吉祥寺JazzSyndicate

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Egberto_Gismonti

【Disc Review】“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti

“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti
Alexandre Gismonti, Egberto Gismonti (Guitar)
Camerata Romeu, Zenaida Romeu (Conductor, Strings Orchestra)

Saudacoes
Egberto Gismonti
ECM
2009-10-20


 Egberto Gismontiの2017年時点での最新作。
 ストリングスオーケストラ作品と、ギターのDuoの二編成。
 この前の作品はオーケストラの“Meeting Point” (1995)。

 ストリングスオーケストラの作品は、クラシック音楽の色合い。
 メカニカルにアップダウンするアグレッシブでハイテンションな表情が中心ですが、優し気なコンボ作品“Sanfona” (Nov.1980,Apl.1981)、“Em Família” (1981)あたりを想い出す場面もたくさん。
 さらに、合間々にコミカルな表情も見え隠れする構成。
 前作と同様に、Egberto Gismontiミュージックの集大成、オーケストラバージョンといえるのかもしれません。
 いろんなところに過去の楽曲の断片も出てくるのも面白いところ。
 前作“Meeting Point” (Jun.1995)と比べると優し気で柔らかな空気感なのは、ホーンがいないせいかな?と思って、クレジットを見るとオーケストラは全員女性のようで、妙に納得。
 優し気なGismontiミュージック、ストリングス版。

 ギターのDuoは想像通りのGismontiミュージック、ギター編。
 どちらが父でどちらが息子なのかの判別はつきません。
 娘Bianca Gismontiと同様、天賦の才能とともに英才教育を受けてきたのでしょう。
 過去の名曲を含めて、ハイテンション系の演奏が並びます。
 が、1970年代ECM、“Sol Do Meio Dia” (Nov.1977)のRalph TownerとのDuoのように超ハイテンションな感じでは無くて、まずまず穏やかな音の流れ。
 もちろんボッサやジャズではなく、あくまでGismontiミュージック。
 本作に収められたソロでの演奏を聞く限り、息子さんの方はスパニッシュ系が得意なのでしょうかね?
 少し後の初リーダー作”Baiao de Domingo” (2009)はオーソドックスなブラジリアンジャズっぽい感じでしたが、さてこの後、父上のように求道的にいくか?、Bianca Gismontiのようにポップ系にいくか?
 本作がその予告編になるか・・・な?

 明るいようで陰影の強い、とても素敵なジャケットのポートレートは、とびきりの美しさ、含蓄の深さ。
 明るいようで陰影があって、大人なようで童心なようで、妖しいようで優しくて、あるいは優しいようで妖しくて・・・
 Egberto Gismontiミュージックそのものの構図。
 その後、十年の歳月が経ちますが、新作がそろそろ出ませんかね・・・?





 初期の作品はボサノバ、ロックの色も強いちょっと変わったMPB。
 そこから激しい系のロックな色合いが強くなって、“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)などはとんでもなく凄い作品。
 そこからECMで制作を開始して、それらはまずまず落ち着いた印象。
 っても十二分にハイテンションで激しいのですが。
 その後のECM以外の作品は電子音が強くなって・・・、また気が向けば。
 私的な好みは柔らかなジャズの色が強い“Sanfona”(Nov.1980,Apl.1981)、(1981) “Em Família” ですねえ。
 凄いのは上記二作だと思うけど。

(1969) “Egberto Gismonti” 
(1970) “Sonho '70” 
(1970) “Orfeo Novo” 
(1972) “Agua e Vinho” 
(1973) “Egberto Gismonti” 
(1974) “Academia de Danças” 
(1976) “Corações Futuristas” 
(1977) “Carmo” 
(Nov.1976) “Dança Das Cabeças” with Nana Vasconcelos
(1978) “No Caipira” 
(Nov.1977) “Sol Do Meio Dia” 
(1978) “Solo” Solo 
(Mar.1979) “Saudades” Naná Vasconcelos
(Jun.1979) ”Magico” Magico
(Nov.1979) “Folk Songs” Magico
(1980) “Circense
(Nov.1980,Apl.1981) “Sanfona
(1981) “Em Família” 
(Apl.1981) “Magico:Carta de Amor” Magico
(1982) “Fantasia”
(1982) “Sonhos de Castro Alves”
(1983) “Cidade Coração”
(1984) “Duas Vozes” with Nana Vasconcelos
(1985) “Trem Caipira” 
(1986) “Alma” Piano Solo(+α)

