吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM_records

【Disc Review】“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen

“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen
Avishai Cohen (trumpet)
Yonathan Avishai (piano) Barak Mori (double bass) Nasheet Waits (drums)



 イスラエルのスーパートランペッターAvishai Cohen、“Into The Silence” (2015)に続くECM第二弾。
 オーソドックスなワンホーンカルテットでのコンテンポラリージャズ。
 メンバーは前作からサックスが抜け、ベーシストが交代。
 前作は近年のECMっぽい抑制されたコンテンポラリージャズでしたが、本作も同じ。
 静かで淡々とした語り口。
 10分を超える長尺な演奏を冒頭と中間に配して、間を短い演奏で繋ぐ構成。
 5曲、全体で40分に満たない収録時間は、今日的には短く、かつてのLP時代のA面B面に分けてそれぞれを完結させていく構成に見えなくもありません。
 冒頭は10分を超える"Will I Die, Miss? Will I Die?"なんて意味深なタイトル。
 確かにそんな感じの静かな緊迫感の演奏。
 ピアノを中心とした静かで雅な感じのイントロに導かれ、徐々にテンションを上げ、次々と景色が変わっていくような音の流れ。
 スパニッシュなようなジャパニーズなような、もちろんイスラエルなのでしょうが、漂うほのかなエキゾチシズム。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりとられて、徐々に高揚していくトランペット。
 が、激情には至らず、トランペットもピアノもバンドも、あくまでクールでスムースな音。
 続くは全編ルバートでのスローバラード。
 “The Trumpet Player” (2001)でJohn Coltraneの”Dear Lord”をカバーしていましたがありましたが、そのビートをフリーにして、妖し気にしたような演奏。
 漂うように、時に激情を発しながら流れていく淡い時間。
 ECMのお約束ですが、この人の色合いはハードボイルドです。
 さらに続く曲もこれまたフリービート、ピアノレスでのスローバラード。
 漂うような妖しげな演奏が続きます。
 後半(?)に移って、もう一つのピークであろう長尺曲”Shoot Me in the Leg”でようやくバンドのテンションが上がります。
 前奏のピアノの漂うような音から、ビートが入ると、トランペットが全開。
 時折激しい音を交えながら、あるいはドラムに激しく煽られながらテンションを上げていきます。
 が、さまざまな音の流れの変化を経ながらも、スムースな音の流れは変わりません。
 締めの”50 Years and Counting”も同様の色合い。
 テンションの高い演奏で緊張感も強いのですが、あくまでスムース。
 サラリとしていてスルスルと流れていく音。
 ECM的な音作りながら少し戸惑い気味にも聞こえた前作“Into The Silence” (2015)に比べると、スッキリとまとまった印象でしょうか。
 全編通じてスムースで、トゲや毒は直接的には見えてこないのですが、どこか浮世離れしたムード。
 ついつい“The Trumpet Player” (2001)の激しいバンドサウンドに乗ったスーパージャズトランペッターAvishai Cohenに期待してしまうのですが、スムースにまとめていくのがこのひとの近作のスタイル。
 作品の色合いに幅のある人だと思うのですが、ここまでの諸作のさまざまな色合いと、近年のECMの色合いがほどよい感じでフュージョンしたような感じ。
 Avishai CohenもManfred Eicherさんもいい感じのバランスを見つけたのかもしれません。
 ・・・にしても、アルバムにしても楽曲にしても、タイトルが意味深だなあ・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet

“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet
Tomasz Stanko (Trumpet) 
David Virelles (piano) Reuben Rogers (bass) Gerald Cleaver (drums)

December Avenue
Tomasz Stanko
Ecm Records
2017-04-14


 ポーランドジャズの親分?Tomasz Stanko、New York Quartet名義での第二作。
 前作“Wislawa”(2012)はオーソドックスな現代的ジャズピアノトリオとちょっとひねくれたトランペットの共演・・・そのままの音でしたが、本作はバラードが中心、少し面持ちが異なります。
 アップテンポな曲もありますが、前作のバラード部分の比重が大きくなりました。
 漂うようなフリーなビートに寂寥感の強いメロディ。
 枯れた味わいが強くなってきた、渋いトランペット。
 冒頭から今にも止まりそうなスローなビートを背景にして、トランペットがフワフワと漂う展開。
 何曲か収められたルバートでのバラードは、ECM、あるいはこの人の真骨頂ですが、かつてのような激情を爆発させて叫ぶ場面はほとんど無くなりました。
 代わりに、前作ではしおらしかった、キューバ出身、いまやECMアーティストのピアニストDavid Virellesが暴れています。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりもらって、さらに免罪符がもらえたのか、一気に爆発して激烈フリーへ、なんて場面もいくらか。
 美しい音、オーソドックスなサウンドの中で不思議な音の流れは、さすがECMのピアニスト、ただモノではない感じが漂っています。
 数曲のアップテンポでは、元気溌溂なピアノトリオを背景にした淡々とした印象のトランペット。
 かつての”Balladyna”(1975)のような、血汗が飛び散りそうなほど激烈な作品を作ることはもう無いのでしょうし、”Suspended Night”(2003)前後の諸作のように、バラード中心でも緊張感の高い演奏もないのかもしれません。
 穏やかにリラックスした風のTomasz Stankoサウンド。
 かつてと比べると著しくマイルドになったものの、全編を通じたハードボイルドなムードは、あの時代の東欧でフリージャズをやっていた人ならではの凄みなのでしょう。
 いずれにしてもECMとしては少々異色、渋くてまずまずオーソドックスな現代ジャズな作品。
 毒気はほんのわずか、ほんの気持ちだけしびれるぐらい。
 妖しさもほんの少し。
 かつての戦士の、穏やかで落ち着いた一作。




