吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM_records

【Disc Review】“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

Florian Weber (piano)
Linda May Han Oh (double bass) Nasheet Waits (drums)
Ralph Alessi (trumpet)

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


 ドイツのピアニストFlorian Weberのトランペット入りカルテット、ECMでの初リーダー作。
 “Alba” (2015) Markus Stockhausenでとても静かで穏やかな演奏していた人。
 サポートはアメリカンRalph Alessi、そのバンドのドラマーNasheet WaitsのECM御用達の人たちに、知る人ぞ知る強烈なアジア系女性ベーシストLinda Oh。
 “Alba” (2015)とは面持ちを変えて、自由に激しく動きつつも、少し線が細めの繊細な音。
 静かなフリービート時間が中心。
 美しい音で美しいメロディを奏でるピアノ、それに寄り添いときおり強烈な推進力のベース、自由にアクセントをつけていくドラム。
 夢と現実を行き来するような時間。
 数曲で加わる覚醒を促すような鋭いトランペット、ときおりの激しいビート。
 が、テンポと音量が下がると、また夢の中・・・
 ”水”をテーマにした楽曲を集めたようで、確かにそんな演奏が続きます。
 1970年代ECMとは全く違う質感、21世紀型ECMの穏やかで優しい、繊細な音。
 美しさと妖しさはそのまま。
 とてもわかりやすいのですが、メロディが甘すぎたりセンチメンタルに過ぎたりしない、クールな色合いなのも現代的なのでしょう。
 静かなヨーロピアンコンテンポラリージャズ、その21世紀型ECMな音、これまた白日夢系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

Wolfgang Muthspiel (guitar)
Brad Mehldau (piano) Larry Grenadier (bass) Eric Harland (drums)
Ambrose Akinmusire (trumpet)

WHERE THE RIVER GOES
WOLFGANG MUTHSPIEL
ECM
2018-10-05


 オーストリアのギタリストWolfgang Muthspiel、ECMでのリーダー作、第三弾。
 前作“Rising Grace” (2016)と同じ編成、ドラマーがBrian BladeからEric Harlandに交代。
 色合いも前作と同様、トランペットがアクセントになった穏やかなジャズ。
 かつてのとんがった音は影を潜め、淡く明るい色合い、フワフワと漂うようなサウンド。
 手練れた人たちによる繊細なアンサンブルと、タダモノではない感の漂うインプロビゼーションが続きます。
 楽曲の表情は妖しいコンテンポラリージャズ、ハイテンションジャズ、南米、ブルース、はたまたスタンダードのパロディ、その他諸々のごった煮。
 但し、それら全てがスッキリとまとまり洗練された、ジャズな音。
 オーソドックスなようで先端的なビートを出すドラムとベース、不思議な音の動きのピアノトリオ。
 それを背景にしたクリーントーンのエレキギター、ガットギターもさることながら、それと絡み合うトランペットがカッコいい。
 控え目ながら、繊細から過激までの多彩な表現力。
 この人もECMから出て来るのでしょう。
 全部合わせて、オーソドックスになようでほんの少しだけ現実からズレたような、白日夢のような音。
 穏やかで優しい、21世紀型ECMな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

Jakob Bro (guitar)
Thomas Morgan (double bass) Joey Baron (drums)

BAY OF RAINBOWS
BRO/MORGAN/BARON
ECM
2018-10-05


 デンマークのギタリストJakob Broのトリオ、ニューヨークでのライブ録音。
 トランペット入りの前作“Returnings” (2018)から、“Streams” (2015)と同メンバーのトリオに戻りました。
 あの乳濁色の空気。
 トランペットの鋭い音や激しいビートでの覚醒はなく、ゆったりとして淀んだような緩やかな音の流れ。
 終始ルバートのように浮遊するビート感、リバーヴたっぷりの艶のある音のギターが紡ぐ、ゆったりとしたメロディとコードの動き。
 寄り添うように慎ましやかにカウンターを当てるベースとフリーにアクセントをつけるドラム。
 オリジナル曲はいつもの淡くて悲し気で懐かし気なメロディ。
 中盤にいかにもニューヨークな先端的な音、ループを使いつつの強いビートのハイテンションな演奏。
 が、それも一曲のみ、他はひたすら続く緩やかで穏やかな音。
 ライブ録音ながらスタジオ録音諸作と同じムード、合間の賑やかな拍手と掛け声でふと現実に立ち返るような、淡い時間が流れていきます。
 白日夢のような音、21世紀型ECMな音。
 ほんとにマンハッタンのど真ん中で演奏された音なのでしょうかね?
 どこか違う場所の違う時間に連れて行ってくれるトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“La Fenice” (2006) Keith Jarrett

