吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM_records

【Disc Review】“Life Of” (2018) Steve Tibbetts

“Life Of” (2018) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, Piano)
Marc Anderson (Percussion, Drums) Michelle Kinney (Cello, Pipe)

Life Of
Steve Tibbetts
Ecm
2018-05-18


 Steve Tibbetts、2018年作。
 とても静かなギターミュージック。
 サポートはパーカッションにチェロ、そして本人によるピアノ。
 全編遠い所から聞こえてくるような幽玄な音。
 強いビート、先端ロックはもとより、電子音が飛び交う場面、フォーキーなストロークの場面もありません。
 揺らぎを伴いながら静かに爪弾かれるアコースティックギター。
 それを中心として、さまざまな柔らかな音が複雑に絡み合う、とても繊細な音。
 ピアノとパンの音の区別さえつきづらい、背景で鳴るチェロ等の音にも気づかない、ギターを含めて、音を発するもの全てが一体となったような、曖昧で幻想的な時間。
 全体の質感は無国籍ですが、その繊細な音の動き、もの哀しげで同じく繊細なメロディ、奥に何歩か下がった感じ、曖昧なようでどこかしら凛とした空気感には、日本的な色合いを感じます。
 さながら、侘び寂び、といった感じ。
 夢と現の狭間、夢寄り。
 あるいは瞑想へと誘う音。
 とても心地よい時間。
 尖端サウンド“Steve Tibbetts” ‎(1977)から約40年。
 たどり着いた先はとても静かで落ち着いた場所のようです。
 今は。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Natural Causes” (2010) Steve Tibbetts

“Natural Causes” (2010) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitars, Piano, Kalimba, Bouzouki)
Marc Anderson (Percussion, Steel Drums, Gong)

Natural Causes
Steve Tibbetts
Ecm Records
2010-06-15


 Steve Tibbetts、2010年作。
 ゲストの参加はなく、““Northern Song” (1982)のDuoでの制作。
 “The Fall of Us All” (1994)や“A Man About a Horse” (2002)のような激しさはなく、“Northern Song” (1982)に回帰したような静かで落ち着いた音。
 強く揺らぐ空間。
 幾重にもオーバーダビングされたカラフルな音、ギターに加えてシタールな感じのブズーキ、カリンバ、スチールドラムなどなど、さまざまな音が柔らかに交錯する強烈な浮遊感。
 哀しげにも安らかにも聞こえる、優しい音の流れ、曖昧で淡いメロディ。
 それらを含めて、全体を包み込む淡い色合いの景色は、グラデ―ションを描きながら次々と変わっていきます。
 インドなのかチベットなのかインドネシアなのか、どこかよくわからないアジアらしい、かといってエスニックが前面に出た感じでもない、微妙な微妙な空気感。
 文字通りのフュージョンミュージック。
 いかにもECMな上品なリバーブに包まれ、夢現が混然としたような音の流れが続きます。
 とても静かで懐かしい、それでいて洗練された、心地よい時間。
 再びとても静かな世界、極上のトリップミュージック。

※遠くない時期の読経?入りセッションから。


posted by H.A.


【Disc Review】“A Man About a Horse” (2002) Steve Tibbetts

“A Man About a Horse” (2002) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitars, Percussion)
Marc Anderson, Marcus Wise (Percussion) Jim Anton (Bass)

Man About a Horse
Steve Tibbetts
Ecm Records
2002-08-06


 Steve Tibbetts、2002年作。
 “Northern Song” (1982) の静かな音ではなく、“The Fall of Us All” (1994)などのハードな混沌系。
 エスニックなパーカッションとスペーシーな電子音が作る幻想的な空間。
 その中を泳ぐようなアコースティックギターは、さながら儀式の静かな幕開け。
 そして鳴り響き始める妖しいパーカッションと凶悪なエレキギター。
 無秩序な混沌はありません。
 一定のビートを伴いながら鳴り続けるパーカッションと、さまざま音の絡み合いが頭の中をかき回すような、やはり混沌。
 そしてそれらが引き起こす高揚感、陶酔感。
 これは危ない。
 決して速いビートばかりではなく、大音量でもないことがかえって怖い。
 集中して聞いてしまうと、自分がどこにいるのかわからなくなりそう。
 そんな危険な香りたっぷりのトリップミュージック。
 そして最後につま弾かれるアコースティックギターの響き。
 さて、この危ない儀式の後に訪れるのは安らぎなのでしょうか。
 それとも・・・

※1977年のアルバムから。


posted by H.A.

