吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Chick_Corea

【Disc Review】“Light as a Feather” (Oct.1972) Chick Corea and Return to Forever

“Light as a Feather” (Oct.1972) Chick Corea and Return to Forever
Chick Corea (electric piano)
Stanley Clarke (double bass) Airto Moreira (drums)
Joe Farrell (tenor saxophone, flute) Flora Purim (vocals, percussion)
 
Light As a Feather
Chick Corea
Polygram Records
チック・コリア
 


 Return to Forever、ECMからPolydorに移籍しての第二作。
 移籍の経緯はわかりませんが、Chick Corea としては”Crystal Silence” (Nov.1972) Chick Corea, Gary Burtonなど、ECMとの関係は続きます。
 なにはともあれ、本作も大傑作。
 前作“Return to Forever” (Feb.1972)と同様のテイストですが、妖しさが薄らぎ、Flora Purimの歌が前面に出る場面が増え、ポップなテイストが強くなっているかもしれません。
 親しみやすいメロディアスな楽曲揃いの全六曲。
 私的にはこちらのアルバムの方が好みで、聞く機会も多かったように思いますが、どちらもCDで入手したこともあり、どちらの前半が取っ付きやすいのか、だけの違いのようにも思います。
 “Return to Forever” (Feb.1972)のB面はとてつもなく素晴らしいのですが、前の曲をスキップするのが面倒で・・・いや、前半、A面もいわずもがなの名演なのでスキップしなければいいのですが・・・
 本作は冒頭からボーカルがフィーチャーされる、穏やかなキャッチーなメロディの名曲二連発。
 優しくて穏やかで、微かにスペイン、ブラジルあたりの香りがする音の流れ。
 Flora Purimの不思議感のあるボーカルには好みがわかれるのかもしれませんが、この淡いムードには合っているかなと私は思います。
 さらにタイトル曲には強烈な4ビートでのインプロビゼーション。
 その後もカバーも多い名曲がずらりと並びます。
 最後の”Spain”は今やあまりにもカバーされすぎていて、ごちそうさまですが、このオリジナルバージョンを超える演奏は、アルバムでもライブでも聞いたことはないと思います。
 そんな名曲群をベースに、強烈なグルーヴと清廉なバラード、全体を包み込むようなエレピの美しい響き。
 ポップにすぎず、マニアックになりすぎず、ゆるすぎず、ハードになりすぎず、最高のバランス。
 直後の“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973) 、あるいは近いメンバーの“Butterfly Dreams” (Dec.1973) Flora Purimと比べても、本作が一番古くなっていないように感じます。
 本作でもバンドを牽引するのはStanley Clarkeのベース。
 静かに寄り添うドラムと全体を包み込むエレピ、それらを背景に突っ走るJoe Farrell。
 やはりこの4人、あるいはこのピアノトリオでしか出せない独特の上品なグルーヴがあるように思います。
 “Return to Forever” (Feb.1972)よりもベースの音量は抑え目、エレピが大き目で、これが普通のバランスかもしれません。
 レーベルがECMではないことに起因しそうですが、善し悪しはお好みでしょう。
 次作はStanley Clarke のみを残してハードフュージョンな“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973)。
 実はこの先をきちんと聞いたことがなかったりするのですが・・・
 私的な興味関心は“Butterfly Dreams" (Dec.1973) Flora Purimへ移ります。

 
 

posted by H.A.  