(1986) “Feixe De Luz"

(1988) “Dança Dos Escravos” Guitar Solo
(1989) “Kuarup”
(1989) “In Montreal” with Charlie Haden
(1990) “Infância” 

(1991) “Amazônia”

(1992) “Casa Das Andorinhas”

(Apl.1995) “ZigZag” 
(Jun.1995) “Meeting Point” with Orchestra
(2006, 2007) “Saudações” with Orchestra


posted by H.A.


【Disc Review】“Meeting Point” (Jun.1995) Egberto Gismonti

“Meeting Point” (Jun.1995) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Composer)
Lithuanian Symphony Orchestra Vilnius

Meeting Point
Egberto Gismonti
Ecm Import
2000-08-01


 Egberto Gismontiのオーケストラ作品。
 ジャズでもブラジル音楽でもなく、シンフォニーオーケストラによるクラシック。
 Egberto Gismonti本人は、ピアノで数曲前面に出る場面もありますが、基本的にはコンポーザー、アレンジャー。
 この前の作品“Infância” (1990), “Música de Sobrevivência” (1993), “ZigZag” (Apl.1995)が、少人数での疑似オーケストラ的な音作りでしたので、作りたい音はこの種の音楽になっていたのでしょう。
 時期からすれば、そのシリーズの集大成的な位置付けだったのかもしれません。
 Oden/EMIレーベルの作品ではストリングス、オーケストラ入りはたくさんあったし、ECMでも“Saudades” (Mar.1979) Naná Vasconcelosといった作品があります。
 もともとやりたかったのがこれかもしれませんし、何年も前から頭の中で鳴っていた音を整理し、ようやく実現出来た、といったことなのかもしれません。
 オーケストラでのクラシックではありますが、音楽自体はハイテンション系中心のGismontiミュージック。
 ピアノがリードする定番の名曲“Frevo”も、激しいストリングスを加えた、ハイテンションさでは一二を争いそうな演奏。
 ジェットコースターのようなスリリングな音の動き。
 勇壮で変幻自在。
 激しくアップダウンを繰り返しながら、目まぐるしく変わっていく景色。
 おもちゃ箱をひっくり返してかき回していくような、カオスなような、童心に帰ったような、あるいは、それを計算尽くでやっているような、なんとも複雑で不思議な感じの音の洪水。
 ときおり現れる優しい表情、おどけたような表情もGismontiミュージックそのものでしょう。
 っても、電子音やロックなビートやプログレッシブロックな激しいリフが無い分、“No Caipira” (1978)のバージョンや、Odeon/EMI諸作よりも随分上品でクールな印象がECM的であり現代的。
 次作は時間をかなり空けて、オーケストラ作品とご子息とのギターDuo演奏の“Saudações” (2006,2007)。
 またコンボ、あるいは少人数での作品、あるいは優しいサイドの作品を聞きたいところではあるのですが、また機が熟するまで・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“No Caipira” (1978) Egberto Gismonti

“No Caipira” (1978) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Acoustic Guitar, 12-String Guitar, percussion, Berimbau, Musical Box, Kalimba, Cathedral, Accordion, Guitar, Comb, Voice)
Zeca Assumpção (Bass) Zé Eduardo Nazário (Drums, Percussion, Voice) Roberto Silva (Pandeiro, Wood Block, Talking Drum, Shekere)
Mauro Senise (Soprano Sax) Mauro Senise (Soprano, Alto Sax, Piccolo, Flutes) Zezé Motta (Voice)
And Orchestra

