吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Contemporary_Jazz

【Disc Review】“edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) André Mehmari, Celio Barros

“edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) André Mehmari, Celio Barros
André Mehmari (piano, flute, guitar, synthesizer, Rhodes, bandolim, percussion, etc.) Celio Barros (bass)
Sergio Reze (drums) Luca Raele (clarinete) Renato Martins (percussion)

Andre Mehmari & Celio Barros
Andre Mehmari アンドレメーマリ
Caravelas
2014-06-12


 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmari、若き日の、同じくブラジル人ベーシストの双頭リーダー作。
 当時の作品、アルバムからのオムニバスなのだと思いますが、詳細は分かりません。
 トリオ、Duo、ソロ、ギターやアコーディオンを交えたアンサンブルなどなど、さまざまな編成でのさまざまな演奏。
 穏やかで優し気なメロディと瑞々しく美しい音。
 この人ならではの独特の浮遊感、遠くを見るような郷愁感。
 ”Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno、“nem 1 ai” (2000) Monica Salmasoなどの参加作品を聞くと、初期はジャズっぽい演奏だったのかな?と想像していましたが、そればかりではないようです。
 本作、確かにピアノトリオ、あるいはベースとのDuoで現代的ながらオーソドックスなジャズな演奏も目立ちます。
 が、クラシック風あり、奇数拍子のフォルクローレ風あり、優しく穏やかなポップス風のインスツルメンタル曲あり、現代音楽的なアバンギャルド風味あり、バンドリンなどを交えたブラジリアンエスニックな演奏あり・・・
 ってな感じで、後のAndré Mehmariの音楽がこの時点で揃っています。
 ないのは歌のみ、でしょうか。
 ピアノはこの時点から圧倒的な演奏力。
 時折見せる、欧米の若手代表選手?Leszek_MozdzerTigran_Hamasyanに匹敵するような、指に加速装置が付いているとしか思えないような疾走感。
 欧米の彼らと比べるとトゲや毒気が薄く、身構えて聞かなくてもいいのがこの人の色合い。
 さらに要所でしっかりとタメが効いて、伸び縮みするようなビート。
 本作では一曲一曲が短いこともあってか、全編通じて凄まじい・・・といった感じではありません。
 また、全体で物語を綴るような構成は、まだありません。
 が、只モノではない感、十二分な演奏揃い。
 冒頭のDuo、ルバートでのバラード”Prologo”から、クラシックとジャズとミナスが入り混じるような瑞々しくも美しい音。
 アグレッシブにあちこちに跳びまわるソロピアノで演奏するGismontiナンバー"Loro"なんて最高。
 やはりEgberto Gismonti、あるいはKeith Jarrettからの影響は多大だったのかなあ、と思ったり、思わなかったり。
 ガシガシ弾き倒しているようでフワフワした浮遊感があるのものこの人ならではの色合い。
 ベースのCelio Barrosはおそらくジャズの人なのでしょう。
 しっかりしたグルーヴに硬軟織り交ぜカッコいい音使い。
 全部Duoで作ってしまえば、また違った凄い作品になりそうな予感。(あるのかな?)
 全編通じた浮遊感とセンチメンタルなメロディは、後の大傑作“Lachrimae” (2003)が生まれる予感、十分。
 やはりこの期からタダモノではありません。
 ・・・ってもこれも廃盤なのかな?

※別の時期のトリオから。


 posted by H.A.



