吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Diego_Schissi

【Disc Review】“Tanguera” (2017) Diego Schissi Quinteto

“Tanguera” (2017) Diego Schissi Quinteto

Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon, voice) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)
Lidia Borda, Nadia Larcher, Micaela Vita (voice)

Tanguera
Club del Disco
2018-06-01


 現代タンゴのDiego Schissi、“Timba” (2016)に続く最新作、ライブ録音。
 本作は不動のバンドメンバーに何曲かにボーカリスト。
 少し面持ちが異なるのがオリジナル曲ではなく、タンゴクラシックのアーティストMariano Moresの楽曲に絞って取り上げていること。
 あの硬質で不思議なピアノの短いイントロを過ぎると、いかにもなボーカルも含めて、タンゴなイメージそのままのハイテンションな情熱系の序盤。
 この人のバンドらしく不思議感はたっぷりですが、強いビートに沈痛で哀し気なメロディ、激しくアップダウンする音の動き。
 前半はそんなハイテンションな演奏が続きます。
 中盤からギターとバンドネオンの優しいDuo、ピアノとバイオリンの優雅なDuoなどをを間に挿みつつ、徐々に優雅で優しい表情の場面が増えてきます。
 終盤は前向きな印象、ドラマチックなバラードに、少々コミカルな演奏でクールダウン。
 さらに締めはピアノSoloでのとてもメロディアスなバラード、ほっとするようなエンディング。
 キツめの音から穏やかな音へのグラデーション。
 次々と景色と空気感が変わっていくような構成は、ハッピーエンドなサスペンス映画を見たような感覚。
 これが現代、あるいは伝統的なタンゴの時代からのステージ構成の王道なのかな?
 ドラマチックです。



posted by H.A.


【Disc Review】“Timba” (2016) Diego Schissi Quinteto

“Timba” (2016) Diego Schissi Quinteto

Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)

Timba
Club del Disco
2016-06-27


 現代タンゴのDiego Schissi、2016年作品。
 “Tongos” (2010)と変わらないメンバー。
 “tipas y tipos–en vivo en café vinilo” (2012), “Hermanos” (2013)は他のメンバーが加わっていましたが、Diego Schissiバンドは不動のメンバーのキンテート。
 本作はフォルクローレ風味は抑え気味、現代音楽~クラシック色が強めのバランスの複雑で不思議なタンゴ。
 重苦しい弦の響きから始まる複雑なアンサンブル。
 先の読めない変幻自在な展開。
 クラシカルなタンゴの香りの目まぐるしい楽器の絡み合い。
 “Tongos” (2010)、“tipas y tipos–en vivo en café vinilo” (2012), “Hermanos” (2013)あたりで感じられたフォルクローレな色合い、優しく感じられた質感が薄まり、デビュー作“Tren” (2008)の強さ、高い緊張感に戻ったようにも感じます。
 さらに少々ダークな色合い。
 ピアノが前面に出る場面は少なくなり、終盤の何曲かに限られています。
 アンサンブル中心、少人数で静かな場面でも前面に立つのはバイオリン、バンドネオン、ギターが中心。
 結果としては、コンテンポラリージャズの色合いも薄くなっているようにも感じます。
 共通するのは繊細さ。
 前半の激しく沈痛な面持ちの絡み合いから、終盤に収められたピアノを中心とした静かな数曲にほっとしつつも、最後は妖し気なボイスと叫び声、SEを絡めた不穏な空気感の中で幕・・・
 そのタイトルの英訳は“Dead talking”・・・なるほど・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Tangofied” (2012) Torben Westergaard, Diego Schissi

“Tangofied” (2012) Torben Westergaard, Diego Schissi

Torben Westergaard (bass) Diego Schissi (piano) 
Guillermo Rubino (violin) Paula Pomeraniec (cello) Santiago Segret (bandoneón) Ismael Grossman (acoustic guitar)

