吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Craig_Taborn

【Disc Review】“Craig Taborn Trio” (1994) Craig Taborn

“Craig Taborn Trio” (1994) Craig Taborn
Craig Taborn (piano)
Jaribu Shahid (bass) Tani Tabbal (drums)
 
Craig Taborn Trio
Craig Taborn
Diw Records
1998-08-18
クレイグ・タボーン

 今や静謐なECMアーティストのCraig Tabornの初期作品、日本制作アルバム。
 “Jurassic Classics” (1994) James Carterの次日、サポートのピアノトリオそのままのセッション。
 “Avenging Angel” (2011)などの一連のECM作品とは全く別人としか思えない、現代的ぶっ飛びモダンジャズ+少々フリージャズ。
 久々に引っ張り出してきましたが、20年以上経過した今の耳で聞いても凄い演奏。
 確かに今のコンテンポラリージャズと比べるとビートもシンプルだし、モダンジャズの香りも濃厚、クールな感じもありません。
 が、その分凄い熱量。
 ゴリゴリベースとビシバシドラムが繰り出す強烈な推進力。
 その上を突っ走り、飛び跳ねるピアノ。
 ド迫力のピアノトリオ。 
 Herbie Hancockっぽい背景に、Monk的、Ellington的、Cecil Taylor的のエッセンスを散りばめたような感じ。
 さらに何かもう一歩二歩進んだような、しかも整った音。
 これでもかこれでもかとたたみかけてくるような激しさ、爽快感。
 “WOW”大西順子が1993年のリリースですか。
 なるほど、そんな時代だったようです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Daylight Ghosts” (2016) Craig Taborn

“Daylight Ghosts” (2016) Craig Taborn
Craig Taborn (piano, electronics) 
Chris Lightcap (bass) Dave King (drums) Chris Speed (tenor saxophone, clarinet)
 
Daylight Ghosts
Craig Taborn
Ecm Records
2017-02-10
クレイグ・タボーン

 Craig Taborn、ECMでの第三作、サックス入りカルテット作品。
 不思議系、クール系フリー的ジャズ。
 客演も多くすっかりECMの人になったCraig Taborn。
 メンバーは前作“Chants” (2012)から一新していますが、本作もすべてアメリカ人でニューヨークでの録音。
 サックスはいかにも現代的なクール系、Mark Turnerっぽい感じ。
 ドラムのDave Kingは一世を風靡したロック的ジャズピアノトリオ”The Bad Plus”のメンバーでしょうか?
 The Bad Plusのピアニスト、Ethan IversonもECM作品"All Our Reasons" (2012) Billy Hartなどに客演していますので、Eicherさん、意外にもThe Bad Plusのファンだったりして。
 さておき、本作、ビートは定常、楽曲もあるので難解ではなく、フリージャズではないのでしょうが、そのメロディラインが不安感系、陰鬱系、さらにとっ散らかっている系。
 なんだか不思議で非現実的な妖しい空気感は前作“Chants” (2012)と同様。
 が、前作と比べると躍動感が強く、その分静謐ではない音。
 冒頭からハイテンション。
 強烈にグルーヴするビートの上を疾走しキラキラと舞い散るようなピアノと、少々陰鬱なサックスのインタープレー。
 美しい音、テンポが上がるとカミソリのような切れ味のピアノ。 
 かといって、ドカーンとやってしまうわけではなく、あくまでクールに淡々と綴られる音。
 そんな演奏が続きます。 
 相変わらず楽曲のメロディやフレージングに愛想がはありませんが、慣れてくると、グルーヴと散文的なインタープレーの微妙なバランス、アンバランスが不思議な心地よさ。
 時折のミニマル的なリフレインと徐々にテンションを上げていく構成が非日常的な陶酔感を誘います。
 終盤、やっと穏やかなバラード、静謐な音の流れが続き、ここまでのECMのCraig Taborn的な音。
 そのまま電子音も交えながら、テクノ的ミニマル的リフレインの繰り返し、陰鬱なサックスのロングトーンが鳴り響きつつ、テンションを上げて幕。
 不思議度120%。 
 この人、すっかりECMに定着しましたが、デビュー作“Craig Taborn Trio” (1994)、あるいは盟友James Carterとの “JC on the Set” (1993)、“Jurassic Classics” (1994)などでゴリゴリのジャズをやっていた時代とは全く別人のような音。 
 決して暗くはないのだけども、心の深淵の闇をのぞいてきました・・・ってな感じの変化。
 素直な4ビートはもう無いのだけども、それでもなんだかんだでジャズっぽさが強く残っているのもこの人の色合いでしょう。
 本作のタイトルは“Daylight Ghosts”。
 オカルトチックなタイトルの曲が並びます。
 でもあくまでクールで、なんだか明るい感じもあります。
 確かにタイトルのような音です。
 



posted by H.A.


