandla” (Dec.1988-1989)で終了し、1990年代ファンクの端緒となるはずだった作品。
 Hip Hop、ポップでデジタル臭の強い演奏ではありますが、やはりMiles Davisの音楽になっていると思います。
 軽快なビート、もの悲し気なコードチェンジのループの中を泳ぐような哀愁漂うミュート。
 全編ミュートでの抑えたインプロビゼーション。
 強烈に吹いていない分だけ、あのクールなMiles Davisが戻ってきたようにも感じます。
 クールで淡々とした背景の中を、ただただ淡々としたクールなトランペットが泳ぐ空間。
 ジャズとかなんとかといったカテゴライズは無用でナンセンスなもので、シンプルにあの時代に求められていたヒップでクールな音がこれだったのかもしれません。
 2017年から見てこれが新しい音なのかどうかは判断できませんが、確かに心地よい音。
 もしまだMilesが存命で、演奏できる状態だったとすれば、やはりHip HopなRobert Glasperの“Everything's Beautiful” (2015)、”ARTSCIENCE” (2016)のようなサウンドを作ったのか、それとも全く別の誰かと組んで全く別の音を作っていたのか・・・?
 そんなことを想像してしまうのもこの人の作品ならでは。
 やはり今の時代ならRobert Glasperなんでしょうかね?
 それでは意外性が無くて・・・

 ・・・とかなんとか・・・・・・・
 ジャズ界の大巨人の最後の作品としてのゴージャスさには欠けるのかもしれません。
 が、出来上がったサウンドに満足することなく、新しいものを求めて最後まで変化し続けたMiles Davisの終り方としてはカッコいいように思います。
 いつも完成度が高いようで、その実、未完成で、次の展開を模索していたMilesらしい遺作。
 その余白を埋めるのは聞く側の想像力のみ・・・


 

posted by H.A.
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