【Disc Review】“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Corea

“Return to Forever” (Feb.1972) Chick Corea
Chick Corea (electric piano, Fender Rhodes)
Stanley Clarke (acoustic, electric bass) Airto Moreira (drums, percussion)
Joe Farrell (soprano saxophone, flute) Flora Purim (vocals, percussion)

Return to Forever
Chick Corea
Ecm Records
チック・コリア


 Chick Coreaの言わずと知れた大ヒット作にて大名作。
 MilesバンドからAirto Moreiraを引き連れ、その他気鋭のメンバーで作った清廉なジャズフュージョンミュージック。
 スパニッシュテイスト、ブラジルテイストが隠し味。
 Milesバンドにいたのは”The Isle of Wight Festival (Bitches Brew Live)”(Aug.29,1970)までだったのでしょう?
 この作品の後の“On The Corner” (Jun.1972) Miles Davisには参加、セッションも断続的にはあったのでしょうが、いずれにしてもMilesの下を離れ、ECMでの"A.R.C." (Jan.1971)、"Piano Improvisations vol.1.,2." (Apl.1971)など、諸作の後の制作。
 Milesのバンド、リーダー作では激烈な演奏が目立ち、近作の"Piano Improvisations vol.1.,2."も半分はメロディアスですが、半分はフリー。
 本作でようやく1960年代激烈フリージャズから脱したようです。
 強烈なグルーヴ、推進力はありますが、混沌、抽象にはならず、メロディアスな楽曲、美しいエレクトリックピアノに徹しています。
 Airto MoreiraもちょうどMilesバンドでのセッション、ライブ、”Weather Report” (Feb-Mar.1971)のセッションが終了したところ。
 パーカッションではなく、うるさくないカッコいいドラマーぶりです。

 冒頭からちょっと怖い感じのメロディに、妖しいスキャット、美しさと妖しさが混ざり合う幻想的な音。
 ビートが入ると一気にグルーヴ全開。
 ベースの音量が高めにミキシングされている感じで、全体のサウンドを牽引するのはベース。
 それに追随するようにも聞こえるドラムとエレピ。
 疾走するフルート、クライマックスでの叫び声・・・
 全編通じてChick Coreaのエレピはむしろ抑えめで、全体のサウンド作りに徹しているような印象もあります。
 ど真ん中を突っ走るようなベースとそれを含めて空間全体を包み込むようなエレピの残響音。
 アコースティックピアノでは全く違ったものになったのでしょう。
 さらには幻想的なバラードから、熱を冷まし現実に引き戻すような少々ポップで前向きなメロディ。
 LPレコードA面は、少々アバンギャルドなムードもありますが、あくまで清廉な空気感。
 Return to Foreverの名前にふさわしい、美しい迷宮のような不思議な音。

 LPレコードB面は長尺な一曲”Sometime Ago/La Fiesta”。
 当時のジャズ喫茶での人気はこちらだったのでしょうかね?
 静かなフリービートでのインタープレーが続くこと数分。
 ビートが定まり唐突に始まるFlora Purimの歌にはみんなドキッとしたんでしょうねえ。
 長尺なインプロビゼーションの中に置かれた歌が最高のアクセント。
 ビートが落ちて、エレピのソロを経て、さらにビートが上がって”La Fiesta”開始。
 この立ち上がる瞬間のカッコいいこと。
 さらにそこから最後まで徐々にテンションを上げながらの興奮と陶酔。
 これまたそれを牽引するのはベース。
 ぐんぐん前に進むベースと、決してうるさくはならないヒタヒタと迫るドラム、
 強烈に疾走するバンド、空間全体を包み込むようなエレピ。
 決してドカーンと来るわけではないし、大きな音を出すわけでなないのだけども、心ならずも引き込まれる自然な陶酔感。
 ラテンテイスト、スパニッシュテイストのなせる業なのでしょうかね?
 アバンギャルドなようで激しいようで、実際は上品で前向き、おまけにメロディアスな名曲揃いでわかりやすい。
 いやはやなんとも素晴らしい演奏です。

