吉祥寺JazzSyndicate

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European

【Disc Review】“Partir” (2018) Elina Duni

“Partir” (2018) Elina Duni

Elina Duni (voice, piano, guitar, percussion)

PARTIR
ELINA DUNI
ECM
2018-04-27


 アルバニアをルーツとするボーカリストElina Duni、ECMでの第三作。
  “Matane Malit” (2012)、“Dallendyshe” (2014)と二作続いたピアノトリオとのバンドから、本作は自身で楽器を演奏したソロでの制作。
 ピアノ、ギター、パーカッションの弾き語りを中心として、ここまでの諸作に増して静かでゆったりとしたムード。
 音を探すように置かれていくギター、ピアノと美しい声。
 背景の音が薄いだけに、美しい声の透明度がより際立って聞こえてきます。
 楽曲はここまでの同様に、アルバニア、バルカン半島トラディショナル。
 アルバニアがどんな場所なのかは知りません。
 南ヨーロッパの陽光に包まれた温かい場所なのだろうと思いますが、ヨーロッパと中近東の狭間、政治体制の狭間なだけに、歴史的にもいろいろ訳ありな場所なのでしょう。
 全体を包み込む仄かな哀しさ、祈りにも似たムード。
 かといって絶望とはニュアンスが違う、暗くはない柔らかな空気感。
 南米系Saudadeと比べると、遠い所を眺める感じは同様ですが、より強く直接的な哀しさを感じます。
 ちょうどジャケットのさりげないポートレートのような音。
 この空気感がアルバニアンSaudadeなのでしょうかね。
 これまた非日常へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

Elina Duni (voice)
Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Dallëndyshe
Deutsche Grammophon ECM
2015-04-17

 アルバニア出身のボーカリストElina Duni、ECMでの第二作。
 前作“Matane Malit” (2012)と同様のピアノトリオにサポートされた、地中海エスニックな香り、あるいはバルカン半島色が漂う、不思議系ヨーロピアン・コンテンポラリー・フォーキー・ジャズ。
 本作もアルバニア、コソボなどのトラディショナルが中心。
 強い違和感やエキセントリックさはありませんが、不思議感たっぷり。
 基本的には前作と同様なのですが、音のイメージがシャープになり、一聴で強い印象が残る演奏が増えたように思います。
 前作では遠慮気味にも聞こえたColin Vallonトリオが、リーダー作とも少し違ったイメージの演奏。
 バンドのグルーヴが強くなるとともに、インプロビゼーションの場面が増えた感じ。
 複雑なビートを纏いながら明後日の方向に疾走し拡散していくようで、なぜかいい感じに納まっていく音の流れ。
 ピアノソロが前面に出て、美しく繊細な音でぶっ飛んだ音の動き。
 ヨーロピアンコンテンポラリージャズな香りも濃厚。
 結果、淡々とした印象の前作に対して、起伏、うねりがより強く感じられる本作。
 ちょうどジャケットのポートレートの変化と同じく、モノクロからカラーに変わった感じ。
 もちろん主役のヴォイスは美しく儚い歌。
 非日常感たっぷりですが、気難しくも暗くもありません。
 名作だと思います。



posted by H.A.


【Disc Review】“Matane Malit” (2012) Elina Duni Quartet

“Matane Malit” (2012) Elina Duni Quartet

Elina Duni (voice) 
Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Matane Malit
Elina Quartet Duni
Ecm Records
2012-10-16


 アルバニア出身のするボーカリストElina Duni、ECMでの第一作。
 エスニックでフォーキーな音。
 敬虔な空気、全体を包み込むほのかな悲哀。
 中近東とヨーロッパが入り混じるような不思議感たっぷりなメロディは、アルメニア、コソボなど、バルカン半島系の伝統曲が中心。
 Sinikka LangelandSavina Yannatouなどの古楽、あるいは地中海トラディショナル路線、Cyminologyなどの中近東・ヨーロッパのフュージョン、それらの中間あたりのイメージでしょうか。
 サポートはスイスのピアニストColin Vallonを中心としたピアノトリオ。
 終始ピアノが前面に出るスタイルではなく、リフを繰り返しつつドラムとべースも含めて三者でテンションを上げていく、ミニマルジャズスタイル。
 そんな音を背景にした、透明度の高い美しいヴォイス、クラシック色も混ざる完璧な歌。
 ゆったりとしたビートとときおりの疾走、力の入らない優し気な歌は、アラブ系の激情やエキセントリックさはなく、ギリシャ系、古楽系の非日常感もそれほど強くはありません。
 フォークの色合いが強いのですが、そこにサラリと中東色、地中海色、宗教色が混ざり合う感じのバランス。
 サラサラと流れていくようで、後ろ髪を引かれるような、どこか違う微妙な音の流れ。
 やはりどこか遠い所に誘うトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Danse” (2017) Colin Vallon & Patrice Moret & Norbert Pfammatter

