吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

European

【Disc Review】“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet

“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet
Tomasz Stanko (Trumpet) 
David Virelles (piano) Reuben Rogers (bass) Gerald Cleaver (drums)

December Avenue
Tomasz Stanko
Ecm Records
2017-04-14


 ポーランドジャズの親分?Tomasz Stanko、New York Quartet名義での第二作。
 前作“Wislawa”(2012)はオーソドックスな現代的ジャズピアノトリオとちょっとひねくれたトランペットの共演・・・そのままの音でしたが、本作はバラードが中心、少し面持ちが異なります。
 アップテンポな曲もありますが、前作のバラード部分の比重が大きくなりました。
 漂うようなフリーなビートに寂寥感の強いメロディ。
 枯れた味わいが強くなってきた、渋いトランペット。
 冒頭から今にも止まりそうなスローなビートを背景にして、トランペットがフワフワと漂う展開。
 何曲か収められたルバートでのバラードは、ECM、あるいはこの人の真骨頂ですが、かつてのような激情を爆発させて叫ぶ場面はほとんど無くなりました。
 代わりに、前作ではしおらしかった、キューバ出身、いまやECMアーティストのピアニストDavid Virellesが暴れています。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりもらって、さらに免罪符がもらえたのか、一気に爆発して激烈フリーへ、なんて場面もいくらか。
 美しい音、オーソドックスなサウンドの中で不思議な音の流れは、さすがECMのピアニスト、ただモノではない感じが漂っています。
 数曲のアップテンポでは、元気溌溂なピアノトリオを背景にした淡々とした印象のトランペット。
 かつての”Balladyna”(1975)のような、血汗が飛び散りそうなほど激烈な作品を作ることはもう無いのでしょうし、”Suspended Night”(2003)前後の諸作のように、バラード中心でも緊張感の高い演奏もないのかもしれません。
 穏やかにリラックスした風のTomasz Stankoサウンド。
 かつてと比べると著しくマイルドになったものの、全編を通じたハードボイルドなムードは、あの時代の東欧でフリージャズをやっていた人ならではの凄みなのでしょう。
 いずれにしてもECMとしては少々異色、渋くてまずまずオーソドックスな現代ジャズな作品。
 毒気はほんのわずか、ほんの気持ちだけしびれるぐらい。
 妖しさもほんの少し。
 かつての戦士の、穏やかで落ち着いた一作。




(1970) Music For K

(1972) “Jazzmessage from Poland”
(1973) “Purple Sun”
(1974) “Fish Face”
(1975) “TWET”
(1975) “Tomasz Stańko & Adam Makowicz Unit”
(1975) “Balladyna
(1976) “Unit with Adam Makowicz”
(1976) “Satu” Edward Vesala

(1978) “Live at Remont with Edward Vesala Quartet”
(1979) “Almost Green”
(1980) “Music from Taj Mahal and Karla Caves”
(1983) “Stańko”
(1984) “Music 81”
(1985) “A i J”
(1985) “C.O.C.X.”
(1986) “Korozje” with Andrzej Kurylewicz
(1986) “Lady Go…”
(1988) “Witkacy Peyotl / Freelectronic”
(1988) “The Montreux Performance aka Switzerland”
(1989) “Chameleon”
(1989) “Tomasz Stańko Polish Jazz vol. 8”
(1991) “Tales for a Girl, 12, and a Shaky Chica”
(1992) “Bluish”
(1993) Bosonossa and Other Ballads
(1994) “Balladyna”
(1994) “A Farewell to Maria”
(1996) “Roberto Zucco”
(1995) Matka Joanna
(1996) Leosia
(1997) Litania:Music of Krzysztof Komeda
(1999) From theGreen Hill
(2001) “Reich”
(2001) “Egzekutor”
(2002) Soul of Things
(2004) Suspended Night
(2005) “Wolność w sierpniu”
(2006) Lontano
(2009) Dark Eyes
(2013) Wisława
(2016) December Avenue


posted by H.A.