 なお、同じくMilesの門下生Herbie Hancockは、“Sextant” (1972)あたり、”Head Hunters” (Sep.1973)までもう少し。
 直近までMilesに帯同していたKeith Jarrett は“Facing You” (Nov.1971)、“Expectations” (Apl.1972)あたり。
 Weather Reportはセカンドアルバム”I Sing the Body Electric” (1971,1972)を制作中。
 Mahavishnu Orchestra はデビュー作"The Inner Mounting Flame" (1971)をリリースしたあたり。
 ズラリ揃った稀代のスタイリストたち、そろって助走から離陸中。
 この期ではWeather Report、Chic Coreaが一歩リードといったところでしょうか。
 メロディアスで親しみやすい曲作りといった観点では、Chic Coreaが何歩もリード。
 Milesのバンドに欠けていたのもがあるとすれば、それだったようにも思います。
 それが硬派でカッコいいんでしょ、と言われればその通りなのですが・・・

 さて、ECMでエレクリックピアノがここまでフィーチャーされた作品は他にあったでしょうか?
 “Trance” (1974) Steve Kuhn、“Lookout Farm” (Oct.1973)、“Drum Ode” (May.1974) Dave LiebmanのRichie Beirachぐらい?
 “Azimuth” (Mar.1977)はシンセサイザー、かオルガンですね。1980年代以降、現在でも少数・・・?
 んー?思い出せない・・・
 Manfred Eicherさんはエレピが嫌いなんでしょうかね・・・と勝手に思っています。
 だから第二作“Light as a Feather” (Oct.1972)は別レーベルになったのかも、と思ったり・・・


 

posted by H.A.  

【Disc Review】“Piano Improvisations Vol.1,2” (Apl.1971) Chick Corea

“Piano Improvisations Vol.1,2” (Apl.1971) Chick Corea
Chick Corea (Piano)

Piano Improvisations 1
Chick Corea
Ecm Records


チック・コリア・ソロ Vol.2
チック・コリア
ユニバーサル ミュージック



 
 Chick Corea、ECMでのピアノソロ。
 “A.R.C.” (Jan.1971)、“Paris Concert” (Feb.1971) Circleはフリージャズの色合いの作品でしたが、こちらはメロディアス路線とフリージャズが入り混じる構成。
 それら前作までと“Return to Forever” (Feb.1972)を繋ぐ架け橋、過渡的作品とも言えるのかもしれません。
 本人の意図なのか、Manfred Eicherからの要望だったのかはわかりませんが、クラシック色もある端正なピアノが中心。
 この時期もMiles Davisとの共演を続けるKeith Jarrett の"Facing You" (Nov.1971)の半年前。
 そちらよりは、楽曲を丁寧にビートをキープしながら演奏するか、フリーに走るか、楽曲ごとにどちらかに振れるイメージ。
 Vol.1は全曲オリジナル、瑞々しく穏やかなピアノが中心。
 穏やかな質感、美しいメロディ、淡いメロディ、クラシック寄りのメロディもありますが、抽象的な楽曲は少々のみ。
 遊び心はちりばめられているのかもしれませんが、美しいピアノの音、余白の静寂、静謐で端正に響きます。
 Vol.2はカバーを交えながら、激しいフリーの演奏が多め。
 静かにメロディアスに始まりますが、少々過ぎるとフリージャズ全開。
 これにドラムとベースが入るとあの激烈フリージャズになるのかな?といった演奏も多々。
 1960年代の激烈フリージャズからはまだ脱していないようです。
 それでも、メロディアスな演奏はもちろん、激しい演奏も美しいピアノの音なのはECMならでは。
 後のKeith Jarrettもフリーのピアノソロインプロビゼーションを始めますが、その先駆はこの人。
 が、フリージャズはこの作品まで。
 再度エレピを持ち出し、あの清廉かつエキサイティングな“Return to Forever” (Feb.1972)へと続きます。
 その後、あっという間にまた違う激烈へ向かうChickさんですが・・・

 
 

posted by H.A.  

