吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Argentine

【Disc Review】“Albores” (2019) Dino Saluzzi

“Albores” (2019) Dino Saluzzi

Dino Saluzzi (Bandoneon)

Albores
ECM Records
2020-11-06


 アルゼンチンの重鎮Dino Saluzzi、バンドネオンソロ作品。
 コンボでの“El Valle de la Infancia” (2014)以来?、ソロ演奏では”Andina” (1988)以来でしょうか?
 そこから三十余年が経過していますが、変わらない優しく暖かい音、変わらない郷愁感。
 タイトルは「夜明け」の意。
 静かに漂うように始まり、ゆっくりと変わっていく景色。
 バンドネオン、さらに独奏ゆえの止まらない揺らぎ。
 ビートが定まりときおりスピードを上げ疾走つつも、気が付けば揺らぎの中。
 明確なメロディが見えそうで見えない、見えたと感じるのは束の間、また揺らぎの中。
 たびたび訪れるフォルクローレ的、あるいはタンゴ的なコードチェンジの瞬間に覚醒しつつ、また揺らぎの中。
 同じ空気感ながら同じフレーズは二度とはない、そんな音の動き。
 しばらくするとどこか別の世界へ転移したような、あるいは波に洗われ続けているような錯覚。
 ここまでの諸作には何らかの物語、起承転結が明示されているように感じましたが、本作は違う印象、さりげないイメージ。
 緩急、紆余曲折が交錯しながら、哀しいような懐かしいような、ゆったりとした音の流れが続きます。
 そして終盤に準備された長尺な二曲、アルバム全体を集約したような演奏。
 定まらないゆったりとしたビート、現れては消えていく断片的なメロディ。
 郷愁に包まれる時間。


 


Kultrum” (1982) 
Theatre” (1983) George Gruntz
Once Upon a Time - Far Away in the South” (1985) 
Volver” (1986) Enrico Rava 
Andina” (1988) 
“World Sinfonia” (1990) Al Di Meola 
Mojotoro” (1991) 
“World Sinfonia II - Heart of The Immigrants” (1993) Al Di Meola 
Rios” (1995) Dino Salussi, Anthony Cox, David Friedman 
Cité de la Musique” (1996) 
Fábula” (1996) Maria João 
Di Meola Plays Piazzolla” (1990-1996) Al di Meola
From the Green Hill” (Aug.1998) Tomasz Stańko 
Kultrum” (Oct.1998) Dino Saluzzi, Rosamunde Quartett 
If” (Jun.2001) Myriam Alter
Responsorium” (Nov.2001)  
Trio Tage” (Oct.Nov.2002) George Gruntz, Thierry Lang, Dino Saluzzi 
Senderos” (Nov.2002) 
Juan Condori” (2005) 
Ojos Negros” (2006) 
El Encuentro” (2009) 
Giya Kancheli, Themes From The Songbook” (2010) Dino Saluzzi / Gidon Kremer / Andrei Pushkarev
Navidad de Los Andes” (2011) 
El Valle De La Infancia” (2014) 
Albores” (2019) 

posted by H.A.


【Disc Review】“Aguasilabas” (2019) Sebastian Macchi Trio

“Aguasilabas” (2019) Sebastian Macchi Trio

Sebastián Macchi (voice, piano, rodhes, guitar)
Carlos Aguirre (fretless bass, voice) Gonzalo Díaz (drums, percusion, glockenspiel, voice)

AGUASILABAS
SEBASTIAN MACCHI TRIO
bar buenos aires
2019-09-27


 アルゼンチンのシンガーソングライター、あるいはピアニストSebastián Macchiの現代フォルクローレ。
 Carlos Aguirre のレーベルShagradamedraから。
 オーソドックスなピアノトリオ編成を中心にボーカルを載せた歌物中心、Carlos Aguirreがベースを担当。
 ゆったりとしたテンポ、フワフワとしたフォルクローレベースのビートに、優しく哀し気なメロディ、繊細な音使い。
 CD一枚、全13曲、全編それ。
 とても繊細なCarlos Aguirreの音楽を、さらに繊細にしたような音。
 零れ落ちるような美しいピアノと儚げな声。
 疾走する場面はなく、強い浮遊感を纏いつつ、淡々と音楽は進みます。
 河沿いミュージックなんて言葉があるようですが、確かに水が流れていくような、ときおり川面がきらめいているような、木漏れ日のような音。
 景色は緩やかに移ろっていきます。
 少しビートが上がっても、その強いビートを包み込むようなこれまた繊細な歌声。
 全曲少し哀し気な表情のキャッチーなメロディ。
 いろんな構成、いろんなメロディが揃っていて、楽曲ごとに表情は異なるのですが、どこを切り取ってもセンチメンタルにならざるを得ない音の動き。
 それでいて沈痛さや深い哀しみとは距離のある、淡いセンチメンタリズム、どこか懐かしい空気感。
 あくまで前向きな音。
 本家本元、南米のSaudade、その現代の音。
 名作“Luz de agua” (2005)に並ぶ名作。




posted by H.A.