(1970) Music For K

(1972) “Jazzmessage from Poland”
(1973) “Purple Sun”
(1974) “Fish Face”
(1975) “TWET”
(1975) “Tomasz Stańko & Adam Makowicz Unit”
(1975) “Balladyna
(1976) “Unit with Adam Makowicz”
(1976) “Satu” Edward Vesala

(1978) “Live at Remont with Edward Vesala Quartet”
(1979) “Almost Green”
(1980) “Music from Taj Mahal and Karla Caves”
(1983) “Stańko”
(1984) “Music 81”
(1985) “A i J”
(1985) “C.O.C.X.”
(1986) “Korozje” with Andrzej Kurylewicz
(1986) “Lady Go…”
(1988) “Witkacy Peyotl / Freelectronic”
(1988) “The Montreux Performance aka Switzerland”
(1989) “Chameleon”
(1989) “Tomasz Stańko Polish Jazz vol. 8”
(1991) “Tales for a Girl, 12, and a Shaky Chica”
(1992) “Bluish”
(1993) Bosonossa and Other Ballads
(1994) “Balladyna”
(1994) “A Farewell to Maria”
(1996) “Roberto Zucco”
(1995) Matka Joanna
(1996) Leosia
(1997) Litania:Music of Krzysztof Komeda
(1999) From theGreen Hill
(2001) “Reich”
(2001) “Egzekutor”
(2002) Soul of Things
(2004) Suspended Night
(2005) “Wolność w sierpniu”
(2006) Lontano
(2009) Dark Eyes
(2013) Wisława
(2016) December Avenue


posted by H.A.


【Disc Review】“Alba” (2015) Markus Stockhausen, Florian Weber

“Alba” (2015) Markus Stockhausen,  Florian Weber
Markus Stockhausen (trumpet, flugelhorn) Florian Weber (piano)

Alba
Markus Stockhausen
Ecm Records
2016-05-20


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen、同じくドイツのピアニストFlorian WeberとのDuo作品。
 もともとクラシックの人、ジャズ系を演奏する際は、エレクトロニクスを交えた近未来サウンド、トランペットはMiles Davisなクール系といったイメージでしたが、本作はアコースティックオンリーでの、静謐系コンテンポラリージャズ。
 それも静謐度高めのメロディアスな音の流れ。
 楽曲は概ね二人で分け合っていますが、いずれも穏やかで淡い色合いのしっとりしたメロディ揃い。
 現代音楽~フリージャズな作品は聞いていないのですが、“Karta” (1999)や“Electric Treasures” (2008)あたりのフューチャージャズ~激烈系のイメージが強くて、ここまで静かに淡々とメロディアスに演奏されてしまうと、面食らってしまうというか、何というか・・・
 クラシックの色も強い丁寧な音使いのピアノと、同様に丁寧に音を紡いでいくクールなトランペット。
 二人とも派手な音使いはありませんが、キリっとした、かつ落ち着いた演奏。
 リズム隊なしでビートの制約がないだけに、二人で自由に漂うような演奏が続きます。
 自由ですがフリージャズ色は全くなし。
 あくまでメロディアスで少々センチメンタル、時に牧歌的。
 もちろんインプロビゼーションを含めた演奏力は折り紙付き。
 このレーベルにありがちな夜な空気感、あるいは、暗さや深刻さもなく、毒気もありません。
 さらに、ベトつくような甘いメロディもなく、あくまで淡い色合い、穏やかで爽やか。
 昼でもなく、朝な音。
 一曲目のように全編ルバートのスローバラードばかりだったりすると、気持ちよくて二度寝してしまいそうですが、ほどよくキリっとしているし、長い演奏もないのが朝にはいい感じ。
 澄んだ空気が流れていくような、淡々とした音の流れ。
 平日の朝には穏やか過ぎるのかもしれませんが、休日の朝のBGMにすると、上品で上質な一日が始まるかも。たぶん。