【Disc Review】“Find the Way” (2016) Aaron Parks

“Find the Way” (2016) Aaron Parks
Aaron Parks (piano)
Ben Street (bass) Billy Hart (drums)
 
FIND THE WAY
PARKS/STREET/HART
ECM
2017-04-21


 現代アメリカ、コンテンポラリージャズのピアニストの代表選手の一人であろうAaron Parks、ECMでのリーダー作第二弾。
 前のECM作品“Arborescence”(2011)はソロピアノでの静かなインプロビゼーション。
 いかにもECM的ではあるものの、ニューヨーク系コンテンポラリージャズピアノのAaron Parksのイメージからすると、あれれ?な意外な音。
 が、本作、オーソドックスな編成のトリオで、ジャズなAaron Parksが戻ってきました。
 冒頭曲、複雑だけども軽快なビート。
 ブルース色の無い、かといってクラシックっぽくもない、現代的なクールなムード。
 タメと疾走が交錯する浮遊感の強い軽快なピアノ。
 大御所Billy Hartのドラムは、”Invisible Cinema”(2008)のEric Harlandのように今風な軽快さや疾走感はないのかもしれないけども、変幻自在。
 現在の自身のバンドのBen Streetとともに、あの時代の少々重々しく深刻な感じを醸し出しているようにも聞こえます。
 ジワジワと高揚してくるような展開。
 景色が変わっていくように遷移するコードの流れ。 
 テンションを上げつつも激情にはならない、センチメンタルなようで涙ちょちょ切れにはならない、いかにも現代の若者らしいクールな音の流れ。
 Aaron Parksの音です。
 二曲目はボッサなビート。
 同じようにほんの少しだけセンチメンタルで淡いメロディとフワフワしたピアノ。
 そんな演奏が続きます。
 似合っているかどうかはさておき、ECMのお約束、フリーなビート、ルバートでのバラードな場面もあります。
 フワフワとした奇数拍子系の浮遊感の強い演奏が多めでしょうか。
 締めも穏やかなバラード。
 オシャレです。
 ”Invisible Cinema”(2008)のような、浮遊感とともに強烈に突っ走る感じ、斬新さはありません。
 むしろ、オーソドックスな組み立てでよくできたピアノトリオジャズ。
 毒気は無く、安心して聞けるアメリカンな音。
 その意味ではECMな感じではないのでしょうね。
 Aaron Parksの音とECMの音、融合の方法、模索中、ってな感じでしょうか。
 さて次はどんなメンバーを集めて、どんな音を作るのやら?
 この人しかないような相性のMike Morenoとやって欲しいなあ・・・って、ECMかあ・・・?

※少し前ですが、メンバーは同じ。ECMが引き合わせた訳ではないのかな?

【Disc Review】“An Ancient Observer”(2017)Tigran Hamasyan

“An Ancient Observer”(2017)Tigran Hamasyan
Tigran Hamasyan (piano, voice, Synthesizer, Fender Rhodes, Effects)
 
An Ancient Observer
Tigran Hamasyan
Wea
2017-03-31
ティグラン ハマシヤン

 アルメニア出身のスーパーピアニストTigran Hamasyanのソロ作品。
 ECMでの制作“Atmospheres” (Jun.2014)、”Luys i Luso” (Oct.2014)を経て、本作は前のレーベルNonesuch から。
 ECMとの契約は終わったのか、Nonesuchとの残契約の消化なのか、そのあたりの事情はわかりません。
 どのタイミングの録音なのかも現時点では不明です。
 いずれにしても上掲のECM作品とは全く質感は異なります。
 Nonesuch での前作、プログレッシブロックなジャズ“Mockroot” (2014)とも違うし、同じくソロ作品の“A Fable” (2010)に近いといえばそうですが、さらにジャズっぽさは薄く、それにクラシック色、 ECM二作の教会音楽?色が強く混ざったような不思議な色合い。
 メロディアスな要素が薄まって、自在にインプロビゼーションを展開しているようにも聞こえるし、事前にキッチリ組み立てているようにも思えるし。
 ピアノのソロ演奏に加えて、要所でいつもの幻想的なボイスが加わり、パーカッションその他が彩をつけていく構成。
 “A Fable” (2010)に比べると、妖しい感はそのままに現代的なビート感が薄まり、さらに不思議感が強くなっています。
 冒頭はクラシックか民族音楽のような空気感の静かな演奏。
 続く強いビートの演奏は、何拍子かわからないブレークと切り返しが意外なところに入る、いかにもTigranな変拍子ロックと幻想的なボイスの絡み合い。
 それらが交錯するような構成。
 ジャズ的なビートはあまり出てきません。
 “Liberetto” (2012) Lars Danielssonなどのジャズ諸作のように、わかりやすいコードの流れ、強烈なグルーヴに乗って弾き倒して欲しいと思うのは、古いジャズファンの古い志向なのでしょう。
 そんな世俗な気持ちを突き放したような独自の世界観。
 ジャズなんて中途半端に古くて俗な世界ではなく、もっと古(いにしえ)の空気感。
 アメリカや西欧の馴染みやすい場所ではなくて、おそらく東欧~中東であろう、よくはわからない場所の香り。
 この人の音は、ハードで大音量にしても、静かな音にしても、どこか遠い所に連れて行ってくれるようなトリップミュージック。
 タイトルにピッタリくる音といえばその通り。
 ヨーロッパ、中近東、アジアの狭間、アルメニアの空気感、ジャズ、ロック、クラシックを超越したノンジャンルなアート、Tigran Hamasyanの世界・・・ですかね。