【Disc Review】“Chants” (2012) Craig Taborn

“Chants” (2012) Craig Taborn
Craig Taborn (piano)
Thomas Morgan (bass) Gerald Cleaver (drums)
 
Chants
Craig Taborn
Ecm Records
2013-04-23
クレイグ・タボーン




 Craig Taborn、ECMでの第二作、ピアノトリオ作品。
 “Avenging Angel” (2011)はソロピアノでのとても静かなフリージャズでしたが、本作はオーソドックスな編成のトリオ。
 ドラムとベースは“Wislawa” (2012) Tomasz Stankoと同じメンバー、同じ月、同じくニューヨークでの録音。
 同じくトリオでの20年ほど前の作品、現代的モダンジャズ作品“Craig Taborn Trio” (1994)とは全くテイストが違うことはもちろん、“Avenging Angel”とも違う音。
 何とも言えない不思議な質感は同様ですが、本作はキッチリビートが効いています。
 冒頭から推進力のあるベースとドラム、力強いピアノ。
 が、普通にテーマ~インプロビゼーションの展開ではなく、不思議で不穏な雰囲気のリフの繰り返しが印象に残る音。
 一曲目はフリーな感じのインプロビゼーションが前面に出ますが、二曲目などは1分30秒ほど、ひたすら同じリフの繰り返し。
 以降はインプロビゼーションとなりますが、リフと強いグルーヴが印象に残ります。
 これをミニマル的と呼ぶのかどうかはわかりませんが、なんだか新感覚な演奏。
 三曲目はテンポ落としたバラード演奏、ビートは定常なのですが、美しい右手の音と不協和音を出す左手、どこに落ち着いていくのか先が読めない不思議な展開。
 以降、アップテンポ、スローテンポを入り混ぜながら、不思議で妖しいリフ、聞き慣れない不安感が漂う、かといって混沌でも激しくもない不思議な演奏のオンパレード。
 中盤から静謐で漂うようなフリージャズ的な場面が続き、こちらの方がECMのCraig Taborの感じ。
 全編通じてジャズ的ではあるのですが、ビート感はさておき、オーソドックスなメロディ、コードの流れはないし、かといってフリージャズでもない不思議な演奏が続きます。
 それでも暗くはならない質感は、おそらく三人とも、元来がアメリカンなジャズの人だからでしょうかね。
 とりわけ次世代のAnders Jorminと期待しているThomas Morganのベースが、アップテンポはもちろん、スローテンポでも上品で穏やかな、いい感じのグルーヴを引き出しているように思います。
 アルバムの締めは不思議なリフが少しずつ変化しながらひたすら繰り返されつつ、ドラムソロ、ベースソロで幕。
 やはりミニマル的&フリー的なジャズを目指しているのでしょうかね?
 とても不思議な「ジャズ」ピアノトリオ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Avenging Angel” (2011) Craig Taborn

“Avenging Angel” (2011) Craig Taborn
Craig Taborn (piano)
 
Avenging Angel
Craig Taborn
Ecm Records
2011-06-07
クレイグ・タボーン

 アメリカのピアニストCraig Taborn、ECMでの第一作、ソロピアノ。
 近年のECM作品でよく見かけますが、元々ゴリゴリサックスのJames Carterのサポートでガンガンゴンゴン、現代的ぶっ飛びモダンジャズしていたはずで、どうもECMとはイメージが合いません。
  “JC on the Set” (1993) James Carter、”Craig Taborn Trio” (1994)でデビューしたのだと思いますが、近いタイミングのECM制作“Nine to Get Ready” (1997) Roscoe Mitchellに参加していて、フリージャズはもちろん、ECMとも浅からぬ縁はあり。
 Art Ensemble of Chicago系のひとだったのかあ、と納得至極。
 本作はECMらしく静かなフリージャズ。
 フリーインプロビゼーション集かもしれません。
 ビートの効いた演奏もいくらかありますが、フワフワと漂うような抽象度の高い演奏が中心。
 静かで間の多い音。
 キラキラと舞い降りてきて、空間を漂うような音の流れ。
 普通にキレイな展開になりそうで明後日の方向に動いていく音。
 抽象的なようで意味不明かと言われればそうでもない微妙な色合い。
 一般的な感覚でのメロディアスな演奏はありませんが、決して暗い感じでも深刻な感じでもありません。
 さすがにECM、クラシックの感じもありますが、ヨーロッパの人とは少しムードが異なります。
 アメリカン的なカラッとした感じ、力強さもそこかしこに。
 かといってジャズな感じ、ブルージーな感じはほとんどなく、摩訶不思議な音の流れ。
 穏やかな非日常感。
 夜ではなくて昼下がり。
 ロマンチックでもメロディアスでもありませんが、アーティスチック。
 現代美術の展示場、白い壁の明るく静かな広い空間が似合いそうです。
 タイトルは「復讐の天使」?。
 タイトル曲などはそんな感じもありますが、基本的には静かで美しいフリージャズ。
 ECMマジックに掛かったCraig Taborn。
 但し、少々明るい色合い、ハードボイルドな感じがアメリカンな感じ。
 希少な色合いなのかもしれません。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Sirens” (2012) Chris Potter