“La Fenice” (2006) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

LA FENICE
KEITH JARRETT
ECM
2018-11-02

 Keith Jarrett、ソロピアノコンサートの未発表音源。
 2006年、公式ソロアルバムでは“The Carnegie Hall Concert” (Sep.2005), “Testament” (Oct.2008)の間、“Jasmine”, “Last Dance” (2007)の少し前、場所はイタリア、ベニス。
 イタリアといえば壮絶な”La Scala” (Feb.1995)を想い起こしますが、本作はその色合いと、前掲の21世紀に入ってからの短めの演奏で構成するスタイルが入り混じります。
 冒頭、十七分を超えるPart I、三分半のPart IIは激しく、徘徊するような現代音楽的な演奏、そしてとまどうように間を開けた観客の拍手。
 続くフォークロックなPart III、ゆったりとした美しいメロディのPart IV、強い躍動感、少しズレたようなジャズPart Vで前半は幕を閉じます。
 後半の冒頭Part VI、クラシックなスタートから桃源郷のように変化していく音の流れは、あの凄まじい”La Scala” (Feb.1995)になるか?と期待させつつも、十分を超える演奏は静かに不思議に終わります。
 続いて美しく懐かし気なクラシック曲”The Sun Whose Rays”、クラシックとジャズとフォークロックを混ぜ合わせたようなPart VII、ミディアムテンポのブルースPart VIII、締め?あるいはアンコール1は穏やかにメロディを置いていくスタイル、“The Melody At Night, With You” (1998)にも収録されていた”My Wild Irish Rose”。
 そしてアンコール2?は突っ走る”Stella By Starlight”、さらに最後は”Belonging” (Apl.1974)収録の”Blossam”。
 いろいろな展開はあるものの、やはり一番近い演奏は“The Carnegie Hall Concert” (Sep.2005)あたり、21世紀型Keith Jarrettのスタイルなのでしょう。
 ときおり顔を出す1970年代のような疾走、そして最後の最後に静かに置かれていくあの”Blossam”メロディ、それだけで涙ちょちょ切れてしまうのは懐古趣味なのでしょうか?
 いずれにしても発表済みの同時期の諸作に劣らない好演、その貴重な記録。 




〇:ソロピアノ
 (1967)   “Life Between the Exit Signs”
 (1968)   “Restoration Ruin”
 (1968)   “Somewhere Before”
 (1970)   “Gary Burton & Keith Jarret”
 (1971)   “Ruta and Daitya”
 (1971)   “El Juicio (The Judgement)”
 (1971)   “Birth”
 (1971)   “The Mourning of a Star"
〇(Nov.1971) "Facing You"
 (Apl.1972) "Expectations"
 (Jun.1972) "Hamburg '72
 (Nov.1972)   “Conception Vessel”    Paul Motian
 (Feb.1973) "Fort Yawuh"
 (Feb.1973) "In the Light"
〇(Mar.Jul.1973) ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” 
 (Feb.1974) “Treasure Island” 
 (Apl.1974) Belonging” 
 (Apl.1974) “Luminessence” 
 (Oct.1974) Death and the Flower” ,“Back Hand” 
〇(Jan.1975) The Köln Concert” 
 (Feb.13.1975) “Solo Performance, New York ‘75” 
 (Jun.1975) "Gnu High"   Kenny Wheeler 
 (Oct.1975) Arbour Zena” 
 (Dec.1975) Mysteries” 
 (???.1975) Shades” 
 (Mar.1976) Closeness”  Charlie Haden
 (Apl.1976) The Survivor's Suite” 
〇(May.1976) Staircase” 
 (May.1976) Eyes of the Heart” 
 (???.1976) “Hymns/Spheres” 
 (Oct.1976) Byablue”、“Bop-Be” 
〇(Nov.1976) Sun Bear Concerts” 
 (Jun.1977) “Ritual” 
 (Feb.1977) Tales Of Another” Gary Peacock 
 (Oct.-Nov.1977) “My Song"    
 (Apl,16-17.1979) “Sleeper”, “Personal Mountains” 
 (May,1979) Nude Ants:Live At The Village Vanguard
 (1979,1980) "Invocations/The Moth and the Flame"
 (Mar.1980) "G.I. Gurdjieff: Sacred Hymns", "The Celestial Hawk"