 

 posted by H.A.

【Disc Review】“Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer & Friends

“Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer & Friends
Leszek Możdżer (piano)
Lars Danielsson (bass & cello) Zohar Fresco (percussion)
Atom String Quartet :
Dawid Lubowicz (violin) Mateusz Smoczyński (violin) Michał Zaborski (viola) Krzysztof Lenczowski (cello)
 
レシェック モジジェル

 ヨーロッパのスーパーピアノトリオ、ストリングスをゲストに迎えたライブアルバム。
 “The Time”(2005)、“Between Us & The Light”(2006)、“Polska” (2013)といった一連のトリオ作品の延長線、楽曲もその他の作品からチョイスが中心。
 が、ライブという事もあるのでしょう、それらの淡い色合いと比べると、強烈なインプロビゼーションが前面に出る場面が多いと思います。
 やっと弾いてくれたか、と思う一方、Zohar Frescoのボイスが出る場面はなく、彼が主導していたと思われるエスニックで幻想的な空気感は抑え気味。 
 Leszek Możdżerの楽曲、クラシック色の強い演奏が多く、クレジット通り、トリオというよりも彼の色合いが最も強い作品。
 クラッシック~現代音楽?ベースのとんがった激しいピアノソロから始まり、Lars Danielssonの哀愁曲、ストリングスを交えた優し気で妖し気な演奏、などなど、Leszek MożdżerLars Danielssonのショーケースのような演奏が並びます。
 とてつもなく透明度が高く美しいピアノのピキピキパキパキした音と、間々に挟まれるLars Danielssonの郷愁感、哀愁感の塊のようなメロディ。
 コンサートのメインはストリングスを交えた優雅ながらテンションが高い演奏なのかもしれませんが、ついついそちらに耳が行ってしまいます。
 Lars Danielsson曲で取り上げられているのは、何処かのアルバムに入っていたいずれも大名曲の”Praying”、”Africa”、”Eden”。
 美しいメロディとコードを背景にして突っ走り飛び回るピアノ。
 氷のように鋭く冷たく、この世のものとは思えないような美しい音、指に加速装置がついているとしか思えないような疾走感を含めて、人間業とは思えない演奏。 
 そのぶっ飛んだピアノと、ベタベタなメロディ、上品なグルーヴの対比がこのバンド、数多くの作品を制作しているこのコンビのカッコよさなのでしょう。
 美しくて上品、かつ、とんがった妖しい音、さらにセンチメンタル。
 “Liberetto” (2012)などのTigran HamasyanLars Danielssonのコンピネーションも素晴らしいのですが、Leszek Możdżerとの組み合わせの方が繊細な感じがする分、私的には好み。
 Leszek Możdżer、あるいはこのトリオ、このアルバムあたりを集大成として、そろそろ次に行こうとしているのかもしれませんが・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“The Dreamer Is The Dream” (2016) Chris Potter

