吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Contemporary_Jazz

【Disc Review】“Opening” (2021) Tord Gustavsen Trio

“Opening” (2021) Tord Gustavsen Trio

Tord Gustavsen (piano, electronics)
Steinar Raknes (double-bass, electronics) Jarle Vespestad (drums)


Opening
Tord Gustavsen Trio
ECM
2022-04-08


 ノルウェー発、哀愁のピアニストTord Gustavsen、トリオ作品。
 前作“The Other Side” (2018)と同様、オーソドックスなピアノトリオ編成ですが、ベーシストが交代しているようです。
 静謐で沈んだ空気感は、この人のいつもの音。
 ECMレコードでの初作であろう“Changing Places” (2001)と変わらない沈痛な哀感。
 が、前作の流れを引き継いでか、かつての悲壮感が漂うような沈痛さ、あるいは演歌な感じではなく、穏やかで軽い方向、あるいは淡い色合いに振れてきているように思います。
 ゆったりと丁寧に置かれていくメロディ。
 哀し気でキャッチーなメロディが揃い、涙ちょちょ切れ、これでもかこれでもかと押し寄せてくる怒涛の哀愁。
 概ねゆったりとしたテンポながらも、全体を通じた穏やかなグルーブと、ときおりの疾走。
 ・・・と、ここまでは初期の作品とも同じ。
 が、終始哀し気ながら、穏やかでほんのり温かな感じ、そのうえでときおり不穏さが表出する、そんなバランス。
 バンド全体のタッチが軽快になり、さらに三者が自由に動く時間が増え、それが初期とは違った軽くて淡い色合いと強い浮遊感に繋がっているようにも思います。
 暗いムードや胸を締め付けるような、あるいはベタつくまでの哀感がよければ、初期作品の方がお好みに合うのでしょう。
 が、メロディが強いだけに、このくらいのバランスの方がちょうど心地よいようにも思います。
 静かで穏やかな諦観。
 悟りの境地。
 そんな音。
 本作も極めて上質、この人のアルバムにハズレなし。



posted by H.A.



【Disc Review】“Isabela” (2021) Oded Tzur

“Isabela” (2021) Oded Tzur

Oded Tzur (tenor sax)

Nitai Hershkovits (piano) Petros Klampanis (double-bass) Johnathan Blake (drums)


Isabela
Oded Tzur
ECM
2022-05-13


 イスラエルのサックス奏者Oded Tzur、ECMレコードでの第二作、郷愁感たっぷりのコンテンポラリージャズ。
 前作“Here Be Dragons” (2019)は静かで穏やかな名演でしたが、本作も同じメンバー。
 同胞のピアニストに欧米のベース&ドラム、オーソドックスなジャズカルテット編成。
 冒頭は、僅か二分に満たない時間ながら、静けさから激烈一歩手前まで展開する、このアルバム全体を象徴するようなイントロダクション。
 続いてミディアムテンポに乗った懐かしさが溢れるようなメロディ。
 少々のエキゾチシズムを纏ったSaudadeな世界。
 例によって日本の懐かしいメロディに通じる感じなのが不思議。
 Charles Lloydな感じの透明度が高く美しい音からダーティな音までが交錯するサックス、軽快に動きまくるピアノ。
 このピアノが凄い。
 転がりまくり、要所々で疾走しまくり。
 あくまでサポートしている感じではあるのですが、軽やかで美しいフレージング、強烈な存在感。
 前作では繊細なイメージが強かったように思うのですが、本作では強烈な疾走が前面に。
 同胞の名手Shai Maestroにも近い感じは現代イスラエルの色合いなのかもしれませんし、近年のECMレコードのピアニストの代表的な色合いの一つかもしれません。
 いずれにして凄まじい演奏力。
 終始穏やかな前作とはまた違った、徐々に音量と激しさを増していくハイテンションな演奏が印象に残ります。
 そして終盤に収められた10分を超えるタイトル曲は、今にも止まりそうなスローバラード。
 ドラムが定常にビートを出している時間が長い分、ECMレコードのお約束全編ルバートな感じではないのですが、強烈な浮遊感。
 穏やかで懐かし気なメロディと空気感。
 漂うサックス、軽やかに転がるピアノ、目まぐるしくパターンを変え、テンションを上げながら自由な形に遷移していく、あくまで静かなドラム。
 とてもドラマチック。
 そして締めはいかにもイスラエルな感じのエスニックなメロディ、アップテンポのハイテンションな演奏。
 これまたドラマチック。
 凄まじい演奏力に裏打ちされた、少しだけエスニックな違和感が漂う、Saudadeなコンテンポラリージャズ、今回はテンション高め、ってな感じでカッコいいんじゃないでしょうか。



posted by H.A.



