吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM_records

【Disc Review】“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin

“Nik Bärtsch's Ronin Live” (2009-11) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (alto saxophone, bass clarinet, contrabass clarinet) Thomy Jordi, Björn Meyer (bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Nik Bartsch's Ronin: Live
Nik Ronin Bartsch
Ecm Records
2012-10-02


 スイスのピアニストNik Bärtschのライブアルバム。
 ECMで “Stoa” (2005), “Holon” (2007), “Llyria” (2010)といった作品を制作したバンドNik Bärtsch's Roninの集大成的な意味合い、それらのアルバムからのベストな選曲、各国でのステージからのベストな演奏のチョイスなのでしょう。
 もちろんファンクなビートと徹底したリフの繰り返しを中心とした、少々ダークなミニマル・ファンク・ジャズ。
 どこに入るか全く予想できないブレークを含めた複雑でポリリズミックなファンクビートと、これまた複雑なアンサンブル。
 音の構成はスタジオ録音諸作と同様なのですが、それらのどこか電子的で硬質なビート感と比べると、柔らかで、よりナチュラルなグルーヴが強調されているようにも感じます。
 さらにスタジオ録音作品ではあまりないジャズ的なインプロビゼーションの場面もそこそこの時間。
 ベースのソロから始まり、うねうねと動き回るそれと、静かだけども変幻自在のドラムを背景にかき回されるピアノ・・・
 前作"Llyria" (2010)はジャズ色も強い静かな感じでしたが、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)のデジタル世代、現代のトランスミュージックっぽい雰囲気は薄くなっているようにも。
 それらここまでの三作の色合いを集約したようにも思われます。
 もちろん不思議感、徹底されたリフレインによる陶酔感と、じわじわと盛り上がっていく高揚感はそのままなのですが、微妙な空気感の違いが面白いところ。
 作品が新しくなるにつれ柔らかくなってきているようにも感じられ、この時点での最近作“Llyria” (2010)の流れがそのまままLiveで・・・といった感じでしょうか。
 このバンドの特徴であろう硬質でクールな質感がより強い方がよければ、“Stoa” (2005), “Holon” (2007)の方がよいのでしょうかね?
 そのあたりはお好み次第。
 クールな現代的トリップ&グルーヴミュージック、そのナチュラル&しなやかバージョン・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin

"Llyrìa" (2010) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Llyria
Nik Bartsch's Ronin
Ecm Records
2010-10-12


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第三作。
  “Stoa” (2005), “Holon” (2007)と同様のミニマルファンクジャズ。
 いつも通りの複雑なビート、不思議系な音階のクールで無機質な質感のリフの繰り返しを中心としたミニマル的なファンクではあるのですが、前掲の二作とは少々雰囲気が異なります。
 落ち着いているというか、沈んだ感じというか、静かというか、ゆるいというか、有機的な感じが強く出ているというか、ジャズっぽくなったというか・・・
 冒頭の“Modul 48”は妖しい感じはそのままに、浮遊感が強くてなんだか優しい感じ、ホーンのインプロビゼーションのスペースもそれなりに。
 続く“Modul 52”もインプロビゼーションらしい場面はありませんが、ホーンがリードしつつ軽快です。
 もちろん甘いメロディなどはありませんが、終始静かで穏やかな表情。
 ドカーンとはこない分、逆に複雑でヒタヒタと迫ってくるようななグルーヴを叩き出すドラムとベースの絡みがよく見えて、よりカッコよく聞こえるように思います。
 締めに向けた“Modul 51”のウネウネと動くベースラインがとてもカッコいいし、最後の”Modul 49_44”も少し沈みがちな変化自在なファンク。
 おっと、確かにこれは”Ronin”,”Zen_Funk”な看板に相応しい日本的な音階だし、そんな展開がアルバムのそこかしこに・・・
 そんなこんなでいつも通りにダークながら、浮遊感強めで、ちょっと軽め、ちょっと沈みがちの不思議なバランス。
 ハイテンション好みな人は“ “Stoa” (2005), “Holon” (2007)、より静かな感じがよければ本作・・・かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin

