吉祥寺JazzSyndicate

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Classic

【Disc Review】“Algo Asi” (2011) Mario Yaniquini

“Algo Asi” (2011) Mario Yaniquini 

Mario Yaniquini (guitar)

Algo Asi [CD] Mario Yaniquini 2012-01-29

 アルゼンチンのギタリストMario Yaniquiniのソロギター作品。
 クラシックの人なのだと思います。
 Carlos Aguirreを数曲、同じくアルゼンチンのMarcelo Coronel、Carlos Moscardiniの楽曲を取り上げた演奏集。
 Shagrada Medraからではありませんが、同レーベルの“Sones Meridionales” (2009,2010) Pablo Ascuaと同様に、南米の香りが漂うクラシックギター。
 もちろん楽曲が現代のフォルクローレ、ポップス、タンゴ系なので、南米的なのでしょうが、ギターの音も柔らか。
 あのCarlos Aguirreの感傷的なメロディが、柔らかな音のガットギターで淡々と奏でられていく・・・
 それだけ。
 他の作曲家の楽曲も同様に、郷愁感が漂う優しいメロディ。
 流れていると部屋の湿度が下がり、空気が浄化されていく・・・系の音。
 心地よさ最高。




posted by H.A.


【Disc Review】“Sones Meridionales” (2009,2010) Pablo Ascua

“Sones Meridionales” (2009,2010) Pablo Ascua


Pablo Ascua (guitar)



 アルゼンチンのギタリストPablo Ascuaのソロギター作品。

 Carlos AguirreのレーベルShagrada Medraから。

 おそらくはクラシック畑の人なのでしょう。
 ジャズはもちろん、フォルクローレともスパニッシュとも違う、ガットギターの端正な音の流れ。
 5編17曲、メキシコ、ブラジル、キューバ、パラグアイ、アルゼンチンの音楽家の楽曲を爪弾いていきます。
 クラシックには疎いのですが、柔らかでラテン風味なのはスペイン語圏~南米の音楽家のメロディだからなのでしょうね。
 ギターもとても柔らか。
 哀楽が交錯するメキシコ、センチメンタルなブラジル、堂々としたキューバに、素朴なパラグアイ、情熱のアルゼンチン。 
 ま、単に聞いている側の先入観なのかもしれませんが、ある意味、ラテン圏のお手軽なトリップ。
 Ralph Towner、スペイン系、ブラジル系、アルゼンチン系などなど、ガットギターのソロ作品はたくさんあるのですが、クラシック作品は今のところこれだけ。
 その意味でも貴重な?アルバム・・・ってこともないのですが、結構気に入ってます。

 これが流れていると、違う家にいるみたいだもんね。




posted by H.A.


【Disc Review】“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti

“Saudações” (2006,2007) Egberto Gismonti
Alexandre Gismonti, Egberto Gismonti (Guitar)
Camerata Romeu, Zenaida Romeu (Conductor, Strings Orchestra)

Saudacoes
Egberto Gismonti
ECM
2009-10-20


 Egberto Gismontiの2017年時点での最新作。
 ストリングスオーケストラ作品と、ギターのDuoの二編成。
 この前の作品はオーケストラの“Meeting Point” (1995)。

 ストリングスオーケストラの作品は、クラシック音楽の色合い。
 メカニカルにアップダウンするアグレッシブでハイテンションな表情が中心ですが、優し気なコンボ作品“Sanfona” (Nov.1980,Apl.1981)、“Em Família” (1981)あたりを想い出す場面もたくさん。
 さらに、合間々にコミカルな表情も見え隠れする構成。
 前作と同様に、Egberto Gismontiミュージックの集大成、オーケストラバージョンといえるのかもしれません。
 いろんなところに過去の楽曲の断片も出てくるのも面白いところ。
 前作“Meeting Point” (Jun.1995)と比べると優し気で柔らかな空気感なのは、ホーンがいないせいかな?と思って、クレジットを見るとオーケストラは全員女性のようで、妙に納得。
 優し気なGismontiミュージック、ストリングス版。