【Disc Review】“Naked Truth” (2021) Avishai Cohen

“Naked Truth” (2021) Avishai Cohen

Avishai Cohen (Trumpet)
Yonathan Avishai (Piano) Barak Mori (Bass) Ziv Ravitz (Drums)


Naked Truth
Cohen, Avishai
Ecm
2022-02-25


 イスラエルのトランペッターAvishai Cohen、ECMレコードから。
 穏やかで不思議なコンテンポラリージャズ。
 ギターが入り先端ロック色も混ざる前作“Big Vicious” (2019)から変わって、オーソドックスなワンホーンカルテット編成。
 その前の“Playing The Room” (2018), “Cross My Palm With Silver” (2016)あたりからさらに抑制された印象の音。
 組曲なのでしょう。
 テーマは自然との関係と絡めた“悟り”的(?)なイメージでしょうか、そんな音。
 全編通じて静かで穏やか、淡い色合い。
 前後左右に舞い散るあくまで静かなシンバル、ドラム。
 控え目なピアノ、ベース。
 絞られた音数、音量、適度なエコーを纏い、まるで耳元で鳴っているようなトランペット。
 とても繊細。
 全編を覆う浮遊感。
 いわゆるテーマからインプロビゼーションといったジャズなフォーマットではありません。
 エキゾチックなのか何なのか、聞き慣れない音階、少し哀し気で不穏な感じがしないでもない、でも決して暗くはない、難解でも気難しくもない不思議感たっぷりのメロディ、というかリフ、というか・・・、なんと申しましょうか。
 ビートは効いていてジャズな感じではあるのですが、前掲の諸作とも違う、なんとも不思議な空気感。
 強い音やドカーンとくる場面はありません。
 が、穏やかに高揚する場面が散りばめられていて、それらと全編を通じた不思議感と浮遊感とのバランスがいい感じ。
 いずれにしても、とても繊細で美しい音と相まって、心地よい音。




posted by H.A.



【Disc Review】“Vermillion” (2021) Kit Downes

“Vermillion” (2021) Kit Downes

Kit Downes (piano)
Petter Eldh (double-bass) James Maddren (drums)

Vermillion
Kit Downes
ECM
2022-02-11


 イギリスのピアニストKit Downes、ピアノトリオ作品、ECMレコードから。
 ECMでは“Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Stronenでタダモノではない感たっぷりな疾走ピアノ、リーダー作としてはパイプオルガン演奏“Obsidian” (2017) 、ベースレスの変則編成“Dreamlife of Debris” (2019)ときて、ようやくオードドックスなピアノトリオ編成。
 が、オーソドックスではない不思議感たっぷりな音。
 難解さ、気難しさはありません。
 美しく、サラサラとした質感の音。
 メロディアス、でも幻想的、そんなバランス。
 柔らかな音の軽やかなピアノ。
 饒舌なベースと静かで自由なドラム。
 静かながら凝りまくったビート。
 誰が何拍子で何を演っているのかわからない複雑さ。
 三者三様、キッチリと主張しているのですが、誰が突出するわけではない一体感。
 淡いメロディ、静かで穏やかな音の流れ。
 疾走や激情はありません。
 ECMでのお約束、ルバートでのスローバラードもありません。
 ビートが効いているのに、なぜか漂う浮遊感。
 メロディアスなのですが、なぜかその芯をつかめない感じ。
 不思議感たっぷり。
 でも迷宮感はない、穏やかで明るい色合い。
 強い浮遊感、淡い色合いは、21世型ECMの典型のような感じですが、このバランスは新しいのかも、とも思います。
 いずれにしても心地よい時間。
 不思議感ゆえなのでしょう、飽きそうにありません。



posted by H.A.



【Disc Review】“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Live At Budokan 1978
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ソロピアノ、東京でのライブ音源。
 これもブートレッグ、FM放送の音源でしょうか?

