吉祥寺JazzSyndicate

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European

【Disc Review】“Dreamlife of Debris” (2019) Kit Downes

“Dreamlife of Debris” (2019) Kit Downes

Kit Downes (piano, organ)
Tom Challenger (saxophone) Stian Westerhus (guitar) Lucy Railton (cello) Sebastian Rochford (drums)

Dreamlife of Debris
Kit Downes
Ecm
2019-10-25


 イギリスのピアニストKit Downes、不思議感たっぷり、静かなコンテンポラリージャズ。
 “Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Strønenで、漂い、疾走するカッコいいピアノを弾いていた人。
 が、ECMでの初リーダー作“Obsidian” (2017)は幻想的なパイプオルガンの独奏。
 本作ではオルガンとピアノが半々、イギリスのサックス奏者とのDuoを中心に、楽曲によってドラム、先端系ギター、チェロが加わる編成。
 冒頭は妖しいメロディと定まらないビート。
 漂うサックスと美しいピアノが織り成す強烈な浮遊感に覆われたコンテンポラリージャズ、いかにもECMの世界。
 が、オルガンが加わると様相は変わってきます。
 “Obsidian” (2017)と同様、宇宙的な感じ、アンビニエントなイメージ。
 チェロが加わるとクラシカルな色合いが加わり、ギターが静かに鳴ると未来的な感が強くなります。
 そんな空気感に支配された淡い音楽。
 ときおり聞こえるピアノに覚醒しつつも、静かで穏やかな音の流れの中で微睡の中へ・・・
 締めはオルガンが前面に出て厳かで穏やかながらドラマチックなエンディング。
 全編通じて淡く穏やかな音の流れ。
 宇宙的な廃墟感というか、デカダンスというか・・・
 ジャケットはオーロラっぽい雲のポートレート、タイトルは"瓦礫の夢の生活?"。
 確かにそんな感じの音。




posted by H.A.

【Disc Review】“Travelers” (2017) Nicolas Masson, Colin Vallon, Patrice Moret, Lionel Friedli

“Travelers” (2017) Nicolas Masson, Colin Vallon, Patrice Moret, Lionel Friedli

Nicolas Masson (Tenor, Soprano Saxophone, Clarinet) Roberto Pianca   (Guitar) Emanuele Maniscalco (Drums, Piano)

Travelers
Nicolas Masson
Ecm Records
2018-02-16


 スイスのサックス奏者Nicolas Masson、ECMでの第三作。
 編成は“Third Reel” (2012), “Many More Days” (2014)のギターを交えた変則トリオから、ピアノトリオとのオーソドックスなワンホーンカルテットに変わりました。
 ベースが入り、ビートと音楽の輪郭が明確になりました。
 その上での例の漂うような音使い。
 あくまで静かな音、ゆったりとしたテンポ、沈んだムード、哀し気な空気感、不思議感はそのまま、“Third Reel” (2012)の沈痛系と “Many More Days” (2014)の穏やか系が交差する楽曲。
 ピアノは同じくスイスのColin Vallon
 漂うような零れ落ちるような、繊細な音がたっぷりとフィーチャーされます。
 リーダー作でもそうでしたが、どの方向に動いていくのかは予測できません。
 浮遊と疾走が交錯するとても美しい音。
 予測しずらいのはサックスも同様。
 但し、疾走はしません。
 あくまで漂うような演奏、いかにもECMのサックスらしく、サブトーン、ビブラートのない張り詰めた音。
 ビートが明確な分、トリップミュージックな感じは薄らいだのかもしれません。
 でも不思議感はたっぷり。
 これが現代のスイスの空気感なのかどうかはわかりませんが、少し沈みながらも落ち着いたクールなムード、儚く美しい、そして妖しい現代のジャズ。




posted by H.A.

【Disc Review】“Many More Days” (2014) Third Reel

“Many More Days” (2014) Third Reel

Nicolas Masson (Tenor, Soprano Saxophone, Clarinet) Roberto Pianca   (Guitar) Emanuele Maniscalco (Drums, Piano)