【Disc Review】“Alba” (2015) Markus Stockhausen, Florian Weber

“Alba” (2015) Markus Stockhausen,  Florian Weber
Markus Stockhausen (trumpet, flugelhorn) Florian Weber (piano)

Alba
Markus Stockhausen
Ecm Records
2016-05-20


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen、同じくドイツのピアニストFlorian WeberとのDuo作品。
 もともとクラシックの人、ジャズ系を演奏する際は、エレクトロニクスを交えた近未来サウンド、トランペットはMiles Davisなクール系といったイメージでしたが、本作はアコースティックオンリーでの、静謐系コンテンポラリージャズ。
 それも静謐度高めのメロディアスな音の流れ。
 楽曲は概ね二人で分け合っていますが、いずれも穏やかで淡い色合いのしっとりしたメロディ揃い。
 現代音楽~フリージャズな作品は聞いていないのですが、“Karta” (1999)や“Electric Treasures” (2008)あたりのフューチャージャズ~激烈系のイメージが強くて、ここまで静かに淡々とメロディアスに演奏されてしまうと、面食らってしまうというか、何というか・・・
 クラシックの色も強い丁寧な音使いのピアノと、同様に丁寧に音を紡いでいくクールなトランペット。
 二人とも派手な音使いはありませんが、キリっとした、かつ落ち着いた演奏。
 リズム隊なしでビートの制約がないだけに、二人で自由に漂うような演奏が続きます。
 自由ですがフリージャズ色は全くなし。
 あくまでメロディアスで少々センチメンタル、時に牧歌的。
 もちろんインプロビゼーションを含めた演奏力は折り紙付き。
 このレーベルにありがちな夜な空気感、あるいは、暗さや深刻さもなく、毒気もありません。
 さらに、ベトつくような甘いメロディもなく、あくまで淡い色合い、穏やかで爽やか。
 昼でもなく、朝な音。
 一曲目のように全編ルバートのスローバラードばかりだったりすると、気持ちよくて二度寝してしまいそうですが、ほどよくキリっとしているし、長い演奏もないのが朝にはいい感じ。
 澄んだ空気が流れていくような、淡々とした音の流れ。
 平日の朝には穏やか過ぎるのかもしれませんが、休日の朝のBGMにすると、上品で上質な一日が始まるかも。たぶん。

※唯一?夜な曲。

【Disc Review】“Electric Treasures” (2008) Markus Stockhausen

“Electric Treasures” (2008) Markus Stockhausen
Markus Stockhausen (trumpet, electronics)
Vladyslav Sendecki (keyboards, piano) Arild Andersen (bass, electronics) Patrice Herl (drums, percussion, voice, electronics)

Electric Treasures
Markus Stockhausen
Aktiv
2008-08-04


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen のライブアルバム。
 クラシックがメインの人?なのだと思うのですが、ECMでも“Karta” (1999)などのリーダー作、客演含めていくつかの作品があります。
 本作はデンマーク?のレーベルから。
 10年ほど前の作品“Karta”に近いメンバーでのワンホーンカルテット。
 ノルウェーのスーパーベーシストArild Andersenと縁が深いようで、そのド派手で強烈なグルーヴのジャズベースと、電子音を多用した近未来サウンド、Miles Davis的なクールなトランペットの取り合わせが、私が知る限りの特徴的なところ。
 本作もそんな一作、但し、“Karta” と比べると随分穏やかです。
 とてもとても心地よいコンテンポラリージャズ。
 CD二枚、全11曲の組曲。
 寂寥感と哀愁感の強いメロディ、静かな電子音とヒタヒタと迫ってくるビート。
 こらまた静かながら縦横無尽に動きまくるベースに、Miles Davis的なクールなトランペット。
 音楽が進むと徐々にビートが強くなり、例のド派手なベースとギターの代わりのグチョグチョシンセサイザーが暴れる場面もありますが、そんな場面もスッキリした印象。
 電子音が先行しても決して無機質にはならない、激しい演奏になってもうるさくはならないのは、最高のベースとドラムゆえでしょうか。
 近未来的な音、激烈なフリージャズ、ルバートでのスローバラード、アコースティック4ビート、その他諸々、コンテンポラリージャズでありそうな構成が全部突っ込まれたような演奏群。
 さらにドラマチック。
 1970年代ECM、Eberhard Weberの諸作を想い起こします。
 CD二枚目、後半のステージになると激しさ、アバンギャルドさ、あるいはエスニックな色合いも増してきますが、それらもドラマの一端。
 最後は幻想的なムードからオープンホーンで奏でられるちょっとベタつき気味のセンチメンタルなメロディ、徐々に盛り上がりつつも悲し気な表情で幕。
 とにもかくにも、静かな場面から激しい場面まで、全編ですさまじいArild Andersenのベース。
 もちろんリーダーもクールで端正な素晴らしい演奏。
 最初から最後まで、難解な部分なし、長尺、二時間、二枚組がスルっと聞けてしまう素晴らしい演奏。
 隠れた名作です。

※少し前の時期の別のバンドから。


posted by H.A.