 “My Song" (Oct.-Nov.1977)と“Sleeper”, “Personal Mountains” (Apl.1979)の間、ソロ作品では“Sun Bear Concerts” (Nov.1976), ”Concerts:Bregenz” (May.1981)の間。
 1970年代終盤、作風が変わってきたと思しき時期の演奏。
 沈痛な面持ちのバラードからスタートし、ビートが定まった後も沈痛、散りばめられる高速パッセージ。
 その表情は徐々に明るくなっていき、フォークロックモードから、リフレインが続く長尺なゴスペルモードへ。
 20分を過ぎたあたりでビートを落とし思索モードから再びバラード、フォークロック~リリカルへと変わっていき、強い音、不思議感たっぷりなリフレインに帰着、リリカルな展開と交錯しながら前半は終演。
 後半は冒頭から速いテンポでの哀しく激しい表情。
 後のソロ演奏でよく聞かれる強い音、沈痛な面持ちのリフレインへと展開。
 ときおりの明るさは短い間、重く激しく不可思議なムードが全体を支配。
 フォークロックな表情もヘビー、静かな場面はリリカルというよりも沈痛。
 終盤は不可思議で激しい音、混沌と高揚の中でのエンディング。
 そして重苦しいムードを払拭するような喝采から、あの”My Song”。

 暴風雨は終わり陽光が射し・・・ってな感じのありがたい演出。
 静かに始まり、沈痛、不安、混沌を経て、安寧に至る、ってなドラマ。
 1970年代中盤のリリカル成分が強くてメロディアス、前向きな高揚感で結ぶ様式が、この辺りで変わってきたのでしょうか。

 キャッチーでわかりやすいのは“The Köln Concert” (Jan.1975)前後~“Sun Bear Concerts”、複雑で少々気難し気だったり、クラシック~現代音楽色が強かったりなのがこのあたり以降、といった感じでしょうか。

 いずれにしても、いまだ全貌つかめず、それが面白くて抜けられません。





posted by H.A.



【Disc Review】“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)
Palle Danielsson (bass) Jon Christensen (drums)
Jan Garbarek (saxphones)


Live In Hanover 1974
Keith Jarrett European Quartetto
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、いわゆるEuropean Quartetでのライブ音源。
 American Quartetでの“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973)と同じくブートレッグ、TV放映用のものからの音源なのでしょう。
 同じくハイテンションながら、そちらとは色合いの違うスッキリしたコンテポラリージャズ。
 “Belonging” (Apl.1974)の録音の一週間前の録音、その全曲を演奏、さながら公開リハーサル。
 当然“Belonging”に近い色合いではあるのですが、ここから余剰なモノを削って研ぎ澄ましたのがそちら、激しく生々しいのがこちら。
 公式ライブ録音作品では、“Nude Ants” (1979)よりも、スッキリした“Personal Mountains”, “Sleeper” (1979)寄りな印象。
 ぶっ飛ぶDewey Redmanとは違うぶっ飛び方をするJan Garbarek、アクが強いリズム隊含めて遠いところまで行ってしまうAmerican Quartetに対して、破裂寸前のようなピリピリした緊張感が持続するこちらのバンド。
 スタジオ録音とは違う印象のダークで妖しい”Belonging”から始まり、ビートが入るとハードなハイテンションジャズ。
 怖いほどに張り詰めたサックス、突っ走るピアノ。
 バラードもありますが、後の”My Song”やら”Country”のような甘さは抑えたられたハイテンションな演奏が続きます。
 激しくとも崩れていっても、あくまで端正でクールなこのバンド。
 散りばめらたフリーな展開もあくまでスッキリ。
 この期の演奏、どのバンド、どの作品とも、カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (Piano,Reeds)
Charlie Haden (Bass) Paul Motian (Drums) Guilherme Franco (Percussion)
Dewey Redman (Tenor Sax)

