吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

European

【Disc Review】“Eros” (2016) Omar Sosa, Paolo Fresu

“Eros” (2016) Omar Sosa, Paolo Fresu 

Omar Sosa (piano, keyboards, percussion, vocals, programming) Paolo Fresu (trumpet, flugelhorn, multi-effects, percussion)
Natacha Atlas (voice) Jaques Morelenbaum (cello) 
Anton Berovski, Sonia Peana (violin) Nico Ciricugno (viola) Piero Salvatori (cello)

Eros
Omar Sosa
Ota Records
2016-10-14


 キューバのピアニストOmar Sosa、イタリアのトランペッターPaolo Fresuの双頭リーダー作。
 “Alma” (2012) Paolo Fresu, Omar Sosaに続く二作目。
 前作と同様にブラジルのJaques Morelenbaum、さらにベルギーのボーカリストがフィーチャーされ、ストリングスカルテットがサポートに入ります。
 かつてのキューバンジャズファンクの闘士、スタイリッシュジャズのイタリアンが奏でる、穏やかで優しい音。
 前作に比べて、強烈な浮遊感が全体を覆います。
 キューバ、アフリカ、南米、ヨーロッパの色合いが混ざったどこか懐かしいメロディ、時間の流れが遅くなったようなゆったりした音の動き。
 夢の中を漂うような電子音、ピアノを背景にした、訥々としたミュートトランペットの動きがまどろみを誘い、オープンホーンでの流麗な動きが現実に引き戻す、そんな時間が続きます。
 ビートが定まっても止まない浮遊感。
 さらにチェロ、ストリングスが揺らぎを加え、幻想的な女性ヴォイスが交錯する、白日夢のような時間。
 遠い所を眺めるような、遠い所から聞こえてくるような、どこか懐かしい音。
 静かで優しい、そしてセンチメンタルな時間。
 大人の子守歌。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bridges” (2015) Adam Baldych

“Bridges” (2015) Adam Baldych

Adam Bałdych (Violin)
Helge Lien (Piano) Frode Berg (Bass) Per Oddvar Johansen (Drums)

 ポーランドのバイオリニストAdam Bałdych、カルテットでのコンテンポラリージャズ。
 サポートはノルウェーの名手のピアノトリオ。
 オーソドックスな編成ですが、普通のジャズ~コンテンポラリージャズとは少々質感が異なります。
 基調はジャズですが、クラシック、ヨーロピアントラディショナルの強い香りが漂う、繊細かつドラマチックな音。
 中心となるオリジナル曲は、エキゾチシズムを漂わせながらの憂いを含んだメロディ。
 後ろ髪を引かれるようにタメを効かせて置かれていく繊細なピアノと変幻自在に動き回るバイオリン。
 どこかに飛んで行ってしまいそうなバイオリンを現実に引き戻すかのようなピアノ。
 美しく繊細なピアノの音に導かれて静かに始まり、徐々にテンションを上げ、楽曲の終盤にはドカーンとくるドラマチックな構成の楽曲がたくさん。
 全編通じてハイテンションです。
 インプロビゼーションだけでなく、それらの抑揚感を含めて計算し尽くされたような完成度。
 全体を漂う非日常的なエキゾチシズムと哀しい音の流れは、どこか遠い時代の遠い所から聞こえてくるようにも感じるし、ドラムを中心とする乾いたビート感はいかにも現代の音のようにも聞こえます。
 哀しく、どこか懐かし気で、ドラマチックな東欧コンテンポラリージャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

Adam Baldych (violin) Yaron Herman (piano)