“Stoa” (2005) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch (piano, electric piano)
Sha (bass clarinet, contrabass clarinet) Björn Meyer (6-string bass) Kasper Rast (drums) Andi Pupato (percussion)

Stoa
Nik Bartsch
Ecm Records
2006-05-02


 スイスのピアニストNik BärtschのECM第一作。
 ミニマル・ファンク・ジャズとでも呼ばれているのでしょうか?
 Ronin(浪人)もさることながら、“Zen(禅)Funk”なる呼び方もあるようで、日本的なイメージも強く持っているのでしょう。
 果たして日本的な音かどうかはさておき、少々妖し気、不思議系で悲し気なリフと、ファンクなビートの組み合わせ。
 それを徹底的に繰り返すのがこの人の音楽。
 ファンクやエレクトリックMiles諸作と構造的には近い感じもする・・・ってなのは古い感覚で、全く違う複雑なビートとクールで無機質な空気感。
 映画"エクソシスト"を時代の流れの中で経験した世代としては、そのテーマ"Tubular Bells" (1973) Mike Oldfieldを想い起こします。
 その方向には明るくありませんが、その流れ、ミニマル、テクノの色合いを強く取り入れたジャズ、といったところなのでしょう。
 複雑なビートはなぜか硬質で電子ビートっぽくも聞こえるし、全体のムードはプログレッシブロックっぽくも聞こえるのだけども、あくまでアコースティックな静謐系ジャズ。
 そんな微妙なバランスの組み立て。
 インプロビゼーションの場面は少なく、アンサンブル中心。
 フロントのピアノやバスクラではなく、むしろウネウネと動くファンクなエレキベースと、定常なようで微妙に変化し続け、意外なところに入るアクセントが入る変幻自在のドラムの方が印象に残る不思議なバランス。
 そんな組み立てでの徹底的なリフの繰り返し。
 単調なようで少しずつ景色が変わっていくような不思議な楽器の絡み合い。
 あくまでクールな音の流れ。
 が、徹底したリフレインは、ファンクやゴスペル、エレクトリックMiles、あるいはサンバと同様に陶酔感を誘い、徐々に盛り上がっていく高揚感、疾走感。
 それがジャズとは異質な心地よさ。
 デジタル世代、クラブ世代、ゲームミュージック世代、現代のトランス&グルーヴミュージック。
 その界隈で人気なのもさもありなん。
 次作“Holon” (2007)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Titok” (2015) Ferenc Snetberger

“Titok” (2015) Ferenc Snetberger
Ferenc Snetberger (guitar) 
Anders Jormin (bass) Joey Baron (drums)

