吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Antonio_Loureiro

【Disc Review】"Livre" (2018) Antonio Loureiro

"Livre" (2018) Antonio Loureiro

Antonio Loureiro (voice, piano, synthesizer, drums, percussion, electric bass, electronics)
Pedro Martins (guitar, chorus) Kurt Rosenwinkel (guitar) André Mehmari (synthesizer) Frederico Heliodoro (electric bass) Ricardo Herz (violins) Genevieve Artadi (voice) Pedro Martins, Tó Brandileone, Rafael Altério, Pedro Altério (chorus)

Livre リーヴリ
Antonio Loureiro
NRT
2018-10-20


 ブラジルのマルチ楽器奏者、あるいはシンガーソングライターAntonio LoureiroのMPB。
 リーダー作としては"MehmariLoureiro duo" (2016)以来でしょうか。
 Vibraphoneがメイン楽器と思っていましたが、本作ではそれは使わずピアノとパーカッション、そして自身のボーカルを中心とした構成。
 ポップながら不思議系のメロディと、複雑で強いビート、厚めな音を中心としたハードなジャズフュージョン系、あるいはプログレッシブロック系、ボーカル入り、ハイテンションなMPB。
 各曲5分前後でコンパクトに収まっていますが、いずれの楽曲もとてもドラマチック。
 ハードに始まり、あれよあれよと変化しながらさらに音が強くなり、ドカーンと盛り上がっていく系。
 ちょっと線が細めのボーカルでクールダウン・・・ってな感じでもなく、全編通じてハードです。
 共演作はさておき、ここまでのリーダー諸作もそんな感じでしたね。
 Milton Nascimentoが現代にデビューしたならこんな感じなのかもしれません。
 “Caipi” (2017)で共演したKurt Rosenwinkel、盟友André Mehmariは一曲ずつの参加。
 前者はいかにもなファットなエレキギターでウネウネとどこまでも続いていきそうな演奏、後者はシンセサイザーでハードな音の彼。
 ブラジル系でキリッとした強めの音を聞きたい時はこの人のアルバムがいいのかな?
 そんなハードな、現代のブラジリアンジャズフュージョンな一作。




posted by H.A.


【Disc Review】"Só" (2012) Antonio Loureiro

"Só" (2012) Antonio Loureiro
Antonio Loureiro (piano, vibraphone, rhodes, keyboards, drums, bass, vocal, etc.)
Andrés Beeuwsaert (piano, vocal) Rafael Martini (vocals, accordion) Santiago Segret (bandoneon) Daniel Santiago (guitar)
Federico Heliodoro (electric bass) Trigo Santana (contrabass)
Sérgio Krakowski (pandeiro) Tatiana Parra, Siba (vocal)
Alexandre Andrés (flutes) Thiago França (saxphone) Pedro Durães (programming) and others

ソー
アントニオ・ロウレイロ
SPACE SHOWER MUSIC
2012-11-28


 ブラジルのマルチインスルツメンタリスト?Antonio Loureiroのセカンド?アルバムに当たるのでしょう。
 前作“Antonio Loureiro” (2010)と同様に、さまざまな要素がフュージョンした新感覚のMPB(ブラジリアンポップス)。
 本作には縁が深いのであろうサンパウロ系筆頭?Andre Mehmariの参加はありませんが、Andrés BeeuwsaertTatiana Parraなどのいかにもな人脈の参加。
 本作もボーカルが全編でフィーチャーされますが、そのスペースが相対的に減少し、あくまで楽曲の中の一部のイメージ。
 決して分厚い音ではなく、あくまでナチュラルでアコースティックな質感ですが、変幻自在の構成、凝りに凝ったアレンジは前作と同様。
 フルート、サックス、ビブラフォン、他のインプロビゼーションでドカーンと盛り上がる場面もあり、インスツルメンタルミュージックの色合いが強くなったようにも感じます。
また、強めなビートの場面が増え、それはプログレシッブロックな面持ちだったり、アバンギャルドでアグレッシブな場面はフリージャズの面持ちだったりもします。
 もちろん中心は、漂うようなピアノ、瑞々しいガットギターが主導する、ブラジリアンコンテンポラリージャズの表情。
 いずれにしても一曲一曲がとてもドラマチック。
 全曲を占めるオリジナル曲は、フォルクローレ、ミナス的な色合いながらも意外な方向に飛んでいく不思議系なメロディに、複雑系のビート。
 次々とビートが変化し、ボイスを含めてさまざまな楽器が入れ代わり立ち代わり前面に出る、先の読めない展開、諸々合わせて、おもちゃ箱をひっくり返したような新しい感覚の音楽。
 クラシックの色合いが強くなったとも感じるこの頃のAndre Mehmari諸作に対して、この人の作品はロックの色合いも感じる元気系。
 ・・・と思っていたら、とても静かなピアノと、控えめな電子音、幻想的なコーラスが絡み合う演奏があってみたり、締めは哀愁系のサビのリフレインのサンバな流儀だったり・・・
 やはり変幻自在の新感覚な音楽。
 ま、カテゴライズしようとすること自体が野暮なのでしょうね。
 本作もクリエイティブ、かつわかりやすい新感覚のブラジリアンミュージックな一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro

“Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro
Antonio Loureiro (vibraphone, drums, piano, guitar, voice, etc.)
Rafael Martini (vocals, accordion, piano) Andre Mehmari (piano) Mateus Bahiense, Marcelo Pretto (brimbau, percussion, etc.) Cecilia Pacheco (harp)
Federico Heliodoro, Pablo Souza (bass) Daniela Ramos (table) Segio Krakowski (pandeiro)
Pedro Aristides (trombone) Mauricio Loureiro, Flavia Ferreirra, Diago Mala, Nivaldo Orsi, Luis Afonso “Montanha” (clarinette) Daniel Pantoja (flute) Felipe Jose (cello)
Sergio Perere, Fabiana Cozza, Leonora Weissmann, David Linx (voice) Pedro Durães (programming)

Antonio Loureiro
Antonio Loureiro
Ais
2006-07-31


 さまざまな楽器を操るブラジル人アーティストAntonio Loureiroのデビュー?アルバム。
 サンパウロ出身、スーパーピアニストAndre Mehmariとつながりが深いようで、近作ではDuoで"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro、“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiroではプロデュースを任せ、本作でも一曲客演しています。
 サンパウロ系といったカテゴリがあるようですが、サンバビートではなく、ブラジリアンネイティブ~南米各地のフォルクローレ、あるいはクラシック色も強いショーロ、さらにはミナス系の色合いも強い感じ。
 Andre Mehmari を中心?として、Tatiana ParraDani & Debora Gurgel親子、Mônica SalmasoLeonora Weissmann、アルゼンチンまで地域を広げればAndrés Beeuwsaert、さらにはCarlos_AguirreQuique Sinesiあたりまでもつながりそうな感じ。
 ボーカルが前面にフィーチャーされるMPB仕立てではあるのですが、ビートがボッサボッサしていないだけに、コンテンポラリージャズのボーカル作品のようにも聞こえます。
 リオデジャネイロ中心のサンバ、ボッサ系とは一味違う、南米フォルクローレやクラシックの色合いに、さらに現代的な感覚を加えた新しい音作り。
 冒頭から、Milton Nascimento的なような、そうでもないような、ピアノ、ホーン、ボイスが絡み合いながら、さまざまな表情に景色が移り変わっていくような複雑でダイナミックな音作り。
 さらにはギターとフルートが主導するバラード。
 こちらも同様にさまざまな楽器とコーラスが絡み合いながらのドラマチックな音の流れ。
 さらにはヒタヒタと迫ってくるようなビート感~疾走と浮遊が交錯する、一時期のPat Methney Groupを想起するような場面もあり、これまたドラマチックな演奏。
 あるいは、あくまでナチュラルなサウンドの中に電子音が鳴ったり、素朴なボーカルと優雅で幻想的なハープが絡んでみたりたり・・・
 などなど、いずれも凝ったアレンジ、構成の楽曲が並びます。
 要所に水の音などをSEに加えながら、何かしら自然の状況を描写、表現しようとしているのでしょう。
 そのあたりも現代フォルクローレ通じる空気感。
 全曲、リーダーのオリジナル、変幻自在なメロディと音作り。
 締めはAndre Mehmariを加えて、複雑なアレンジ、強烈なユニゾンが続く、クラシカルなムードのおもちゃ箱をひっくり返したような演奏。
 この頃のAndre Mehmariらしい音といえばその通り。
 あえてカテゴライズするとすればポップス、MPBになるのだと思いますが、そう位置付けてしまうにはあまりにも複雑で新しい、ブラジル発、とてもクリエイティブな音楽。
 もちろんそこはかとない郷愁感とわかりやすさはお土地柄。
 とてもカッコいいと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiro

“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiro
Ricardo Herz (violin) Antonio Loureiro (vibraphone)
 