No Caipira
Egberto Gismonti
Ecm Import
2008-11-18


 ブラジルのレーベルOden/EMIのEgberto Gismonti。
 ECMでの制作を開始した時期、“Dança Das Cabeças” (1977)の後の作品。
 先の“Carmo” (1977)までの作品とは違って電子楽器は使用されておらず、アコースティックに戻り、“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)のような強烈な激しさはありません。
 ロックなビートもあまり使われず、時期的にもECMのEgberto Gismontiの色合いに通じる音がいくつも。
 もちろん十二分にハイテンション。
 おもちゃ箱をひっくり返したようなOdeon/EMIのGismontiミュージック。
 ギターの弾き語りでのボサノバから始まり、超高速に突っ走る曲あり、南米山奥エスニックなフリーミュージックあり、オーケストラが複雑に絡むドラマチックな展開あり、フリージャズ風あり、ハイテンションジャズあり、やはりロックな演奏もあり。
 “Maracatú”, “Frevo”など、後に何度も再演される定番曲も収められています。
 猥雑なのか上品なのか、優しいのか激しいのか、何が何だかよくわかりません。
 いろんな要素、いろんな質感てんこ盛り、ここまでの作品、さらにはこの後の作品のGismontiミュージックをギュッと詰め込んだ坩堝のようなアルバム。
 Manfred Eicherさんからのご指導が少なくないであろう、なんだかんだで上品なECMでの作品よりも、こっちの方が生のEgberto Gismontiさんなのかもしれませんね。




posted by H.A.


【Disc Review】“Carmo” (1977) Egberto Gismonti

“Carmo” (1977) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Electric Piano, Viola, Guitar, Synthesizer, Kalimba)
Luiz Alves (Acoustic Bass) Sandrino (Bass) Valdecir (Electric Bass)
Robertinho (Drums, Percussion) Ubiratan (Percussion)
Biju (Clarinet) Celso, Jaime, Meirelles, Copinha, Jorginho, José Carlos (Flute) Mauro Senise (Soprano Sax, Flute) and Strings

カルモ(BOM24191)
エグベルト・ジスモンチ
ボンバ・レコード
2012-01-28


 Egberto Gismonti、ファンクフュージョンなアルバム、ブラジルのEMIから。
 ECMでの制作を開始した時期、“Dança Das Cabeças” (1976)と同時期の作品。
 先のブラジルのOden/EMIでの作品“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)のような強烈な激しさはありません。
 Oden/EMIのGismontiを象徴するような妖しくハイテンションなストリングスはそのままに、ボーカルが前面に出る構成ですが、全体的に洗練されてきた感じでしょうか。
 もちろん十二分にハイテンション、前作“Corações Futuristas” (1976)でも演奏されていた名曲”Cafe”のセルフカバーもキメの多いフュージョンテイスト。多くの曲で凄まじいファンクベースが跳ねまくり、少々ポップ方向に振れている感じの演奏も何曲か。
 超弩級に激烈な“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)にくらべると随分丸くなり、トゲが取れ、スッキリしたといえばそうかもしれません。
 “Agua e Vinho” (1972)ぐらいまではMPBっぽかったもんね。
 妖しい感、普通じゃない感はたっぷり。
 ぶっ飛んだピアノとサックスのDuoでのジャジーなスローバラード演奏は素晴らしいし、南米山奥エスニックな空気感もたっぷり。
 などなど、いろんな要素が混ざりつつの1970年代フュージョンの香りがたっぷりのブラジリアンファンクフュージョン。
 激しさ、ハチャメチャさが少しおさまり、スッキリとしたOden/EMIのGismontiミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Corações Futuristas” (1976) Egberto Gismonti

“Corações Futuristas” (1976) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Synthesizer, Piano, Electric Piano, Guitar, Voice)
Luiz Alves, Renato Sbragia (Double Bass) Robertinho Silva (Drums, Percussion) Nivaldo Ornelas (Sax, Flute)
Danilo, Mauro, Paulo (Flute) Ed Maciel (Trombone) Darcy Da Cruz, Marcio Montarroyos (Trumpet) Aninha, Marya, Joyce, Lizzie, Mauricio, Novelli, Dulce (Voice) and Strings