“Danse” (2017) Colin Vallon & Patrice Moret & Norbert Pfammatter

Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Danse
Colin -Trio- Vallon
Ecm Records
2017-01-27


 スイスのColin Vallon率いるピアノトリオ、ECMでの第三作。
 前作“Le Vent” (2014)と同様、不思議感たっぷりのコンテンポラリージャズ。
 音のイメージは少しずつ変化しています。
 クラシカルな色合いはそのまま、ミニマルな感じは抑えられ、より繊細になったイメージ。
 かといってオーソドックスなジャズに近づいたわけでもなく、アバンギャルドでもない、何とも不思議な音。
 シンプルなようで複雑なビート。
 三者三様、ピアノの右手と左手さえも違うビートを出しているような、それでいて拡散することなくピッタリと収まっていく、摩訶不思議なサウンド。
 沈んだムードのメロディ、リフは決してキャッチーではありませんが、難解でも沈痛でもありません。
 乾いた音、静かで繊細なドラム、揺らぎつつもペースを作るベース、そして美しいピアノ。
 硬質なリフで同じところを徘徊しているようで、気がつけば崩れ落ちるような儚い音、疾走を伴ったスムースな音、あるいはジャズなインタープレー、フリーなインプロビゼーション・・・、変幻自在、予測できない音の流れ。
 どれもが計算された演奏のようにも、即興のようにも聞こえます。
 アルバム全体の一貫したムード、どのカテゴリにも寄らない独特の構成、複雑ながらスッキリとまとまった質感は、前作まででやろうとしてきたことが完成したようにも思えます。
 とにもかくにも、美しい音で編み上げられる、とても繊細な音絵巻。
 これが21世紀型ジャズの新しい形、と言われれば納得の一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“Le Vent” (2014) Colin Vallon & Patrice Moret & Norbert Pfammatter

“Le Vent” (2014) Colin Vallon & Patrice Moret & Norbert Pfammatter

Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Le Vent
Colin Trio Vallon
Ecm Records
2014-03-18


 スイスのColin Vallon率いるピアノトリオ、ECMでの第二作。
 前作“Rruga” (2011)からドラマーが交代しましたが、そちらと同様、ミニマルな感じも強い不思議系ヨーロピアンジャズ。
 繊細さはそのまま、本作は少々ダークなムード。
 重めのビート、徘徊するようなフレーズの繰り返し、徐々にテンションと音量を上げていくバンド。
 かといって、完全にミニマル的でもなく、目まぐるしく形を変え、また、インプロビゼーションを交えつつ、微妙に、ときに大胆に景色は変化していきます。
 そんなハイテンションな演奏の合間にちりばめられらた不思議なバラード。
 響きを殺したピアノが琴のように聞こえる場面、日本的なメロディもちらほら。
 冒頭曲の“Juuichi”は十一のことなのでしょうし、Nik Bärtschさんと同じく、スイスのミニマル系の人は日本的なストイシズムがお好みなのでしょうかね?
 また、前作のそこはかとない哀しさが、沈痛、あるいは祈りにも似たムードに変わってきた感じにも聞こえます。
 ときに激しく、ときにアバンギャルド、ドラマチックながら、あくまでクールで上品。
 オーソドックスなジャズではない、ミニマルジャズでもない、先端変拍子ジャズでもない、アヴァンギャルドでもなく、クラシカルでもない。
 その他含めた諸々が不思議に混ざり合う、新感覚なピアノトリオ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Rruga” (2011) Colin Vallon & Patrice Moret & Samuel Rohrer

“Rruga” (2011) Colin Vallon & Patrice Moret & Samuel Rohrer

Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Rruga
Colin Trio Vallon
Ecm Records
2011-05-10