Herz & Loureiro
Ricardo Herz
CD Baby
2014-05-26


 ブラジリアンコンビによるDuo作品。
 ギターもピアノもパーカションもフルートもなし、バイオリンとヴィブラフォンの珍しい編成でのインスツルメンタルミュージック。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariと "MehmariLoureiro duo" (2016)を制作、本作のプロデューサーにもAndré Mehmariがクレジットされています。
 諸々鑑みるとしっとり系、あるいはクラシック色が強いことを想像してしまいますが、そんな感じではなく、元気いっぱいの音。
 冒頭のアップテンポ曲から強いビート感。
 Antonio Loureiroはミナス出身、上掲のAndré Mehmari作ではそんな感じの浮遊感の強い音でしたが、ここでは力強さが勝ります。
 バイオリンは上下に激しく動くジェットコースター型。
 二人合わせてあっちに行ったりこっちに行ったり、忙しい音の流れ。
 スローバラードの前奏から始まる二曲目も、いきなりテンポを上げての複雑なユニゾンへ。
 ベースはミナスサウンドというよりも、Egberto Gismonti的な音なのでしょうかね。
 そんなハイテンションな演奏が続きます。
 それでも少人数ゆえ、なんだかんだでフワフワとしたヴィブラフォンの音、浮いたり沈んだり、突っ走ったりタメまくったり、表現力豊かなバイオリンゆえ、うるさかったりキツかったりはしません。
 楽曲は各人のオリジナルに、Egberto Gismontiナンバーなど。
 サンバ、ボッサ、ミナスっぽさはありません。
 南米系特有の郷愁感も強くなく、ちょっと元気がよすぎて陰影、哀愁に欠けるのかな?
 かといってアメリカっぽさはないし、所々に見え隠れするクラシックの香りを含めて新感覚の音であるのは確か。 
 期待していた音とは違うのですが、この雰囲気が新世代のブラジリアンミュージックなのかな?
 ジャケットのデザイン通りの空気感といえばそうかもしれないですね。




 posted by H.A.

【Disc Review】"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro

"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro
André Mehmari (Piano, synth, electric piano, bass flute, guitar, charango, bandolim, accordion, voice) Antonio Loureiro (Drums, vibraphone, voice)
 
アンドレ・メマ





 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの最新作は、ビブラフォンを中心としたマルチ楽器奏者とのDuo。
 二人ですが、例によってオーバーダビングも含めてコンボ作品に近い音作り。
 近作ではクラシックの色合いが強い作品が続いている印象がありましたが、本作もその色合いながら、ビート感も効いた曲が多く、ジャズ、ポピュラーミュージックの色合いが戻ってきた感じでしょうか。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariよりも一回り若い若手。
 ミナス出身のようで、なるほど、オリジナル曲の展開やそれに乗ってくるvoiceが”Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny的です。(Pat Methenyが影響を受けた側でしょうから、そんな形容は妙なのですが・・・)
 ふわふわとしたビブラフォンもそんな感じの浮遊感の強い音使い。
 楽曲は二人のオリジナル、共同名義のインプロビゼーション?が概ね三分の一ずつ。
 どれも淡い色合いのセンチメンタルなメロディ揃い。

 冒頭から哀愁が漂うメロディを土台に、柔らかく空から舞い落ちてくるようなピアノの音と、その周囲を漂うようなビブラフォン。
 さらには、さりげないハミングに、これまたさりげないクリーントーンのエレキギター。
 続くはミナス的な幻想感とドラマチックな交錯する漂うような楽曲。
 これはたまりませんねえ。
 以降クラシック的な演奏も入り混じりながら、美しい演奏が続きます。
 同時期?に発表された似たテイストのアルゼンチン人アーティストAndrés Beeuwsaertの “Andrés Beeuwsaert” (2015)と比べると、瑞々しさは同様ながら、そちらがせせらぎのような穏やかで緩やかな音だとすれば、こちらは流れの緩急の変化が強い渓流のような音。
 穏やかなようで性急なようで、突っ走ったり緩んだり。
 これ見よがしな派手な展開はありませんが、とても繊細で上品な音。
 ジャズでもクラシックでもポップスでもフォルクローレでもブラジル伝統音楽でもない、それらが混ざり合ったAndré Mehmariならではの音。
 終盤に集められたピアノとドラムによるインプロビゼーション集?はさまざまな表情。
 メロディアスなバラード風から、少々強面なフリージャズ風の演奏まで。
 二、三分の長くはない演奏を繋ぎつつ、何らかのドラマを描いているのでしょう。
 あの圧倒的なジャズピアノが出てこないかあ・・・と想わせながら、ピアノの強打で幕を閉じます・・・
 わかりやすさ、取っつきやすさなら“Lachrimae” (2003) André Mehmari、あるいは似た色合いの別アーティストの近作ではAndrés Beeuwsaert の“Andrés Beeuwsaert” (2015)もそう。
 が、格調高さなら本作。
 どの作品もとても優雅です。




posted by H.A.

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