コラソンエス・フトゥリスタス(BOM24190)
エグベルト・ジスモンチ
ボンバ・レコード
2012-01-28


 Egberto Gismonti、ブラジアリアン・プログレッシブロック、ブラジリアン・ハードジャズ、ブラジリアン・ハードフュージョンな一作。
 凄まじい“Academia de Danças” (1974)に続く、超弩級にハードな、諸々の要素てんこ盛りフュージョン。
 冒頭、後々まで演奏される定番曲“Dança Das Cabeças”から、例のハイテンションなガットギターのストローク。
 それだけならECM作品にもたくさんあるのですが、それにエフェクターが掛かっているし、シンセサイザーがぎゅんぎゅん唸り、キメキメのブレイクに、ブチ切れサックス。
 切れ目なく続くのはあのしっとりとした名曲のはずの”Cafe”。
 ECMファンからすれば、“Somewhere Called Home” (1986) Norma Winstoneの静謐なバラードを想像するのですが、オリジナル?は激しいビートにKing Crimson風のリフに、魂の叫び系の激しいスキャット。
 三曲目でやっと落ち着き、ギターのアルペジオと低音のアルコ、スキャットが絡み合う幻想的なバラード”Carmo”+南米山奥エスニックでひと休み。
 LPレコードB面に移るとメインの楽器がピアノに変わります。
 静かに美しく、幻想的に始まりますが、こちらも徐々にテンションを上げ、気がつけば音の洪水。
 超弩級の全力疾走ミュージック。
 シンセサイザーが絡みつきながら突っ走る、超高速、怒涛のようなピアノジャズ。
 この人にしては珍しい4ビートなんて、他のジャズピアニストを全く寄せ付けないようなとてつもないピアニストEgberto Gismontiの演奏。
 Keith Jarrett的フォークロック~ゴスペルチックな演奏をインタールード的に挟みつつ、最後はド派手な高速サンバの大合唱~ラテンジャズな怒涛の鍵盤叩きまくりで幕。
 Chick CoreaHerbie Hancockも真っ青のハードなピアノジャズ。
 いやはやなんとも・・・
 最初から最後まで突っ走りまくるジェットコースターミュージック。
 激烈ながらビートがしなやかでうるさくないのがさすがにというか、一時期のWether Report的というか。
 ジャケットのGismontiさんは、据わった眼でこちらをギラっとにらんでいますが、その通りの怖い作品。
 鬼も逃げ出す音の洪水。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisや上記のアーティストの名作群と並ぶ大傑作だと思います。




posted by H.A.


【Disc Review】“Academia de Danças” (1974) Egberto Gismonti

“Academia de Danças” (1974) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Electric Piano, Guitar, Flute, Synthesizer, Organ, Whistle, Vocals)
Luís Alves (Bass) Roberto Silva (Drums)
Nivaldo Ornelas, Danilo Caymmi, Mauro Senise, Paulo Guimarães (Flute) Marcio Montarroyos (Flugelhorn) Ed Maciel (Trombone) Darcy Da Cruz (Trumpet) Dulce Bressane (Vocals) and Orchestra

Academia De Dancas
Egberto Gismonti
Ecm Import
2008-11-18


 Egberto Gismonti、ブラジルのレーベルOdeonでの凄まじいアルバム。
 怒濤のような音楽。
 シンセサイザーやエフェクターを導入し、ブラジアリアン・プログレッシブロックというか、ブラジリアン・ハードジャズというか、ブラジリアン・ハードフュージョンというか。
 この期の作品はそんな音楽が多いのですが、これと次作“Corações Futuristas” (1976)がその極めつけ。
 重いビートにやたらブレイクの多い複雑な展開のプログレッシブロック風やら、シンセサイザーがうなるWather Report風のフュージョンやら。
 合間合間に挟まれるオーケストラの音も、なんだか激しさを助長しています。
 さらにまた合間合間に出てくる優し気な歌声。
 どう聞いてもプログレッシブロックな重い展開から、唐突に優し気、かつ幻想的なスキャットが映える穏やかなブラジリアンミュージックになってみたり、センチメンタルなピアノの弾き語りやら・・・
 それに安堵するのもつかの間、また電子音と激しいストリングスが絡み合ったり、King Crimson風のどヘビーなリフと抜けた感じのスキャットが・・・
 とか何とか、まさに変幻自在。
 ・・・締めはエレピと管楽器?が絡み合う混沌の中で幕。
 もー、グチャグチャ。
 ECMの作品とは全くイメージは異なりますが、とにもかくにもすさまじいアルバム。
 天才の本領発揮か、狂気の発出か。
 こりゃ、スゲーや。ホントに。
 あまり凄すぎて気楽に聞き流せないのが困ったものですが・・・
 なお、近年のCDには次作“Corações Futuristas” (1976)の一部がコンパイルされているようです。
 これまたとんでもない演奏・・・次へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Egberto Gismonti (Arvore)” (1973) Egberto Gismonti

