吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Francois_Couturier

【Disc Review】“Nuit Blanche” (2016) Tarkovsky Quartet

“Nuit Blanche” (2016) Tarkovsky Quartet
François Couturier (Piano)
Jean-Louis Matinier (Accordion) Anja Lechner (Cello) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)

Nuit Blanche
Tarkovsky Quartet
Ecm Records
2017-02-17

 
 フランスのピアニストFrançois Couturier率いるカルテットのECM第三作。
 “Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)と時間を空けて制作を続けています。
 基本的な質感は変わりません。
 クールな音の流れ、強いクラシック色、静謐で上品、全編ゆったりとしたテンポの寂寥感の強いメロディ。
 悲し気で深刻なようで、なぜか穏やかな音。
 作品が新しくなるにつれ、尖っていた部分が丸く穏やかになっているようにも感じます。
 Andrei Tarkovskyへのオマージュのコンセプトは変わっていないのだと思いますが、“Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)の氷、あるいはカミソリのような冷たく鋭い質感は薄くなり、本作は牧歌的な空気すら感じる穏やかさ。
 “Tarkovsky Quartet” (2011)のようにメロディアスな演奏も多いのですが、淡い色合いで牧歌的。
 この人独特の不安感を煽るような音の流れ、沈痛さ、暗さが薄らぎ、非日常感もほどほど。
 ある意味、現実の世界に戻って来た音のように感じます。 
 さらにサックス、アコーディオンがフィーチャーされる場面が増え、ECMで制作を始める前、“Music for a While” (2001,2002)あたりのバランスが戻ってきた感じ、スケールアウトを多用していたピアノもオーソドックスな動きに納まってきた感じも、大きな変化なのかもしれません。
 奏でられるのは穏やかなメロディ、オーソドックスな音の流れのピアノと4者対等なアンサンブル。
 ピアノが前面に出るここまでのECM諸作とは少々面持ちが異なります。
 それも冷たさ、鋭さが抑えられ、マイルドになったと感じる理由かもしれません。 
 全17曲、半数程度を占める1~2分の短いインタルードのような曲、あるいはインプロビゼーションが散りばめられており、何かしらの物語があるのだろうと思います。
 タイトルは「眠れない夜」の意?
 決して深刻な感じではなく、気持ちは穏やかながら、なんとなくモヤモヤっとした空気感の夜であれば、ピッタリな音。
 なんだかんだで夢と現の狭間の非現実感。
 少し覚醒に比重が寄った感じ、・・・かもしれません。

 


posted by H.A.

【Disc Review】“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier

“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier
Anja Lechner (cello) Fracois Couturier (piano)
 


 ドイツのチェリストAnja Lechner、フランスのピアニストFrançois CouturierのDuo作品、本作はクラシック寄りのECM New Seriesレーベルから。
 お二人は“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)などで共演済。
 二人とも他のアーティストとの共演も多く、現代のECMのクラシック寄りの作品には御用達の人。
 この二人で、トルコのKomitas、アルメニアGurdjieff、スペイン?のMompouといった、思想家&音楽家?の楽曲を演奏したアルバム。
 企画から予想されるそのままの敬虔な音、静謐な空間に響くチェロとピアノの絡み合い。
 同じような企画、編成では“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos、あるいはチェロとピアノのDuoでは“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad, David Darlingなど、定番企画のひとつ。
 近い感じではあるのですが、わかりやすい楽曲、演奏が揃っています。
 Gurdjieff3曲、Komitas1曲、Mompou3曲にFracois Couturier3曲。
 どれもゆったりとしたテンポ、悲し気なメロディですが、“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)と比べると、重々しさ深刻さが薄く、軽快なイメージ。
 楽曲の影響が大きいのでしょう。
 さらに、同じくクラシック色が強いヨーロピアンジャズピアニストでも、タメとグルーヴが効き、感情的なモノも前に出るVassilis Tsabropoulosに対して、あくまでクールで淡々としたFracois Couturierといった違いでしょうか。
 Gurdjieff、Komitasの楽曲は厳かな表情。
 対してMompouの楽曲は古典ながらなぜか現代のポピュラーミュージック的な印象。
 Keith Jarrettのソロピアノで出てきそう場面もちらほら。
 たっぷりとリバーブが効いた美しい音、少し線が細めな感じがクールなピアノが映える楽曲が並びます。
 無音、空白の空間の中、あるいは静かにチェロが鳴る空間の中、ピアノの高音が心地よく響きます。
 あるいは、わかりやすいメロディ、コードを背景にすると、頻繁にスケールアウトするフレーズの美しさが際立ちます。
 Anja Lechnerのチェロはいつもながらに表情豊か。
 前後上下左右、強弱長短、自在に伸び縮みする音と優しげな表情。
 Fracois Couturierの沈痛なメロディに乗った“Voyage"などは、今にも泣きだしそうな悲し気な音、昂ぶる感情が乗ったような素晴らしい演奏。
 などなど含めて、アルバムとしての統一感を保ちながらもさまざまな表情の楽曲。
 クラシックと静かなフリージャズな空気感が交錯する、かつ、わかりやすい、素晴らしい演奏が続きます。
 クラシカルで精神的で宗教的で・・・だけではない、ジャズの耳で聞いてもとても心地よく聞ける音。
 Anja Lechner、あるいはFracois Couturierの作品を聞くならば、意外にこのアルバムからがわかりやすくていいのかもしれません。
 俗な私が知る限り・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Tarkovsky Quartet” (2011) François Couturier

