吉祥寺JazzSyndicate

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David_Darling

【Disc Review】“Cello Blue” (2000) David Darling

“Cello Blue” (2000) David Darling

David Darling (Cello, Electric Cello, MIDI Programming, Piano, Synthesizer, Vocals)

Cello Blue
David Darling
Hearts of Space
2001-08-28


 アメリカのチェリストDavid Darling、ソロ作品。
 ECMでたくさんの制作をしていた人。
 ソロ作品も“Cello” (1991,1992) などたくさんのアルバムがあります。
 が、本作はそれらECMのハイテンションで深刻ムードとは全く違うテイストの優しい表情。
 ジャズでもクラシックでもなく、ポップインスツルメンタル、あるいはヒーリングミュージックといった面持ち。
 ピアノ、シンセサイザーなどで背景を作り、ときおり鳥のさえずりなどの効果音をはさみながら、少々センチメンタルで美しいメロディをチェロが奏でていく構成。
 もちろん“Cello” (1991,1992) などに近いムードはあるのですが、さらに穏やかで優し気、ポップな音。
 “Cycles” (1981) のタイトル曲のような美メロの片鱗があちこちにちりばめながら、フワフワとした時間が続きます。
 あのSteve Kuhnの名演を想い出す、タメが効きつつも零れ落ちるようなピアノや、ときおりの幻想的なスキャットを交えながら、美しく静謐な音の流れ。
 ノリのいいビートはありませんが、十二分にポップです。
 David Darling、本音ではこんな作品を作りたかったのかな?
 なんだかんだでECM諸作は気難しくてねえ・・・
 ま、そちらはそれがカッコいいんだけど・・・
 タイトルやジャケットもなんだかなあ・・・ですが、中身は安っぽさなど皆無、極めて上質な音。
 気難しさゼロ、心地よさ最高。
 お目覚めのひと時に流れていると一日幸せになりそうな、そんな音。




posted by H.A.


【Disc Review】“Epigraphs” (1998) Ketil Bjørnstad, David Darling

“Epigraphs” (1998) Ketil Bjørnstad
Ketil Bjørnstad (piano) David Darling (cello)

Epigraphs
Ketil Bjornstad
Ecm Records
ケティル・ビヨルンスタ
デヴィッド ダーリング


 “The River” (Jun.1996)の続編のDuo作品。
 これまたチェロとピアノが紡ぎだす上品、上質な音。
 本作のテーマは「碑文」。
 何の「碑」なのかは想像するしかありませんが、確かにどこかしら遠くを眺めているような、あるいは何かを懐かしむような音。
 穏やかで優し気、前向きなメロディ。
 背景に低く響くチェロの音はベルベットのようなしっとりとした質感。
 メロディを紡ぐ音が醸し出す哀感。
 テンポも前作にも増してゆったりとして穏やか。
 今にも止まりそうな場面も多々。
 わずかに遅れ気味に立ち上がってくるピアノに、さらに遅れて遠くで鳴り響くようなチェロ。
 例によってドラマチックですが、本作はあくまで穏やか、淡い色合い。
 ここまで心地よいと眠気が・・・
 とてもいい感じの眠気です。




posted by H.A.

【Disc Review】“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad, David Darling

“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad
Ketil Bjørnstad (piano) David Darling (cello)

The River
Ecm Records
ケティル・ビヨルンスタ
デヴィッド ダーリング

 ノルウェーのピアニストKetil BjørnstadとアメリカのチェリストDavid DarlingのDuo。
 クラシックには疎く、チェロとピアノのDuoが一般的な組み合わせなのかどうか、この種の音が一般的かどうかはわかりませんが、この上もなく上品、かつクリエイティブな音。
 “The Sea” (1994)に次いだ「河」なのかもしれませんが、“The Sea II” (Dec.1996)もありますので、どの流れなのかは分かりません。
 いずれにしても“The Sea”と同様にドラマチックな作品。
 ドラムとギターがいない分、ビート感がさらに堕ちて、クラシックの色合いが強くなっている音。
 また、「海」よりもこちらの「河」の方がさらに静かで穏やか。
 メロディも優しくて明るいムード。
 激しい流れではなくあくまでゆったりとした流れ。
 タメが入って遅れ気味に動き出す独特の音使いのピアノ。
 その周りをフワフワと漂うような哀感を湛えたチェロの響き。
 この手の音楽がカフェで低く流れているととても素敵なんだろうなあ。
 とても静かなので大きな声での会話が出来そうにありませんが・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“The Sea II” (Dec.1996) Ketil Bjørnstad

