吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Contemporary_Jazz

【Disc Review】“Bridges” (2015) Adam Baldych

“Bridges” (2015) Adam Baldych

Adam Bałdych (Violin)
Helge Lien (Piano) Frode Berg (Bass) Per Oddvar Johansen (Drums)

 ポーランドのバイオリニストAdam Bałdych、カルテットでのコンテンポラリージャズ。
 サポートはノルウェーの名手のピアノトリオ。
 オーソドックスな編成ですが、普通のジャズ~コンテンポラリージャズとは少々質感が異なります。
 基調はジャズですが、クラシック、ヨーロピアントラディショナルの強い香りが漂う、繊細かつドラマチックな音。
 中心となるオリジナル曲は、エキゾチシズムを漂わせながらの憂いを含んだメロディ。
 後ろ髪を引かれるようにタメを効かせて置かれていく繊細なピアノと変幻自在に動き回るバイオリン。
 どこかに飛んで行ってしまいそうなバイオリンを現実に引き戻すかのようなピアノ。
 美しく繊細なピアノの音に導かれて静かに始まり、徐々にテンションを上げ、楽曲の終盤にはドカーンとくるドラマチックな構成の楽曲がたくさん。
 全編通じてハイテンションです。
 インプロビゼーションだけでなく、それらの抑揚感を含めて計算し尽くされたような完成度。
 全体を漂う非日常的なエキゾチシズムと哀しい音の流れは、どこか遠い時代の遠い所から聞こえてくるようにも感じるし、ドラムを中心とする乾いたビート感はいかにも現代の音のようにも聞こえます。
 哀しく、どこか懐かし気で、ドラマチックな東欧コンテンポラリージャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

Adam Baldych (violin) Yaron Herman (piano)

The New Tradition
Adam Baldych & Yaron Her
Imports
2014-06-10


 ポーランドのバイオリニストAdam BaldychとイスラエルのピアニストYaron HermanのDuo作品、ドイツのACTレーベルから。
 静謐と激情が交錯する時間。
 クラシックの色合いが強いヨーロピアンなテイストのピアノに、こちらもクラシックがベースなのだろうけども、地中~中近東の香り、ヨーロピアントラディショナルな香りも強いバイオリン。
 強い哀愁が漂うメロディと少し沈んだ空気感、強い緊張感は、このレーベルの雄、Lars DanielssonLeszek Mozdzerの諸作を想い起こします。
 それらと同様に、美しく冷たく硬質なピアノを背景にした、太い音の激情バイオリン。
 あくまでメロディアスなフレーズを紡いでいき、徐々に高揚しつつピークに達するスタイル。
 たった二人の決して大きな音ではない演奏ながら、とてもドラマチック。
 終始哀し気で少々深刻系の空気感はポーランドジャズの人の色合い。
 とてもハイテンションで躍動感が強い音、それでいて静かで美しい、現代バイオリンジャズの一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Combo 66” (2018) John Scofield

“Combo 66” (2018) John Scofield

John Scofield (guitar)
Gerald Clayton (piano, organ) Vicente Archer (bass) Bill Stewart (drum)

COMBO 66 [CD]
JOHN SCOFIELD
VERVE
2018-09-28


 大御所ギタリストの最新作。
 4ビートを中心としたオーソドックスな現代ジャズ。
 ピアノトリオ、またはオルガントリオを背景にした、いつもの軽く歪ませたブルージー成分、ロック成分多めなジャズギター。
 全曲、あの沈んでいくようなダークで不愛想なオリジナル曲、ミディアムテンポ中心。
 私的にはあの“You're Under Arrest” (1984,1985) Miles Davisの超高速タイトル曲が強烈過ぎて、ついついそれを期待してしまうのですが、30年経ってもあれっきり、というかあれが特別だったのでしょうねえ。
 ともあれ、男臭くてヤクザな感じ、意外なところにブレークが入るいつものスタイル・・・と思っていたら、終盤にポップソングのようなキャッチーなバラードも。
 かつてのハイテンションジャズフュージョン、あるいはジャムバンドっぽさも残しつつ、心地よくバウンドする一線級のジャズバンドに、ウネウネとしたギター。
 どこか懐かし気な香りのする、かといってモダンジャズには収まらない、ロック世代以降のアメリカンな音。
 歳を重ねてもなお、何事もなかったように淡々と弾き連ねていく姿が何ともクールでカッコいいなあ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