“Tarkovsky Quartet” (2011) François Couturier
François Couturier (Piano) 
Jean-Louis Matinier (Accordion) Anja Lechner (Cello) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)
 
Tarkovsky Quartet
Francois Couturier
Ecm Records
2011-07-26


 フランスのピアニストFrançois Couturierのロシアの映画監督Andrei Tarkovskyへのオマージュバンド。
 オマージュ作品自体は先に“Nostalghia- Song For Tarkovsky” (2005)がありますが、そのメンバーでTarkovskyを冠したバンドとしたようです。
 前作に当たるソロピアノ作品も“Un jour si blanc” (2008)もTarkovsky オマージュ色は強く、その思い入れたるや・・・本作もそうなのでしょう。
 “惑星ソラリス”ぐらいしか知らない立場としては、あまり突っ込んだコメントはしづらいのですが・・・
 ともあれ、先のカルテット作、ソロ作と同様に、静かながら陰影に富んだ音。
 無音、空白の時間が目立つ空間に、四人が発する静謐で繊細な音が絡み合う音の流れ。
 とても美しく悲しげなメロディと、広い空間に響く透明度の高いピアノの音。
 多用されるスケールアウト、不協和音までが美しく聞こえるこの人ならではの音使い。
 静かに背景を付けるアコーディオンのノスタルジックな響き。
 強烈な陰影をつけるチェロ。
 思い出したようにフロントに立ちリードするサックスがアクセント・・・
 全てゆったりとしたテンポ。
 強い感情の起伏もなくなく、あくまでクールに淡々と過ぎていく時間。
 前作“Nostalghia” (2005)に比べるとメロディ、コードが明確な曲が多く、よりわかりやすく、さらに全体的に丸く穏やかに、明るくなっているように思います。
 中盤以降に少々の毒気はありますが、フリージャズの面持ちは強くありません。
 難解さ、不思議感は少々薄らぎましたが、それでいて十二分にアーティスティックな時間。
 フランス勢を中心に、チェリストはドイツ人。
 静謐で悲し気、沈痛な感じもあるのですが、なぜか暗かったり、絶望的だったりはしません。
 フレンチ中心のバンドゆえ、あるいは現代の空気感ゆえでしょうか?
 白い壁、柔らかな明かりがある、人気の少ない現代美術の展示会が似合いそうです。
 Tarkovsky的かどうかについては他の人にお任せしますが、休日の午前~午後あたりにピッタリ合う音。
 穏やかで上質、かつ非日常的な時間が過ぎていくはず。
 たぶん。

 


posted by H.A.




【Disc Review】“Music for a While” (2001,2002) François Couturier, Jean-Louis Matinier, Jean-Marc Larché

“Music for a While” (2001,2002) François Couturier, Jean-Louis Matinier, Jean-Marc Larché
François Couturier (Piano) Jean-Louis Matinier (Accordion) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)
 