※唯一?夜な曲。

【Disc Review】 “Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas Morgan

“Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas Morgan
Bill Frisell (guitar) Thomas Morgan (double bass)

Small Town
Bill Frisell/Thomas Morgan
Ecm
2017-05-26


 大御所カリスマギタリストBill Frisell、ベースとのDuo作品。
 あのニューヨークVillage Vanguardでのライブ録音。
 相手方は、スローテンポでも静かで上品なグルーヴを出す、新世代のAnders Jorminと期待する、現代ECMのハウスベーシストの一人、Thomas Morgan。
 期待通りの静謐で幻想的な音。
 冒頭はPaul Motianナンバー。
 フワフワと空間を漂うクリーントーンのギターと、静かに寄り添うように反応しながら穏やかなグルーヴを作るベース。
 ロック、カントリーっぽい得意のフレーズを駆使しながら、無重力空間を泳ぐようなギター。
 続く4ビートジャズに移ってもそんなイメージは変わりません。
 さらにはルバートでのスローバラード。
 ドラムやピアノがいない分、ビートが揺れ動き、伸び縮みするような非現実的な空気から、気がつけばビートが定まり、表出する穏やかなセンチメンタリズム。
 あるいは、これまたお得意のカントリー、あるいはマカロニウエスタンなフレーバー、アメリカンな郷愁感・・・
 さすがにこの人なので、強烈な浮遊感を含めてひねりは効いていますが、かつてのようにズギューン、グシャーンとはきません。
 あくまで静かで穏やか、淡々とした上品な音が続きます。
 近年のECMのギターアルバム、“Streams” (2015) Jakob Bro、“Amorphae” (2010,2013) Ben Monderなどにも通じる音。
 もちろん元祖はBill Frisellでしょうが、それらの若手の作品よりも音楽は明解です。
 締めは007ナンバーで笑い声と共に幕。
 さすが、お茶目なカリスマBill Frisell。
 さすが、Village Vanguard、4ビートでジャズな演奏もありますが、とてもあの猥雑な空間でのライブ録音とは思えない、全編通じた静謐と透明感、穏やかな空気感。
 さすが、Bill Frisell, Thomas Morganというか、ECMというか。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lookout for Hope” (Mar.1987) Bill Frisell

“Lookout for Hope” (Mar.1987) Bill Frisell
Bill Frisell (electric, acoustic guitars, banjo)
Kermit Driscoll (bass) Joey Baron (drums)
Hank Roberts (cello and voice)

Lookout for Hope: Touchstones Series (Dig)
Bill Band Frisell
Ecm Records
2008-08-26


 カリスマ大御所ギタリストBill Frisellの人気?作。
 近年のクリエイティブ系のギタリストの多くの人が、この人から影響を受けているように感じますが、そのサウンドのショーケースのようなアルバム。
 私的にはさかのぼって聞いた人で、“On Broadway Volume 1” (1988) Paul Motianで初めて聞いた時は幻想的な音を出す人。
 本作と同時期の録音の“Second Sight” (Mar.1987) Marc Johnsonなどのカントリーテイストであれれ?
 “Molde Concert” (1981) Arild Andersenのギンギンのロックテイストであれっれれ?ってな感じ。
 それらの多様な色合いがギュッと詰まっているのがこの作品。
 基本的にはギタートリオ+チェロのシンプルな編成なのですが、とてもそんな風には聞こえない複雑な音。
 冒頭曲はヘビーなハードロック風。
 ディストーションを掛けたズルズルギターと、これまた超クリエイティブ系のチェリストHank Robertsとのハードな絡み合いがなんとも不思議でクリエイティブ。
 と思っていたら、いきなりレゲエのビートと、スラックキー風ののどかな空気感。
 曲者Hank Robertsもそれにつられてか平和に弾いているのが何とも微笑ましい。
 さらにはKing Crimson風のリフ、アメリカンあるいはメキシカンなフォーク風、Monk ナンバーもカントリー風、変拍子ファンクフュージョン、フリージャズ・・・その他諸々、なんでもありの凄いサウンドの連続。
 とてもクリエイティブで新しい音ばかりで、現代に至るまでのカリスマなのもよくわかります。
 が、決して難解意味不明な部分はなく、全編通じた明るい空気感はアメリカンゆえでしょうか?
 ECMっぽくもありません。
 Manfred Eicherさんも手を焼いたんじゃないのかな?
 ECMでのリーダー作はしばらく途絶えます。
 が、本年“Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas MorganをECMで制作。
 まだまだお元気です。




posted by H.A.


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