“The Sea II” (1996) Ketil Bjørnstad
Ketil Bjørnstad (piano)
Terje Rypdal (guitar) David Darling (cello) Jon Christensen (drums)

Sea 2
Ketil Bjornstad
Ecm Import
ケティル・ビヨルンスタ
ヴィッド ダーリング

 ノルウェーのピアニストKetil Bjørnstad、「海」をテーマにした“The Sea” (1994)の続編。
 メンバーはそのまま、質感もそのまま、ドラマチックな仕立て。
 とても悲し気なオリジナル曲。
 淡々と微妙にタメを効かせてメロディ、背景を紡いでいくピアノ。
 その上を漂う沈痛なチェロの響き。
 音楽が高揚したところで登場する、強いディストーション、尋常ではない激情のロックギター。
 胸が締め詰められるようなチェロの響きに対して、心をかき乱されるような、凄まじいまでにドラマチックなギター。
 歪んだギターは苦手ですが、ここまでくるとこれしか無いように思います。
 私が知る限り、バラードでの激しい系ギターソロではこのシリーズが一番カッコいいかも・・・
 そんな感じの凄まじい弦のコンビ。
 といったところまでは前作と同じイメージですが、本作ではJon Christensenのドラムが活躍する場面が多いように感じます。
 逆にリーダーのピアノは一歩引いて背景を作る役割に徹している印象。
 フリー、ヒタヒタと迫ってくる系、激しく煽る系・・・、Jon Christensenの持ち味全開のビート。 
 何曲かあるルバートでのバラードでも、フリーなビートが効いて強烈な浮遊感、とてもドラマチック。
 個々の楽曲のメロディ、全体の統一感、ストーリー性、緊張感など含めて、前作の方が人気なのかもしれません。
 が、ドラムが強く、ビート感が強調されている分、躍動感は本作の方があるように思います。
 といったことも含めて、私は本作の方がお気に入り。
 ジャズとして・・・?
 さて?聞いてみてください。
 素晴らしい音楽であることは間違いありません。




posted by H.A.

【Disc Review】“The Sea” (1994) Ketil Bjørnstad

“The Sea” (1994) Ketil Bjørnstad
Ketil Bjørnstad (piano)
Terje Rypdal (guitar) David Darling (cello) Jon Christensen (drums)

Sea
Ketil Bjornstad
Ecm Import
ケティル・ビヨルンスタ
ヴィッド ダーリング

 ノルウェーのピアニストKetil Bjørnstad、ECMでのコンボ作品。
 「海」をテーマにしたドラマチックな組曲。
 淡々とした端正なピアノを背景として、哀感を湛えた、でも慈しむようなチェロと過激に歪んだ妖しいギターがメロディを紡いでいく構成。
 描こうとしたのは海の景色なのか、海の中で繰り広げられる生物たちのドラマなのかはわかりません。
 いずれの解釈もできそうな大らかでゆったりとした展開。
 悲しげでもあり、優しげでもあり、穏やかでもあり、過激でもある、そんな音。
 全体の穏やかなイメージの中に時折現れる過激なロックギターの響きがアクセントとなり、また穏やかな表情に戻っていく・・・
 あるいはチェロが奏でる悲哀に満ちた音、さらに時折の激情をはさみながら、また穏やかな表情に戻っていく・・・
 そんな展開。
 どの曲も穏やかながら悲しみを湛えたメロディ。
 妖しく激しい冒頭からさまざまな展開を経て、超スローテンポで穏やかなエピローグで締め。
 後半にさりげなく置かれた”The Sea,IX”など、いくつかはとんでもない美曲。
 何かが生まれてくるようなドラマチックな展開、何かを慈しんでいるような表情。
 いろんなイメージ、想像力を掻き立てる音。 
 全体を通じたストーリー性、映画のサントラ的なモノをイメージして作ったのかもしれません。
 なお、Ketil Bjørnstadのピアノにジャズ度は全くありません。
 ここまでグルーヴを抑えたクラシック然としたピアノは、さすがのECMでも少数でしょう。
 また、Jon Christensenのドラムも得意のヒタヒタと迫ってくる感じでビートを作るスタイルではなく、アクセントつける役回り。
 あるいは、他のメンバーとはバンドとは別のビートを淡々と小さな音で刻んでいく、そんな変わったスタイル。
 結果、全体を通じてビート感は薄目、少々重々しい印象。
 そのあたりで好みは分かれるのかもしれません。 
 が、そうでなければこのドラマチックさ、終始漂うような、穏やかなようで悲し気ような表現はできないのかもしれません。
 名作です。
 但し、ジャズのビート感は期待しないでください。 




posted by H.A.