 デンマークのベーシストTorben WestergaardとアルゼンチンのピアニストDiego Schissi双頭リーダーバンドの現代タンゴ。
 Astor Piazzollaキンテートと同様の編成+チェロ。
 Astor Piazzollaの色合いが強く感じられますが、もう少し軽めで不思議感たっぷり。
 硬めのビート感に硬質なピアノ、とても哀し気な音色のバイオリンに、漂うバンドネオン、クールなギター、それらに重厚な背景を作りカウンターを当てるチェロ、そして不思議なエレキベース。
 計算されたアンサンブル、各人が代わる代わる前面に立ち、うねりを作りながら次々と変化していく背景のアンサンブルはいかにもタンゴですが、そんな中でエレキベースがファンクに跳ねる感じ。
 ピアノを中心とした全体のパキパキ感とベースの不思議な跳ね具合、さらに他の楽器の浮遊感の組み合わせがなんとも新しい感じ。
 リーダー陣のピアノとベースが後ろに下がる時間は強い浮遊感、とても優雅でクラシカルなムード。
 二人が戻るとピキピキパキパキしながら跳ねる感じの不思議な空気感。
 少々硬めの質感ながら、インプロビゼーションの場面では疾走系のジャズになるDiego Schissiのピアノがとてもいい感じ。
 一聴バラバラな感じが、なぜか自然に収まっていく感じがこれまた不思議。
 楽曲はAstor Piazzolla風もふんだんに取り入れた、哀愁、郷愁たっぷり、ドラマチックな構成。
 が、彼ほどの深刻感、沈痛感はなく、甘からず辛からず、そして曖昧過ぎない淡い色合いが中心。
 さらにどこかすっとぼけたような明るさがある不思議なテイスト。
 ベタつかないクールで乾いた質感もいかにも現代の音、そんなタンゴ。
 とても不思議な感じですが、とても素敵だと思います。




posted by H.A.


【Disc Review】“Tren” (2008) Diego Schissi Double Cuarteto

“Tren” (2008) Diego Schissi Double Cuarteto

Diego Schissi (piano)
Juan Pablo Navarro (contrabass) Ismael Grossman (guitar) Mario Gusso (percussión)
Guillermo Rubino, Herman Ringer (violin) Ricardo Bugallo (viola) Paula Pomeraniec (cello)

Tren
Diego Schissi
Epsa Music
2015-12-27


 現代タンゴのピアニストDiego Schissi、これがデビュー作でしょうか?
 全体の印象は、硬質なピアノを中心としたビート感固め、現代音楽~クラシック色が強いタンゴなのですが、さらにコンテンポラリージャズが複雑にフュージョンするような、いろんな要素が混ざり合う現代のタンゴ。
 ピアノトリオにギターのカルテットに、ストリングスカルテットのアンサンブル、本作ではバンドネオンは無し。
 凝りに凝ったアレンジ、アンサンブル。
 甘くないメロディと、強めで複雑なビート。
 いろんな楽器がこれまた複雑に絡み合いながら、激しくアップダウンする音の流れ。
 ストリングスのアンサンブルが前面に出る場面は、強い緊張感もあわせて、Astor Piazzola的であるし、プロレッシブロックのようにも現代音楽のようにも響きます。
 ピアノが前面に出る場面はヨーロッパの香りが漂う、あるいはフリージャズ混じりのコンテンポラリージャズのような色合い。
 などなど含めて、映像が早送りで再生されているような、目まぐるしく周囲の景色が変わっていくような音の動き。十二分に激しいのですが、それでいてなぜか極めて繊細な質感。
 激しく動く演奏の合間々に挟まれる美しいソロピアノ、ピアノとギターとのDuoなどの静かな場面がアクセント。
 デビュー作?にしてとてもクリエイティブな力作。
 次はハイテンションながら繊細な質感はそのまま、本作のカルテットにバンドネオンを加え、以降不動のクインテットでの“Tongos” (2010)へと続きます。




posted by H.A.


【Disc Review】“Hermanos” (2013) Aca Seca Trio & Diego Schissi

“Hermanos” (2013) Aca Seca Trio & Diego Schissi
Juan Quintero (guitar, voice) Mariano Cantero (drums, percussion, voice) Andres Beeuwsaert (piano, keyboards, voice)
Diego Schissi (piano) Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)