【Disc Review】"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto

"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto
Enrico Pieranunzi (Piano) Enrico Rava (Trumpet) Enzo Pietropaoli (Bass) Roberto Gatto (Drums)

Bella
Enrico Rava
Philology
2009-04-01


 イタリアンのバンドによる、ほどほどオーソドックスでとても美しいトランペットカルテット。
 2016年あたり?に再発された名作。
 Enrico Pieranunzi, Enrico RavaのDuo作品では名作“Nausicaa” (1993)がありますが、本作ではキッチリビートが入って、そちらよりも元気溌剌、よりジャズ的な音。
 美しくて、センチメンタルで、それでも明るいジャズ。
 ECMのEnrico Rava諸作よりも音の明度が高くきらびやかですが、そちらはお好み次第。
 一般受けするのはこちらなのでしょうねえ。
 コンテンポラリージャズよりもオーソドックスなモダンジャズといった質感、オシャレなイタリアンが演奏したヨーロピアンモダンジャズ、ってな感じでしょうか。
 この後しばらく共演するStefano Bollaniよりも落ち着いたまろやかなピアノ。
 それでいてきらびやかな音。
 少々漂う狂気も計算された感じで、あくまで端正で美しい余裕たっぷりの音使い。
 Enrico Ravaは悠々とした吹きっぷり。
 ECMでのこの人のイメージはくすんだ真鍮だと思うのですが、本作では艶やかで明るくきらびやか。
 これ見よがしの派手さや妙な音は使わない端正な演奏ですが、相変わらずの表現力。
 抑揚に微妙な音の変化に、抜群のリズムへのノリ。
 オーソドックスなジャズを演奏してもやはりスーパートランペッターです。
 楽曲はEnrico Rava, Enrico Pieranunziの美しくセンチメンタルなオリジナルにスタンダードを少々。
 さすがにごちそうさまな “My Funny Valentine”が二テイク入っていることには一瞬引いてしまいますが、Take2はフリー混じりのカッコいい演奏。一番妖しげな演奏がそれだったりして。
 白眉はEnrico Ravaの名曲“Secrets”でしょうか。
 フリーな感じのビート、ルバート的なスローバラードから始まり、徐々にテンションと音量を上げていくドラマチックで長尺な演奏。
 その他含めて、全編艶やかできらびやかなトランペットとピアノの絡み合い。
 ドラム、ベースも控えめながら素晴らしい演奏。
 とても柔らかで艶っぽいジャズ。
 ネコのポートレートのあまりにも平和な感じなジャケットはどうかと思うのですが、確かにそんな音かもしれません。




posted by H.A.

【Disc Review】“Nightfall” (2015) Quercus

“Nightfall” (2015) Quercus
June Tabor (voice) Iain Ballamy (tenor, soprano saxophones) Huw Warren (piano)

NIGHTFALL
QUERCUS
ECM
2017-04-28


 イギリスのボーカリストJune Tabor率いるQuercusのECM作品。
 前作は“Quercus” (2006)。
 その作品名をバンド名とし、他のレーベルはチェックしていませんが、ECMでは10年ぶりの制作。
 メンバーも音の雰囲気も変わりません。
 静謐に、透明に、ジャジーに、ECMコーティングされたブリティッシュフォーク。
 美しいピアノと、“Ballads”(Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)なColtrane、あるいはCharles Lloydなサックス。
 淡々と語るクールで乾いたボイス。
 全編スローなテンポ、おそらくブリティッシュ周辺の曲であろうトラディショナル曲が半数。
 遠い所を眺めるような、どこか懐かし気な音・・・・
 ってな感じで、”Quercus” (2006)と同じ形容になってしまう、一貫性のある音。
 さり気なく収められたジャズスタンダード”You Don't Know What Love Is”, “Somewhere”、あるいはBob Dylanナンバーも、すっかりその空気感の中に取り込まれ、全編通じて遠い所を眺めるような音。
 前作と比べると、少々勇まし気な音の流れのトラディショナル曲が目立つかもしれません。
 ブリティッシュエスニックなんてのがあるとすれば、そんな感じなのかもしれません。
 そんな曲は映画” Braveheart”な雰囲気。
 ま、不勉強な私は、スコットランド、イングランド、ブリティッシュの関係がきちんと整理ができていないのですが・・・
 ともかくにも、全編淡々としている分、気持ち穏か、じわじわときます。
 タイトル通りに”夕暮れ時”な空気感。
 これを聞きながら、静かに歴史のお勉強でもしてみましょうかね・・・


※別アルバム収録のBob Dylanナンバー。
 本アルバム収録バージョンはサックスが載ってくる分、もう少しジャジー。
 それもECMマジックですかね?


posted by H.A.



Profile
記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