Florian Weber (piano)
Linda May Han Oh (double bass) Nasheet Waits (drums)
Ralph Alessi (trumpet)

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


 ドイツのピアニストFlorian Weberのトランペット入りカルテット、ECMでの初リーダー作。
 “Alba” (2015) Markus Stockhausenでとても静かで穏やかな演奏していた人。
 サポートはアメリカンRalph Alessi、そのバンドのドラマーNasheet WaitsのECM御用達の人たちに、知る人ぞ知る強烈なアジア系女性ベーシストLinda Oh。
 “Alba” (2015)とは面持ちを変えて、自由に激しく動きつつも、少し線が細めの繊細な音。
 静かなフリービート時間が中心。
 美しい音で美しいメロディを奏でるピアノ、それに寄り添いときおり強烈な推進力のベース、自由にアクセントをつけていくドラム。
 夢と現実を行き来するような時間。
 数曲で加わる覚醒を促すような鋭いトランペット、ときおりの激しいビート。
 が、テンポと音量が下がると、また夢の中・・・
 ”水”をテーマにした楽曲を集めたようで、確かにそんな演奏が続きます。
 1970年代ECMとは全く違う質感、21世紀型ECMの穏やかで優しい、繊細な音。
 美しさと妖しさはそのまま。
 とてもわかりやすいのですが、メロディが甘すぎたりセンチメンタルに過ぎたりしない、クールな色合いなのも現代的なのでしょう。
 静かなヨーロピアンコンテンポラリージャズ、その21世紀型ECMな音、これまた白日夢系。




posted by H.A.


【Disc Review】“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

“Where The River Goes” (2018) Wolfgang Muthspiel

Wolfgang Muthspiel (guitar)
Brad Mehldau (piano) Larry Grenadier (bass) Eric Harland (drums)
Ambrose Akinmusire (trumpet)

WHERE THE RIVER GOES
WOLFGANG MUTHSPIEL
ECM
2018-10-05


 オーストリアのギタリストWolfgang Muthspiel、ECMでのリーダー作、第三弾。
 前作“Rising Grace” (2016)と同じ編成、ドラマーがBrian BladeからEric Harlandに交代。
 色合いも前作と同様、トランペットがアクセントになった穏やかなジャズ。
 かつてのとんがった音は影を潜め、淡く明るい色合い、フワフワと漂うようなサウンド。
 手練れた人たちによる繊細なアンサンブルと、タダモノではない感の漂うインプロビゼーションが続きます。
 楽曲の表情は妖しいコンテンポラリージャズ、ハイテンションジャズ、南米、ブルース、はたまたスタンダードのパロディ、その他諸々のごった煮。
 但し、それら全てがスッキリとまとまり洗練された、ジャズな音。
 オーソドックスなようで先端的なビートを出すドラムとベース、不思議な音の動きのピアノトリオ。
 それを背景にしたクリーントーンのエレキギター、ガットギターもさることながら、それと絡み合うトランペットがカッコいい。
 控え目ながら、繊細から過激までの多彩な表現力。
 この人もECMから出て来るのでしょう。
 全部合わせて、オーソドックスになようでほんの少しだけ現実からズレたような、白日夢のような音。
 穏やかで優しい、21世紀型ECMな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

“Bay Of Rainbows” (2018) Jakob Bro

Jakob Bro (guitar)
Thomas Morgan (double bass) Joey Baron (drums)