 ギターのDuoは想像通りのGismontiミュージック、ギター編。
 どちらが父でどちらが息子なのかの判別はつきません。
 娘Bianca Gismontiと同様、天賦の才能とともに英才教育を受けてきたのでしょう。
 過去の名曲を含めて、ハイテンション系の演奏が並びます。
 が、1970年代ECM、“Sol Do Meio Dia” (Nov.1977)のRalph TownerとのDuoのように超ハイテンションな感じでは無くて、まずまず穏やかな音の流れ。
 もちろんボッサやジャズではなく、あくまでGismontiミュージック。
 本作に収められたソロでの演奏を聞く限り、息子さんの方はスパニッシュ系が得意なのでしょうかね?
 少し後の初リーダー作”Baiao de Domingo” (2009)はオーソドックスなブラジリアンジャズっぽい感じでしたが、さてこの後、父上のように求道的にいくか?、Bianca Gismontiのようにポップ系にいくか?
 本作がその予告編になるか・・・な?

 明るいようで陰影の強い、とても素敵なジャケットのポートレートは、とびきりの美しさ、含蓄の深さ。
 明るいようで陰影があって、大人なようで童心なようで、妖しいようで優しくて、あるいは優しいようで妖しくて・・・
 Egberto Gismontiミュージックそのものの構図。
 その後、十年の歳月が経ちますが、新作がそろそろ出ませんかね・・・?





 初期の作品はボサノバ、ロックの色も強いちょっと変わったMPB。
 そこから激しい系のロックな色合いが強くなって、“Academia de Danças” (1974)、“Corações Futuristas” (1976)などはとんでもなく凄い作品。
 そこからECMで制作を開始して、それらはまずまず落ち着いた印象。
 っても十二分にハイテンションで激しいのですが。
 その後のECM以外の作品は電子音が強くなって・・・、また気が向けば。
 私的な好みは柔らかなジャズの色が強い“Sanfona”(Nov.1980,Apl.1981)、(1981) “Em Família” ですねえ。
 凄いのは上記二作だと思うけど。

(1969) “Egberto Gismonti” 
(1970) “Sonho '70” 
(1970) “Orfeo Novo” 
(1972) “Agua e Vinho” 
(1973) “Egberto Gismonti” 
(1974) “Academia de Danças” 
(1976) “Corações Futuristas” 
(1977) “Carmo” 
(Nov.1976) “Dança Das Cabeças” with Nana Vasconcelos
(1978) “No Caipira” 
(Nov.1977) “Sol Do Meio Dia” 
(1978) “Solo” Solo 
(Mar.1979) “Saudades” Naná Vasconcelos
(Jun.1979) ”Magico” Magico
(Nov.1979) “Folk Songs” Magico
(1980) “Circense
(Nov.1980,Apl.1981) “Sanfona
(1981) “Em Família” 
(Apl.1981) “Magico:Carta de Amor” Magico
(1982) “Fantasia”
(1982) “Sonhos de Castro Alves”
(1983) “Cidade Coração”
(1984) “Duas Vozes” with Nana Vasconcelos
(1985) “Trem Caipira” 
(1986) “Alma” Piano Solo(+α)

(1986) “Feixe De Luz"

(1988) “Dança Dos Escravos” Guitar Solo
(1989) “Kuarup”
(1989) “In Montreal” with Charlie Haden
(1990) “Infância” 

(1991) “Amazônia”

(1992) “Casa Das Andorinhas”

(Apl.1995) “ZigZag” 
(Jun.1995) “Meeting Point” with Orchestra
(2006, 2007) “Saudações” with Orchestra


posted by H.A.