“Egberto Gismonti (Arvore)” (1973) Egberto Gismonti
Egbero Gismonti (Piano, Guitar, Flute, Percussion, Voice)
Edson Lobo, Novelli (Bass) Ténorio Jr (Electric Piano) Ion Muniz (Flute) Paulo Moura (Saxophone)
Bernadete, Dulce, Henrique, Olga, Pedro Paulo, Regis, Sidney, Vera (chorus)
And Orchestra

エグベルト・ジスモンチ(Arvore)(BOM24189)
エグベルト・ジスモンチ
ボンバ・レコード
2011-12-17


 Egbero Gismontiのジェットコースターミュージック、事始め。
 シンセサイザーを導入する直前、アコースティックな編成。
 後のプログレッシブロックやハードフュージョン的な色合いはそれほど濃くはありません。
 もちろんブラジリアンミュージックの香りがたっぷりなのですが、この作品からは優しさよりもハイテンションで激しい演奏が目立ちます。
 本作、“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)の三作が最も激しいGismontiミュージック。私が知る限り。
 冒頭から超高速なあのECMのGismontiっぽいギター。
 ちょっと違うのが、せわしないストリングスと、のほほんとした感じのボーカル、妖しいコーラス群。
 怒涛のピアノから再び超高速ギターでの締め。
 その間わずか三分弱。
 なんともあわただしい・・・というかスリリングな展開。
 唖然としている中、一転、ゆったりとしたセンチメンタルなブラジリアンバラード。
 さらには南米山奥な感じのフリージャズ風やら、激しいソロピアノやら、オーケストラを加えたとても優雅でセンチメンタル、ドラマチックなジャズバラードやら・・・
 めまぐるしく変わる、変幻自在な音の流れ。
 いろんな要素、てんこもり。
 ここからのGismontiさん、そんなとてもクリエイティブで激しい作品が続きます。
 まだまだ穏やかなMPB的な前作“Agua e Vinho” (1972)と、激烈な次作“Academia de Danças” (1974)の中間、その結節点のような作品。
 後続の作品を聞いてしまうと、まだトップギアには入っていなかったのですが、こりゃスゲーや。

※ライブ映像から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Agua e Vinho” (1972) Egberto Gismonti

“Agua e Vinho” (1972) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Organ, Guitar, Bass, Harmonica, Voice, Percussion)
Novelli (Bass, Percussion) João Palma, Robertinho (Drums, Percussion)
Piri (Acoustic Guitar) Peter Dauelsberg (Cello) Paulo Moura (Saxophone, Clarinet) Dulce (Voice) Associação Brasiliera De Violoncelo

水とワイン(BOM24188)
エグベルト・ジスモンチ
ボンバ・レコード
2011-12-17


 Egberto Gismonti、1970年代、ブラジルのレーベルOdeonから。
 このレーベルのEgberto Gismonti作品は過激で激しいモノが少なくないのですが、このアルバムまでは、初期の“Egberto Gismonti” (1969)の流れを引くマイルドな色合い。
 ストリングスをたっぷりとフィーチャーした歌物中心。
 この人の音楽のイメージとは対照的な線が細い自身のボーカルを中心とした、優し気、あるいは悲しげな表情。
 コンテンポラリージャズというよりもMPB。
 ド派手な電気サウンドは導入前ですが、少々妖し気なムードに少々サイケなムード。
 ガットギターでの弾き語りボサノバもあるのですが、少々強めのロックなビートもたくさん。
 どことなくBeatlesのアバンギャルド系な感じもあるのは、この期のMPBの色合い、ブラジルの空気感でもあるのでしょう。
 次作“Egberto Gismonti (Arvore)” (1973)からは凄まじい怒涛のようなGismontiミュージックが始まります。
 嵐の前の静けさか、その予告編か・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“ZigZag” (Apl.1995) Egberto Gismonti Trio

“ZigZag” (Apl.1995) Egberto Gismonti Trio
Egberto Gismonti (Guitar, Piano)
Zeca Assumpção (Double Bass) Nando Carneiro (Guitar, Synthesizer)