TITOK
SNETBERGER/JORMIN/BA
ECM
2017-06-02


 ハンガリーのギタリストFerenc SnetbergerのECMでの第二作、トリオ作品。
 ECMでの前作はソロギターでの“In Concert” (2013)、その前には同じくドイツのレーベルEnjaから本作と同じくトリオでの“NOMAD” (2005)などがあります。
 “NOMAD”ではこちらもECMと縁の深いArild Andersenがベースを弾いていましたが、本作ではベテラン大御所ベーシスト、静かなグルーヴの代表選手Anders Jormin
 予想に違わない静謐な音。
 数曲がフリーインプロビゼーションとも思しき抽象的な演奏、他はほのかなエキゾチシズムが漂う寂寥感の強いメロディ。
 明確な楽曲でバンド全体が疾走する場面も多かった“NOMAD”に対して、淡い色合いの空気感、静かに音が進む、いかにもECMな音の流れ。
 冒頭から二曲はフリーインプロビゼーション的な演奏。
 予想外の方向にあちこちに飛び回るギター。
 ベースの動きが方向性を示しているようで、その通りには流れていかない音、あるいはギターの動きにバンドが同調すると見せて、突然終わる音楽・・・
 変幻自在、予測不可能。
 が、三曲目以降は哀愁のメロディの連続、静かな音と相まって強い寂寥感を帯びた音の流れ。
 この種の音楽が最も得意であろうAnders Jorminが本領発揮。
 フリーテンポであれ、スローテンポであれ、抽象的な音の流れであれ、何であれ、静かに穏やかに続くグルーヴ。
 ソロではタメと疾走、高音と重低音が交錯する、沈むような浮遊するような不思議な感覚のメロディと躍動感のあるビート。
 シンバルの残響音だけが残る静謐な空間に重低音だけが響く場面がしばしば。
 音数が決して多いタイプではないだけに、かえって凄みを感じます。
 バッキングにしろソロにしろ、空間をしっかり開けてくるから、後続の高速フレーズがカッコいいし、スローテンポでもグルーヴが出るんでしょうかね?
 決して派手ではありませんが、全編凄い演奏です。
 リーダーのギターは勢いで弾き切るのではなく、一音一音模索するような丁寧な演奏。
 ジプシー系の音楽がベースなのだろうと思いますが、悲しげで儚げな音使い。
 ECMのお約束、全編ルバートでのスローバラードっぽい演奏も中盤に収められています。
 “NOMAD”ではド派手なArild Andersenのベースが全体をけん引し、ギターがそのうえで自在に動く印象でしたが、本作は三者が一体になって、静かでなんとも言えない深い含蓄のある音場を作っている感じ。
 わかりやすいのはそちらかもしれませんが、幻想的な色合いが強く、深みを感じるのははこちら。
 どちらがいいかはお好み次第。
 私はこちらに一票。
 どちらも名作だと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Silent Light” (2016) Dominic Miller

“Silent Light” (2016) Dominic Miller
Dominic Miller (guitar, electric bass)
Miles Bould (percussion, drums)

Silent Light
Dominic Miller
Ecm Records
2017-04-07


 アルゼンチン出身のギタリストDominic Millerのソロ作品。
 あのStingバンドの人のとても静かなアコースティックギター。
 全編を通じて、とても繊細な音。
 大大御所Ralph Townerと比べるのも無粋なのですが、彼のパキーンとくる音と比べて、サラサラと流れていくような音の動き。
 あるいは、要所でタメが入るRalph Townerに対して、あくまでスムースに紡がれるアルペジオ。
 この癖のないスムースさが、永らくロック~ポップス界のスーパースターのサポートを続けているがゆえの技、音の流れなのでしょうか?
 アルゼンチンの人のようですが、少なくとも本作ではそれらしさは感じません。
 さておき、本作、Stingナンバー“Fields Of Gold”を除いてすべてオリジナル曲。
 スッキリしているようで不思議系。
 クラシック系の人とは異なるビート感と、フォーキーで哀愁が漂うコードの遷移とメロディ。
 ミディアム~アップテンポな演奏が多いのですが、静かなアルペジオ中心。
 メロディ先行の普通のバランスとは少々感じが違って、アルペジオの中にメロディが置かれているといった感じの不思議なバランス。
 あくまで静かにサラサラと音が流れていきます。
 何曲かで打楽器のサポートが入りますが、繊細な音の流れの中での静かで上品なアクセント。
 他の作品のようにロック、ポップス、フュージョン仕立てではなく、この演奏のスタイルで“Shape of My Heart”とか”Fragile”とかの美メロが演奏されるとカッコいいんでしょうけど、またそれはどこかで。
 Ralph Townerの近作は走馬燈のような音だと思っていましたが、本作も同様。
 静謐さ、穏やかさは同様ですが、少し質感は異なります、
 少し回転が速く、より淡々としていて、より線が細い感じ。
 ゆらめく光ではなく、静かに定常に輝く青白い光。
 強い感情移入が少なく感じられるクールな質感が、現代的といわれればその通り、なのでしょう。




posted by H.A.
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