Berliner Jazztage 1973(+2)
Keith Jarrett American Quartetto
Hi Hat
2022-01-29


 Keith Jarrett、いわゆるAmerican Quartet+αでのライブ音源。
 ブートレッグ、TV放映用の音源なのでしょう。
 ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973) と“The Köln Concert” (Jan.1975)の間、“Treasure Island” (Feb.1974)録音直前。
 神掛かってきた時期の演奏の、妖しくハイテンションなコンテンポラリージャズ。
 公式ライブ作品で"Fort Yawuh" (Feb.1973)、“Eyes of the Heart” (1976)がありますが、激しい前者、残り火な感じの後者に対して、もちろん近い時期の"Fort Yawuh"寄り。
 "Fort Yawuh"で演奏されていた楽曲を中心に、“Treasure Island”から少々、それらをもっと妖しくして、ほどほどに激しく、そんなバランス。
 “Death and the Flower” (1974)の冒頭的、妖しいパーカッションと笛のイントロダクションからスタート。
 その後は"Fort Yawuh"と同様、全力疾走ハイテンションジャズ。
 突っ走り転げ回るピアノにグショグショなテナーサックス、それらが落ち着いたら二管での不思議系。
 そして何事もなかったように始まる沈痛耽美系、が、早々にハイテンションジャズに様変わりし、ゴスペルチックなリフレインヘ。
 続いて“Treasure Island”的ノリノリフォークロックにリリカル系、ピアノレス二管での4ビートジャズ。   
 さらにその合間に妖しいパーカッション大会やら、山奥系のボイスやら。
 何が何だかなカオス状態。
 いかにもこのバンド的なハチャメチャさ。
 黒いサックス、バタバタドラムとボコボコベース、ピアノはタメと疾走が交錯する絶好調期。
 毒気たっぷり、甘さも少々。
 カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Molde Jazz Festival 1972 & 1973
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ノルウェーのジャズ祭でのソロ演奏、1972年、1973年二年分。
 ブートレッグ、テレビ放映からの音源でしょうか。
 公式作品“Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973)を間に挟んだ両年のステージ。

 1972年、冒頭は沈んだムード、徐々にテンション上げながら見え隠れする美メロ・・・が、鳴り響く不協な音・・・、前向きなフォークロックなメロディで立て直す5分前後。
 それをベースとしつつ、ゴスペル、美メロ、フリー、ラグタイムなどの色合いが交錯。
 どこに向かうのか模索すること十分前後、落ち着いたのは美メロをベースに高速パッセージが飛び交う展開。
 が、その時間は短く、再びフォークロック、ゴスペルチックな展開に転じて前半を締め。
 後半、短く不思議系な展開を挿み、リリカルな感じから諸々の展開を経てビートが定まると、再びフォークロック、前向きなコード展開と美しい高速パッセージ。
 その流れでゴスペルモードに移行していくかと思いきや、ビートを落としてこの期では珍しい雅な感じからコードを叩きつける激しい時間を経て、フォークロックとリリカルが入り混じる形で静かにエンディング。
 目まぐるしく色合いが切り替わる1972年のステージ。

 1973年、穏やかに始まりますが、早々にアップテンポへ移行、続いて後の“La Scala” (Feb.1995)あたりで目立つ思索的ミニマル的なリフレインに突入、そこに美しい高速パッセージが散りばめられる強烈な緊張感。
 沈痛な表情は少しずつ形を変えながら徐々に明るくなっていき、定番のフォークロック~ゴスペルパターンに移行、高揚感の中で前半を締め。
 後半は思索的にスタート、ビートを定めることなく漂うような演奏が続いた後、ゴスペルパターンに突入。
 再び思索パターンに転じたのち、雅モードとミニマルモードが入り混じる形から、ゴスペルモード、穏やかな高揚感の中で幕。
 躍動感が強い1973年のステージ、名演でしょう。

 いずれも近い時期の“Solo Concerts” (Mar.Jul.1973)に近いイメージ、ほどほどに甘く、ほどほどに硬派。
 近いムードではあるのですが、三者三様、それぞれに違う表情。
 但し、本二ステージ、クラシック色は薄く、フォークロックな感じが目立つともに、フリーや抽象的な場面が混ざり、双方ともに1980年代以降の色合いも既に、ってな感じでしょうか。
 “The Köln Concert” (Jan.1975)を超えるようなステージはあったのか?ってな興味もあるのですが、結局の所、最も穏やかで、リリカル成分、美メロが多く、気難しさがないのが“The Köln Concert”、それで一番人気、ってな感じなのでしょうかね。
 いずれにしても、この期はメロディアスな演奏が中心、美メロのてんこ盛り。
 これらを即興で演ってしまうってのが信じがたいというか、畏れ多いというか・・・




posted by H.A.



