吉祥寺JazzSyndicate

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Enrico_Rava

【Disc Review】“The Song is You” (2021) Enrico Rava, Fred Hersch

“The Song is You” (2021) Enrico Rava, Fred Hersch

Enrico Rava (Flugelhorn) Fred Hersch (Piano)

The Song Is You
Rava, Enrico / Hersch, Fred
Ecm Records
2022-09-30


 イタリアの大御所Enrico Rava、ピアノとのDuo作品、ジャズスタンダード集。
 ピアニストはオーソドックスで穏やかなイメージのベテランFred Hersch。
 名前通りの端正で穏やか、静かなジャズ。
 もちろんECMレコードなので、普通にジャズではなくて、いかにもな音。
 恐ろしいほどに透明度の高いピアノ。
 くぐもっているようで何とも言えない艶のあるフリューゲルホーン。
 ひたすら美しい。
 かつてのような激情やらサイケやらぶっ飛んでいくインプロビゼーションやらはありません。
 少々のフリーな場面も含めて、流れるように漂うように、ゆったりと穏やかに動いていく美しいモノ。
 Jobimで始まりMonkさんの連発で結ぶ神々しいメロディたち。
 クラシカルなムードを纏いつつ、残響を含めて美しい音を敷き詰めていくピアノ。
 スウイングしているようでオーソドックスなようでそうでもない、心地よく揺らぐ背景。
 その中を泳ぐ流麗なホーン。
 美しく懐かしい何かが流れていく時間。
 最後に収められたピアノのみのソロ演奏、美しく妖しいイントロダクションに導かれつつ、どスタンダード”Round Midnight"のメロディが流れてきて、これ、スタンダード集だったなあ・・・って思い出す感じの新しさ・・・、いや、新しくはないのか・・・
 隠れ名作"Diane" (1985) Chet Baker & Paul Bleyってなのを想い出して聴いてみましたが、同じく静かで穏やかで美しいながら、全く違うテイスト。
 本作の方が躍動感が強く、かつ、まろやか、ってな感じでしょうか。
 さておき、とにもかくにもひたすら美しい。
 とても素敵な静かな“ジャズ”。





posted by H.A.


【Disc Review】“Edizione Speciale” (2019) Enrico Rava

“Edizione Speciale” (2019) Enrico Rava

Enrico Rava (Trumpet, Flugelhorn)
Francesco Diodati (Guitar) Giovanni Guidi (Piano) Gabriele Evangelista (Bass) Enrico Morello (Drums)

Francesco Bearzatti (Tenor Saxophone)


Edizione Speciale (Live)
ECM Records
2021-10-29


 大御所Enrico Rava の新作、ライブ録音。
 ライブ録音“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano以来、単独リーダーでは“Wild Dance” (2015)以来久々でしょうか。
 そちらのメンバーからトロンボーンがサックスに代わり、長年共演が続く名ピアニストGiovanni Guidiが加わります。
 “Wild Dance” (2015)はピアノレス、今風ギターがたっぷりフィーチャーされた少しとんがり気味今風コンテンポラリージャズでしたが、本作はよりオーソドックスに寄ったコンテンポラリージャズ。
 冒頭はOrnrtte Colemanっぽいジャズ。
 高速4ビート、リフ一発、ディストーションが効いたロックなギター。
 さらに上品で穏やかな人と思っていたGiovanni Guidiさんのぶっ飛んだ激しいピアノ。
 そんなやんちゃな音もどこ吹く風、硬軟織り交ぜたMiles Davis的な端正なトランペット。
 滑らかで鈍い光を放つ真鍮な感じの音色、しなやかなフレージングは、1970年代から変わらず、衰えなし。
 続く“Once Upon A Summertime”も端正なジャズバラード。
 これまた妖しいロックなギターと激しいピアノが一風変わっていますが、やはりジャズ。
 その他、かつて演奏されたオリジナル曲たちも、このバンドのメンバーの色合いで彩りを変え、いかにもライブなテンションとノリで演奏されていきます。
 締めはラテンな”Quizás, Quizás, Quizás”。
 Ravaさんとしてはありそうですが、ECMさん、ここまでやるの?ってな違和感はマニアな心理に過ぎないのでしょう。
 妖しさは抑えめ、静けさはなし、ECMレコードのEnrico Rava作品としては少々異色の元気で明るいジャズ。
 タイトルをみると“特別版”、なるほど。
 みんなジャズが大好き、明るくてよろしいのでは。




posted by H.A.