 スイスのピアニストColin Vallon率いるトリオ、ECMでの第一作。
 テーマ~ソロといったオーソドックスなジャズではなく、アンサンブル中心、同じフレーズを繰り返しつつ抑揚をつけていくミニマルなスタイルを取り込んだ演奏。
 同じくスイスのNik Bärtschのようにパキーンとした、あるいはファンクな感じではなく、繊細でジャズに寄った色合い。
 複雑なビート感、タメを効かせて哀しげで妖しいメロディを奏でつつ、明後日の方向に動いていくピアノ。
 もちろんその美しさはECMならではの折り紙付き。
 複雑に自由にビートを繰り出しつつ徐々にテンションを上げていくドラム。
 堅実に背後を支えるベース。
 そんな三者が絡み合いつつ、静謐から高揚、疾走、美しいメロディからアバンギャルド、さまざまな綾を織りなしながら変化していく音。
 繊細、それでいてハイテンション。
 いわゆるソロの場面もあるのですが、それよりもバンドの三者が一体となってグルーヴし、浮き、沈み、突っ走っていくイメージが強く印象に残ります。
 オーソドックスなジャズになりそうでならない、アバンギャルドに行きそうで行かない、エスニックになりそうでならない、凶悪・沈痛になりそうでならない、意外な方向に動いていく音。
 変幻自在の21世紀型ジャズは、静かで繊細、そしてエキサイティング。




posted by H.A.



【Disc Review】“Awase” (2017) Nik Bärtsch’s Ronin

“Awase” (2017) Nik Bärtsch’s Ronin

Nik Bärtsch (piano)
Sha (bass clarinet, alto saxophone) Thomy Jordi (bass) Kaspar Rast (drums)

Awase
Nik -Ronin- Bartsch
Ecm Records
2018-05-04


 スイスのピアニストNik Bärtschの最近作。
 バンドは妖しく繊細なNik Bärtsch's Mobileから再びRoninに戻り、ミニマルファンクな音。
 パキーンとした音、人力ながらデジタルな感じも戻ってきました。
 ベーシストが交代しパーカッションが抜けたこともあるのか、マッチョな感じが希釈され、よりシャープにスッキリしたようにも感じます。
 冒頭は“Continuum” (2015)で演奏されていた”Modul60”。
 そちらのKing Crimsonな感じがジャジーでクールな印象に様変わり。
 続く18分を超える”Modul 58”は、複雑な構成のハードなビート、スピードを上げつつ、はるか彼方にぶっ飛んでいくハイテンションファンク。
 妖しく漂うような”A”を経過し、再びハイテンションなファンク”Model 36”へ。
 ってな感じで、ハイテンションな疾走、高揚と幻想が交錯する構成。
 ”Model 36”は、“Stoa” (2005)に収められた曲の再演となりますが、カッチリしていてプログレッシブロックっぽい感じのそちらに対して、少し線が細め、シャープになった本作のバージョン。
 ジャズなインプロビゼーションの場面はありません。
 が、スッキリと軽快になった印象に加えて揺らぎが強い分だけジャズに寄ったようにも感じます。
 ハードで躍動感が強い“Stoa” (2005), “Holon” (2007)、沈んだ感じの"Llyrìa" (2010)、妖しい“Continuum” (2015)、スッキリした本作、ってな感じでしょうか。
 いずれにしても、繰り返しされるリフが誘う陶酔感、緊張感と疾走がもたらすカタルシスに浸るか、徐々に遷り変わる景色の変化を楽しむか。
 スッキリしたミニマルファンク・ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Continuum” (2015) Nik Bärtsch's Mobile

“Continuum” (2015) Nik Bärtsch's Mobile

Nik Bärtsch (piano)
Sha (bass clarinet, contrabass clarinet) Kaspar Rast (drums, percussion) Nicolas Stocker (drums, tuned percussion)
Etienne Abelin, Ola Sendecki (violin) David Schnee (viola) Solme Hong,  Ambrosius Huber (cello)