【Disc Review】“The Fall of Us All” (1994) Steve Tibbetts

“The Fall of Us All” (1994) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, Percussion, Turntables)
Marc Anderson (Congas, Steel Drums, Percussion) Eric Anderson, Jim Anton (Bass) Mike Olson (Synthesizer) Marcus Wise (Tabla) Claudia Schmidt, Rhea Valentine (Voice)

Fall of Us All
Steve Tibbetts
Ecm Records
1994-02-15


 Steve Tibbetts、アフロな先端ミュージック、ド激しい系。
 パーカッション、シンセサイザー、その他諸々の厚めの音と強いビート。
 同じくECM制作、静かな“Northern Song” (1982)などとは、清々しいまでに印象が異なる演奏。
 洪水のようなアフロなパーカッションの激しいビート、強烈なグルーヴ。
 ディストーションが効いたズルズルグチョグチョギュインギュインなハードロックギター。
 “Khmer” (1996-1997) Nils Petter Molvær、あるいは”The Way Up” (2003,2004) Pat Metheny Groupの一場面を想い起すようなハードネスとダークネス。
 それらよりもはるかにはるかに、激烈、混沌、凶悪。
 シンセサイザーが唸りを上げ、スぺーシーではあるのですが、そんな表現は生易しいド激しい系。
 ECMに参画する前の“Steve Tibbetts” ‎(1977)からすれば、これも本来の姿なのでしょう。
 ビートが落ち着き、アコースティックギター中心のサウンド、静かで幻想的なスチールパンの響きが心地よい場面などもあるのですが、熱は落ちず、気がつけばまた激しい熱狂の渦。
 超弩級に激しい幻想。
 頭の中をかき混ぜられるようなサウンド。
 “Northern Song” (1982)あたりから来た人からすれば仰天でしょうが、ハイテンションで激しい系の先端サウンドをお求めの向きにはたまらない一作なのでしょう。
 こりゃスゲーや。

※これよりも激しい。
 

posted by H.A.


【Disc Review】“Big Map Idea” (1989) Steve Tibbetts

“Big Map Idea” (1989) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, Kalimba, Dobro, Pianolin, Tape)
Marc Anderson (Congas, Steel Drums, Percussion, Berimbau) Michelle Kinney (Cello) Marcus Wise (Tabla)

Big Map Idea
Steve Tibbetts
Ecm Import
2001-05-08


 Steve Tibbetts、静かなギターミュージック。
 パーカッションに加えて、スチールパン、チェロ、タブラなどが彩りを加える編成。
 “Northern Song” (1982)と同じ線ですが、電子的な音は抑えられ、多彩な生楽器の絡み合いが中心。
 抑制された淡々としたビート、強い揺らぎと浮遊感の時間。
 タブラやコンガがビートを作り、スチールパン、カリンバ、ビリンボウといったエスニックな音があちらこちらから聞こえてきます。
 が、それらの楽器の国籍の色合いは強くはありません。
 静かなビートとアコースティックギターが先導する、あくまで無国籍なフュージョンサウンド。
 不思議感120%ですが、キャッチーとまではいかないまでも、アメリカンなポピュラーミュージックを経たのであろう、わかりやすい楽曲。
 いつあの超弩級激烈型に転移するのか身構えていても、幸か不幸か、その場面は来ません。
 靄が掛かったような空間の中で、わかりやすい音の流れが明確に見えたり隠れたりしつつ、淡い時間が流れていきます。
 そこはかとない哀愁に包まれつつも、暗くはない、難解でも深刻でもありません。 “Northern Song” (1982)よりも湿度感は少し高め、
 これまた、どこかよくわからない心地よい場所へのトリップミュージック。

※音のイメージは少し違いますが。


posted by H.A.