“The Dreamer Is The Dream” (2016) Chris Potter
Chris Potter (tenor, soprano saxophones, bass clarinet, clarinet, ilimba, flute, samples)
David Virelles (piano, celeste) Joe Martin (double-bass) Marcus Gilmore (drums)

DREAMER IS THE DREAM
POTTER/VIRELLES/MART
ECM
2017-04-21


 すっかりECMの看板アーティストになったChris Potterのジャズカルテット作品。
 現在のジャズのサックス奏者では、Mark Turnerとこの人が第一人者なのでしょうか?
 どちらも今はECM所属なのも不思議な感じ。
 ECMのサックスといえば、Jan Garbarekを想い起こしますが、艶やかで張り詰めたような音は近いのかもしれませんが、初期のJan Garbarekの発していいた狂気のようなモノや、ドロドロとした空気感はなく、もっとスムースで、あっけらかんと明るい感じ。
 もちろん氷のような冷たさや吹きすさぶ寒風もなく、むしろ暖か。
 前々作“Sirens”(2012)、ストリングス入りの前作“Imaginary Cities” (2014)、と少しずつメンバーを変えてきていますが、ニューヨークコンテンポラリージャズのファーストコールの面々であることは変わりません。
 キューバ出身のピアニストは今やECMアーティストの人。
 ギターのAdam Rogersがいなくなったのが残念ですが、そんなメンツで本作も前々作“Sirens”(2012)と同様、ECMらしからぬニューヨークコンテンポラリージャズな音。
 バラード集といった感じではないのですが、各曲ともに静かに始まり、徐々にテンションを上げていく構成。
 冒頭もバラードから。
 ってもECM的な妖し気なバラードではなく、剛球一直線なアメリカンなバラード。
 途中でリズムを落として、ソロピアノでの静かな場面もあり、やっとECMか・・・?と思うのはわずかな時間、音圧の高いテナーが戻ってくるとその色合いはなくなります。
 カリンバっぽいエスニックなムードで始まる二曲目は、これはECM的エスニックにもっていこうとしているのかも・・・と思うのはわずかな時間、ビートが入るとエスニック系ではあるものの、ラテンなビートとメカニカル系のメロディが交錯する明るいコンテンポラリージャズ。
 さらに、三曲目の”The Dreamer Is the Dream”はECMの真骨頂、ルバートでのスローバラード。
 さすがにEicherさんのご指導が入ったのか・・・どうかはわかりませんが、伸び縮みするビート、フリーなドラムと漂うピアノ、ベースがいかにもそれっぽい感じ。
 Chris Potterもスタートはバスクラリネットを使って妖しいムードを醸し出しています。
 が、音楽が進み、テンションが上がると、高音圧でスムースな剛球テナーサックスが登場し、とてもドラマチックではあるものの、妖しさ、ECM色は薄らいでいきます。
 フワフワではなく、ドロドロ、ベトベトでもなく、キリッとした、あるいはカラッとした色合い。
 フリーっぽくなる場面もいくらかあるのですが、音楽が進んでいくと、またまた、アメリカンコンテポラリージャズ、カラッとした系。
 その他、電子音を使った妖し気な展開から始まってみたり、牧歌的な雰囲気をソプラノサックスが綴ってみたり。
 いろいろECMっぽいこと?にチャレンジしているのかな・・・?と思えること多々。
 が、なんだかんだで、最後はいかにもこの人、メカニカルな現代的ファンクジャズ。
 全編吹きまくり、各曲とも10分近い長尺な演奏、全6曲。
 これでもかこれでもかと押し込んでくるサックス。
 ま、それがこの人の色合い、ECMながら、これまたいかにもChris Potterな一作。




posted by H.A.
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