【Disc Review】“Paris Concert” (Feb.1971) Circle

“Paris Concert” (Feb.1971) Circle
Anthony Braxton (reeds, percussion) Chick Corea (piano) David Holland (bass, cello) Barry Altschul (percussion)
 
Paris Concert
Circle
Ecm Import
チック・コリア サークル


 Chick Corea、“The Song of Singing” (Apl.17,18.1970)のトリオにAnthony Braxtonを迎えたバンドCircleでのライブ録音。
 サックスカルテットですが、“The Song of Singing”、“A.R.C.” (Jan.1971)と質感は同じ。
 美しい音のフリージャズな一作。
 冒頭は本作もWayne Shoeter作 "Nefertiti"。
 “The Song of Singing”、“A.R.C.”でも取り上げられていますが、本作は落ち着いたビート、普通にジャズっぽいサックスソロからスタート。
 意外にオーソドックスかも・・・と油断していると、徐々に激烈フリージャズに遷移します。
 一息ついてピアノトリオになるとまたまた普通に4ビートからスタートしますが、またまた激烈へ。その熱を保ったままベースソロへと突入。
 二曲目は完全なベースソロ、さらにはピアノとサックスのDuoでの静かながら不思議なフリーインプロビゼーション、ドラムソロ、激しい系フリージャズへと続きます。
 CD二枚目も展開は同じ。
 時折の美しいメロディ、ピアノの響きから、徐々に激しくなっていく展開。
 最後に収められたスタンダード”No Greater Love"にしても、最初の5分ぐらいはビックリするぐらい普通のスタンダード演奏ですが、以降はフリーになりそうで、なり切らないで、定常に戻って、やっぱりフリーになって・・・
 最後はモダンジャズ的4ビートのとてもカッコいい音で締め。
 全体を眺めれば、基本的にはピアノトリオ“The Song of Singing”を踏襲。
 激烈ですが、“Sundance” (May.1969)、“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970) Miles Davisまではいきません。
 やはり、音を出していない空間が広い、うるさくはないフリービートを繰り出すBarry Altschulのドラムの色合いのように思います。
 その分、ドカーンと来るエネルギー放出型フリージャズではなくて、離散型、複雑型フリージャズ。
 激しさゆえの爽快感よりも緊張感、先の読めないスリルの方が勝る感じでしょうか。
 1960年代フリージャズ、そろそろその時代が終わりそうな、そうでもないような、そんなステージ。
 卓越した演奏力、美しい音はこのあたりの一連の作品の特徴、これまた美しい音のフリージャズ。
 同時期Miles Davisは激烈なジャズファンク“Live Evil”(Dec.16-19,1970)を録音していますが、フリージャズなChick Coreaはまだ続きます。
 あの“Return to Forever” (Feb.1972)まであと一年。
 
 
 

posted by H.A.  

【Disc Review】“A.R.C.” (Jan.1971) Chick Corea

“A.R.C.” (Jan.1971) Chick Corea 
Chick Corea (Piano)
Miroslav Vitous (Bass) Roy Haynes (Percussion) 

A.R.C
チック・コリア
ユニバーサル ミュージック
2016-10-26


 Chick Corea、これがECMでの初録音になるのでしょう。
 ピアノトリオでの作品。
 Miles Davisとの共演は“Bitches Brew Live /一部”(at the Isle of Wight Festival) (Aug.29,1970)でいったん終了していた時期。
 Miroslav Vitousは”Weather Report” (Feb-Mar.1971)録音の前月。
 冒頭の"Nefertiti"からエネルギー全開。
 フリージャズ度高め、ハイテンションで激しい演奏ですが、Bitches Brewバンドとは違いあくまでアコースティックなジャズ。
 “Sundance” (May.1969)の流れにあるようにも感じますが、ECMゆえか、スッキリとした音で、フリージャズにしても端正な色合いです。
 Miroslav Vitousも強靭な音、強烈な推進力ながら、”Weather Report”のように激しくは弾きません。
 強烈な疾走感、流麗な音使いはHerbie Hancockに近い感じもするのですが、強いタッチ、クラシックの香りの強さあたりが差になっているのでしょうかね?
 美しいピアノで弾かれる激しいフリージャズ。
 さすがChick Corea。
 さすがECM。


 

posted by H.A.  