【Disc Review】“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano

“Roma” (2018) Enrico Rava, Joe Lovano

Enrico Rava (Trumpet) Joe Lovano (Tenor Saxophone, Tarogato)
Giovanni Guidi (Piano) Dezron Douglas (Double Bass) Gerald Cleaver (Drums)

Roma
Enrico Rava
Ecm
2019-09-06


 イタリアの大御所Enrico Ravaと、ルーツはイタリアなのであろう Joe Lovanoの二管クインテット、ローマでのライブ録音。
 サポートは同じくイタリアンGiovanni Guidiを中心としたピアノトリオ。
 御大お二人が二曲ずつに、ジャズ曲のメドレー、長尺な演奏が揃った全六曲のステージ。
 面子から想像される通り、クールでハードボイルドなイタリアンジャズ。
 冒頭はEnrico Ravaのバラード。
 真骨頂、あのフィルムノアールな感じのハードボイルドな音。
 徐々にテンションを上げ、激情を交えながらのバラード。
 過度なセンチメンタリズムにも、混沌、激烈にも行かない、ハードボイルドネス。
 曲が移りテンポが上がっても、Joe Lovanoのブルージーな楽曲に移っても、John Coltrane的なフリーな色合いが混ざっても、その空気感は変わりません。
 Ravaさんは枯れた感じはなし、Joe Lovanoも一時期の枯れて幽玄な感じではなく、かつてのブヒブヒな感じが戻って来ています。
 いずれにしても両者とも圧倒的な表現力。
 世代の違うピアニストGiovanni Guidi、お二人の後ろでは遠慮気味な感じもしますが、対等にスペースが与えられ、あの柔らかい音で硬軟織り交ぜ、上品にぶっ飛んでいくインプロビゼーション。
 最後に収められた名作“This Is the Day” (2014)のような漂うようなスローバラードも含めて、堂々たる弾きっぷり。
 ベタな企画なようで、まさにその予想通りの音ながら、また普通にジャズなようで、なかなか他では聞けない上質さ、カッコよさ。
 圧倒的な存在感、演奏力のなせる業なのでしょう。
 イタリアンなオヤジたちのカッコよさ。





“Il Giro Del Giorno in 80 Mondi” (1972) 
“Quotation Marks” (1973) 
“Katcharpari” (1973) 
The Pilgrim and the Stars” (1975) 
The Plot” (1976) 
Enrico Rava Quartet” (1978) 
“<<Ah>>” (1979) 
“Opening Night” (1981) 
“Andanada” (1983) 
“String Band” (1984) 
“Nexus Meets Enrico Rava” (1985) 
“Secrets” (1986) 
Volver” with Dino Saluzzi (1986) 
“Animals” (1987) 
Bella” (1990) 
Nausicaa” (1993) 
Rava, L'Opera Va” (1993) 
“For Bix and Pops (1994) 
“Electric Five” (1994) 
Chanson” (1994)
Noir” (1996) 
Italian Ballads” (1996) 
“Carmen” (1997) 
“Certi Angoli Segreti” (1998) 
Vento”  with Barbara Casini (1999) 
Shades of Chet. ” (1999) 
“Rava Plays Rava” (1999) 
“Live at Birdland Neuberg” (2000) 
“Duo en Noir” (2000) 
“Beyond Fellini” (2002) 
“Renaissance” (2003) 
“Happiness Is... ” (2003) 
“Full of Life” (2003)
Easy Living” (2003) 
“Montreal Diary/A: Plays Miles Davis” (2004)
“Montréal Diary/B” (2004) 
Tati” (2004) 
“What a Day” (2006) 
“Quatre” (2006) 
The Words and the Days”(2007) 
The Third Man” (2007) 
“Live at JazzBo '90” (2007) 
New York Days” (2009) 
Tribe” (2010) 
“Rava on the Dance Floor” (2012) 
“The Monash Sessions” (2013) 
Wild Dance” (2015) 

posted by H.A.