【Disc Review】“La musica del agua” (2019) Carlos Aguirre

“La musica del agua” (2019) Carlos Aguirre

Carlos Aguirre (piano, vocal)



 現代フォルクローレのリーダーの一人Carlos Aguirreの2019年最新作。
 全編歌物、ピアノの弾き語り。
 リーダー作は“Calma” (2017) Carlos Aguirre Trío以来でしょうか。
 コンテンポラリージャズなそちらに対して、本作は濃厚な現代フォルクローレ色。
 テーマは『水の音楽』。
 楽曲は自身のオリジナルではなく、おそらくは南米の先人たち、Shakrada Medraで名前を見受ける仲間たちの作品。
 ここまでのリーダー諸作と少し印象が異なるのは、それが大きいのかもしれません。
 バラード中心、少しずつ各曲の表情は異なります。
 もちろん、いずれもフォルクローレの香りたっぷり、優しく少し悲し気なメロディ。
 それらが丁寧に綴られていきます。
 “Carlos Aguirre Grupo (Crema)” (2000)の華やかなアレンジ、強烈なセンチメンタリズム、“Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008)の激しさ、ドラマチックさはありません。
 全編に漂うほのかなセンチメンタリズム、やるせなさ、遠いところを眺めているようなムード。
 が、悲痛さはありません。
 Saudade。
 そんな空気感の中、優しいメロディが穏やかに奏でられ、歌われ、流れていきます。
 脚色や演出を取り除いた生のアルゼンチンSaudadeは、こんな感じの音なのでしょうね。


※少し前の演奏から


posted by H.A.



【Disc Review】“Cantando a Elsy” (2018) Nora Sarmoria

“Cantando a Elsy” (2018) Nora Sarmoria

Nora Sarmoria (Piano, Voice, etc.)
Facundo Ferreira (Percussion) Patricio Bottcher (Winds) 
Mati Mormandi (Piano, Voice) Alisa Kaufman (Guitar, Voice) Catalina Sarmoria (Voice) Verónica Parodi (Poem, Voice)



 現代フォルクローレのピアニスト&ボーカリストNora Sarmoria、アルゼンチンの児童文学作家 Elsa Bornemannの詩を楽曲化した作品集。
 この期に多い子供向けの企画、確かにそんな感じの楽曲もあったり、娘さんも参加されたりしているようですが、全体的にはちょっとハードで大人な感じ。
 例によってピアノの弾き語りに、ときおりのパーカッションと管、弦の編成。
 跳びはねるピアノに演劇めいた歌。
 楽曲ごとにゲストボーカリストを迎えて、賑やかだったり、少し哀しげだったり。
 これまでの素直なファンクジャズや少し変わった電子音よりも、メロディや展開そのものがひねった感じ、演劇性が強くなっているかもしれません。
 インタールド的な短い演奏を含めて全20曲。
 あれよあれよと、めまぐるしく景色は変わっていきます。
 いずれにしても、元気で明るくて楽し気で、ほんの少しアバンギャルドで不思議な音。
 現代フォルクローレでもない、南米ファンクジャズでもない、独自の世界が出来上がっているんだろうなあ、と思います。




posted by H.A.




【Disc Review】“Tres Libbros” (2016) Nora Sarmoria

“Tres Libbros” (2016) Nora Sarmoria

Nora Sarmoria (piano, voice, percussion, accordion, keyboards)
Facundo Ferreira (percussion) Damián Verdún (charango)
Teresa Parodi, Chiqui Ledesma, Marina Santillán, Catalina Ward Sarmoria (voice)



 アルゼンチンのピアニスト&ボーカリストNora Sarmoriaの現代フォルクローレ、あるいはアルゼンチンポップス。
 ピアノの弾き語りにパーカッションやアコーディオンその他が加わるシンプルな編成。
 副題が「0から100までの少女のための歌」、1分~3分の短い楽曲全20曲。
 序盤は子供のコーラスを含めて、“おかあさんといっしょ”の世界。
 これはちょっと・・・と思いつつ、徐々に対象年齢が上がっていく構成なのでしょうか?、中盤からはちょっと哀感が強いバラードなども交えながら、一曲ごとに表情が変わる、さながらおもちゃ箱をひっくり返したような音。
 ハードなファンクジャズの色合いは少な目ですが、メロディアスなボーカル曲が中心。
 コミカルなようで極めて上質な南米ジャズフュージョンに、現代フォルクローレな郷愁感もたっぷり。
 のどかで平和、明るくて前向き。
 こんな感じが女性には受けるのかな?




posted by H.A.