BAY OF RAINBOWS
BRO/MORGAN/BARON
ECM
2018-10-05


 デンマークのギタリストJakob Broのトリオ、ニューヨークでのライブ録音。
 トランペット入りの前作“Returnings” (2018)から、“Streams” (2015)と同メンバーのトリオに戻りました。
 あの乳濁色の空気。
 トランペットの鋭い音や激しいビートでの覚醒はなく、ゆったりとして淀んだような緩やかな音の流れ。
 終始ルバートのように浮遊するビート感、リバーヴたっぷりの艶のある音のギターが紡ぐ、ゆったりとしたメロディとコードの動き。
 寄り添うように慎ましやかにカウンターを当てるベースとフリーにアクセントをつけるドラム。
 オリジナル曲はいつもの淡くて悲し気で懐かし気なメロディ。
 中盤にいかにもニューヨークな先端的な音、ループを使いつつの強いビートのハイテンションな演奏。
 が、それも一曲のみ、他はひたすら続く緩やかで穏やかな音。
 ライブ録音ながらスタジオ録音諸作と同じムード、合間の賑やかな拍手と掛け声でふと現実に立ち返るような、淡い時間が流れていきます。
 白日夢のような音、21世紀型ECMな音。
 ほんとにマンハッタンのど真ん中で演奏された音なのでしょうかね?
 どこか違う場所の違う時間に連れて行ってくれるトリップミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Desvelando Mares” (2018) Bianca Gismonti Trio

“Desvelando Mares” (2018) Bianca Gismonti Trio

Bianca Gismonti (piano, voice) 
Antonio Porto (bass) Julio Falavigna (drums, tabla) 
Jose Izquierdo (percussion) Preetha Narayanan (violin) Bebe Kramer (accordeon) Fabio Mentz (bansuri flute) Ganapati (sitar) Maria Joao (voice) Elizabeth Rodriguez, Magdelys Savigne (vocals)

Desvelando Mares
Bianca Gismonti
Hunnia Records
2018-08-30


 ブラジルのピアニストBianca Gismonti、トリオ+αの新作。
 前作は“Primeiro Céu” (2015)、父Egbertoさんとは少し違う感じながらも、なんだかんだでその現代女性版ってなイメージでしたが、本作は諸々の音が入り混じる多国籍な音。
 ファンクなピアノトリオをベースに、フォルクローレなアコーディオン、バイオリン、インドなタブラにシタール、ポルトガルの魔女Maria Joao(ホントに”Majo”って曲歌っています。名前の略だと思うけど。)、多士済々のゲスト陣。
 冒頭、アコーディオンが響くフォルクローレな優しい音からスタートし、上品なバイオリンなどが絡みながら音楽は進みます。
 本作は穏やかで優しい系かあ・・・と思っていたら、徐々にビートが強くなり、ヘビーでエキサイティングなファンクの連発だったり、シタールとタブラが絡み合う山奥の妖しい系だったり、激しい系のピアノソロ演奏だったり。
 諸々を経て、三者が複雑に絡み合う幻想的で漂うような音、ドラマチックなピアノトリオで幕。
 考えてみれば父Egbertoさんも初期の優しいブラジリアンミュージックから徐々に過激になっていった感じでしたかね。
 その怪人っぽさが別の方向から来た、ってな感じでしょうか。
 そんな感じのポップではなく、シリアスな表情のコンテンポラリージャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“La Fenice” (2006) Keith Jarrett

“La Fenice” (2006) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

LA FENICE
KEITH JARRETT
ECM
2018-11-02

 Keith Jarrett、ソロピアノコンサートの未発表音源。
 2006年、公式ソロアルバムでは“The Carnegie Hall Concert” (Sep.2005), “Testament” (Oct.2008)の間、“Jasmine”, “Last Dance” (2007)の少し前、場所はイタリア、ベニス。
 イタリアといえば壮絶な”La Scala” (Feb.1995)を想い起こしますが、本作はその色合いと、前掲の21世紀に入ってからの短めの演奏で構成するスタイルが入り混じります。
 冒頭、十七分を超えるPart I、三分半のPart IIは激しく、徘徊するような現代音楽的な演奏、そしてとまどうように間を開けた観客の拍手。
 続くフォークロックなPart III、ゆったりとした美しいメロディのPart IV、強い躍動感、少しズレたようなジャズPart Vで前半は幕を閉じます。
 後半の冒頭Part VI、クラシックなスタートから桃源郷のように変化していく音の流れは、あの凄まじい”La Scala” (Feb.1995)になるか?と期待させつつも、十分を超える演奏は静かに不思議に終わります。
 続いて美しく懐かし気なクラシック曲”The Sun Whose Rays”、クラシックとジャズとフォークロックを混ぜ合わせたようなPart VII、ミディアムテンポのブルースPart VIII、締め?あるいはアンコール1は穏やかにメロディを置いていくスタイル、“The Melody At Night, With You” (1998)にも収録されていた”My Wild Irish Rose”。
 そしてアンコール2?は突っ走る”Stella By Starlight”、さらに最後は”Belonging” (Apl.1974)収録の”Blossam”。
 いろいろな展開はあるものの、やはり一番近い演奏は“The Carnegie Hall Concert” (Sep.2005)あたり、21世紀型Keith Jarrettのスタイルなのでしょう。
 ときおり顔を出す1970年代のような疾走、そして最後の最後に静かに置かれていくあの”Blossam”メロディ、それだけで涙ちょちょ切れてしまうのは懐古趣味なのでしょうか?
 いずれにしても発表済みの同時期の諸作に劣らない好演、その貴重な記録。 