エルマノス
アカ・セカ・トリオ+ディエゴ・スキッシ・キンテート
コアポート
2014-07-23


 現代フォルクローレのAca Seca Trioと現代タンゴのDiego Schissiのバンドの共演。
 現代アルゼンチン音楽の傑作ライブ。
 いずれもその界隈の第一人者。
 予想に違わない、フォーキーな現代タンゴ、あるいはタンゴの香りがする現代フォルクローレ。
 ボーカルが前面に出ている分、後者のイメージ方が強い感じでしょうか。
 Juan Quintero、Diego Schissiの楽曲を中心として、古今の南米の楽曲を加えた構成。
 いずれも優しい表情のメロディと優しい音。
 Aca Seca Trioの音楽をもっと優しくして、ベース、バンドネオン、バイオリンが加わって華やかになった印象。
 あるいは、Aca Seca Trioがゲストコーラスで入っていたDiego Schissiのライブアルバム”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)をもっとポップにわかりやすくした感じでしょう。
 華やか、ポップといってもこの人脈の音ですので、とても穏やかで上品。
 浮遊感の強い音は、ときに幻想的でもあります。
 タンゴな曲、ロックな曲を含めて、ときおり強めのビートを織り込みながら、基本的には優し気な表情で進む音。
 いろんな人のいろんな楽曲が混ざっているようで、また、事実上、タイプの異なるバンドが一緒に演奏しているのに、何の違和感もない統一感。
 コーラスワークはもちろん、完璧なアンサンブルと、思い出したように前面に出るバンドネオン、バイオリン、ピアノがつつましやかでとてもカッコいい。
 優雅でもあり、若々しくもあるのですが、なぜか感じるノスタルジー。
 もちろん全編を通じた穏やかな郷愁感はこの人脈の共通した色合い。
 タイトルの意味は「同胞」のようです。
 なるほど、これが現代アルゼンチンの空気感なのでしょうかね。
 とてもとても素敵な空気、音だと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Tongos” (2010) Diego Schissi Quinteto

“Tongos” (2010) Diego Schissi Quinteto
Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar)  Juan Pablo Navarro (contrabass)

Tongos
Diego Schissi
Sunnyside
2012-06-19


 現代タンゴのDiego Schissi、セカンドアルバムになるのだと思います。
 Astor Piazzolla Quintetoと同じ楽器構成。
 ギターが全編ガットギターなところは違うのですが、音楽そのものムードもAstor Piazzollaとは全く違う印象。
 もちろんさまざまなところにAstor Piazzollaの影響を感じるし、全体のイメージはタンゴに他ならないのですが、質感は異なります。
 現代音楽~クラシックな音の動きを中心として、フォルクローレな色合いの優しい音の流れ、さらにポップスなのか、ロックなのか、そんな現代的な色合いが混ざるタンゴ。
 後のライブ作品”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)のようにボイス、コーラスまでは入りらず、ハイテンションな色合い。
 リーダーのピアノとベースが作る背景の上に、ガットギターが柔らかな空気を作り、バンドネオンとバイオリンがフロントに立つ。
 そんな感じでしょうか。
 もちろんタンゴらしく次々と展開するアンサンブル中心。
 メロディは抽象度高めの淡い色合い。
 Astor Piazzollaのような強烈な哀感はなく、むしろクールな感じ。
 ロック、ポップスを経て、現代の空気感を吸収した若者が作る音楽の共通点なのでしょうかね。
 フォーキーなギターが入るタンゴなんてあまりイメージできなかったもんね?
 複雑な表現で激情を表現しつつも。ときどき優しく穏やか、あくまでクール。
 そんなタンゴ。




posted by H.A.


【Disc Review】”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)Diego Schissi Quinteto

”tipas y tipos – en vivo en café vinilo”(2012)Diego Schissi Quinteto
Diego Shissi (piano)
Juan Pablo Navarro (bass) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar) Guillermo Rubino (violin) Juan Quinteto, Andrés Beeuwsaert, Mariano Cantero, Mora Martínez (voice) Paula Pomeraniec (cello) Ricardo Bugallo (viola) Tomás Barrionuevo (violin)

ディエゴ スキッシ

 アルゼンチンのピアニスト、自身のバンド+αでの現代的タンゴ。
 ジャズに食傷してブラジル系を探していると何故か引っかかるアルゼンチン音楽、これもそんな一枚。
 分類すればタンゴなのでしょうが、現代的フォルクローレの香りもそこそこ。
 明らかにそれらしい優しげな音・・・とか思っていると、ミナスっぽくなったり、Egberto Gismontiっぽかったり・・・やはりAstor Piazzollaピアソラっぽかったり・・・現代的南米フュージョン。
 ストリングスを交えた複雑な構成の楽曲群。でも難解ではないし、重々しくもない。それがいかにも現代的。
 寂寥感、さまざまな要素が絡み合う複雑さ。
 それでもそのすべてを包み込む優しさ、穏やかさ、大らかさ・・・。
 計算しつくされたアレンジ、穏やかなグルーヴ。
 ピアノ、バンドネオン、ギターの決して長くはないソロ演奏のドキッとするような美しさ。
 現代の若手による現代のタンゴは、いろんな色合いの音が混ざり合うとても優しい音。




posted by H.A.
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