さる物事を「これが私の趣向だよ」と自負しているもの程、語れることは実は少なかったりする。
 この度この場を借りてジャズについてのお話を書くことは僕の中でも実験的な試みになった。書き始めて思ったのはやはりジャズについて語ることは少し難しいということ。
 ジャスメンという人種はあまり自身のことについて多くを語ってはくれないものだし、ジャズには膨大な数の音源があるのに少しばかりの傾聴で他人とうなずきあうのは難しいだろう。
 しかし、ジャズを味わうことが自体が難しいと云いたいのではなく、むしろそんな屈折したエキセントリックな快感こそジャズを味わう上での大きな醍醐味の一つだと云えるだろう。


"BLUES ette" (1959)
Curtis Fuller (Trombone)
Jimmy Garrison (Bass) Al Harewood (Drums) Tommy Flanagan (Piano) Benny Golson (Tenor Saxophone)
 
Blues-ette
Curtis Fuller
Savoy Jazz
1992-10-06
カーティス フラー

 さて今回紹介させて頂くのはカーティス・フラーの『ブルース・エット』。
 ジャズの紹介本等でもレヴューは書きつくされている感は大いにあり、ここでもあまり目新しいことを書ける訳でもないのだが、聴く側の感受性によって甘々な表情を見せてくれる、パリッとした粋なフレージングを改めて感じて頂けたらと思った次第である。
 少し解説を加えると、このアルバムは1959年に<サヴォイ>から出ている。カーティス・フラーをリーダーにベニー・ゴルソン、トミー・フラナガンらと供に演奏されたものの録音である。
 全編を通じて洗練されたバップイディオムで調理されており、聴きどころは何といっても表題曲の「ブルース・エット」に代表されるように、深く、味わいのあるテンポで展開される切れ味のあるゴルソンのテナーと温かみのあるフラーのトロンボーン絶妙なハーモニーだろう。
 ジミー・ギャリソンのベースラインに、巧みな奏者の感覚でくさびのように打ち込まれてくるトミー・フラナガンの伴奏もまた精妙な美しさを演出している。
 恐らくは、曲のアレンジも勤めたであろうゴルソンのアレンジャーとしての手腕もこのアルバムの聴きどころの一つだ。
 A面一曲目に収録されている「Five spot after dark」は言わずと知れる知名度を持つ曲で、CMのテーマや、村上春樹さんの小説なんかにも登場した。12小節のマイナーブルースの形式にのせて繰り広げられるホーンセクションのユニゾンは優しい鈍器のごとき質量で僕らの耳をうつ。
 少々大げさな言い方かもしれないが、このアルバムにはフラーがこれまでのジャズ遍歴の中で心ゆくまで吸い込んできた、愛するものへの地合い、音に対する理解、あるいは理解されないための孤独等が、彼のトロンボーンを通して吹きこぼれてくるような印象がある。
 僕らはそれをあますところなく、彼のパートのソロから感じることは出来ないだろうか?




posted by S.E.