【Disc Review】"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto

"Bella" (May.1990) Rava/Pieranunzi/Pietropaoli/Gatto
Enrico Pieranunzi (Piano) Enrico Rava (Trumpet) Enzo Pietropaoli (Bass) Roberto Gatto (Drums)

Bella
Enrico Rava
Philology
2009-04-01


 イタリアンの美しいトランペットカルテット。
 後にEnrico Pieranunzi, Enrico RavaのDuoの名作“Nausicaa” (1993)がありますが、本作ではキッチリビートが入って、そちらよりも元気溌剌、よりジャズ的な音。
 美しくて、センチメンタルで、それでも明るいジャズ。
 ECMのEnrico Rava諸作よりも音の明度が高くきらびやかですが、そちらはお好み次第。
 一般受けするのはこちらなのでしょうねえ。
 コンテンポラリージャズよりもオーソドックスなモダンジャズといった質感、オシャレなイタリアンが演奏したヨーロピアンモダンジャズ、ってな感じでしょうか。
 この後しばらく共演するStefano Bollaniよりも落ち着いたまろやかなピアノ。
 それでいてきらびやかな音。
 少々漂う狂気も計算された感じで、あくまで端正で美しい余裕たっぷりの音使い。
 Enrico Ravaは悠々とした吹きっぷり。
 ECMでのこの人のイメージはくすんだ真鍮だと思うのですが、本作では艶やかで明るくきらびやか。
 これ見よがしの派手さや妙な音は使わない端正な演奏ですが、相変わらずの表現力。
 抑揚に微妙な音の変化に、抜群のリズムへのノリ。
 オーソドックスなジャズを演奏してもやはりスーパートランペッターです。
 楽曲はEnrico Rava, Enrico Pieranunziの美しくセンチメンタルなオリジナルにスタンダードを少々。
 さすがにごちそうさまな “My Funny Valentine”が二テイク入っていることには一瞬引いてしまいますが、Take2はフリー混じりのカッコいい演奏。一番妖しげな演奏がそれだったりして。
 白眉はEnrico Ravaの名曲“Secrets”でしょうか。
 フリーな感じのビート、ルバート的なスローバラードから始まり、徐々にテンションと音量を上げていくドラマチックで長尺な演奏。
 その他含めて、全編艶やかできらびやかなトランペットとピアノの絡み合い。
 ドラム、ベースも控えめながら素晴らしい演奏。
 とても柔らかで艶っぽいジャズ。
 すましたネコのポートレート、平和な感じのジャケットですが、確かにそんな音かもしれません。




posted by H.A.

【Disc Review】“Wild Dance” (2015) Enrico Rava

“Wild Dance” (2015) Enrico Rava
Enrico Rava (trumpet)
Gianluca Petrella (trombone) Francesco Diodati (guitar) Gabriele Evangelista (bass) Enrico Morello  (drums)

Wild Dance
Enrico Rava
Ecm Records
2015-08-28
エンリコ ラバ

 イタリアの大御所トランペッター、Enrico Rava最新作。
 近年のリズム隊はピアノトリオでしたが、本作はギタートリオ。
 その分、クールさが前面に出たアルバム。
 ギターは正統派ジャズギターではなく、少しやんちゃ系、クリエイティブ系。
 といっても激しい系ではなくて、あくまでクリーントーンを中心に妖しげな雰囲気を醸し出していくタイプ。
 今の若手らしくジャズジャズしていない現代的な音使い。
 でも基本的には上品でしっとりとした感じ。
 一曲目からRavaさんの真骨頂、漂うようなイタリアンバラード。
 ニヒルでハードボイルドな感じ全開。
 コードを出すのがピアノではなくギターの分、浮遊感と妖しさ倍増。
 トランペットはいつもながら、時折の激情を交えながらの素晴らしい表現力、グルーブ、安定感。
 他のメンバーも手練れた演奏。
 私にとってのRavaさんは、アバンギャルドとオーソドックスの中間点からかなりオーソドックス寄り。
 アバンギャルドが強いと聞いていてしんどいし、オーソドックスだけだと飽きてしまう。
 オーソドックス寄りのいいバランス、気軽に聞ける位置。
 本作も音楽的にはオーソドックス。
 でもギターの音がいい感じで穏やかな妖しさ、そして現代性をプラス。
 結果、やはり定位置に戻る。
 うまくできています。
 いつも通りに、美しく端正だけども、妖しいジャズ。
 とてもクール。

(※本投稿は2016/02/08から移動しました。)



posted by H.A.