The New Tradition
Adam Baldych & Yaron Her
Imports
2014-06-10


 ポーランドのバイオリニストAdam BaldychとイスラエルのピアニストYaron HermanのDuo作品、ドイツのACTレーベルから。
 静謐と激情が交錯する時間。
 クラシックの色合いが強いヨーロピアンなテイストのピアノに、こちらもクラシックがベースなのだろうけども、地中~中近東の香り、ヨーロピアントラディショナルな香りも強いバイオリン。
 強い哀愁が漂うメロディと少し沈んだ空気感、強い緊張感は、このレーベルの雄、Lars DanielssonLeszek Mozdzerの諸作を想い起こします。
 それらと同様に、美しく冷たく硬質なピアノを背景にした、太い音の激情バイオリン。
 あくまでメロディアスなフレーズを紡いでいき、徐々に高揚しつつピークに達するスタイル。
 たった二人の決して大きな音ではない演奏ながら、とてもドラマチック。
 終始哀し気で少々深刻系の空気感はポーランドジャズの人の色合い。
 とてもハイテンションで躍動感が強い音、それでいて静かで美しい、現代バイオリンジャズの一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

Florian Weber (piano)
Linda May Han Oh (double bass) Nasheet Waits (drums)
Ralph Alessi (trumpet)

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


 ドイツのピアニストFlorian Weberのトランペット入りカルテット、ECMでの初リーダー作。
 “Alba” (2015) Markus Stockhausenでとても静かで穏やかな演奏していた人。
 サポートはアメリカンRalph Alessi、そのバンドのドラマーNasheet WaitsのECM御用達の人たちに、知る人ぞ知る強烈なアジア系女性ベーシストLinda Oh。
 “Alba” (2015)とは面持ちを変えて、自由に激しく動きつつも、少し線が細めの繊細な音。
 静かなフリービート時間が中心。
 美しい音で美しいメロディを奏でるピアノ、それに寄り添いときおり強烈な推進力のベース、自由にアクセントをつけていくドラム。
 夢と現実を行き来するような時間。
 数曲で加わる覚醒を促すような鋭いトランペット、ときおりの激しいビート。
 が、テンポと音量が下がると、また夢の中・・・
 ”水”をテーマにした楽曲を集めたようで、確かにそんな演奏が続きます。
 1970年代ECMとは全く違う質感、21世紀型ECMの穏やかで優しい、繊細な音。
 美しさと妖しさはそのまま。
 とてもわかりやすいのですが、メロディが甘すぎたりセンチメンタルに過ぎたりしない、クールな色合いなのも現代的なのでしょう。
 静かなヨーロピアンコンテンポラリージャズ、その21世紀型ECMな音、これまた白日夢系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

Wolfgang Muthspiel (guitar)
Brad Mehldau (piano) Larry Grenadier (bass) Eric Harland (drums)
Ambrose Akinmusire (trumpet)

WHERE THE RIVER GOES
WOLFGANG MUTHSPIEL
ECM
2018-10-05


 オーストリアのギタリストWolfgang Muthspiel、ECMでのリーダー作、第三弾。
 前作“Rising Grace” (2016)と同じ編成、ドラマーがBrian BladeからEric Harlandに交代。
 色合いも前作と同様、トランペットがアクセントになった穏やかなジャズ。
 かつてのとんがった音は影を潜め、淡く明るい色合い、フワフワと漂うようなサウンド。
 手練れた人たちによる繊細なアンサンブルと、タダモノではない感の漂うインプロビゼーションが続きます。
 楽曲の表情は妖しいコンテンポラリージャズ、ハイテンションジャズ、南米、ブルース、はたまたスタンダードのパロディ、その他諸々のごった煮。
 但し、それら全てがスッキリとまとまり洗練された、ジャズな音。
 オーソドックスなようで先端的なビートを出すドラムとベース、不思議な音の動きのピアノトリオ。
 それを背景にしたクリーントーンのエレキギター、ガットギターもさることながら、それと絡み合うトランペットがカッコいい。
 控え目ながら、繊細から過激までの多彩な表現力。
 この人もECMから出て来るのでしょう。
 全部合わせて、オーソドックスになようでほんの少しだけ現実からズレたような、白日夢のような音。
 穏やかで優しい、21世紀型ECMな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

Jakob Bro (guitar)
Thomas Morgan (double bass) Joey Baron (drums)