Continuum [12 inch Analog]
Nik's Roni Baertsch
Ecm
2016-03-18


 スイスのピアニストNik Bärtsch、ミニマル系ジャズ。
 ここまでのNik Bärtsch’s Roninからベースが抜け、一部でストリングスが加わる新しい編成。
 音の構成は、同じフレーズを繰り返しつつ抑揚とうねりをつけていくここまでの諸作のスタイルと同様ですが、ファンク色が抑制されたイメージ。
 輪郭が明確だった音に紗が掛かった感じ。
 音量、躍動感が抑えられ、妖しさダークさが増幅。
 ストリングスも華やかさや優雅さではなく、妖しく沈んだ色合いを加える役回り。
 ファンクなエレキベースが抜けることで揺れが増し、より繊細になり、人力ながらデジタルな感じが希釈されたイメージ。
 静謐で凛とした感じ、雅な瞬間もちらほら、Ronin諸作よりも日本的かもしれません。
 あるいは、緊張感のあるリフをひたすら繰り返しつつ徐々に高揚していく中、もの哀しげなバイオリンの音が飛び交う様は、一時期のKing Crimsonのよう。
 全編通じて沈んだムードの映画のサントラのように聞こえてきます。
 いずれにしても繰り返しが陶酔を誘う麻薬性の高い音。
 抑制された緊張感、ダークネスに包まれた高揚感、陶酔感を求める向きには、こんな感じがいいんだろうなあ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Lost River” (2018) Michele Rabbia

“Lost River” (2018) Michele Rabbia

Michele Rabbia (drums, electronics)
Eivind Aarset (guitar, electronics) Gianluca Petrella (trombone, sounds)

Lost River
Michele Rabbia
Ecm
2019-05-31


 イタリア人パーカッショニストMichele RabbiaのECM作品。
 おそらくフリー系、ECMでは“Re: Pasolini” (2005) Stefano Battagliaなどへ参加していた人。
 Enrico Ravaとの共演が多いイタリアントロンボーン奏者と、ノルウェーのアンビエント~先端系ギターの変則トリオ。
 静かでスタイリッシュなアンビエント系ミュージック。
 どこまでが電子音で、どこからが人が出しているのか曖昧なビート。
 抑制された電子音が奏でる哀し気なコードの移り変わり、あるいはシンプルなリフの繰り返しの中を、静かに舞うシンバル、乾いた革の擦過音、鐘の音、ギターのシングルトーン、コード、遠くから響いてくるような、あるいはときおり前面に出てジャズを奏でるトロンボーン。
 電子音と生楽器、各々の楽器の音の境界が曖昧になり、浮遊、疾走、混沌、静謐、覚醒・・・グラデーションを描きながら次々と変わっていく景色。
 予想できない展開ながら、難解、意味不明ではなく、メロディアスでセンチメンタルな音の動き。
 終始流れているのは、どこか遠くを眺めるような柔らかな哀感。
 ビートと旋律、夢と現実、過去と未来、人間と機械・・・、それらの境界が曖昧になった、それでいて調整が取れた摩訶不思議な時間。
 とてもクールでセンチメンタル。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bloom” (2016) Areni Agbabian

“Bloom” (2016) Areni Agbabian
Areni Agbabian (Voice, Piano) Nicolas Stocker (Drums, Percussion)

Bloom
Areni Agbabian / Nicolas Stocker
Ecm
2019-04-26


 アルメニアルーツのアメリカンAreni Agbabian、DuoでのECM作品。
 静謐な無国籍ミュージック。
 Tigran Hamasyanバンドにボーカルとして参加していた人。
 サポートはNik Bartsch’s Mobileの人。
 少し重めのピアノと繊細なパーカッションの漂うような音を背景にした、ウィスパーな声。
 全編に哀しさを湛えた、ヨーロッパでも中近東でもない、それらが入り混じるエキゾチックなメロディ、そして敬虔なムード。
 全編スローテンポ、抑えられた音数、場面によっては残響音のみの時間の方が長く感じられるような、余白たっぷりの音の流れ。
 そんな時間の中を漂うとてつもなく美しい声。
 シルキーなようなハスキーなような微妙なバランスの声と、ジャズでもロックでもない、おそらくはクラシックがベースなのであろう歌。
 メロディアスな楽曲と断片的なインプロビゼーション、短い楽曲が錯綜しながら進む時間。
 美しい声とときおりのカリンバの音、朗読に覚醒を促されつつも、まどろむような、あるいは迷宮のような時間が続きます。
 現代アメリカンが感じるアルメニアンSaudadeはこんな空気感なのでしょうか。
 とても哀し気で敬虔、そして幻想的。
 いつなのか、どこなのかわからない、静かで清廉な場所へのトリップミュージック。




posted by H.A.


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