【Disc review】“Tribe” (2011) Enrico Rava

“Tribe”(2011)Enrico Rava
Enrico Rava(Trumpet)
Gianluca Petrella (trombone) Giovanni Guidi (piano) Gabriele Evangelista (bass) Fabrizio Sferra (drums) Giacomo Ancillotto (guitar)
 
Tribe
Enrico Rava
Imports
2011-11-01
エンリコ・ラバ

 イタリアのベテラントランぺッターの2011年作。
 この人、1970年代からコンスタントにアルバムを発表しており、表情はさまざま。
 マイルスっぽかったり、ロックだったり、クラシックぽかったり、フリーぽかったり、映画のサントラぽかったり。
 それでもトランペットは一貫、マイルス的なクールさに加えて、いかにもイタリアンの粋な感じ。
 さらに時折の激情感がカッコよく、スタイリッシュ。
 どのアルバムもよいのですが、近年ではこれが一番お気に入り。
 編成はピアノトリオにトロンボーンを加えたクインテットが中心。
 イタリアの若手中心なのだと思いますが、トロンボーンのGianluca Petrella、ピアノのGiovanni Guidiなどは非凡なものを感じさせますし、リズムも変幻自在でグルーブ感もバッチリ、いいバンドです。
 特に数曲で聞かれるバラードでのルバート的な展開の飽きさせることのない自然な演奏は出色もの。
 冒頭は止まりそうになるくらいに、ゆったりした美しいバラード。
 いかにもRavaさんの演りそうなイタリア映画のサントラっぽい曲。
 シンプルで肩に力が入っていない演奏ですがドラマチック。
 フィルムルノアールか恋愛ものかは、聞く人の自由で想像するとして、ほの暗く切ないストーリーや映像が浮かんできます。
 さらに二曲目も同様の質感。
 三曲目でやっと強めのリズムが入りって来ますが、あくまでクール。
 エキサイティングなトランペットソロを展開しますが、これも熱いようであくまでクール。
 さらには、怪しい系のバラード曲が続き、ここまでRavaさんの面目躍如な展開。
 数曲アップテンポな曲も入りますが、あくまでメロディアスなバラードが中心。
 どこかで息切れする曲があるだろうと思いきや、このアルバムでは最後まで映画のサントラのような、ドラマチック、あるいはロマンチックな佳曲、演奏がこれでもかこれでもかと、てんこ盛り。
 ほの暗かったり、ミステリアスであったりするだけでなく、穏やかであったり、牧歌的であったり明るいイメージも含め、さまざまな表情の音楽。
 さまざまな情景を呼び起こしてくれます。
 とても素敵な映像的な音楽。

(※本投稿は2014/03/20から移動しました。)


posted by H.A.

【Disc Review】“New York Days” (2008) Enrico Rava

“New York Days” (2008) Enrico Rava
Enrico Rava (trumpet)
Mark Turner (tenor saxophone) Stefano Bollani (piano) Larry Grenadier (bass) Paul Motian (drums)

New York Days (Ocrd)
Enrico Rava
Ecm Records
エンリコ ラバ


 Enrico Rava、ニューヨーク系コンテンポラリー人脈を加えたアルバム。
 相棒のStefano Bollani以外はアメリカン。
 Mark Turnerの参加が意外なところ。 ECMの次のスターとして売り出そうとしていたのかもしれません。
 本作は静謐ながらダークで妖しさが強いEnrico Rava。 全てオリジナル曲。
 冒頭は美しいピアノに導かれる優雅なワルツ。
 が、なんだか妖しいムード。
 ドラムがPaul Motian、ビートを落として明確に定めないこと、Stefano Bollaniが自由度の高いピアノを弾いていることが大きいのかもしれません。
 強烈な浮遊感と不思議な音のズレ。
 さらにMark Turnerのクールながら抽象的なサックスも効いているのでしょう。
 続くは静かなフリーインプロビゼーション、強烈な疾走感の4ビートでの辛口ジャズ、ルバートでのスローバラード、などなど。
 全体を眺めれば、いつものEnrico Ravaのバリエーションではあるものの、明度が低く沈んだ印象。
 これがカッコいい。
 イタリアンな人にとっては、Gloomy “New York Days”だったのかな?
 それでも沈痛~深刻系まではいかないのがこの人の音楽のいいところ。
 Enrico Ravaはいつもながらの表現力、堂々とした吹きっぷり。
 Mark Turnerのサックスのカウンターがカッコいい。
 最後はルバートでのバラードで締め。
 ニヒルでクール、さらにダークな名作。 




posted by H.A.