【Disc Review】“The Song of Singing” (Apl.17,18.1970) Chick Corea

“The Song of Singing” (Apl.17,18.1970) Chick Corea
Chick Corea (keyboards, Piano)
Dave Holland (bass) Barry Altschul (drums) 
 
Song of Singing
Chick Corea
Capitol
チック・コリア


 Chick Corea、Milesバンド在籍時のピアノトリオアルバム。
 “Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの後、“Black Beauty” (Apl.10,1970) Miles Davisのわずか一週間後のセッション。
 "The Complete "Is" Sessions" (“Is”, “Sundance”) (May.1969)と同様にフリージャズの色合いが強い作品。
 本作はアコースティックピアノでの演奏ですが、“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970) Miles Davisのフリージャズ的な混沌の場面は、Chick Corea、Dave Hollandの色合いが強いのかなあ、と思います。
 超高速に突っ走る演奏もあれば、漂うようなバラードあり。
 “Is” (May.1969)ほど激烈ではないのは、ドラマーがJack DeJohnetteではなく、空間が多いタイプだからなのでしょう。
 楽曲は抽象的、激しい演奏ですが、ピアノはものすごく美しい音。
 タッチが恐ろしく明瞭で、録音のよさも手伝って、パキーンとした音。
 メロディアスなフレーズはもちろん、グシャグシャとした展開までも美しく聞こえます。
 ベース、ドラムを含めた自然さはECM録音の“A.R.C.” (Jan.1971)に譲りますが、全体的に素晴らしい録音です。
 ドラマーが交代したECMでのトリオ作品“A.R.C.” (Jan.1971)、さらには本作のメンバーにサックスを加えた“Paris Concert” (Feb.1971) Circleへと続きます。


 

posted by H.A. 

【Disc Review】"The Complete "Is" Sessions" (“Is”, “Sundance”) (May.1969) Chick Corea

"The Complete "Is" Sessions" (“Is”, “Sundance”) (May.1969) Chick Corea
Chick Corea (piano, electric piano)
Dave Holland (bass) Jack DeJohnette, Horace Arnold (drums)
Woody Shaw (trumpet) Hubert Laws (flute, piccolo) Bennie Maupin (tenor sax)

Complete Is Sessions
Chick Corea
Blue Note Records
チック・コリア


 Chick Corea 、Milesとセッションを繰り返している時期のアルバム。
 “In a Silent Way” (Feb.1969)の翌月、“Bitches Brew” (Aug19-21,1969) Miles Davisの間、いわゆるロストクインテット”Bitches Brew Live(Newport Jazz Festival)”/一部 (Jul.5,1969)、”1969Miles”(Jul.25,1969)のライブの一ヵ月前の録音。
 ピアノトリオはMilesのいわゆるロストクインテットのメンバー、“Bitches Brew”の三人が揃っています。
 それっぽいかといえば、そうでもありません。
 基本的には4ビート、メロディ、楽曲の作りが、いかにもChick Coreaらしいハイテンションジャズの色合い。
 Dave Holland、Jack DeJohnetteは凄い演奏ですが、ヒタヒタと迫ってくるような感じはなく、激しい系のジャズの範疇のように思います。
 それからすれば、“Bitches Brew”の全体のムードを支配しているのはChick Coreaではなかくて、やはりMiles DavisかJoe Zawinulだったのでしょうね。
 “Bitches Brew”はさておき、”1969Miles”などのライブ諸作のような激烈な感じではなく、むしろ端正だなあ・・・
 と思っていたのはわずかな時間。
 爆発的なフリージャズ的へと展開。
 ピアノもアコースティック、エレクトリックが交錯する形ですが、激しいピアノトリオと好演のホーン陣が一体となったカッコいいジャズが続きます。
 さらにCDでは二枚目になるとさらにビックリ。
 こちらは超ウルトラ激烈フリージャズ。
 全三曲、各曲とも穏やかに始まりますが、徐々に音量が上がり、中盤からは後期のColtraneを想わせるようなブチ切れた演奏が続きます。
 ドラムがビートを出しているような気がしないでもないですが、それにしてもドラムソロ状態の叩きまくりです。
 もーグチャグチャ。
 聞いている方の血管も切れてしまいそうな激烈な演奏。
 最初から最後まで超弩級エネルギー放出型フリージャズ。
 おっと、やっぱりロストクインテット、Bitches Brewライブの一場面にも似ていますね。
 これのビート感を変えて、ロック、ファンクの色合いを付けて、Miles 流の統制を加えれば、それらになりそうだし、静かで妖しい二曲目”Converge”あたりは“Miles Davis At Fillmore”(Jun.1970)の"The Mask"のムード。
 さらにLPレコードでのB面は全一曲、これでもかこれでもかの激烈フリージャズ。
 対峙して聞くと聞いてる方がヘロヘロに。
 さすがChick Coreaというべきか、あるいは、さすがMiles Davisというべきか・・・