〇:ソロピアノ
 (1967)   “Life Between the Exit Signs”
 (1968)   “Restoration Ruin”
 (1968)   “Somewhere Before”
 (1970)   “Gary Burton & Keith Jarret”
 (1971)   “Ruta and Daitya”
 (1971)   “El Juicio (The Judgement)”
 (1971)   “Birth”
 (1971)   “The Mourning of a Star"
〇(Nov.1971) "Facing You"
 (Apl.1972) "Expectations"
 (Jun.1972) "Hamburg '72
 (Nov.1972)   “Conception Vessel”    Paul Motian
 (Feb.1973) "Fort Yawuh"
 (Feb.1973) "In the Light"
〇(Mar.Jul.1973) ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” 
 (Feb.1974) “Treasure Island” 
 (Apl.1974) Belonging” 
 (Apl.1974) “Luminessence” 
 (Oct.1974) Death and the Flower” ,“Back Hand” 
〇(Jan.1975) The Köln Concert” 
 (Feb.13.1975) “Solo Performance, New York ‘75” 
 (Jun.1975) "Gnu High"   Kenny Wheeler 
 (Oct.1975) Arbour Zena” 
 (Dec.1975) Mysteries” 
 (???.1975) Shades” 
 (Mar.1976) Closeness”  Charlie Haden
 (Apl.1976) The Survivor's Suite” 
〇(May.1976) Staircase” 
 (May.1976) Eyes of the Heart” 
 (???.1976) “Hymns/Spheres” 
 (Oct.1976) Byablue”、“Bop-Be” 
〇(Nov.1976) Sun Bear Concerts” 
 (Jun.1977) “Ritual” 
 (Feb.1977) Tales Of Another” Gary Peacock 
 (Oct.-Nov.1977) “My Song"    
 (Apl,16-17.1979) “Sleeper”, “Personal Mountains” 
 (May,1979) Nude Ants:Live At The Village Vanguard
 (1979,1980) "Invocations/The Moth and the Flame"
 (Mar.1980) "G.I. Gurdjieff: Sacred Hymns", "The Celestial Hawk"

〇(May.1981) ”Concerts:Bregenz” 
〇(Jun.1981) ”Concerts:Munchen
 (Jan.1983) Standards, Vol. 1”、“Standards, Vol. 2” 、“Changes
 (May-Jul.1985) "Spirits"
 (Jul.1985) "Standards Live"
 (Jul.1986) "Still Live", "Book of Ways", "No End"
〇(Apl.1987) "Dark Intervals"
 (Oct.1987) Changeless” 
〇(Oct.1988) Paris Concert
 (Oct.1989) ”Standards in Norway” 
 (Oct.1989) “Tribute”
 (Apl.1990) “The Cure”
〇(Sep.1991) “Vienna Concert
 (Oct.1991) “Bye Bye Blackbird”
 (Sep.1992) “At the Deer Head Inn”
 (Mar.1993) “Bridge of Light”
 (Jun.1994) “At the Blue Note”
〇(Feb.1995) “La Scala
 (Mar.1996) “Tokyo '96”
〇(Oct.1996) “A Multitude of Angels” 