【Disc Review】“Dark Wood” (1993) David Darling

“Dark Wood” (1993) David Darling
David Darling (cello)

Darkwood
David Darling
Ecm Records
デヴィッド ダーリング



 David Darling、“Cello” (1991,1992)に続く、チェロのソロ作品。
 タイトル通り深い森の中のような音。
 Woodsではないので「森」ではなくて、色の濃い「木」なのかな?
 ま、深くて薄暗い、静かな森の中のような音なのでよしとしてください。
 終始低く漂うような音。
 チェロでなくてビオラやベースだとこの雰囲気、繊細な質感は出ないのでしょう。
 これがチェリストとしてやりたかった音楽、生涯の集大成といわれても納得の音。
 とても悲しげな音ですが、感情的になったりはしません。
 あくまで落ち着いた穏やかな表情。
 もちろんジャズ度はゼロ。
 ビートが欲しい時には聞くのを止めておきましょう。
 でもこの音が流れると周囲が深い森に変わります。
 森林浴っていうのにはちょっと暗めな感じでしょうかね?
 爽やかでもありますが、ほどほどの湿り気。
 呼吸が楽になってくるような気がします。
 気のせいかもしれません・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Cello” (1991,1992) David Darling

“Cello” (1991,1992) David Darling
David Darling (cello)

Cello
David Darling
Ecm Records
デヴィッド ダーリング



 David Darling、タイトル通り、チェロのソロ作品。
 “Journal October” (1979)から十年振り。
 同じくオーバーダビングはありますが、本作はチェロのみ。
 ECMでの前作、コンボでの”Cycles” (1981)のようなビート感はなく、クラシック的な作品です。
 “Journal October” (1979)は少しとんがったイメージがありましたが、こちらはとても穏やかな表情。
 低く響く沈んだ音。
 ゆったりと漂うような抽象的なメロディ、漂いながら落としどころを探しているような展開。
 静かで内省的、心の深いところを眺めるような音、そんなイメージの音。
 かといって暗いわけでも深刻でもありません。
 あくまで穏やかです。
 Weekdayの朝に聞くと一日弛緩してしまいそうだけども、休日の朝にはピッタリ。
 “Dark Wood”とタイトルされた曲が三曲。
 おそらく続編、次作“Dark Wood”(1993)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Journal October” (1979) David Darling

“Journal October” (1979) David Darling
David Darling (acoustic, electric cello, voice, percussion)

Journal October
David Darling
Ecm Import
デヴィッド ダーリング


 アメリカのチェリストDavid Darling、ECMでの初作品。
 Ralph Towner、Collin Walcottなども参加していたサックスのPaul Winterのバンドにも参加していたようです。
 元々、民族色も交えた新しいテイストの音楽、ECMカラーとイメージが合う人なのでしょう。
 本作はチェロを中心としたソロ演奏、クラシックの色合いも強い音楽。
 後年の“Cello” (1991,1992)あたりと比べると、フリージャズの色合い、エレクトリックチェロの使用など含めて、素直にクラシックな感じではありません。
 もちろんポップスでもジャズでもない不思議な音楽。
 フリージャズ的なムード、フリーインプロビゼーションの色合いもありますが、おそらく計算しつくされた音作りなのでしょう。
 全編に漂う不思議感。
 さらに強い寂寥感。
 この人の音楽はいつも悲し気。
 絶望や激情があるわけではないのですが、なぜか悲し気。
 チェロの響きに自体にもいつも悲し気な色を感じます。
 メロディアスな展開と抽象的、実験的な色合いが半々。
 複雑で予想できない流れの中に響く、これまた予想できない悲し気なチェロの音。 
 何曲かのとてもメロディアスな曲、背景を作るピチカートとメロディを紡ぐアルコとの絶妙な組み合わせが印象に残ります。
 不思議な構成の中から突然現れる美しいメロディ、チェロの音色、その抑揚、表現力には、いつも胸を締め付けられるような思いを感じます。
 怖いわけでも、鬼気迫るといった感じでもないのですが、淡々とした感傷、あるいは寂寥。
 そんな感じ。
 その色合いは、次作、コンボでの名作”Cycles” (1981) へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Exile” (1993) Sidsel Endresen