“Sirens”(2012)Chris Potter
Chris Potter(sax)
Craig Taborn (piano) David Virelles(piano) Larry Grenadier(bass) Eric Harland(drums)

The Sirens
Universal Music LLC
2013-02-13
クリス ポッター

 Chris Potter 、ECM第一弾、最近作の前作。
 メンバーはECMオールスターとも、New Yorkオールスターともとれるメンバー。
 結果はヨーロッパ的ではなく、アメリカ的コンテンポラリージャズ。
 冒頭曲、8ビートなのか変拍子なのかよくわからない、今旬なリズムから始まり、相変わらず硬質な音でゴリゴリ、ブリブリ、高い音圧で吹きまくり。
 二曲目も近いテイスト。
 現代的なリズムにメカニカルなテーマ、エキサイティングなインプロビゼーション。
 そのまま最後まで行っちゃいます。
 一部ECMっぽかったり、バラードも入ったりしますが、全体的にはあくまでアメリカン。
 カラッとした感じのハイテンションなイケイケジャズ。
 この人の場合、ハイテンション、深刻系に聞こえても、あまり暗くはならないのが特徴だったように思いますが、それがそのまま。
 愛想がないのもそのままだったり・・・
 結果的には、メカニカルでアメリカンなコンテンポラリージャズで、ECMレーベルとしては少々異質。
 Eicherさんもあまり口出しはしていないのかな?
 やはりどこに行ってもChris PotterはChris Potter。




posted by H.A.

【Disc Review】“Imaginary Cities” (2014) Chris Potter Underground Orchestra

“Imaginary Cities” (2014) Chris Potter Underground Orchestra
Chris Potter (sax)
Adam Rogers (guitar) Craig Taborn (piano) Steve Nelson (vibraphone,marimba) Fima Ephron (bass) Scott Colley (bass) Nate Smith (drums) Mark Feldman (violin) Joyce Hammann (violin) Lois Martin (viola) David Egger (cello)
  
Imaginary Cities
Chris Potter
Ecm Records
2015-01-13
クリス ポッター

 あちこちで引っ張りダコの人気サックス奏者Chris Potterの最新作。
 オールスターのコンボ+ストリングスの豪華版。
 音圧の強い激烈系の音楽が得意な人のイメージが強かったのですが、本作はストリングス絡みのバラードからスタート。
 沈痛な面持ちのクラシック風なイントロからメロディアスなジャズバラードへ展開。
 意外にもこれがいい感じ。
 ストリングスにも過激系の人がいるだけに気難しい系かと思いきや、不思議なぐらいオーソドックス。
 もちろんサックスは相変わらずの音圧強い系で、これでもかこれでもかと畳みかけてくるようなドラマチックなバラード。
 なんだ、バラード集だったの?と安心するのも束の間、だんだん激しくなっていくのですが、ほどほどなハードさで、小難しい系ではありません。
 いろんなバンドで演奏して来た人だけに音のイメージも多彩。
 ビブラフォンやベースがフィーチャーされるとDave Hollandのバンドの様でもあるし、ギターが前面に出ると今風のロック、ファンク色の強い?自身のバンドの様でもあるし、Pat Methenyのバンドっぽくもあるし。
 コンボのメンバーも好演。
 が、いずれの名手にもあまりスペースが大きくないのが少々もったいない感じではあります。
 ストリングスも適度に緊張感を加えるアンサンブル中心。
 現代音楽的な複雑な感じでも、激甘なムードを醸し出すスタイルでもありません。
 悲しげな表情の曲、全体を通じて音圧が高く、緊張感も強いのですが、何故かあっけらかんと明るい感じ。
 リーダーのキャラクターがそうなのかもしれませんが、ドラマーが終始カラッとした今風のビートを繰り出しており、そのイメージが強いのでしょうか?
 結果、繊細で神経質な感じのECMらしさは薄く、ちょっと激しい系のアメリカ的コンテンポラリージャズ。
 リラックスしてダラりと聞ける感じの音ではありませんが、あまり行き過ぎない程度、ほどほどにハードな音を聞きたいときにはピッタリ。
 暑いこれからの季節には向かないかも、ですが・・・
 さておき、これを機にギターのAdam RogersがECMレーベルからJazz色が強いアルバムを出してくれると嬉しいな、と思うのはファンの無謀な望みかな?




posted by H.A.
Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