posted by H.A.  

【Disc Review】“Now He Sings, Now He Sobs” (Mar.1968) Chick Corea

“Now He Sings, Now He Sobs” (Mar.1968) Chick Corea
Chick Corea (Piano)
Miroslav Vitous (Bass) Roy Haynes (Drums) 

Now He Sings Now He Sobs
Chick Corea
Blue Note Records
チック コリア


 Chick Coreaのピアノトリオ、人気作。
 Milesへのセッションへの参加前、ここから先はリーダー作ではフリージャズ中心になり、この期では最後?のオーソドックスな4ビートジャズ作品。
 私が持っているCDではスタンダードも交えてたくさんの曲が入っていて、曲順もバラバラ。
 実際のLPレコードでは全5曲。

Side A
1.Steps-What Was
2.Matrix
Side B
1.Now He Sings, Now He Sobs
2.Now He Beats the Drums, Now He Stops
3.The Law of Falling and Catching Up

 LPに収められなかった演奏も悪くはないのですが、昔のCDではアルバムのムードが曖昧、散漫な印象になってしまうように思います。
 最初からCDで聞いてしまった感想は、モノの本には名作とされているけど、こんなものかあ・・・
 後で気付いて、LPフォーマットに並び替えて聞いてみて納得の名作。
 冒頭、長尺な”Steps-What Was”からハイテンションでモーダルな演奏全開。
 強烈な推進力のベース、ドラムと、疾走し跳ねまわるピアノ。
 ベースは強い推進力はそのままに、Miroslav Vitousとは思えないような落ち着いたオーソドックスな色合い。
 決して激しくは叩かないのだけも、静かに鳴り続けるシンバル、ヒタヒタと迫ってくるような組み立てに凄みを感じるドラム。
 中盤からは後の“Return to Forever” (Feb.1972)、”La Festa”の展開。
 このカッコいい演奏が冒頭にあればまた印象が違ったんだろうなあ。
 長尺だから後ろに回したのでしょうかね?
 もちろん続くCD冒頭曲、高速Monkな”Matrix”が悪いわけではありませんが。
 B面に移ってもハイテンションでモーダルな演奏、続いてはゆったりと漂うような演奏から端正でオーソドックスな4ビートへ展開。
 "How Deep Is the Ocean "を引用しながら平和にエンディング。
 最後は後を予見するような・・・かどうかは分かりませんが、短い不思議系フリージャズで少々の闇を見せつつエンディング。
 やはりこの選曲、この並びが一番カッコいいと思うけどなあ。
 アート感が全然違います。
 今のCDは前半にLP順を集めて、未発表テイクを後ろに。
 これが正解でしょうね。
 最後の妖し気な余韻~空白が感じられないのが今一つなのかな?


 

posted by H.A. 