【Disc Review】“Safe Journey” (1984) Steve Tibbetts

“Safe Journey” (1984) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, Kalimba, Tape)
Marc Anderson (Congas, Steel Drums, Percussion) Bob Hughes (Bass) Steve Cochrane (Tabla)

Safe Journey
Steve Tibbetts
Ecm Import
2001-05-08


 アメリカの尖端ギタリストSteve Tibbetts、1984年、ECMでの制作。
 “Northern Song” (1982)のコンビにベースとタブラが加わり、激烈ロックと静けさが交錯する無国籍ワールドロック。
 冒頭は怒涛のパーカッションとスルズルグチョグチョのエレキギターが爆発するエスニックハードロック。
 これは・・・、ECMなのに・・・・と身構えていると、続くはカリンバ、スチールパンの静かで幻想的な音、ゆっくりとつま弾かれるアコースティックギター、漂う静かな電子音・・・
 しばらく続く静かで心地よい音の流れに冒頭の激烈さを忘れた頃(LPレコードではB面頭)、エスニックなパーカッションの音の中から再び現れる凶悪なディストーションギター・・・
 混沌と平穏の錯綜、鳴り響くパーカッションと電子音、繰り返されるリフに、意識は混乱しながら陶酔へ・・・
 カリンバ、パンなどの穏やかな金属音がとても心地よい時間がたっぷりなのですが、その前にドギツイ洗礼を受けないと・・・ってな構成。
 あまり”Safe”ではなさそうな、いけない世界へのトリップミュージック。
 この後もECMでの制作が続きますが、少し先の“Big Map Idea” (1989)では再び静かになり、さらに先の“The Fall of Us All” (1994)は激烈系。
 本作はそれらが入り混じる構成。
 デビュー作“Steve Tibbetts” ‎(1977)に同じく、この人の音楽のショーケース。
 爆音、静音、エスニック、いずれも尖端ミュージック。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Northern Song” (1982) Steve Tibbetts

“Northern Song” (1982) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, 12String Guitar, Kalimba, Loops)
Marc Anderson (Congas, Bongos, Percussion)

Northern Song
Steve Tibbetts
ECM
2019-01-18


 アメリカのギタリストSteve Tibbetts、ECMでの第一作。
 静かなギターミュージック。
 後にECMでも超激烈系を含めてさまざまな色合いの作品を制作する人ですが、本作には“Steve Tibbetts” ‎(1977)後半の激烈な音はありません。
 ロック、ジャズではなく、クラシック色もなく、かといってフォーク系でもない、いわゆるNew Age Music系?実験系?ワールド系?・・・?
 とにもかくにも美しいアコースティックギター。
 とても清廉で静かな音。
 ゆったりとした音の流れ、穏やかなメロディとコードを奏でるギターとパーカションのアンサンブル。
 幾重にも重なる水の流れ、パーカッションは風の音のようにも聞こえます。
 ときおり響くカリンバは遠い過去から、ストリングスの音は未来から流れてくるようにも聞こえます。
 繰り返されるリフはミニマルミュージック的でもあるし、フォーキーな質感、哀しそうでも絶望はない空気感、遠い所を眺めるような雰囲気はSaudadeなムード。
 少しずつグラデーションを描きながら景色が変わっていくような音の流れ。
 たっぷりとられた余白、たっぷりのエコーが効いたギターの残響音~無音の時間も含めて、心地よい時間が続きます。
 湿度を下げ、空気を浄化する音。
 極上のトリップミュージック。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Steve Tibbetts” ‎(1977) Steve Tibbetts

“Steve Tibbetts” ‎(1977) Steve Tibbetts

Steve Tibbetts (Guitar, Effects, Vocals, Engineer, Synthesizer)