【Disc Review】“Meeting Point” (Jun.1995) Egberto Gismonti

“Meeting Point” (Jun.1995) Egberto Gismonti
Egberto Gismonti (Piano, Composer)
Lithuanian Symphony Orchestra Vilnius

Meeting Point
Egberto Gismonti
Ecm Import
2000-08-01


 Egberto Gismontiのオーケストラ作品。
 ジャズでもブラジル音楽でもなく、シンフォニーオーケストラによるクラシック。
 Egberto Gismonti本人は、ピアノで数曲前面に出る場面もありますが、基本的にはコンポーザー、アレンジャー。
 この前の作品“Infância” (1990), “Música de Sobrevivência” (1993), “ZigZag” (Apl.1995)が、少人数での疑似オーケストラ的な音作りでしたので、作りたい音はこの種の音楽になっていたのでしょう。
 時期からすれば、そのシリーズの集大成的な位置付けだったのかもしれません。
 Oden/EMIレーベルの作品ではストリングス、オーケストラ入りはたくさんあったし、ECMでも“Saudades” (Mar.1979) Naná Vasconcelosといった作品があります。
 もともとやりたかったのがこれかもしれませんし、何年も前から頭の中で鳴っていた音を整理し、ようやく実現出来た、といったことなのかもしれません。
 オーケストラでのクラシックではありますが、音楽自体はハイテンション系中心のGismontiミュージック。
 ピアノがリードする定番の名曲“Frevo”も、激しいストリングスを加えた、ハイテンションさでは一二を争いそうな演奏。
 ジェットコースターのようなスリリングな音の動き。
 勇壮で変幻自在。
 激しくアップダウンを繰り返しながら、目まぐるしく変わっていく景色。
 おもちゃ箱をひっくり返してかき回していくような、カオスなような、童心に帰ったような、あるいは、それを計算尽くでやっているような、なんとも複雑で不思議な感じの音の洪水。
 ときおり現れる優しい表情、おどけたような表情もGismontiミュージックそのものでしょう。
 っても、電子音やロックなビートやプログレッシブロックな激しいリフが無い分、“No Caipira” (1978)のバージョンや、Odeon/EMI諸作よりも随分上品でクールな印象がECM的であり現代的。
 次作は時間をかなり空けて、オーケストラ作品とご子息とのギターDuo演奏の“Saudações” (2006,2007)。
 またコンボ、あるいは少人数での作品、あるいは優しいサイドの作品を聞きたいところではあるのですが、また機が熟するまで・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari

“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari
Andre Mehmari (piano)
Neymar Dias (bass) Sérgio Reze (drums)

Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul
Andre Mehmari アンドレメーマリ
Estudio Monteverdi
2014-10-05


 Andre Mehmari、ブラジルのピアニスト、作曲家Ernesto Júlio Nazarethの作品集。 
 ソロピアノ(+α)。
 Ernesto Júlio NazarethはブラジルのChopin、あるいはブラジルのScott Joplinと呼ばれている人のようです。
 もちろんクラシック中心の作品。
 クラシックについては全く疎いので、その観点での善し悪し、その他諸々は分かりません。
 が、とても優雅でジャズの耳にとっても素敵な音楽。
 微妙なタメと強烈な疾走が交錯する音の流れ。
 全くのクラシック作品ですがAndre Mehmariの音楽だなあ・・・と思います。
 もちろん彼のルーツの大きな部分がErnesto Nazarethなのでしょう。
 初期の作品からクラシックの色合いは強いのですが、近年はそれが強くなっているようにも感じます。
 バラード的なスローテンポな曲もちろん、Scott Joplinよろしくラグタイムっぽかったり、コミカルだったり、決して高尚な感じでだけでもなく、ノスタルジックな香りをふりまきつつ進む音楽。
 ・・・と思っていたら、終盤に乱入するドラム、ベース、エレピのアバンギャルド一歩手前~ジャズピアノトリオな演奏。
 とても素敵です。
 こんな音が低く流れているカフェがあれば最高です。
 さて、私もいつかクラシックを好んで聞く日が来るのでしょうか・・・?
 さて・・・?


※ライブ映像から。


posted by H.A.