“Exile” (1993) Sidsel Endresen
Sidsel Endresen (Voice)
David Darling (Cello) Jon Christensen (Drums, Percussion) Bugge Wesseltoft (Keyboards) Django Bates (Piano) Nils Petter Molvær (Trumpet)

Exile
Sidsel Endresen
Ecm Import
シッツェル アンドレセン
ジャンゴ ベイツ


 ノルウェーのボーカリスト、”So I Write” (1990)に続くECM作品。
 前作のメンバーにチェリストDavid Darlingと、近年まで活動を共にしているキーボードBugge Wesseltoftが参加。
 Django Batesの美しいピアノが印象に残ることは変わりませんが、チェロの響きが同程度に背景を支配。
 ピアノが入らないトラックも増え、妖しさは増幅。
 静謐な迷宮に迷い込んだような不思議感。
 全編を支配する寂寥感。
 楽曲はオリジナルを中心として、Django Bates、David Darlingなど。
 いずれも寂寥感漂う不思議系。
 不思議なメロディラインとこぼれ落ちるような美しいピアノ、ハスキーで乾いた妖しげなボイス。
 それらに絡みつくように低く響くチェロ、トランペット。
 David Darlingのチェロがフィーチャーされる場面が多く、前作に比べて抽象度が高い時間が長い印象。
 非日常的空間へ連れて行ってくれる不思議な音。


※別のアルバムから。


posted by H.A.

【Disc Review】“Cycles” (1981) David Darling

“Cycles” (1981) David Darling
David Darling (cello)
Collin Walcott (sitar, tabla, percussion) Steve Kuhn (piano) Jan Garbarek (sax) Arild Andersen (bass) Oscar Castro-Neves (guitar)
 
Cycles
David Darling
Ecm Import
2000-05-16
デビッド ダーリング

 ECMの隠れた名盤。
 現代音楽の色が強い?チェリストがリーダー、ECMオールスターがサポート。
 曲者揃いですので、どんな音なのか予想できませんが、聞いてみてもなんとも簡単には説明できない多様な内容。
 ともあれ、冒頭の”Cycles”は激甘、涙ちょちょ切れの大名曲。
 とても悲しい映画のテーマ曲、というより、そんなイメージよりもずーっと悲しく、美しく、奥が深い音。
 訥々したピチカートから始まり、シタールが絡み妖しげな雰囲気、さらに凜としたピアノが美しいメロディを奏で、三者で定まっているような、そうでもないような浮遊感の強い、でも美しい空間を作る。
 それだけもとても美しく、もの悲しく、感動的なのに、そこにリーダーのチェロのアルコが後ろの方の空間から引きずるような沈痛なテーマを展開。
 でも、そのままそこに居座るのではなく、消え入ったり、また現れたり。
 中盤以降はボリュームが上がり、前面へ、でも気が付くとまた消えていて・・・。
 その間もずっと淡々としたベース、ピアノとシタールの美しくて妖しい絡み合いが続く・・・
 なんとも奥ゆかしいというか、聞けば聞くほどはまっていきそうな深い音。
 ってな感じで涙々、沈痛の約七分間。決してこれ見よがしな派手な演奏はないのだけども、何度聞いても飽きません。
 後続は少し現代音楽、フリージャズの色の濃い演奏。
 無国籍、ノンジャンルな音。
 でも混沌はわずかで、基本的にはピアノが透明な空間を作り、その中でチェロ、サックス、シタールなどが自在に色づけしていく感じ。
 サックスが前面に出ると北欧系の厳しい感じだったり、ピアノが前面に出ると上品なヨーロピアンジャズっぽくなったり、さまざまな表情。
 特にSteve Kuhnのピアノ、このアルバムでは決して音数は多くないのですが、ゆったりとしたテンポの上に、後ろ髪を引かれるようなタメの効いた音の置き方、微妙な音の変化でもの悲しさと美しさ全開。
 リーダーのチェロの時折りの強烈に感傷的な音使いとの絡みは絶妙。
 冒頭曲のような甘いメロディが他にもいくつか。
 どれも深い音、胸が詰まるような切ない音、奥の深い絡み合い。
 いずれにしても秋っぽい音、今の季節にはピッタリだなあ。



posted by H.A.
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