〇(May.1981) ”Concerts:Bregenz” 
〇(Jun.1981) ”Concerts:Munchen
 (Jan.1983) Standards, Vol. 1”、“Standards, Vol. 2” 、“Changes
 (May-Jul.1985) "Spirits"
 (Jul.1985) "Standards Live"
 (Jul.1986) "Still Live", "Book of Ways", "No End"
〇(Apl.1987) "Dark Intervals"
 (Oct.1987) Changeless” 
〇(Oct.1988) Paris Concert
 (Oct.1989) ”Standards in Norway” 
 (Oct.1989) “Tribute”
 (Apl.1990) “The Cure”
〇(Sep.1991) “Vienna Concert
 (Oct.1991) “Bye Bye Blackbird”
 (Sep.1992) “At the Deer Head Inn”
 (Mar.1993) “Bridge of Light”
 (Jun.1994) “At the Blue Note”
〇(Feb.1995) “La Scala
 (Mar.1996) “Tokyo '96”
〇(Oct.1996) “A Multitude of Angels” 

〇(1998)   “The Melody At Night, With You” 
 (1998)   "After the Fall"
 (Jul.1999) “Whisper Not”
 (Jul.2000) “Inside Out” 
 (Apl.2001) “Always Let Me Go”
 (Jul.2001) “My Foolish Heart”
 (Jul.2001) “The Out-of-Towners”
 (Apl.2001) “Yesterdays”
 (Jul.2002) “Up for It”
〇(Oct.2002) “Radiance
〇(2006)          “La Fenice
〇(Sep.2005) “The Carnegie Hall Concert
 (2007)   ”Jasmine”, “Last Dance
〇(Oct.2008) “Testament
 (May.2009) “Somewhere”
〇(Apl.2011) “Rio
〇(2014)   “Creation

posted by H.A.

【Disc Review】“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

Tord Gustavsen (piano, electronics)
Sigurd Hole (bass) Jarle Vespestad (drums)

The Other Side
Tord Gustavsen Trio
Ecm
2018-08-31


 ノルウェーのピアニストTord Gustavsenのトリオ作品。
 サックス、ボーカルが入った作品が続いていましたが、オーソドックスなトリオ+ほんの少しの電子音。
 一時期の攻撃的なビートとハイテンションな演奏は抑えられ、あの静かで沈痛な寂寥の世界。
 哀愁漂う音をゆったりと置いていくピアノ。
 オリジナル曲に加えて、J.S.Bach他のクラシック曲、伝統曲が半分ほど。
 どこまでも沈んでいくような空気感はそのままですが、前作“What was said” (2015)ほど沈痛ではありません。
 また、例の歌謡曲的な強烈な美メロやキッチリした8ビートがひたすら続く感じではありません。
 淡い色合いのメロディと自由度の高いビート感。
 ECMのお約束、ルバートでのスローバラードなども交えつつの浮遊感、淡くて自由な感じ、それをJ.S.Bachなどのクラシック曲でやってみよう・・・ってな感じが新機軸なのかもしれません。
 いつものしんみりとした空気感の中で、意外な方向に漂っていく音の動き。
 あるいは、淡く茫洋とした空気の中から突然現れる、いつもの沈痛なまでも美しいメロディ。
 深刻さはほどほど、とても落ち着いていて優しい音、懐かしい音なので、疲れた日の気持ちの清涼剤としてちょうどいいのかな?
 しんみりとしつつもそのまま心地よく寝れそうですねえ。
 そんなピアノトリオ。




posted by H.A.