Many More Days
Third Reel
Imports
2015-06-02


 スイスのサックス奏者Nicolas Massonを中心としたヨーロピアンの変則トリオ、ECMでの第二作。
 前作“Third Reel” (2012)のタイトルをバンド名としたようです。
 本作も静かで妖しい迷宮サウンド。
 ベースレスゆえの浮遊感、静かに高速な刻まれるビートと、ゆったりと漂うようなテナーサックス、ギター。
 前作と同様、そんな場面が印象に残りますが、前作よりも沈痛度、陰鬱度が下がり、終始穏やか、どこか懐かしい感じが漂います。
 ときおりの電子音、ピアノを訥々と奏でられる場面も何曲か、含めて少しカラフルになっているかもしれません。
 淡く抽象的な、あるいは不安感を煽るような、はたまた明後日の方向から聞こえてくるような不思議感たっぷりのメロディたち。
 計算尽くのアンサンブルなのだと思いますが、どう動いていくのかは予測不可能。
 とても穏やかなのですが、緊張感の塊。
 短く刻まれる演奏ともに、周囲の景色は次々と変わっていきます。
 さらに中盤から終盤にかけて、徐々にボリュームとテンションを上がってくるドラマチックな展開。
 それでも静謐な空気感は変わりません。
 通して聞くと、周囲の雰囲気、あるいは気持ちが一変してしまうような非日常感。
 さながら白日夢。
 これまたトリップミュージック。
 本作は沈痛でも深刻でも陰鬱でもなく、とても穏やかです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Third Reel” (2012) Nicolas Masson, Roberto Pianca, Emanuele Maniscalco

“Third Reel” (2012) Nicolas Masson, Roberto Pianca, Emanuele Maniscalco

Nicolas Masson (Tenor Saxophone, Clarinet) Roberto Pianca (Guitar) Emanuele Maniscalco (Drums)

Third Reel
Masson
Ecm Records
2013-06-04


 スイスのサックス奏者Nicolas Massonを中心としたヨーロピアンの変則トリオ、ECMでの初作。
 静かで妖しい、強烈な浮遊感、少しだけフリーの色合いのコンテンポラリージャズ。
 冒頭はBill Frisell的な漂うギターを背景にし、漂うようなサックスのバラード。
 穏やか系・・・と安心するのは束の間。
 ディストーションを効かせたギターが掻き鳴らされ、高速なシンバルの4ビート。
 そんな中でゆったりと沈痛で深刻なメロディを奏でるサックス。
 が、そんな激しい場面も束の間、数曲のみ、激烈にはなりません。
 サブトーン、ビブラートの少ない、いかにも現代的なクールなサックス。
 また、ECMらしく透明度の高い音。
 あくまで静かに、ゆったりと漂うような演奏。
 各曲はコンパクトにまとめられ、次々と景色は変わっていきます。
 共通するのは哀感と浮遊感、強い緊張感、そして静かな空間に響く心地いいサックスの音。
 静かで内省的な空気感、迷宮の中を彷徨っているようなムード。
 残響音の後の静寂な瞬間に覚醒するか、微睡に落ちるか。
 あるいは、この静けさと沈痛さ哀しさが錯綜する空気感に安らぎを感じるか、不安を感じるか。
 いずれにしても強烈な非日常感、これまた心の中を覗き込むような時間。
 どこか遠い所へと誘うトリップミュージック。




posted by H.A.

【Disc Review】“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano

“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano

Enrico Rava (Trumpet) Joe Lovano (Tenor Saxophone, Tarogato)
Giovanni Guidi (Piano) Dezron Douglas (Double Bass) Gerald Cleaver (Drums)

Roma
Enrico Rava
Ecm
2019-09-06


 イタリアン大御所Enrico Ravaと、ルーツはイタリアンなのであろう Joe Lovanoの二管クインテット、ローマでのライブ録音。
 サポートは同じくイタリアンGiovanni Guidiを中心としたピアノトリオ。
 御大お二人が二曲ずつに、ジャズ曲のメドレー、長尺な演奏が揃った全六曲のステージ。
 面子から想像される通り、クールでハードボイルドなイタリアンジャズ。
 冒頭はEnrico Ravaのバラード。
 真骨頂、あのフィルムノアールな感じのハードボイルドな音。
 徐々にテンションを上げ、激情を交えながらのバラード。
 過度なセンチメンタリズムにも、混沌、激烈にも行かない、ハードボイルドネス。
 曲が移りテンポが上がっても、Joe Lovanoのブルージーな楽曲に移っても、John Coltrane的なフリーな色合いが混ざっても、その空気感は変わりません。
 Ravaさんは枯れた感じはなし、Joe Lovanoも一時期の枯れて幽玄な感じではなく、かつてのブヒブヒな感じが戻って来ています。
 いずれにしても両者とも圧倒的な表現力。
 世代の違うピアニストGiovanni Guidi、お二人の後ろでは遠慮気味な感じもしますが、対等にスペースが与えられ、あの柔らかい音で硬軟織り交ぜ、上品にぶっ飛んでいくインプロビゼーション。
 最後に収められた名作“This Is the Day” (2014)のような漂うようなスローバラードも含めて、堂々たる弾きっぷり。
 ベタな企画なようで、まさにその予想通りの音ながら、また普通にジャズなようで、なかなか他では聞けない上質さ、カッコよさ。
 圧倒的な存在感、演奏力のなせる業なのでしょう。
 イタリアンなオヤジたちのカッコよさ。




posted by H.A.