〇(1998)   “The Melody At Night, With You” 
 (1998)   "After the Fall"
 (Jul.1999) “Whisper Not”
 (Jul.2000) “Inside Out” 
 (Apl.2001) “Always Let Me Go”
 (Jul.2001) “My Foolish Heart”
 (Jul.2001) “The Out-of-Towners”
 (Apl.2001) “Yesterdays”
 (Jul.2002) “Up for It”
〇(Oct.2002) “Radiance
〇(2006)          “La Fenice
〇(Sep.2005) “The Carnegie Hall Concert
 (2007)   ”Jasmine”, “Last Dance
〇(Oct.2008) “Testament
 (May.2009) “Somewhere”
〇(Apl.2011) “Rio
〇(2014)   “Creation

posted by H.A.

【Disc Review】“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

“The Other Side” (2018) Tord Gustavsen Trio

Tord Gustavsen (piano, electronics)
Sigurd Hole (bass) Jarle Vespestad (drums)

The Other Side
Tord Gustavsen Trio
Ecm
2018-08-31


 ノルウェーのピアニストTord Gustavsenのトリオ作品。
 サックス、ボーカルが入った作品が続いていましたが、オーソドックスなトリオ+ほんの少しの電子音。
 一時期の攻撃的なビートとハイテンションな演奏は抑えられ、あの静かで沈痛な寂寥の世界。
 哀愁漂う音をゆったりと置いていくピアノ。
 オリジナル曲に加えて、J.S.Bach他のクラシック曲、伝統曲が半分ほど。
 どこまでも沈んでいくような空気感はそのままですが、前作“What was said” (2015)ほど沈痛ではありません。
 また、例の歌謡曲的な強烈な美メロやキッチリした8ビートがひたすら続く感じではありません。
 淡い色合いのメロディと自由度の高いビート感。
 ECMのお約束、ルバートでのスローバラードなども交えつつの浮遊感、淡くて自由な感じ、それをJ.S.Bachなどのクラシック曲でやってみよう・・・ってな感じが新機軸なのかもしれません。
 いつものしんみりとした空気感の中で、意外な方向に漂っていく音の動き。
 あるいは、淡く茫洋とした空気の中から突然現れる、いつもの沈痛なまでも美しいメロディ。
 深刻さはほどほど、とても落ち着いていて優しい音、懐かしい音なので、疲れた日の気持ちの清涼剤としてちょうどいいのかな?
 しんみりとしつつもそのまま心地よく寝れそうですねえ。
 そんなピアノトリオ。




posted by H.A.



【Disc Review】“The Dream Thief” (2018) Shai Maestro

“The Dream Thief” (2018) Shai Maestro

Shai Maestro (paino)
Jorge Roeder (bass) Ofri Nehemya (drums)

The Dream Thief
Shai Maestro Trio
Ecm
2018-09-28


 イスラエルのピアノニストShai MaestroのECMでの初リーダー作。
 抑制された繊細な音。
 冒頭はイスラエルのシンガーソングライターの楽曲のソロ演奏。
 今にも止まりそうなスピードで、揺れながら奏でられる、南米の楽曲のような郷愁感あふれるセンチメンタルなメロディ。
 以降のオリジナル曲、トリオでの演奏になってもその表情は同様。
 クラシックの香りが漂う明るく穏やかなメロディと、静かで複雑なビート。
 三者が織り成す複雑で繊細な優しい音。
 静かに細かく鳴り続けるシンバル、少しタメを効かせて置かれていく丸みを帯びて柔らかなピアノの音、ピッタリ寄り添うベース。
 何かが少しズレると崩れてしまうようなガラス細工のようなアンサンブル。
 が、スイッチが入ると一気に加速し疾走するバンド。
 そんな場面を要所に織り込みながら、淡い色合いの浮遊感の強い演奏が続きます。
 ”夢泥棒”ってなタイトルがピッタリはまる、そんな音。
 明るく優しい、何か少しだけ日常とズレた感じ。
 最後はオバマ前米国大統領の演説のサンプリング?との共演で幕。
 ECM籍第一作は淡い色合いになる、の法則はこの人には当てはまらなかったかな?
 明るくて優しい21世紀型ECMサウンド、とても繊細で少しだけひねった感じのピアノトリオ。




posted by H.A.




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