【Disc Review】“The Dream Thief” (2018) Shai Maestro

“The Dream Thief” (2018) Shai Maestro

Shai Maestro (paino)
Jorge Roeder (bass) Ofri Nehemya (drums)

The Dream Thief
Shai Maestro Trio
Ecm
2018-09-28


 イスラエルのピアノニストShai MaestroのECMでの初リーダー作。
 抑制された繊細な音。
 冒頭はイスラエルのシンガーソングライターの楽曲のソロ演奏。
 今にも止まりそうなスピードで、揺れながら奏でられる、南米の楽曲のような郷愁感あふれるセンチメンタルなメロディ。
 以降のオリジナル曲、トリオでの演奏になってもその表情は同様。
 クラシックの香りが漂う明るく穏やかなメロディと、静かで複雑なビート。
 三者が織り成す複雑で繊細な優しい音。
 静かに細かく鳴り続けるシンバル、少しタメを効かせて置かれていく丸みを帯びて柔らかなピアノの音、ピッタリ寄り添うベース。
 何かが少しズレると崩れてしまうようなガラス細工のようなアンサンブル。
 が、スイッチが入ると一気に加速し疾走するバンド。
 そんな場面を要所に織り込みながら、淡い色合いの浮遊感の強い演奏が続きます。
 ”夢泥棒”ってなタイトルがピッタリはまる、そんな音。
 明るく優しい、何か少しだけ日常とズレた感じ。
 最後はオバマ前米国大統領の演説のサンプリング?との共演で幕。
 ECM籍第一作は淡い色合いになる、の法則はこの人には当てはまらなかったかな?
 明るくて優しい21世紀型ECMサウンド、とても繊細で少しだけひねった感じのピアノトリオ。




posted by H.A.




【Disc Review】“Live” (2016) Marcin Wasilewski Trio

“Live” (2016) Marcin Wasilewski Trio 

Marcin Wasilewski (piano) 
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Live
Marcin Wasilewski Trio
Ecm
2018-09-14


 ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、レギュラートリオでのライブ録音。
 最近作“Spark of Life” (2014)の楽曲中心。
 ステージはそのタイトル曲、ルバートでの漂うようなスローバラードから始まります。
 そこを抜け、ビートが定まると一気にヒートアップ。
 Stingナンバー”Message In A Bottle”から、代表的なオリジナル曲を経て、締めのHerbie Hancockのファンク”Actual Proof”まで、突っ走り、転げまわるバンド。
 スタジオ録音諸作に比べて躍動感が強くハイテンション。
 それでいてうるさくない音。
 しなやかなビートと、柔らかで軽快、少し後ろに引いた感じの丸い音、徹底的に動きまくっているんだけどもなぜか上品なピアノ。
 各曲長尺でぶっ飛んだ演奏が、なぜかクールな質感。
 さらに強い浮遊感、あくまで明るい空気感、そこはかとなく漂う郷愁感。
 そんな感じがいかにも現代のジャズ。
 一聴普通のピアノトリオジャズのようで、柔らかな特別な音。
 “Soul of Things” (2001) Tomasz StankoでBobo Stensonから交代し、沈痛さを緩和し、バンドの音を明るく柔らかくした人。
 発表の形態からして、おそらく上記、あるいは”Trio” (2004) 以降、ECMレコードでの十数年の集大成なのでしょう。
 さて次はどんな感じになるのやら・・・?



posted by H.A.


【Disc Review】“The Magical Forest” (2015) Sinikka Langeland

“The Magical Forest” (2015) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (kantele, vocals)

Arve Henriksen (trumpet) Trygve Seim (soprano, tenor sax) Anders Jormin (double bass) Markku Ounaskari (drums) Trio Mediaeval (vocals)