【Disc Review】“La Misteriosa Musica Della Regina Loana” (2018) Gianluigi Trovesi, Gianni Coscia

“La Misteriosa Musica Della Regina Loana” (2018) Gianluigi Trovesi, Gianni Coscia

Gianluigi Trovesi (piccolo clarinet, alto clarinet) Gianni Coscia (accordion)



 イタリアのクラリネット奏者Gianluigi Trovesiとアコーディオン奏者Gianni CosciaのDuo。
 “In Cerca Di Cibo” (1999)など何作かECMで制作しているコンビ。
 いかにもイタリアンな小粋なサウンド、本作はイタリア人小説家?へのトリビュート作品のようです。
 クラシカルなような、トラディショナルなような、ポップスなような、やはりジャズなような、いろんな色合いが混ざり合うヨーロピアンミュージック。
 優雅でクラシカルなオリジナル曲に、洒落た感じのイタリア曲、間々に挟まれたジャズスタンダード “Basin Street Blues”, “As Time Goes By”, “Moonlight Serenade”。
 それらが一分に満たないインタールードで繋がれながら、次々と流れていきます。
 緩やかに伸び縮みするビートとときおりの疾走。
 とても柔らかな木管とアコーディオンの少し靄が掛かったような音。
 とても暖かな空気感。
 全編を包み込むノスタルジー。
 その全てがとても優雅で小粋。
 ピアノとクラリネットだと“Vaghissimo Ritratto” (2007)や“Miramari” (2008) Andre Mehmari, Gabriele Mirabassiのように高貴な感じになりますが、アコーディオンだと優雅さはそのまま、少しくだけた庶民的な感じ。
 穏やかな昼下がりの広場、地中海の緩やかな光、そんな音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Que Bom” (2017) Stefano Bollani

“Que Bom” (2017) Stefano Bollani

Stefano Bollani (Piano)
Jorge Helder (Double Bass) Jurim Moreira (Drums) Armando Marçal, Thiago da Serrinha (Percussion)
Caetano Veloso, João Bosco (Voice, Guitar) Hamilton de Holanda (Bandolim) Jaques Morelenbaum (Cello) 
Zé Nogueira (Soprano Saxophone) Everson Moraes (Trombone) Aquiles Moraes (Trumpet) Frida Magoni Bollani (Voice)



 イタリアのピアニストStefano Bollaniの2017年作。
 ブラジル録音のブラジリアンジャズ。
 “Carioca” (2008)から十数年ぶり、同じメンバーのピアノトリオを中心として、楽曲ごとにさまざまなビッグネームをゲストに迎えています。
 いつも通りにクラシックの色合いが混ざりつつの、明るい色合いのジャズピアノ。
 クィーカーなどの心地よい音が混じりつつの軽快なブラジリアンジャズ。
 自身のオリジナル曲を中心に、たっぷり16曲。
 ピアノトリオ+パーカッションを中心とした演奏に、Caetano Veloso、Jaques Morelenbaum が二曲、João Bosco, Hamilton de Holandaが各一曲。
 ホーンのアンサンブルが二曲に加わり、彩を加えていきます。
 Caetano Velosoは耽美でセンチメンタル、Jaques Morelenbaum は幻想的、Hamilton de HolandaJoão Boscoの各一曲はハイテンションで悠々堂々。 
 各人の色合いそのまま、それらが明るい色合いのヨーロピアンジャズピアノトリオに変化をつけ、多彩な表情。
 オリジナル曲も、哀愁のブラジル風あり、派手なサンバ風あり、ジャズあり、ヨーロッパの街角演芸風あり、その他諸々。
 いろんな色合いが混ざった作品が多い人だったと思いますが、ブラジル録音に絞ってもそんな感じになってますかね?
 共通するのはシャープで軽快なピアノ。
 明るくイタリアンなブラジリアンミュージックの一作。




posted by H.A.