【Disc Review】“One Time Out” (1987) Paul Motian

“One Time Out” (1987) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Joe Lovano (tenor saxophone)


One Time Out
Soul Note
1989-12-31


 Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルからのトリオ作品。
 ここに来て幻想的名トリオ編成に。
 この期の連作、作品が進むごとに落ち着いてきている感じがするし、人数が減って静かになるかと思いきや、逆。
 確かに静かな演奏もあるのですが、ベースレスになり普通にジャズな感じが無くなりました。
 しかも、凶悪、激烈な音が並ぶ激しい演奏が中心。
 いつもの陰鬱沈痛なメロディと激しいビート。
 ギターとドラムはやりたい放題。
 グシャグシャ・ギュイーンにバタバタ・ドシャーン。
 端正でハードボイルドなイメージのJoe Lovanoもブチ切れる場面多々。
 このバンド、実はベースがかろうじてジャズサイドへ引き留めていたのかあ・・・と感心しきり。
 そんな中でスタンダードもいくつか演奏されていて、それは後のBroadwayシリーズに繋がる穏やかな音。
 艶やかでスペーシーなギターに丁寧にメロディを置いていくサックス。
 これは甘美。
 激烈と甘美な幻想が交錯する音。
 ぶっ飛んでいます。
 この後、スタンダード中心のBroadwayシリーズ、さらに後のECMレコードでの静かな音の名作群、など含めて落ち着いていくトリオですが、この期の再スタートは激烈さが圧倒する過激な内容。
 畏れ入りました。



Conception Vessel” (1973)
Tribute” (1974)
Dance” (1977)
Le Voyage” (1979)
Psalm” (1982)
The Story of Maryam” (1984)
Jack of Clubs” (1985)
It Should've Happened a Long Time Ago” (1985)
Misterioso” (1986)
One Time Out” (1987)
”Monk in Motian” (1988)
On Broadway Volume 1” (1989)
On Broadway Volume 2” (1989)
Bill Evans” (1990)
Motian in Tokyo” (1991)
On Broadway Volume 3” (1991)
Paul Motian and the Electric Bebop Band” (1992)
”Trioism” (1993)
”Reincarnation of a Love Bird” (1994)
At the Village Vanguard” (1995)
”Sound of Love” (1995)
”Flight of the Blue Jay” (1998)
”Trio 2000 + One” (1997)
”Play Monk and Powell” (1998)
”Europe” (2000)
”Holiday for Strings” (2001)
I Have the Room Above Her” (2004)
Garden of Eden” (2004)
”On Broadway Vol. 4” (2005)
Time and Time Again” (2006)
”Live at the Village Vanguard 1-3” (2006)
”On Broadway Volume 5” (2009)
Lost in a Dream” (2010)
The Windmills of Your Mind” (2011)


posted by H.A.



【Disc Review】"Misterioso” (1986) Paul Motian

"Misterioso” (1986) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)


Misterioso
Soul Note
1987-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作、第三弾。
 タイトル曲含めてMonkさんの曲が何曲か。
 その孤高でハードボイルドな感じがこのバンドに似合っているといえばその通り。
 この期の連作、作品が進むにつれ落ち着いてきている感じ、本作は普通なジャズ度が強いかもしあません。
 普通に4ビート(そうでもないか・・・)、ハードボイルドな感じの二人のサックスがとてもカッコいい。
 が、それを引っ搔き回していくジャズからはみ出した未来的、ときにグシャラグシャラに凶悪なギターの音。
 そんな音を煽っているんだか、どこ吹く風のマイペースなのか、摩訶不思議な親分の激しい打撃音。
 つられてサックス陣も狂気渦巻く世界へ行ったり、行かなかったり・・・
 Bill Frisellが静かにソロ奏でるあの懐かしい“Byablue”なんてマニアックな趣向もあったりしますが、 その後はいきなり激烈凶悪系なギターが鳴り響いたりして・・・
 そして締めはゴスペル(スピリチュアル?)チックなサックスの朗々とした独奏。
 変幻自在、予測不可能。
 普通にジャズな演奏がある分、かえって振れ幅が大きくなったように感じたり、落ち着いたように感じたり。
 いずれにしても、この期の連作で共通しているのは、甘さなし、苦み走った男っぽい感じ、ちょっとへんてこりん。
 ジャケットのポートレートな感じ。
 このくらいのバランスの方が自然に聞けていいなあ。今日は。




posted by H.A.



Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