【Disc Review】“Tones for Joan's Bones” (Nov.Dec.1966) Chick Corea

“Tones for Joan's Bones” (Nov.Dec.1966) Chick Corea
Chick Corea (piano)
Steve Swallow (double bass) Joe Chambers (drums)
Woody Shaw (trumpet) Joe Farrell (tenor saxophone, flute)
 

Tones for Joan's Bones
Chick Corea
Imports
チック コリア


 Chick Corea、初?リーダー作。
 サポートで参加しているBlue Noteでのモダンジャズ作品“Boss Horn” (1966) Blue Mitchellと同月の録音。
 サイケなジャケットからは想像しづらいのですが、端正なアコースティック4ビート。
 “Miles Smiles” (Oct.1966) Miles Davisほぼ同じ時期、似たムードもありますますが、もっと明るいムードでハードバップ寄りです。
 ピアノトリオで演奏される自作タイトル曲などは、この人にしてはビックリするようなハードバップなメロディ、演奏。
 スタンダードを一曲入れた長尺4曲もインプロビゼーション重視派のオーソドックスなジャズの様式。
 それでも全体のムードはハードバップから一歩踏み出した、いわゆる新主流派的な響き。
 Tony Williansのようなドラムに、Ron Carterのようなベース、Herbie Hancockのようなピアノ。
 遅くなったり速くなったり、リズムが伸び縮みするような感覚も同様。
 Milesバンドの影響力が推し量られます。
 メンバー全員がまだ無名な時代?、音作りは当時の流行もあったのでしょうが、さすがのハイテンション。
 ピアノはHerbie Hancockよりもタッチが強めで音が太い感じ、強烈な疾走感は同様ですが、より力強いイメージで、少し重厚なイメージ。
 モーダルな展開ではMcCoy Tynerのような場面もあり、彼とHerbie Hancockの中間的な質感なのかもしれません。
 それでいて飛び跳ねるような音使いはこの人ならではの色合いででしょう。
 Woody Shaw、Joe Farrellもちょと他の人とは違う、ハイテンションかつ流麗な吹きっぷり。
 Woody Shawのモダンジャズのメジャーどころにはあまりない、ドスの効いたVoiceのバリバリ形トランペットがカッコいい。
 後のようなフリーな場面は少々のみ。
 長尺な演奏が徐々にテンションが上がって、ピアノが離散的なフレーズを連発し始め、ドラムがフリーになり、例の混沌へ・・・が、激烈まではいかず、その場面もほんの短い時間。
 なるほど、バランスが取れています。
 などなど含めて、とてもカッコいいアコースティック4ビート、モダンジャズ。
 このアルバム、もしBlue Noteあたりから出ていれば、名盤として奉られているのでしょうね。

 

 


posted by H.A. 

【Disc Review】“Like Minds” (Dec.1997) Gary Burton

“Like Minds” (Dec.1997) Gary Burton
Gary Burton (vibraphone)
Pat Metheny (guitar) Chick Corea (piano) Dave Holand (bass) Roy Hynes (drum)

Like Minds (Album Version)
Universal Music LLC
ゲイリー バートン


 “Question and Answer” (Dec.1989)と “Crystal Silence” (1972) Gary Burton/Chick Coreaのメンバーが一堂に会した作品。  
 ProducerはGary Burton 、一番下っ端がPat Methenyでしょうから、諸々の段取りをやらされているのかもしれません。
 さておき、何でもできそうなメンバーですが、仕掛けは一切なし、基本的にはオーソドックスなアコースティック4ビートジャズ。
 不思議なくらいに落ち着いています。
 Roy Hynesのパタパタドラムと強烈推進力のDave Holandの心地よいビートに乗って、他3名が上品にソロを分け合う構成。
 誰が前に出て強く自己主張するわけでもなく、激しいインタープレーをするわけでもなく、淡々としたソロ回し。
 楽曲提供も3人で分け合う形。
 この落ち着いたジャズがやりたかったことなのでしょう。
 レーベルもConcordだしね。
 トリオの“Question and Answer” (Dec.1989)の方が激しいってのは微妙ですが・・・
 ともあれ、リラックスして聞ける落ち着いた大人のジャズ。
 上品、上質です。




posted by H.A.
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