【Disc Review】“Silencion Intenso” (2013) Nora Sarmoria

“Silencion Intenso” (2013) Nora Sarmoria

Nora Sarmoria (piano, voice, etc.) 
and others

 現代フォルクローレ、あるいはコンテンポラリージャズのピアニスト&ボーカリストNora Sarmoriaのファンクジャズフュージョン&ポップス。
 ピアノの弾き語りに楽曲によって管楽器、アコーディオンなどが加わる編成。
 いつものハイテンションな南米ファンクジャズ。
 硬質な音であちこちに動きまくるピアノに、裏表を交えた変幻自在のヴォイス。
 Herbie Hancock、Chick Coreaあたりの影響が強いのかな、と思っていましたが、ピキピキパキパキとした感じはEgberto Gismontiっぽくもあるし、Thelonius Monkの色合いもあるし、それでいてなぜか柔らかな質感はHermeto Pascoal な感じもするし・・・。
 難解さは皆無なのに、不思議感たっぷりな感じは他にはいないタイプでしょう。
 図らずも体が揺れるビートに、どこまでも続いていきそうなインプロビゼーション。
 ポップな感じながらも複雑なメロディに、これまた複雑怪奇なユニゾン、スコーンと決まるブレーク・・・・
 さらに演劇的な仕掛けも交えつつの、コミカルなようで硬派なファンクミュージック。
 いつもながらにキャッチーな楽曲揃い、これまた名作。




posted by H.A.


【Disc Review】”Bichos Y Malezas” (2004) Nora Sarmoria, Marcos Cabezas

”Bichos Y Malezas” (2004) Nora Sarmoria, Marcos Cabezas

Nora Sarmoria (piano, electric piano, accordion, voice) Marcos Cabezas (marimba, vibraphone, voice)

 アルゼンチンのピアニスト&SSWとマリンバ奏者のDuo作品。
 ファンクジャズなNora Sarmoriaと“Libre De Consenso” (2002)にも参加していたMarcos Cabezas、二人のだけのシンプルな編成。
 インスツルメンタル曲が中心、ボーカル曲は数曲ですが、いつも通りのノリノリのジャズファンクピアノ。
 それに陰影を付けるのが全編で鳴り響くマリンバの音。
 いつものファンクジャズがベースではあるものの、少し明度が落ちたダークな空気感。
 冒頭二曲はハイテンションなジャズファンク、ボーカル入り。
 変幻自在なマジカルヴォイスとピアノとマリンバの激しいチェイスが映えるメカニカル曲。
 たった二人の演奏ながら、息をつく暇がない凄まじい演奏。
 以降、ボーカル曲は数曲で、インスツルメンタル中心のジャズファンクが並びます。
 ハイテンションの連続かと思えば、すっとぼけ系でコミカルな感じ、漂うような幻想的なバラード、・・・、ってな感じでいろんなイメージの楽曲が交錯します。
 ボーカル曲が少ない分、ジャズな空気感も強くてマニアックな成分が十二分。
 ときおり登場するエレピとビブラフォンがこれまたクール。
 そんなこんなで少し色合いの違ったNora Sarmoria作品。
 ん?ここまでも十分にマニアックだったかな?
 とにもかくにも、とてもカッコいいアルゼンチン・コンテポラリー・ファンク・ジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Libre De Consenso” (2002) Nora Sarmoria

“Libre De Consenso” (2002) Nora Sarmoria

Nora Sarmoria (piano, vocals)
Quique Sinesi (guitar) Facundo Ferreira (percussion) Marcos Cabezaz (vibraphone) Martín Pantyrer (winds)