MAGICAL FORREST
SINIKKA LANGELAND
ECM
2016-07-29


 ノルウェーの古楽器カンテレ奏者&ボーカリストのコンボ作品。
 Anders Jorminをはじめとするいつものメンバーに、ノルウェーの伝統音楽コーラスグループに加わる編成。
 北欧の古典の世界とジャズの交錯。
 ジャズなグルーヴを出すベースとドラム、漂うようなサックスとトランペットのアンサンブル、背景を薄く彩るカンテレの響き。
 耳馴染みのないメロディとクラシカルなヴォイスが聞こえると、強い非日常感のこの人の音。
 さらにコーラスが加わることで、敬虔なムードが増強されています。
 冒頭は敬虔で勇壮。
 非日常感の強いメロディ、沈痛なホーンのアンサンブルとヴォイスの絡み合い。
 カンテレの高貴な音とコーラスのみの清涼にほっとしつつも、重い空気感が続きます。
 中盤からは哀し気ながら耳馴染みのよい現代的なメロディが増えていきます。
 徐々に音量を上げるコーラスと、その間隙を埋めるような強い寂寥感のトランペットの音が交錯しつつ幕。
 全編通してとてもドラマチック。
 少し重く哀しい映画のサウンドトラックのような一作。





posted by H.A.





【Disc Review】“The Half-Finished Heaven” (2013) Sinikka Langeland

“The Half-Finished Heaven” (2013) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (vocals, kantele) 
Lars Anders Tomter (viola) Trygve Seim (tenor sax) Markku Ounaskari (drums, percussion)

 ノルウェーのカンテレ奏者、ボーカリストSinikka LangelandのECM作品。
 “Starflowers" (2006)、“The Land That Is Not" (2010)からベースとトランペットが抜け、ヴィオラが加わった編成。
 北欧トラディショナルとジャズなビートが交錯する先のそれらの作品に対して、本作はカンテレ、ヴィオラ、テナーサックスの漂うような絡み合いを中心とした音。
 ゆったりとしたテンポ、少ない音数、より静かになった強い浮遊感の時間。
 クインテットだと前面には出て来なかったカンテレのとても美しい音が全編で響き、漂うようなヴィオラ、テナーと妖しく絡み合います。
 悲し気なメロディ。
 いつもの聞き慣れない感じが抑えられ、わかりやすい楽曲が並びます。
 また、ヴォイスの場面も抑えられ、主役はあくまで静かなアンサンブル。
 美しいカンテレの爪弾きを背景として、メロディを奏でる上品なヴィオラ、どこかに行ってしまいそうな時間を現実に引き戻すテナー、静かに時を刻むパーカッション。
 全部合わせて遠い所から流れてくるような音。
 これまた非日常の音ですが、心地よさ最高。
 天上の音・・・ってのには具体に過ぎたり、哀し気に過ぎたりするのかもしれませんが、そんな感じ。
 極上のトリップミュージック。




posted by H.A.





【Disc Review】“The Land That Is Not" (2010) Sinikka Langeland

“The Land That Is Not" (2010) Sinikka Langeland


Sinikka Langeland (kantele, vocals)
Arve Henriksen (trumpet) Trygve Seim (soprano, tenor sax) Anders Jormin (double bass) Markku Ounaskari (drums)

 ノルウェーのカンテレ奏者&ボーカリストSinikka LangelandのECM作品。
 “Starflowers" (2007)と同じスカンジナビア周辺のメンバーでの二管クインテット編成。
 楽曲も同じく北欧トラディショナルの色濃いのオリジナル曲が中心。
 不思議系、深刻系、勇壮系の哀し気なメロディに緊張感の高いヴォイス。
 全体の空気感は前作と同様ですが、カンテレの音が控え目になり、バンドのアンサンブルとヴォーカルが中心。
 クラシック、あるいはアヴァンギャルド系フォーク~ロックのようなヴォイスが前面に出る場面は摩訶不思議なSinikka Langelandの世界ですが、ホーンが前面に出る場面は北欧コンテンポラリージャズ。
 そのジャズ~現代のグルーヴを加えるのは名手Anders Jorminのベース。
 本作でもハイテンションなジャズな場面もちらほら。
 あるいは、聞き慣れないメロディラインの中に、現代的なメロディやコード展開も少々。
 過去の北欧の世界に戻っていきそうでいかなくて、現代の世界に戻ってきたようでそうでもない、漂う違和感、非日常感。
 その北欧トラディショナルとジャズの交錯、バランス~アンバランスがこのバンドのカッコいいところなのでしょう。
 ところどころに現れる、静かな空間に響くカンテレの響きがとても心地よいのですが、その音がしっかり聞こえて、かつ普通にメロディアスなのは“The Half-Finished Heaven” (2013)。
 いずれも非日常の音、どれがいいかはお好み次第。




posted by H.A.


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