【Disc Review】“Carioca” (2008) Stefano Bollani

“Carioca” (2008) Stefano Bollani

Stefano Bollani (Piano, Voice)
Jorge Helder (Bass) Jurim Moreira (Drums) Armando Marçal "Marçalzinho" (Percussion)
Marco Pereira (Guitar) Nico Gori (Clarinet) Mirko Guerrini, Zé Nogueira (Saxophone)
Mônica Salmaso, Zé Renato (Vocals)



 イタリアのピアニストStefano Bollani、2008年のブラジリアンジャズ。
 ブラジル系の楽曲を取り上げることが多い人ですが、本作はブラジルで現地のメンバーと録音した本格派。
 選択されたブラジル曲たちは、陽気系あり、哀愁系あり、浮遊系あり、クラシック系あり、さまざまな時代ありのさまざまな表情。
 さらに楽曲ごとに編成を変えた多彩な音。
 ピアノトリオ+ギター+パーカッションのオーソックスな編成あり、ピアノソロあり、管楽器、あるいはギターを前面に出した構成あり、木管、あるいはヴォーカルとピアノのDuoあり、弾き語りあり。
 そんなさまざまな演奏の中を突っ走り転げまわり、ときに漂う、クラシックテイストが混ざる明るく軽快なジャズピアノ。
 漂ったり零れ落ちたりしそうな繊細さと、疾走が交錯する音。
 上品なようでどこかぶっ飛んだような、落ち着きそうで落ち着かない、不思議な色合い。
 この人の音楽はいつもそんな感じでしょうかね。
 ブラジリアンミュージックをやってもまた然り。
 あのMônica Salmasoも一曲に参加、スモーキーでミステリアスな声と、漂うようなミステリアスなピアノとのDuo。
 などなど含めて、お洒落なような不思議なような、なんだかんだで洗練されたサウンド。
 なるほど、確かにイタリアンなブラジリアンミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Partir” (2018) Elina Duni

“Partir” (2018) Elina Duni

Elina Duni (voice, piano, guitar, percussion)

PARTIR
ELINA DUNI
ECM
2018-04-27


 アルバニアをルーツとするボーカリストElina Duni、ECMでの第三作。
  “Matane Malit” (2012)、“Dallendyshe” (2014)と二作続いたピアノトリオとのバンドから、本作は自身で楽器を演奏したソロでの制作。
 ピアノ、ギター、パーカッションの弾き語りを中心として、ここまでの諸作に増して静かでゆったりとしたムード。
 音を探すように置かれていくギター、ピアノと美しい声。
 背景の音が薄いだけに、美しい声の透明度がより際立って聞こえてきます。
 楽曲はここまでの同様に、アルバニア、バルカン半島トラディショナル。
 アルバニアがどんな場所なのかは知りません。
 南ヨーロッパの陽光に包まれた温かい場所なのだろうと思いますが、ヨーロッパと中近東の狭間、政治体制の狭間なだけに、歴史的にもいろいろ訳ありな場所なのでしょう。
 全体を包み込む仄かな哀しさ、祈りにも似たムード。
 かといって絶望とはニュアンスが違う、暗くはない柔らかな空気感。
 南米系Saudadeと比べると、遠い所を眺める感じは同様ですが、より強く直接的な哀しさを感じます。
 ちょうどジャケットのさりげないポートレートのような音。
 この空気感がアルバニアンSaudadeなのでしょうかね。
 これまた非日常へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

Elina Duni (voice)
Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Dallëndyshe
Deutsche Grammophon ECM
2015-04-17

 アルバニア出身のボーカリストElina Duni、ECMでの第二作。
 前作“Matane Malit” (2012)と同様のピアノトリオにサポートされた、地中海エスニックな香り、あるいはバルカン半島色が漂う、不思議系ヨーロピアン・コンテンポラリー・フォーキー・ジャズ。
 本作もアルバニア、コソボなどのトラディショナルが中心。
 強い違和感やエキセントリックさはありませんが、不思議感たっぷり。
 基本的には前作と同様なのですが、音のイメージがシャープになり、一聴で強い印象が残る演奏が増えたように思います。
 前作では遠慮気味にも聞こえたColin Vallonトリオが、リーダー作とも少し違ったイメージの演奏。
 バンドのグルーヴが強くなるとともに、インプロビゼーションの場面が増えた感じ。
 複雑なビートを纏いながら明後日の方向に疾走し拡散していくようで、なぜかいい感じに納まっていく音の流れ。
 ピアノソロが前面に出て、美しく繊細な音でぶっ飛んだ音の動き。
 ヨーロピアンコンテンポラリージャズな香りも濃厚。
 結果、淡々とした印象の前作に対して、起伏、うねりがより強く感じられる本作。
 ちょうどジャケットのポートレートの変化と同じく、モノクロからカラーに変わった感じ。
 もちろん主役のヴォイスは美しく儚い歌。
 非日常感たっぷりですが、気難しくも暗くもありません。
 名作だと思います。



posted by H.A.


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