 
Libre De Consenso SARMORIA NORA 2014-02-11

 アルゼンチンのピアニストNora Sarmoriaのコンテンポラリージャズ。
 コンボというよりもピアノの弾き語りをベースに、ギター、管楽器、パーカッションなどが彩りを付ける構成。
 ピキピキパキパキしたハイテンションなピアノに変幻自在のヴォイス。
 いつもベースレスなのは制約を嫌っているんでしょうかね。
 フリーになる場面はないのですが、自由奔放に跳びはねまくるファンクなピアノ。
 Quique Sinesiのギターとのハイテンションなバトルで幕を開け、幻想的でしっとりとした哀愁曲あり、ゴリゴリファンク、あるいはジャジーなソロピアノあり、妖しいバリトンサック入りのラテンジャズあり、クールなヴィブラフォン入りあり、フォーキーな演奏あり・・・
 各曲がそれぞれ別の表情な演奏、変幻自在。
 ピアノ自体も変幻自在であることも加えて猥雑な感じもあるのですが、なぜか一貫した統一感があります。
 これでもかこれでもかと畳み込んでくる彼女独特のファンクネスとポップネスが溢れる音。
 こりゃカッコいいや。




posted by H.A.


【Disc Review】”Sonideras” (2001) Nora Sarmoria, Liliana Saba

”Sonideras” (2001) Nora Sarmoria, Liliana Saba

Nora Sarmoria (acoustic, electric piano, voice, accordion, udu, berimbau) Liliana Saba (acoustic, electric piano, percussion)

Sonideras (Con Lilian Saba)
SARMORIA NORA
VARS
2014-02-11


 現代フォルクローレのNora SarmoriaとLiliana Saba、女性ピアニストDuo作品。
 ピアノ二台での演奏を中心としつつ、エレピ、スキャットヴォイス、その他諸々を絡めながらのカラフルな音。
 本作も現代フォルクローレというよりも南米コンテンポラリージャズの方がしっくりきます。
 二人とも内省系ではなく、元気で明るい雰囲気のいわゆる男前系、豪放系。
 飛び回り、攻めまくるピアノ。
 硬質な感じの方がNora Sarmoriaなのだろうと思いますが、明確な区別はつきません。
 いずれもテクニシャンでグルーヴィー、跳びはね、突っ走るピアノ。
 明るく現代的なポップな楽曲、いかにもラテンな哀感を漂わせつつのキャッチーなメロディーに、ときおりタンゴっぽいというか、演劇的というか、不思議感たっぷりの楽曲。
 何曲かのバラードを挟みつつの、しなやかな躍動感のある明るいコンテンポラリージャズ。
 その上を漂うように、あるいはときに踏みつけるような、可憐で不思議なヴォイスが幻想的なムードを醸し出します。
 ポップなようで、普通なようで、とてもクリエイティブ。
 女傑コンビのカッコいい南米コンテンポラリージャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Vuelo Uno” (1995) Nora Sarmoria

“Vuelo Uno” (1995) Nora Sarmoria

Nora Sarmoria (piano, voice, accordion)
Quique Sinesi (guitar) José Balé (percussion) Nuria Martinez (ethnic winds) Liliana Herrero (voice) and others

Vuelo Uno (1995)
Nora Sarmoria
Argendisc
1999-04-30


 現代フォルクローレの草分けの一人Nora Sarmoriaのデビュー作。
 ギター、パーカッションに優しい音の管が彩りを加える南米定番の編成ですが、ちょっと強めの元気なビート。
 ジャズ、ファンク、ポップス、クラシックが入り混じるピアノに変幻自在のヴォイス。
 アルゼンチン現代フォルクローレの定番”Danza Sin Fin” (1998) Quique Sinesi、”Carlos Aguirre Grupo (Crema)” (2000)に先立つ時期。 
 それらよりもジャズ・フュージョン、ファンク寄り、Hermeto PascoalHerbie HancockChick Corea、CarmoのEgberto Gismonti、あるいはFlora Purimな感じでしょうか。
 跳ねまわるような音の動きはフォルクローレというよりも南米コンテンポラリーファンクジャズの方が似合います。
 後の作品ではピアノの弾き語り+αでのファンクジャズなイメージが強いのですが、本作では少しダークな色合いもあるバンドサウンドが中心。
 妖しいジャズギタリストなQuique Sinesiの音もたっぷり。
 動きまくるピアノ、変幻自在のぶっ飛んだスキャットとバンドの激しい絡み合いは、他ではなかなか聞けないスゴイ演奏。
 さらに全編に南米系特有の浮遊感と幻想的なムードを漂わせつつのポップなメロディ。
 これは凄いアーティストのぶっ飛んだデビュー作・・・だと思うのだけども、例によって廃盤かあ・・・




posted by H.A.


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