エグベルト ジスモンチ

 ECMでの前作“Música de Sobrevivência” (1993)からチェロが抜けた構成ですが、オーケストラ風から印象が変わって、アコースティックギターDuo+ベース、そのままのイメージの音が中心。
 ギター4曲、終盤の2曲にピアノ。
 全体としては、“Dança Dos Escravos” (1988)あたりに印象は近いのでしょう。
 例によって目まぐるしい展開ですが、さすがに譜面がありそう。
 本作もクラシックのイメージが強いのでしょうね。
 前半はアコースティックギター2台を中心とした幻想的な音空間。
 アルペジオを中心に静かに音を敷き詰めながら、展開していくスタイル。 浮遊感も強い複雑な構成ですが、その中に隠されるように配置された素敵なメロディ。
 瑞々しいギターの音を背景にベースがリードする名曲"Carta De Amor"の美しいこと。
 そんな凝った演奏の後に、ピアノによる美しいバラード、さらには怒涛のようなピアノと疑似オーケストラでのエキサイティングなエンディング。
 通して聞くとまるでライブのワンステージを観た感じ。
 そういった意味でもよくできています。


 

 さて、Egberto Gismonti諸作、気付く限りを並べてみると・・・
 ECM以外の作品、近年の作品は追いかけられていませんが、私の好みはどうもジャズの香りの強い1980年前後のコンボでの作品のようです。
 どれもいいんですがね・・・
 きっと聞けていない作品の中にも宝物があるのでしょう。

(1969) “Egberto Gismonti” 
(1970) “Sonho '70” 
(1970) “Orfeo Novo” 
(1972) “Agua e Vinho” 
(1973) “Egberto Gismonti” 
(1974) “Academia de Danças” 
(1976) “Corações Futuristas” 
(1977) “Carmo” 
(Nov.1976) “Dança Das Cabeças” with Nana Vasconcelos
(1978) “No Caipira” 
(Nov.1977) “Sol Do Meio Dia” 
(1978) “Solo” Solo 
(Mar.1979) “Saudades” Naná Vasconcelos
(Jun.1979) ”Magico” Magico
(Nov.1979) “Folk Songs” Magico
(1980) “Circense
(Nov.1980,Apl.1981) “Sanfona
(1981) “Em Família” 
(Apl.1981) “Magico:Carta de Amor” Magico
(1982) “Fantasia”
(1982) “Sonhos de Castro Alves”
(1983) “Cidade Coração”
(1984) “Duas Vozes” with Nana Vasconcelos
(1985) “Trem Caipira” 
(1986) “Alma” Piano Solo(+α)

(1986) “Feixe De Luz"

(1988) “Dança Dos Escravos” Guitar Solo
(1989) “Kuarup”
(1989) “In Montreal” with Charlie Haden
(1990) “Infância” 

(1991) “Amazônia”

(1992) “Casa Das Andorinhas”

(Apl.1995) “ZigZag” 
(Jun.1995) “Meeting Point” with Orchestra
(2006, 2007) “Saudações” with Orchestra


posted by H.A.

【Disc Review】“Música de Sobrevivência” (1993) Egberto Gismonti Group

“Música de Sobrevivência” (1993) Egberto Gismonti Group
Egberto Gismonti (piano, guitar, flute)
Nando Carneiro (synthesizers, guitar, caxixi) Zeca Assumpção (bass, rainwood) Jacques Morelenbaum (cello, bottle)

エグベルト ジスモンチ

 前作“Infância” (1990)と同メンバー。
 これまた弦楽器とシンセサイザーがオーケストラの役割、クラシックの香りも強い作品。
 明るく前向きでゴージャスな前作に比べて、少し肩の力が抜けてさらに優しい感じの音になったかな?
 あるいは外向けのエネルギーを抑え目にして、抒情的、内省的になった感じ。
 前作と同様、本作も計算し尽くされたアンサンブルなのでしょうが、Egberto Gismontiとチェロのインタープレーの印象が強いかな。
 結果、緊張感はそのままに哀感と妖しさが増し、それがいい感じ。
 ジャケットの印象そのままに、前作の「陽」に対する「陰」、あるいは「動」に対して「静」。
 ちょっとした楽曲の印象に過ぎないのかもしれませんが。
 どちらがよいかはお好み次第。




posted by H.A.
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