【Disc Review】“Nuit Blanche” (2016) Tarkovsky Quartet

“Nuit Blanche” (2016) Tarkovsky Quartet
François Couturier (Piano)
Jean-Louis Matinier (Accordion) Anja Lechner (Cello) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)

Nuit Blanche
Tarkovsky Quartet
Ecm Records
2017-02-17

 
 フランスのピアニストFrançois Couturier率いるカルテットのECM第三作。
 “Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)と時間を空けて制作を続けています。
 基本的な質感は変わりません。
 クールな音の流れ、強いクラシック色、静謐で上品、全編ゆったりとしたテンポの寂寥感の強いメロディ。
 悲し気で深刻なようで、なぜか穏やかな音。
 作品が新しくなるにつれ、尖っていた部分が丸く穏やかになっているようにも感じます。
 Andrei Tarkovskyへのオマージュのコンセプトは変わっていないのだと思いますが、“Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)の氷、あるいはカミソリのような冷たく鋭い質感は薄くなり、本作は牧歌的な空気すら感じる穏やかさ。
 “Tarkovsky Quartet” (2011)のようにメロディアスな演奏も多いのですが、淡い色合いで牧歌的。
 この人独特の不安感を煽るような音の流れ、沈痛さ、暗さが薄らぎ、非日常感もほどほど。
 ある意味、現実の世界に戻って来た音のように感じます。 
 さらにサックス、アコーディオンがフィーチャーされる場面が増え、ECMで制作を始める前、“Music for a While” (2001,2002)あたりのバランスが戻ってきた感じ、スケールアウトを多用していたピアノもオーソドックスな動きに納まってきた感じも、大きな変化なのかもしれません。
 奏でられるのは穏やかなメロディ、オーソドックスな音の流れのピアノと4者対等なアンサンブル。
 ピアノが前面に出るここまでのECM諸作とは少々面持ちが異なります。
 それも冷たさ、鋭さが抑えられ、マイルドになったと感じる理由かもしれません。 
 全17曲、半数程度を占める1~2分の短いインタルードのような曲、あるいはインプロビゼーションが散りばめられており、何かしらの物語があるのだろうと思います。
 タイトルは「眠れない夜」の意?
 決して深刻な感じではなく、気持ちは穏やかながら、なんとなくモヤモヤっとした空気感の夜であれば、ピッタリな音。
 なんだかんだで夢と現の狭間の非現実感。
 少し覚醒に比重が寄った感じ、・・・かもしれません。

 


posted by H.A.

【Disc Review】“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier

“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier
Anja Lechner (cello) Fracois Couturier (piano)
 