BAY OF RAINBOWS
BRO/MORGAN/BARON
ECM
2018-10-05


 デンマークのギタリストJakob Broのトリオ、ニューヨークでのライブ録音。
 トランペット入りの前作“Returnings” (2018)から、“Streams” (2015)と同メンバーのトリオに戻りました。
 あの乳濁色の空気。
 トランペットの鋭い音や激しいビートでの覚醒はなく、ゆったりとして淀んだような緩やかな音の流れ。
 終始ルバートのように浮遊するビート感、リバーヴたっぷりの艶のある音のギターが紡ぐ、ゆったりとしたメロディとコードの動き。
 寄り添うように慎ましやかにカウンターを当てるベースとフリーにアクセントをつけるドラム。
 オリジナル曲はいつもの淡くて悲し気で懐かし気なメロディ。
 中盤にいかにもニューヨークな先端的な音、ループを使いつつの強いビートのハイテンションな演奏。
 が、それも一曲のみ、他はひたすら続く緩やかで穏やかな音。
 ライブ録音ながらスタジオ録音諸作と同じムード、合間の賑やかな拍手と掛け声でふと現実に立ち返るような、淡い時間が流れていきます。
 白日夢のような音、21世紀型ECMな音。
 ほんとにマンハッタンのど真ん中で演奏された音なのでしょうかね?
 どこか違う場所の違う時間に連れて行ってくれるトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

Tord Gustavsen (piano, electronics)
Sigurd Hole (bass) Jarle Vespestad (drums)

The Other Side
Tord Gustavsen Trio
Ecm
2018-08-31


 ノルウェーのピアニストTord Gustavsenのトリオ作品。
 サックス、ボーカルが入った作品が続いていましたが、オーソドックスなトリオ+ほんの少しの電子音。
 一時期の攻撃的なビートとハイテンションな演奏は抑えられ、あの静かで沈痛な寂寥の世界。
 哀愁漂う音をゆったりと置いていくピアノ。
 オリジナル曲に加えて、J.S.Bach他のクラシック曲、伝統曲が半分ほど。
 どこまでも沈んでいくような空気感はそのままですが、前作“What was said” (2015)ほど沈痛ではありません。
 また、例の歌謡曲的な強烈な美メロやキッチリした8ビートがひたすら続く感じではありません。
 淡い色合いのメロディと自由度の高いビート感。
 ECMのお約束、ルバートでのスローバラードなども交えつつの浮遊感、淡くて自由な感じ、それをJ.S.Bachなどのクラシック曲でやってみよう・・・ってな感じが新機軸なのかもしれません。
 いつものしんみりとした空気感の中で、意外な方向に漂っていく音の動き。
 あるいは、淡く茫洋とした空気の中から突然現れる、いつもの沈痛なまでも美しいメロディ。
 深刻さはほどほど、とても落ち着いていて優しい音、懐かしい音なので、疲れた日の気持ちの清涼剤としてちょうどいいのかな?
 しんみりとしつつもそのまま心地よく寝れそうですねえ。
 そんなピアノトリオ。




posted by H.A.



【Disc Review】“Live” (2016) Marcin Wasilewski Trio

“Live” (2016) Marcin Wasilewski Trio 

Marcin Wasilewski (piano) 
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Live
Marcin Wasilewski Trio
Ecm
2018-09-14


 ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、レギュラートリオでのライブ録音。
 最近作“Spark of Life” (2014)の楽曲中心。
 ステージはそのタイトル曲、ルバートでの漂うようなスローバラードから始まります。
 そこを抜け、ビートが定まると一気にヒートアップ。
 Stingナンバー”Message In A Bottle”から、代表的なオリジナル曲を経て、締めのHerbie Hancockのファンク”Actual Proof”まで、突っ走り、転げまわるバンド。
 スタジオ録音諸作に比べて躍動感が強くハイテンション。
 それでいてうるさくない音。
 しなやかなビートと、柔らかで軽快、少し後ろに引いた感じの丸い音、徹底的に動きまくっているんだけどもなぜか上品なピアノ。
 各曲長尺でぶっ飛んだ演奏が、なぜかクールな質感。
 さらに強い浮遊感、あくまで明るい空気感、そこはかとなく漂う郷愁感。
 そんな感じがいかにも現代のジャズ。
 一聴普通のピアノトリオジャズのようで、柔らかな特別な音。
 “Soul of Things” (2001) Tomasz StankoでBobo Stensonから交代し、沈痛さを緩和し、バンドの音を明るく柔らかくした人。
 発表の形態からして、おそらく上記、あるいは”Trio” (2004) 以降、ECMレコードでの十数年の集大成なのでしょう。
 さて次はどんな感じになるのやら・・・?



posted by H.A.


【Disc Review】“The Magical Forest” (2015) Sinikka Langeland

“The Magical Forest” (2015) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (kantele, vocals)

Arve Henriksen (trumpet) Trygve Seim (soprano, tenor sax) Anders Jormin (double bass) Markku Ounaskari (drums) Trio Mediaeval (vocals)


MAGICAL FORREST
SINIKKA LANGELAND
ECM
2016-07-29


 ノルウェーの古楽器カンテレ奏者&ボーカリストのコンボ作品。
 Anders Jorminをはじめとするいつものメンバーに、ノルウェーの伝統音楽コーラスグループに加わる編成。
 北欧の古典の世界とジャズの交錯。
 ジャズなグルーヴを出すベースとドラム、漂うようなサックスとトランペットのアンサンブル、背景を薄く彩るカンテレの響き。
 耳馴染みのないメロディとクラシカルなヴォイスが聞こえると、強い非日常感のこの人の音。
 さらにコーラスが加わることで、敬虔なムードが増強されています。
 冒頭は敬虔で勇壮。
 非日常感の強いメロディ、沈痛なホーンのアンサンブルとヴォイスの絡み合い。
 カンテレの高貴な音とコーラスのみの清涼にほっとしつつも、重い空気感が続きます。
 中盤からは哀し気ながら耳馴染みのよい現代的なメロディが増えていきます。
 徐々に音量を上げるコーラスと、その間隙を埋めるような強い寂寥感のトランペットの音が交錯しつつ幕。
 全編通してとてもドラマチック。
 少し重く哀しい映画のサウンドトラックのような一作。





posted by H.A.





【Disc Review】“The Half-Finished Heaven” (2013) Sinikka Langeland

“The Half-Finished Heaven” (2013) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (vocals, kantele) 
Lars Anders Tomter (viola) Trygve Seim (tenor sax) Markku Ounaskari (drums, percussion)

 ノルウェーのカンテレ奏者、ボーカリストSinikka LangelandのECM作品。
 “Starflowers" (2006)、“The Land That Is Not" (2010)からベースとトランペットが抜け、ヴィオラが加わった編成。
 北欧トラディショナルとジャズなビートが交錯する先のそれらの作品に対して、本作はカンテレ、ヴィオラ、テナーサックスの漂うような絡み合いを中心とした音。
 ゆったりとしたテンポ、少ない音数、より静かになった強い浮遊感の時間。
 クインテットだと前面には出て来なかったカンテレのとても美しい音が全編で響き、漂うようなヴィオラ、テナーと妖しく絡み合います。
 悲し気なメロディ。
 いつもの聞き慣れない感じが抑えられ、わかりやすい楽曲が並びます。
 また、ヴォイスの場面も抑えられ、主役はあくまで静かなアンサンブル。
 美しいカンテレの爪弾きを背景として、メロディを奏でる上品なヴィオラ、どこかに行ってしまいそうな時間を現実に引き戻すテナー、静かに時を刻むパーカッション。
 全部合わせて遠い所から流れてくるような音。
 これまた非日常の音ですが、心地よさ最高。
 天上の音・・・ってのには具体に過ぎたり、哀し気に過ぎたりするのかもしれませんが、そんな感じ。
 極上のトリップミュージック。




posted by H.A.





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