Steve Tibbetts
Steve Tibbetts
Cuneiform
1995-10-17


 アメリカのギタリストSteve Tibbetts、おそらくデビュー作。
 ギターのオーバーダビングとシンセサイザー、効果音が交錯する不思議な音楽。
 フォーキーで瑞々しいアコースティックギター、左右のチャンネルに振り分けられた響きがとても心地よいサウンド。
 楽曲はポップな感じが中心なのですが、なんだか変わっています。
 背景を彩り、ときおり前面に出るシンセサイザーのさまざまな音。
 ギターの響きもあわせてとてもスペーシー。
 空間的の意味合いだけでなく、文字通り宇宙的なサウンドなのですが、同時期の『スター・ウォーズ』(1977)よりももっと前な感じの宇宙サウンド。
 いかにも時代感たっぷりの当時のシンセサイザーの音がそうさせるのでしょう。
 心地よさに加えて、それが何だか新しく聞こえてきます。
 が、穏やかで幻想的な時間に油断していると、後半、強烈なディストーションがかかったズルズルなハードロックギターと飛び交う電気音の饗宴、ド激しい系。
 とても静かで綺麗なアコースティックギターを中心とした音楽、と思いきや、さにあらず。
 静と動、平静と狂気が交錯する1970年代尖端サウンド、今聞いても尖端。




posted by H.A.


【Disc Review】“Partir” (2018) Elina Duni

“Partir” (2018) Elina Duni

Elina Duni (voice, piano, guitar, percussion)

PARTIR
ELINA DUNI
ECM
2018-04-27


 アルバニアをルーツとするボーカリストElina Duni、ECMでの第三作。
  “Matane Malit” (2012)、“Dallendyshe” (2014)と二作続いたピアノトリオとのバンドから、本作は自身で楽器を演奏したソロでの制作。
 ピアノ、ギター、パーカッションの弾き語りを中心として、ここまでの諸作に増して静かでゆったりとしたムード。
 音を探すように置かれていくギター、ピアノと美しい声。
 背景の音が薄いだけに、美しい声の透明度がより際立って聞こえてきます。
 楽曲はここまでの同様に、アルバニア、バルカン半島トラディショナル。
 アルバニアがどんな場所なのかは知りません。
 南ヨーロッパの陽光に包まれた温かい場所なのだろうと思いますが、ヨーロッパと中近東の狭間、政治体制の狭間なだけに、歴史的にもいろいろ訳ありな場所なのでしょう。
 全体を包み込む仄かな哀しさ、祈りにも似たムード。
 かといって絶望とはニュアンスが違う、暗くはない柔らかな空気感。
 南米系Saudadeと比べると、遠い所を眺める感じは同様ですが、より強く直接的な哀しさを感じます。
 ちょうどジャケットのさりげないポートレートのような音。
 この空気感がアルバニアンSaudadeなのでしょうかね。
 これまた非日常へのトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

“Dallendyshe” (2014) Elina Duni Quartet

Elina Duni (voice)
Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Norbert Pfammatter (drums)

Dallëndyshe
Deutsche Grammophon ECM
2015-04-17

 アルバニア出身のボーカリストElina Duni、ECMでの第二作。
 前作“Matane Malit” (2012)と同様のピアノトリオにサポートされた、地中海エスニックな香り、あるいはバルカン半島色が漂う、不思議系ヨーロピアン・コンテンポラリー・フォーキー・ジャズ。
 本作もアルバニア、コソボなどのトラディショナルが中心。
 強い違和感やエキセントリックさはありませんが、不思議感たっぷり。
 基本的には前作と同様なのですが、音のイメージがシャープになり、一聴で強い印象が残る演奏が増えたように思います。
 前作では遠慮気味にも聞こえたColin Vallonトリオが、リーダー作とも少し違ったイメージの演奏。
 バンドのグルーヴが強くなるとともに、インプロビゼーションの場面が増えた感じ。
 複雑なビートを纏いながら明後日の方向に疾走し拡散していくようで、なぜかいい感じに納まっていく音の流れ。
 ピアノソロが前面に出て、美しく繊細な音でぶっ飛んだ音の動き。
 ヨーロピアンコンテンポラリージャズな香りも濃厚。
 結果、淡々とした印象の前作に対して、起伏、うねりがより強く感じられる本作。
 ちょうどジャケットのポートレートの変化と同じく、モノクロからカラーに変わった感じ。
 もちろん主役のヴォイスは美しく儚い歌。
 非日常感たっぷりですが、気難しくも暗くもありません。
 名作だと思います。



posted by H.A.


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