 ドイツのチェリストAnja Lechner、フランスのピアニストFrançois CouturierのDuo作品、本作はクラシック寄りのECM New Seriesレーベルから。
 お二人は“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)などで共演済。
 二人とも他のアーティストとの共演も多く、現代のECMのクラシック寄りの作品には御用達の人。
 この二人で、トルコのKomitas、アルメニアGurdjieff、スペイン?のMompouといった、思想家&音楽家?の楽曲を演奏したアルバム。
 企画から予想されるそのままの敬虔な音、静謐な空間に響くチェロとピアノの絡み合い。
 同じような企画、編成では“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos、あるいはチェロとピアノのDuoでは“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad, David Darlingなど、定番企画のひとつ。
 近い感じではあるのですが、わかりやすい楽曲、演奏が揃っています。
 Gurdjieff3曲、Komitas1曲、Mompou3曲にFracois Couturier3曲。
 どれもゆったりとしたテンポ、悲し気なメロディですが、“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)と比べると、重々しさ深刻さが薄く、軽快なイメージ。
 楽曲の影響が大きいのでしょう。
 さらに、同じくクラシック色が強いヨーロピアンジャズピアニストでも、タメとグルーヴが効き、感情的なモノも前に出るVassilis Tsabropoulosに対して、あくまでクールで淡々としたFracois Couturierといった違いでしょうか。
 Gurdjieff、Komitasの楽曲は厳かな表情。
 対してMompouの楽曲は古典ながらなぜか現代のポピュラーミュージック的な印象。
 Keith Jarrettのソロピアノで出てきそう場面もちらほら。
 たっぷりとリバーブが効いた美しい音、少し線が細めな感じがクールなピアノが映える楽曲が並びます。
 無音、空白の空間の中、あるいは静かにチェロが鳴る空間の中、ピアノの高音が心地よく響きます。
 あるいは、わかりやすいメロディ、コードを背景にすると、頻繁にスケールアウトするフレーズの美しさが際立ちます。
 Anja Lechnerのチェロはいつもながらに表情豊か。
 前後上下左右、強弱長短、自在に伸び縮みする音と優しげな表情。
 Fracois Couturierの沈痛なメロディに乗った“Voyage"などは、今にも泣きだしそうな悲し気な音、昂ぶる感情が乗ったような素晴らしい演奏。
 などなど含めて、アルバムとしての統一感を保ちながらもさまざまな表情の楽曲。
 クラシックと静かなフリージャズな空気感が交錯する、かつ、わかりやすい、素晴らしい演奏が続きます。
 クラシカルで精神的で宗教的で・・・だけではない、ジャズの耳で聞いてもとても心地よく聞ける音。
 Anja Lechner、あるいはFracois Couturierの作品を聞くならば、意外にこのアルバムからがわかりやすくていいのかもしれません。
 俗な私が知る限り・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Music for a While” (2001,2002) François Couturier, Jean-Louis Matinier, Jean-Marc Larché

“Music for a While” (2001,2002) François Couturier, Jean-Louis Matinier, Jean-Marc Larché
François Couturier (Piano) Jean-Louis Matinier (Accordion) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)
 
Music for a While
Francois Couturier & Matinier
Emouvance
2008-04-01


 フランスのピアニストFrançois Couturier、ECMで“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)を制作したTarkovsky Quartetから、チェリストが抜けたトリオ編成での作品。
 名前からして全員フランス人、レーベルもフランスから。
 ECMではクラシック色が強い色合い、徹底してロシアの映画監督Andrei Tarkovskyへのオマージュですが、その前はどうだったのか気になるところ。
 クラシック成分はほどほど、不思議感120%のフリージャズ。
 冒頭曲”Ouverture: Mozart au paradis”(楽園のモーツアルト?)からいきなり美しい高音のピアノの不思議な音階。
 妖し気な空気感の中、不思議な三者の絡み合い。
 ECM作品ではあまり前に出ないサックスを含めて、ECMではパイプオルガンのように聞こえたアコーディオンもここではやんちゃ系、ピアノも美しさはそのまま、音が強い感じ。
 ビートが定まった時間は長いのですが、連続する不協和音、聞き慣れないコードの流れの中、不安感を煽るような三者のインプロビゼーションが続きます。
 ソプラノサックスが牧歌的に響く場面があったり、おどけた表情の演奏があったりもしますが、全編を通じて不思議、不安感は消えません。
 それでも暗かったり絶望的だったりはしないのは、フレンチバンドゆえの色合いでしょうか?
 激烈に叫んだりする場面もほとんどありません。
 また、最後に冒頭曲をリフレインしたバラード演奏、その名も”Epilogue:Requiem”が収められています。
 ピキピキパキパキした美しいピアノの音、François Couturierのカッコよさが凝縮されたような演奏。
 ってな感じで、入口と出口は明確ですが、間は迷宮の連続。
 少々手ごわい、非日常的迷宮型フリージャズ、静謐版。
 この後、チェリストAnja Lechnerを加えECMでの制作を開始、これまた不思議感120%、とても静かな“Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)へと続きます。
 個々のアーティストの演奏自体はあまり変わらないのかもしれませんが、アルバムのイメージは全く異なります。
 ECMマジックはこの期も健在のようですね。




posted by H.A.


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