【Disc Review】“The Third Man” (2006) Enrico Rava / Stefano Bollani

“The Third Man” (2006) Enrico Rava / Stefano Bollani
Enrico Rava (Trumpet) Stefano Bollani (Piano)

Third Man (Ocrd)
Enrico Rava
Ecm Records
エンリコ ラバ


 Enrico Rava、Stefano Bollani のDuo。
 ドラムが入った“Tati” (2004)は素晴らしい作品でしたが、こちらも同等かそれ以上。
 舞い落ちるような美しいピアノを背景にしたハードボイルドなトランペット。
 ドラムがいない分、ビートの自由度はこちらの方が上。
 終始漂うようなビート感。
 縦横無尽、変幻自在、不思議感の強いピアノに対して、むしろオーソドックな印象のトランペット。
 トランペットからピアノへインプロビゼーションが渡され、自由に飛び回る音を再び定常に引き戻すトランペット、そんな流れ。
 過激な印象もあるEnrico Ravaですが、このコンビの場合は概ねそんな役回り。
 いい感じでバランスが維持される素晴らしいコンビネーション。
 私が知る限り、Stefano Bollaniの一番カッコいい演奏はこのアルバムのようにも思います。 
 いつものオリジナル曲に加えて、Stefano Bollaniの選曲でしょうか、ブラジル曲が何曲か入っていますが、ブラジル曲独特の郷愁感とEnrico Ravaのハードボイルドな哀愁が交錯する素敵な音。
 多くを占めるオリジナル曲もいつも通りにイタリア的な哀愁の漂うクールなメロディ揃い。
 オーソドックスなコンボ編成のいいアルバムがたくさんありますので、これがEnrico Ravaの最高傑作、と書いてしまうには少々抵抗もありますが、静かなEnrico Ravaを聞きたい場合は迷わずこれ。

※別のアルバムから。


posted by H.A.

【Disc Review】“The Words and the Days” (2005) Enrico Rava

“The Words and the Days” (2005) Enrico Rava
Enrico Rava (trumpet)
Gianluca Petrella (trombone) Andrea Pozza (piano) Rosario Bonaccorso (bass) Roberto Gatto (drums)

Words &amp; The Days
Enrico Rava
Ecm Records
エンリコ ラバ


 Enrico Rava、“Easy Living” (2003)に続くコンボでの作品。
 前作からピアニストのみを変更。
 レギュラーだったStefano Bollaniとの連携はこの後も続いていきますので事情はわかりませんが、Andrea Pozzaも素晴らしいピアニスト。
 冒頭から超スローテンポ、ルバートでのバラード。
 このピアノがカッコいい。
 これをやるためにこのピアニスト・・・かどうかはわかりませんが、そう思わせるような素晴らしい演奏。舞い落ちるような美しいピアノ。
 二曲目前半までそんな演奏が続き、ビートが加わりゆったりとした雄大なイメージの演奏。
 以降もメロディアス。
 いかにもイタリアンなバラード中心の演奏。
 過激な演奏、難解な場面はありません。
 独特の浮遊感、そして哀愁漂う素晴らしい演奏の連続。
 普通にジャズなEnrico Ravaを聞くには、本作と “Easy Living” (2003)が一番よいのでしょうね。
 もちろんECM、少々の毒気はありますが、アレンジ、演奏、録音含めて、超高レベル、素晴らしい完成度です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Tati” (2004) Enrico Rava

“Tati” (2004) Enrico Rava
Enrico Rava (trumpet)
Stefano Bollani (piano) Paul Motian (drums)

Tati
Enrico Rava
Ecm Records
エンリコ ラバ


 Enrico Rava、ECM復帰第二作はベースレスの変則トリオ、バラード集。
 Paul Motianとのセッションは初めてでしょうかね。
 この時期のPaul Motian、ビートが定まらない浮遊感の強い音を作る際にはピッタリの人。
 まさにそんな音。
 ピアノとトランペットの漂うようなDuo演奏に対してアクセントをつけていく役回り。
 スローバラード中心。 ビートは全て止まりそうで止まらないようなルバート。
 終始フワフワと漂うような浮遊感。
 舞い落ちるような美しいピアノの音、不定期に低く響くシンバルの音を背景にして、Enrico Ravaが静かに吹く、終始そんな音。
 Stefano Bollaniのピアノ、自身のリーダー作ではオーソドックスにまとまる印象が強いのですが、この種のビートが曖昧で抽象度が少し高い、静かな演奏が一番カッコいいようにも思います。
 Enrico Ravaは静かながら堂々とした貫禄の吹きっぷり。
 周りがどうあろうが、時折の激情を交えながらも、淡々とメロディを紡いでいきます。
 ニヒルでハードボイルド。
 スタンダード一曲を除いて全てオリジナル。
 淡い寂寥感が漂うメロディばかり。
 後半になると少しビート感が上がり、フリーな演奏もありますが、ベースレスゆえの不思議な浮遊感は消えません。
 Enrico RavaのカッコよさとECMのカッコよさがいいバランスで混ざり合う佳作、素晴らしいアルバム。




posted by H.A.
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