Music for a While
Francois Couturier & Matinier
Emouvance
2008-04-01


 フランスのピアニストFrançois Couturier、ECMで“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)を制作したTarkovsky Quartetから、チェリストが抜けたトリオ編成での作品。
 名前からして全員フランス人、レーベルもフランスから。
 ECMではクラシック色が強い色合い、徹底してロシアの映画監督Andrei Tarkovskyへのオマージュですが、その前はどうだったのか気になるところ。
 クラシック成分はほどほど、不思議感120%のフリージャズ。
 冒頭曲”Ouverture: Mozart au paradis”(楽園のモーツアルト?)からいきなり美しい高音のピアノの不思議な音階。
 妖し気な空気感の中、不思議な三者の絡み合い。
 ECM作品ではあまり前に出ないサックスを含めて、ECMではパイプオルガンのように聞こえたアコーディオンもここではやんちゃ系、ピアノも美しさはそのまま、音が強い感じ。
 ビートが定まった時間は長いのですが、連続する不協和音、聞き慣れないコードの流れの中、不安感を煽るような三者のインプロビゼーションが続きます。
 ソプラノサックスが牧歌的に響く場面があったり、おどけた表情の演奏があったりもしますが、全編を通じて不思議、不安感は消えません。
 それでも暗かったり絶望的だったりはしないのは、フレンチバンドゆえの色合いでしょうか?
 激烈に叫んだりする場面もほとんどありません。
 また、最後に冒頭曲をリフレインしたバラード演奏、その名も”Epilogue:Requiem”が収められています。
 ピキピキパキパキした美しいピアノの音、François Couturierのカッコよさが凝縮されたような演奏。
 ってな感じで、入口と出口は明確ですが、間は迷宮の連続。
 少々手ごわい、非日常的迷宮型フリージャズ、静謐版。
 この後、チェリストAnja Lechnerを加えECMでの制作を開始、これまた不思議感120%、とても静かな“Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)へと続きます。
 個々のアーティストの演奏自体はあまり変わらないのかもしれませんが、アルバムのイメージは全く異なります。
 ECMマジックはこの期も健在のようですね。




posted by H.A.


【Disc Review】“Un jour si blanc” (2008) François Couturier

“Un jour si blanc” (2008) François Couturier
François Couturier (Piano)

Un Jour Si Blanc (Ocrd)
Francois Couturier
Ecm Records
フランソワ・クチュリエ


 フランスのピアニストFrançois Couturier、ピアノソロ作品。
 本作も“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)と同様に、映画監督アンドレイ・タルコフスキー、あるいはバッハ、詩人ランボーに捧げた曲が収録され、解説には画家のミロ、カンディンスキーなどの名前も見られます。
 他にもタルコフスキーに絡む作品が複数、その他含めて、アートからインスパイアされるモノを音にしていくのがこの人のスタイルなのでしょう。
 編成は変われど“Nostalghia” (2005)と同様の質感。
 悲しげな音、静謐な空気。
 全てスローテンポ、漂うビート。
 とても美しいピアノの音。
 抽象的な音の流れの中から突然現れる美しいフレーズ、具体的なイメージ。
 音的には静謐なフリージャズ、現代音楽の世界。
 譜面があるのかもしれませんが、降りてきたイメージをそのまま音にした感じでしょうか。
 もちろん“Nostalghia” (2005)と同様、ジャズとして聞くことは難しいのですが、本作の方が躍動感はあるかもしれません。
 その意味では、あるいは全体を通じて重くないので、本作の方が好み。
 メロディやコード、ビートを追うのではなく、静かで美しいピアノ響きをそのまま浴びるにはいい作品。
 甘口ではありませんが、痛みや辛さはありません。
 心地よいかどうかは人それぞれ。
 ジャケットのアートそのまま、薄暗い空間に淡い光を放つ美しいピアノの音が零れ落ちてくるような時間、空間。
 非日常的世界に浸れる音。




posted by H.A.

【Disc Review】“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005) François Couturier

“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005) François Couturier
François Couturier (Piano)
Jean-Louis Matinier (Accordion) Anja Lechner (Cello) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)

Nostalghia: Song for Tarkovsky
Francois Couturier
ECM
フランソワ・クチュリエ


 フランスのピアニストFrançois Couturier。
 ウード奏者Anouar Brahemの“Khomsa” (1994)、 “Le Pas du Chat Noir” (2001)、“Le Voyage de Sahar” (2006)で、透明度の高い美しいピアノを弾いていた人。
 本作は映画監督アンドレイ・タルコフスキーに捧げたアルバム。
 “Sacrifice”、“Nostalghia”、“Solaris”、”Andrei”、など、映画、それにちなんだ題名の曲が並びます。
 ピアノを中心として、アコーディオン、サックス、チェロが彩を添える構成。
 全編、静謐、とても悲し気で幻想的な空気。
 どの楽器も強く音を出す場面はわずか。
 リーダーのピアノ含めてビート感は弱くクラシック的。
 透明度の高い美しい音、舞い落ちるような、探るような繊細な音使い。
 全てスローテンポ。
 漂うビート。
 抽象的な音の流れと美しい音が交錯する展開が続きます。
 フリージャズ、あるいは現代音楽のような静かな混沌の中から突然現れる美しいピアノの音、美しいメロディ。
 沈痛なムード、倦怠なムードの中に突然現れる弱い光。
 その繰り返し。
 内省的といった軽いニュアンスではなく、心の中の深いところを覗き込むような音。
 決して意味不明な抽象ではないのですが、甘さはゼロ。
 非日常的な音。
 ジャズとして聞くには少々無理がありそうですが、静かで美しいこの世とは違う別世界のような空気感。
 タルコフスキーファンにはたまらない音なのでしょう。




posted by H.A.
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